国私立11大学、学術環境の改善へ向けた提言書

 東京大学、京都大学、早稲田大学、慶應義塾大学など11の国私立大学からなる学術研究懇談会(RU11)は5月22日、「サスティナブル(持続可能)な成長に貢献するRU11」と題した提言書を公開した。

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  • サスティナブル(持続可能)な成長に貢献するRU11
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 東京大学、京都大学、早稲田大学、慶應義塾大学など11の国私立大学からなる学術研究懇談会(RU11)は5月22日、「サスティナブル(持続可能)な成長に貢献するRU11」と題した提言書を公開した。

 RU11とは、研究および研究を通じた高度な人材の育成に重点を置き、世界で激しい学術の競争を続けてきている大学(Research University)が、国立・私立の設置形態の壁を超えて集うコンソーシアム。平成21年11月に、北海道大学、東北大学、東京大学、早稲田大学、慶應義塾大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学の9大学により発足し、翌22年8月に筑波大学、東京工業大学が加入し、現在は11大学で構成されている。

 今回の提言は、参加11大学の総長・塾長・学長の連名のもと、学術を取り巻く厳しい環境の中で、サスティナブル(持続可能)な成長に貢献すべき大学の立場から、限りある人的・財政的資源を効果的に活用するための方策について3つの要素をまとめたもの。

 激しい国際競争が続く半面、国内の経済不況の影響で企業による投資の増加は見込めず、さらに政策的な研究開発を行う独立行政法人も3分の1に整理統合されることになった。RU11の各大学においても、基盤的経費が厳しく削減され、国の短期の競争的資金で新規研究を続けているのが現状だという。

 国際競争に打ち勝つ学術とそれを担う人材を育てる役割と責任を積極的に果たしていくためには、こうした「“基盤"を削り、果てしない短期の競争を余儀なくされる」現状から、持続可能な仕組みへと転換する必要があるとしている。

 提言のその1では、「限りある財源の中で、努力する大学が更に成果を発揮できる環境に」。大学の努力や成果により、研究整備や人材育成資金(間接経費)を獲得できる仕組みを充実させることや、頭脳流出を防ぎつつ、研究活動の国際化を加速させるための日本発の国際共同研究ファンドの充実などを提言している。

 その2は、研究効率と資金効率を上げる仕組みとして「我が国最大の研究費『科学研究費補助金』の早期・完全基金化」。研究費における会計年度ルールを撤廃し、研究の進展に合わせた使用を可能とする「基金化」を、現在の5種目から16種目に拡大させるとともに、基金化を遅らせる「500万円ルール」の早期解消を求めている。

 提言その3は、“競争"と“雇用"を両立させるための「優秀な人材が博士の道を選択し社会に貢献する魅力ある環境の整備」。R11の各大学では、修士における博士進学者数・率がともに低下傾向にあり、その背景には不安定な雇用環境の問題があるという。

 優秀な博士には、在籍する大学から派遣・移動により多様な研究経験を積むいわゆる「武者修行」が必要であり、それを積極的に支援・評価するシステムを構築し、「競争」のための仕組みが必要だとしている。

 その一方で、「雇用」に対しては、産学官協働による博士の雇用創出・人材育成を行う「産学官共働プラットフォーム」の構築や、大学資金の裁量拡大を図り、戦略的な人材育成・雇用を可能とする環境が必要だとしている。

 また、改正労働契約法案における無期労働契約への転換は、短期の雇用止めを一層進行させるおそれがあるとし、研究者への適応を除外するよう求めている。
《田崎 恭子》

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