東工大が世界トップ10入りを目指す教育改革を発表、2016年度より新カリキュラム

 11日、東京工業大学が平成28年度(2016年度)に向けたカリキュラムや単位取得の在り方を見直す教育改革について発表を行った。現状のカリキュラム、講義内容、教授方法などを全面刷新すると言う。

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東京工業大学 三島良直学長
  • 東京工業大学 三島良直学長
  • グローバルでトップ10に入るリサーチユニバーシティをめざす
  • 教育改革の3本の柱
  • カリキュラムはシラバスは英語でも公開し、世界の大学と単位互換も推進する
  • 履修はナンバリング制度によって柔軟に
 10月11日、東京工業大学が平成28年度(2016年度)に向けたカリキュラムや単位取得の在り方を見直す教育改革について発表を行った。

 同大学の三島良直学長は、グローバル社会で活躍できる人材を育て、世界トップレベルの研究者・国際活動でのリーダーを輩出するため、現状のカリキュラム、講義内容、教授方法などを全面刷新すると言う。目標のひとつの指標は、2030年までにグローバルな大学ランキングでトップ10に入るリサーチユニバーシティを目指すとした。

 このときランキングの指標として、QS World University Rankingがあげられた。同ランキングで東工大の現在のポジションは66位。日本の大学では3番目の順位だ。しかし、ランキングはあくまで指標であり、三島学長の述べる教育改革の目的は、世界トップレベルの人材を育成することだという。三島学長によれば、東工大は高度成長期からバブル期まで、ものづくりや科学技術の面で、日本の産業を支える人材を育てることによる貢献を責務としてきたが、グローバル化が進む近年では、日本だけでなく世界で通用する人材を育てる必要があると説く。

 そのためには、現行の大学カリキュラム・シラバスを世界の大学と比較でき、単位の相互互換を広げられるような改革が必要となる。加えて、講義内容や教授方法も、いわゆるアクティブラーニングを積極的に取り入れるとする。アクティブラーニングでは、教授が一方通行で教える、与えるのではなく、学生の予習を前提とし教授らと議論を重ねていく。学生は自ら考え、意見を述べる力が試される。

 今回発表された教育改革は、「世界トップクラスの教育の質」「学生が主体的に学ぶ教育環境」「海外留学やインターシップの推進」の3つが柱となる。教育の質では、前述のカリキュラム等の刷新のほか、それらを英語で公開することで世界のトップクラス大学との単位互換を実現する。

 主体的な学習については、講義科目のナンバリング制度によって、学生の選択の自由度を上げる。また、学期もクォーター制を導入する。これにより、学生は「何年生」というより「何番台の科目を履修した」という評価となる。検討中の新カリキュラムでは、たとえば3年で学部の単位(300番台まで)を終了し、その後、卒論など課題や基準をこなせば4年より前に卒業(学士取得)できたり、4年目は飛び級で大学院の修士課程を履修したり、といったことができる。

 新カリキュラムの仕組みとしては、最短で4年で修士卒業(学士取得なし)、6年で大学院卒業(博士号は、現在でも論文など実績などがあれば原則として学年等による制限はない)が可能となるが、三島学長は、今回の教育改革の目的は履修の短縮や早期卒業を増やすことではないとする。

 しかし、海外の大学と単位互換、留学・編入を相互に進めるとなると、秋卒業に関係する早期卒業も重要なポイントとなる。そのため、質疑応答でもこの点への質問が集中していた。

 3本目の柱である海外留学等の推進については、日本の学生の留学などを推進・支援するほか、海外からの優秀な学生の留学・入学も強化していくとする。現在東工大にはおよそ1,300人の留学生が在籍している。このうち1,000名ほどが大学院生だ。学部の学生は300人ほどといい、将来的には学部学生も含めた留学生の底上げを目指す。そのために、カリキュラムのグローバル化による質の向上と学部課程にも英語授業を取り入れることを検討する。受け入れ体制として、宿舎の整備も行いたいとする。

 これらの改革は、すでに9月の役員会で承認され、2015年度末までには制度設計を終え、具体的な施策やロードマックを決定する予定で作業を進める。そして、来る2016年4月には、新しいカリキュラムでの授業をスタートさせる。

 ここで気になるのは、東工大の入試は2016年から変わるのだろうかという点だ。三島学長は、「カリキュラムの変更は、入試方法や考え方も見直さなければならなくなるが、高校から大学へとスムースな入学を考慮すると、あわてて変えるべきではない。」と述べる。まずは大学側のカリキュラムや制度を整備してから入試の見直しを行うという考えだ。

 入試方法の変更は2年前に確定し公表する必要がある。カリキュラム変更のあとの見直しとなると、2016年度の入試は従来通りと考えてよい。しかし、2016年度の新カリキュラム決定のタイミング、つまり2015年度末の段階で、2年後2018年度の入試方法の変更について発表がある可能性はゼロではない。

 入試方法が変更されるのが時間の問題だとしたら、そのときどのような変更が考えられるのだろうか。残念ながら、カリキュラムが決定しないと議論ができないので、現在のところ「変わる」ということしか大学側もわからないとのことだ。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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