【NEE2013】米国、そして世界で急速に進む教育のオープン化

 「米国、そして世界で急速に進む教育のオープン化」と題したセミナーでは、マサチューセッツ工科大学(MIT)言語学教授 MIT OCW教育諮問委員会委員長の宮川繁氏が登壇し、最近日本でも話題になっているOCWの現状を報告した。

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マサチューセッツ工科大学 言語学教授 MIT OCW教育諮問委員会委員長の宮川繁氏
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  • セミナー会場のようす
  • MIT OPEN COURSEWARE
◆MOOCsがさらに教育のオープン化を加速する

 OCWに始まった教育のオープン化は、MOOCs(ムークス:大規模公開オンライン授業)によって、さらに急加速し始めている。MOOCsは、2012年にスタンフォード大学が、人工知能入門の授業をeラーニングで提供したことに始まる。世界中から登録ができ、課題や試験をクリアすれば、履修証明書が発行される。この講義には、世界90か国から、16万人が登録し、2万人が修了したという。

 MOOCsを行っているサイトの主なものに、edX(エデックス:MIT、ハーバード大、京都大、北京大、ソウル大などが講座を提供)、Coursera(コーセラ:スタンフォード大、米プリンストン大、東京大などが講座を提供)などがある。カリフォルニア州立大学は、コーセラと提携して、現在4万7,000人の学生がeラーニングだけで単位を取得しているが、これを3年以内に10万人に増やすとしている。

 最近新聞でも紹介されたが、エデックスで学んだモンゴル人の高校3年生が、試験で満点を取り教授たちを驚かせた。この青年は、その後MITを受験し合格。奨学金を受け、9月に入学することが決まっている。

 「すべての講義が無料で公開されることによって、これまで経済的な理由で大学に行けなかった人にも平等に学びの機会が与えられることになる。また、学生の学習履歴など膨大なビッグデータを得ることができ、世界中のどこに天才的な若者が埋もれているかもわかる。これらのデータを活用し、まったく新たな教育の形が産まれてくるのではないか」と宮川教授。「イーラーニングは、昔は『できたらいいね』というものだった。今は『なければ困る』ものになっている」とも。それほど急激に、教育のオープン化が広がっているのだ。

 高額な授業料を出して大学を卒業しても就職できない、若者が希望をもてないと言われて久しい日本。大学全入時代の今、あえて大学進学を選ばない、ネットで学びながら働くという若者も増えていくのではないか。また、日本は長寿大国でもあるから、学び直したいという大人たちにも教育のオープン化は歓迎されるだろう。いつでもどこでも誰もが学べる環境は、私たちの人生設計の在り方をも変えていくに違いない。
《石井栄子》

石井栄子

子育てから、健康、食、教育、留学、政治まで幅広いジャンルで執筆・編集活動を行うフリーライター兼編集者。趣味は登山とヒップホップダンス、英語の勉強。「いつか英語がペラペラに!」を夢に、オンライン英会話で細々と勉強を続けている。最近編集を手掛けた本:『10歳からの図解でわかるSDGs「17の目標」と「自分にできること」』(平本督太郎著 メイツ出版)、『10代から知っておきたいメンタルケア しんどい時の自分の守り方』(増田史著 ナツメ社)『13歳からの著作権 正しく使う・作る・発信するための 「権利」とのつきあい方がわかる本』(久保田裕監修 メイツ出版)ほか多数

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