【EDIX2013】タブレットは学びの武器、授業スタイルを変える…広尾学園 金子氏

 EDIXで5月15日、広尾学園中学校・高等学校の金子暁氏が、同校でのPCやタブレットを活用した授業の内容やその成果、そしてICT教育の取組みのポイントなどを語るセミナーが開催された。

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広尾学園中学校・高等学校の金子暁氏
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◆生徒はICTを活用する力を持っている

 金子氏は、「ICTを活用した教育というと、授業や勉強にPCやタブレットを使うこと、専用の教材や学習ソフトウェアを利用することがゴールとなりがちですが、目指すべきは、その先の、いかにアカデミックな考え方を身に着けるか、グローバルなスキルを獲得できるか、社会で役立つ知識や考え方ができるようになることだと思っています。したがって、ICTでこういう授業をしなければとか、中学生にはまだ早いとか、枠にはめることはしません。」という。生徒はノートや辞書や計算機、作図ツールなどとして自然にタブレットを利用している。

 そのため、生徒の使う端末のホーム画面はいたってシンプルだという。生徒にどんなアプリがほしいか聞くと、電卓と手書きのノートアプリという答えが返ってくるという。辞書類やGoogle検索などもよく使うアプリだ。

 今の中高生は、物心がついたときからデジタルツールに接しているため、生徒たちは放っておいても、それらを使いこなす。

 同校では、ICT教育の成果を公開し議論を行うカンファレンスを実施している。その公開授業には大勢の教育関係者が訪れるのだが、あまりに見学者が多く、先生や板書が見えないなど授業の進行が妨げられるほどだという。このとき、生徒はタブレットで先生にメールを送って質問したりするそうだ。生徒にとっては自然な行動なのだ。また、通常のクラス活動でも、Googleサイトのサービスを活用し、行事予定のカレンダーを共有したり、生徒どうしの連絡や情報共有に活用されている。これらを制限することもなければ、逆に教えたり指導する必要もないそうだ。

◆デジタルネイティブを活かす教育を考えよう

 金子氏は、「お叱りを受けるかもしれないが」と前置きしつつも、日本では教育関係者がICT活用について考えるとき、自分たちの不安、うまく使えないのではないか、何が起こるかわからない、といった不安を優先させてはいないだろうかと問いかける。そして、「グローバルでは、生徒のこれからを考えて行動しています。我々の世代は、生活の中にデジタルが流入してきたデジタルイミグラントといえます。しかし、いまの子どもたちは生まれながらにデジタル世界に接しているデジタルネイティブです。その子どもたちの将来を考えた場合、イミグラントの考え方でネイティブの可能性をつぶしてはならないと思います。」と現状への問題提起を行う。

 だからといって、ICTを難しく考える必要はないという。金子氏は社会科の教師でICTは専門外だが、専門家ではないからこそ、できるところからやっていけばいいという考えを実践できたという。シンプルに考えたほうが道は見えやすく、ICT化を進めるほど、最終的には視点が人間そのものに向かう。金子氏は最後に、「ICT教育を考えるほど、人間とのバランスを強く意識するようになりました。」と語り講演を終えた。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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