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【シリコンバレー子育て事情-6】現妻泣かせのイン・ロー

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ご近所でも気合が入る事で有名なPiatti家、渾身のライトアップ昼の部
  • ご近所でも気合が入る事で有名なPiatti家、渾身のライトアップ昼の部
  • 夜目にも衝撃的なPiatti家、渾身のライトアップ。ライティングにあわせてクリスマスミュージックも夜通し流れている
  • とても品良く寒色系だけでまとめているAlexandra家
  • スクエアのど真ん中に設置されたクリスマスツリー。 今年は不況の影響で町を行き交う人も少なめ
 ファミリーイベント目白押しのこのシーズン、現妻(アメリカ人と結婚してアメリカ在住の日本人女性)は頭痛、胃痛が絶えない。彼女たちにとってホリデーシーズンはもっとも辛く厳しい「試練の時」である。

 アメリカでは俗語で「クレイジー・イン・ロー」という物が存在するくらい誰もがイン・ローに悩まされている。イン・ローとはつまり「Mother in low 」「Sister in low」など、ダンナ側の親類縁者一同のことである。これがHoliday Seasonには連日、どこかの家に集まって家族団欒を繰り広げる。悪い人たちじゃあない。

 しかし、限りなく狭い世界の内輪ネタ、しかも歴史を遡ること30余年あるいはそれ以上。「ジャックが幼稚園に入ったばかりのあの夏にねー」「そうそう、あれは凄かったわよねー」などと盛り上がられても、日本人の現妻は「私だけ独りぼっち」状態。入る余地はないし、会話の輪の中に招かれても歴史的知識が欠落しているので迷える子羊状態。根性試しのような試練である。

 しかも現妻の中には「I love you honey」という文節だけで数年の結婚生活を乗り切っている輩も多い。話題について行けない以前に英語について行けない。ましてや中西部の方言入りで盛り上がられた日にゃ、ひとたまりもない。敢えなく玉砕だ。

 このようなパーティーはたいてい一家族一品持ち寄りの「ポットラック」形式である。これがまた現妻にとっては試練以外の何者でもない。輝かしい「我が家の秘伝」が集まる場に外国人妻渾身のアメリカ料理は持ち込めない。

 「ナンシー叔母さんのグレイビー」や「子供の時から親しんだエイミー伯母さんのマッシュポテト」「ダンの兄嫁のステイシーがテネシーで子供のときから食べていた薬草入りのソーセージ」なんかが脚光を浴びて大好評を博す中、歴史も逸話もない現妻の皿だけが手付かずで放置され涙眼になるだけ。味は絶対に現妻の料理の方が繊細で美味しいのだが、味蕾という旨みを感知する器官が日本人の6分の1しかないアメリカ人にはわからない。

 ここでは今をときめく「Sushi」すらも大きな賭けである。Sushiは西海岸なら温かく受け入れられることもあるが、保守的な中西部では海苔が入った時点でアウトだ。イン・ローはいないものの、ポットラックパーティーでは私も苦渋の玉砕を繰り返している。今のところ、勝率20%くらいだろうか。しかもこの20%は西海岸に来てからの数字で、東にいたときは限りなく全敗に近かった。

 シンシナティにいた頃は、日本人の魂を揺さぶる「肉じゃが」でさえパーティー終了までまったく手付かずのまま、最期は本人の目の前で非情なまでに勢いよく廃棄された。敗因はシラタキ。無力な私は家庭用生ゴミ粉砕機で廃棄処理されるカツオだしの効いた日本人の魂を呆然と見つめることしかできなかった。

 さて、宿敵イン・ローが集うパーティーで我らが現妻はどのような攻防戦を展開しているのだろうか。大多数の現妻は窮地に立った時に小さい子、それもまだ言葉が喋れないようなtoddler(2~3歳くらいまでのよちよち歩きの子に対して使う)に活路を求める。高い確率で、家族の集いに混じっている幼児を相手に、必死で時間を潰し間を持たせる努力を試みる。楽しげに小さい子の相手をしているように見えるが、話題が自分に振られるのを警戒して神経はピリピリ、心臓はバクバクしている。しかし、非情にもtoddlerはやがて、同じアクションしか繰り返さない外国人のイン・ロー(我らが現妻)に飽きてしまい相手をしてくれなくなる。敵陣でようやく巡り会えた友軍との決別の時だ。

 次なる傾向として、現妻は犬、猫、ハムスターなど何でもいいからペットに助けを求める。大抵のアメリカ人家庭には何かしらペットが居る。たとえそれがエキゾチックと呼ばれる爬虫類系だってこの際ウエルカムだ。

 イグアナ、蛇系は動きがスローなのでtoddlerのように途中で逃げられることもない。「あー、イグアナが好き。いつまで見ていても飽きないわぁー」というオーラを出し続ければ話しかけられる確率も下がる。あとは【ひたすら洗い物に徹する】というオプションも駆使すれば何とか3~4時間の苦痛の時間は過ぎて行く。絶え間なく迫り来るHoliday Season中の親戚付き合いは現妻にとってまさに「己との戦い」であり、生産性の見出せない過酷な試練の時間なのである。あー、独身で本当によかった。

 日本でも舅小姑親戚縁者が一同に介するイベントは存在する。しかしシーズン中連日というのはいくらなんでも辛すぎる…という共通の感情をリセマム読者と分かち合いたい。
《Grace(Hiroko) YAMAZAKI》

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