立命館小がSurface240台を導入…その理由と機種選定の要件とは

 立命館小学校と日本マイクロソフトは11月5日、同小学校の4年生と5年生全員にタブレットPCを持たせる取組みについての発表を行った。2学年全員で240台という規模での導入と、それを支援する取組みは初めてという。

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立命館小学校 浮田恭子校長
  • 立命館小学校 浮田恭子校長
  • 立命館小学校 校長顧問 陰山英男氏
  • 立命館小学校の進める21世紀型スキル
  • グローバルな教育を1年生から実践
  • 日本マイクロソフト 代表執行役社長 樋口泰行氏
  • キーボード、やさいいUI、拡張性、そしてOfficeリソースが活かせるSurfaceは教育用端末としても使える
  • MOS取得など、独特な支援策も考えているマイクロソフト
  • 左から、日本マイクロソフトの樋口氏、浮田校長、陰山氏
 立命館小学校(京都府京都市)と日本マイクロソフトは11月5日、同小学校の4年生と5年生全員にタブレットPCを持たせる取組みについての発表を行った。日本マイクロソフトによれば、これまで実証実験や特定プロジェクトとしてクラス単位での採用や導入はあったが、2学年全員で240台という規模での導入と、それを支援する取組みは初めてという。

 立命館小学校の浮田恭子校長は、「小学生の65%は、今は存在しない職業につくかもしれない。」というデューク大学 Cathy Davidson教授の言葉を引用し、子どもたちの生きる力を考えたとき、現在を生きる力と、それを積み重ね未来を生きる力にしなければならないと述べ、21世紀型スキルの重要性を説く。浮田校長の言う21世紀型スキルは、「創造力・思考力・課題解決などの考える力」「対話や協働といったチームワーク」「情報を使いこなすICTリテラシー」「地域および国際社会に生きる力」の4つを挙げた。

 同校では、この4つを小中高の12年間で育てていくため、全体のカリキュラムを4・4・4制という3つのステージに分けて考えている。さらに、小学校1年生からの英語学習を実践し、10歳から、2か月のターム留学を実施するなど、グローバル化に向けた教育にも積極的に取り組んでいる。ICTリテラシーについても同様であり、早くから全教室で電子黒板を導入したり、ロボティクス科を創設するなどといった特色のある授業を展開している。また、将来の論文作成やデータ整理のようなスキルを身につけるため、授業では、小学生からOfficeツールによる作文や資料作成に親しんでいるという。

 同校が導入するのが、なぜSurfaceなのか。1人1台のタブレットPCで、どのような授業を行っていくのだろうか。この疑問には、次に登壇した立命館小学校 校長顧問 陰山英男氏が答える。

 陰山氏は、1人1台のコンピュータが使える環境というのは、コンピュータがようやくノートや教科書のように文具、教材として使えるようになったことを意味し、ICT教育においてはひとつのゴールであるとする。しかし、次は学習のグローバル化に向けたスタート地点に立ったともいえるとも述べ、今回の導入の意義を語る。

 導入にあたっては多数の機種や端末を評価・検討したが、Surfaceにした理由は、浮田校長が説明した21世紀型スキル習得の基礎・基本に必要な条件を満たす製品だったからだとする。こだわった要件は、可搬性に加え、子どもでも使えるUI、セキュリティがしっかりしていること、マウス・キーボードなど入力方法が多彩であること、Officeツールが動作すること、などだそうだ。

 このうち、Word、Excel、PowerPointといったOfficeツールが動くことは大きい。Surfaceなら、これまで同校が蓄積した過去のデジタル教材を無駄にしないですむ。そしてキーボードの存在だ。実社会でのリテラシーを考えると「読み・書き・タイピング」といえるくらい、キーボード・マウス操作は重要だと同校は考えている。陰山氏は、タブレットなどタッチ系のUIでは、情報の取得・検索は問題なくとも、それを加工したり整理して情報発信すること、自分の考えをツールで表現するためには不十分であり、キーボードを使ったPCとしての機能が不可欠との認識をもっている。

 また、教育利用ということでセキュリティ対策も重要な選定ポイントであったといい、ソフトウェアのインストールに制限のあるSurface(今回導入される端末は、旧製品名のPro、RTというモデル分類でいうSurface RTに、Window8.1をインストールしたもの)はむしろ都合がよかったという。

 Surfaceを使った授業では、作文、英作文の作成、データ処理、プレゼンテーション資料の作成など、よくあるデジタル教科書や電子黒板の端末として使うだけではなく、実践的なツール操作やICTスキルの習得を目指している。新しい授業については、日本マイクロソフトもサポートスタッフなどとも協働体制をとるといい、陰山氏は、「小学校では珍しいExcelの使い方を教えてみたい」と、今後の抱負も語っていた。

 今回の導入は、各児童の家庭に購入してもらう形だが、自分専用の端末を占有できるという点は、端末がより個人との結びつくことで、パーソナルな学習、各自の作業、成果、知見が蓄積されることになるため、保護者も理解を示してくれたという。

 日本マイクロソフト 代表執行役社長 樋口泰行氏は、「マイクロソフトは、教育支援に全社的に力を入れているため、同校のような取組みを支援できたことを嬉しく思う」と述べ、「PCとタブレットの特徴をあわせもつSurfaceは、UIや拡張性にも優れ小学生にも最適なデバイスではないか」とした。

 そして、今回の支援にあたり、端末提供の特別プログラムのほか、同校の小学生にもマイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)資格にチャレンジしてもらうための支援や、日本マイクロソフト エバンジェリストである西脇資哲氏のプレゼンテーション講習、校内プレゼンテーションコンテストの実施といったプログラムを考えているという。

 MOSについては、すでに小学生で資格をもった人はいるそうだが、日本マイクロソフトが小学生向けの支援やチャレンジを応援する試みは初だそうだ。

 なお、日本マイクロソフトは5月に設立されたWindowsクラスルーム協議会というIT、サービス、メディア、教育業界をまたいだコンソーシアムの活動にも参加している。その中でセキュリティ対策を含めた端末配備の支援、先生へのスキルアップサポート、教育機関向けクラウドの無償提供を行っていることなどを説明し、立命館小学校だけでなく、多くの教育機関や業界のサポートを展開していることをアピールした。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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