星空観察の検索ワード、「星」は○で「ほし」は×…ネット安全利用セミナー

 デジタルアーツは8月7日、小学館集英社プロダクションが主催する夏休み親子イベントの中で、インターネット安全利用に関するセミナーを実施した。

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フィルタリングマイスターの畠中幸一氏(デジタルアーツ)
  • フィルタリングマイスターの畠中幸一氏(デジタルアーツ)
  • 子どもたちは積極的に挙手し、セミナーに参加
  • 親子セミナーの風景
  • インターネットの便利さ
  • インターネットの便利さ
  • 便利の裏返しに危険もある
  • クイズを出題する畠中氏
  • 子どもたちに出されたクイズの例
 デジタルアーツは8月7日、小学館集英社プロダクションが主催する夏休み親子イベントの中で、インターネット安全利用に関するセミナーを実施した。

◆インターネットの便利さは危険の裏返し

 セミナーを行ったのは、デジタルアーツでフィルタリングマイスターとして活動する畠中幸一氏だ。セミナーは2部構成で、第1部は親子参加のもので、インターネットの便利さや危険についての解説と、クイズ形式による注意点や対策についての紹介という内容。第2部では親を対象に、具体的な事例や問題点などを紹介しながら、親としての役割、インターネット利用の考え方、注意すべき点などが解説された。

 子どもも対象とする第1部では、まずインターネットのすごいところ、便利なところなどをスライドによって紹介。知りたい情報がすぐに手に入ること、自分の情報を発信できること、いろいろな人とコミュニケーションできることなどが、利点としてあげられた。そのうえで、これらの特徴は、知らない人がいつでも、どこからでもやってくるという危険な面にもつながっていることが説明された。

 必要な情報がすぐに手に入るということは、自分の情報もだれかがすぐに手に入れることができるということであり、コミュニケーションが広がるということは、悪い人ともつながる可能性があるということだ。

 次に畠中氏は、インターネットで危険な目に遭わないためには、「ルール」を守ることが大切だとし、どんなルールを守ればよいのかをクイズ形式で紹介していく。クイズは2択形式で、たとえば、「無料のゲームをあげるのでメールアドレスと名前を入力してください」という情報に、「無料だから入力する」「両親に相談する」のどちらが正解か、と問いかけた。

 クイズは4問出題され、子どもたちは正解を考えながら、ネット上にはウソの情報もあること、親しい友達でも、顔が見えないネットのからかいや冗談は誤解されることがあることなどを学べるようになっていた。クイズ形式にすることで、説教じみた内容にならず、子どもたちは自分で考えながら注意すべき点やルールを認識できるわけだ。そのため、子どもが積極的にセミナーに参加するようすが見られた。

 そして、親に対しては、インターネットは親子で料理をするのと同じであり、楽しいけれど包丁や火の扱いに注意するように、親が見守ってあげてほしいと、畠中氏は述べた。

◆インターネットの現状

 親を対象とした第2部では、親の見守りが重要であるという点を受け、どんな事件や問題が現在発生しており、どんな点に注意すればよいかを保護者の視点で考えるという内容になる。

 畠中氏は、昔は子どもの情報源は学校やテレビであり、比較的、親のコントロールがしやすい環境にあったと言う。テレビは居間にあって家族全員で見ることが多かったからだ。PCの時代も、子どもが自由に使えるマシンは多くなく、これもしかりである。しかし、携帯電話、ゲーム機、スマートフォンがインターネットに接続するようになると、管理が行き届かなくなってきた。PTAのアンケート調査では小学生の15%、中学生約50%がインターネットにアクセスしているという結果も出ている。

 また、親がある程度注意していると「うちの子は大丈夫」と思うかもしれないが、思いもよらず危険なサイトにアクセスしたりコンテンツに接することもあるという。畠中氏は、その例として「検索事故」をあげる。たとえば、夏休みで星座観察をしようと「星」という単語で画像検索すると、一般的な星空や星座の写真が表示されるが、「ほし」とひらがなで検索すると、アニメに関連したかなりきわどいコンテンツが表示されてしまう。低学年の子どもは、ひらがなで検索する可能性が高いが、その検索で危険なコンテンツが表示されてしまう現実もある。類似の例としては、看護師と検索すれば問題ないが「看護婦」や「ナース」はやはり危険だと言う。

 出会い系の被害も、いわゆる出会い系サイトから一般的なSNS、メッセンジャーアプリなどをきっかけとする事例が増えており、平成21年以降、出会い系サイトによる被害児童よりSNSやコミュニティサイトで被害に遭う児童が多くなっている(警視庁データ)。このように畠中氏は、SNSやアプリでのID交換や知らない人と会うことの危険性を説く。

 そして、ちょっとしたいたずらや不法行為をSNSに投稿し、たちまち個人を特定され、情報が公開されてしまったり、不用意な書き込みから炎上した事例なども紹介した。そして、これらの情報は簡単には消せないため、将来の就職活動等に影響することもあるとする。ネット時代は「若気の至り」が致命傷になりかねないわけである。

 直近の事例として、コンビニやファーストフード店のアルバイトが、商品陳列ケースや冷蔵庫などに入るなど、食品を使った度を越えた遊びが問題になっていることにも言及した。このような事例では、被害企業からの賠償請求など、社会的・法的な制裁も科されてしまう。企業にしてみれば、店名や商品名の検索で、これらの事件報道や画像が検索結果の上位にきたらたまったものではない。

 子どもをもつ親にとっては、高額請求も切実な問題となる。一時ほど悪質な課金は鳴りを潜めているが、なくなったわけではないし、ビジネスとして完全に違法だと問えない問題もある。

◆まずは「親の目」、届かないところにフィルタリングを活用

 では、これらの被害から子どもを守るにはどうすればよいのだろうか。畠中氏は、まず「親の目」は最高のフィルタリングであるとし、料理をしたり自転車に乗ったりするのと同様に、親がしっかり見守ることが重要だとする。そのとき、子どもに「ダメだ」と否定するだけでなく、「リフレーミング」(言い換え)という考え方で、ものごとをポジティブにとらえて、ほめながら覚えさせることも有効だとする。現実問題として、ネットやスマートフォンを禁止するのは無理があるので、家庭内でのルールを作ることを勧めるという。

 たとえば、インターネット端末は子ども部屋に持ち込まない、時間制限を設ける、などである。

 そのうえで、フィルタリングサービスなどを利用するばよい。スマートフォンなどのフィルタリングは、不適切サイトをブロックする機能と、不適切なアプリをブロックする機能が備わっている。また、利用時間の設定も可能であり、ブロックする方法も細かく設定できるようになっている。

 アダルト画像をフィルタリングしつつ、性教育に関するコンテンツは閲覧可能にするといった設定もできるそうだ。通販サイトの閲覧は可能でも、購入できないようにする設定もある。テンプレートによる簡単設定で、年齢や学年ごとのフィルタリングをかけることも可能だ。

 親子で過ごす時間が多い夏休みに、親子でインターネットとの接し方について話し合い、考えてみてはいかがだろうか。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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