【高校受験2014】定員1,200人増、神奈川県公立高校入試の特徴と対策を聞く…湘南ゼミナール

 県立高校だけでも140校以上ある神奈川県は、その入試選抜方法にも特徴がある。特に2013年度春の入試改革は、受験勉強にどのような影響をもたらしたのか、受験対策に変化はあるのかを聞いた。

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湘南ゼミナール 高塚篤氏(事業支援部長)
  • 湘南ゼミナール 高塚篤氏(事業支援部長)
  • 湘南ゼミナール 藤島一広氏(進学指導部)
  • 出典:神奈川県公立高等学校入学者選抜制度改善方針説明資料(神奈川県教育委員会)
 県立高校だけでも140校以上ある神奈川県は、その入試選抜方法にも特徴がある。特に2013年度の入試改革は、受験勉強にどのような影響をもたらしたのか、受験対策に変化はあるのかなど、気になる受験生やその保護者も多いのではないだろうか。

 神奈川県内で多数の塾を展開し、毎年、神奈川県公立高校学力検査の講評をいち早く発表する湘南ゼミナールの高塚篤氏(事業支援部長)と藤島一広氏(進学指導部 総務部 情報戦略担当)に聞いた。2014年はもちろん、それ以降に受検を控える生徒と保護者にも参考にしていただきたい。

--神奈川県公立高校入試において保護者が知っておくべきポイントをお聞かせください。

高塚氏:大きな改革があったのは前回の2013年度の入試です。2014年度の入試では大きな変更はありませんが、神奈川県の公立高校の入試にはいくつかの特徴があります。

 一つ目は入試改革によって、面接が全員に課せられるようになったという点です。

 二つ目は、横浜翠嵐、湘南など一部の学校で5科目とは別に実施される特色検査が導入されたという点です。特色検査は、学校ごとの独自問題で出題されるのも特徴です。

 三つ目は学区がないという点です。学区がなくなった分、人気校や上位校の競争が激しくなったり、学校の序列化が進んだという見方があります。

 そして最後は、神奈川に限ったことではありませんが、公立の中高一貫校があります。県立の一貫校は中等教育学校で高校からの募集がありません。こうした学校を志願する場合は、中学入試から考えなければなりません。一方、市立の一貫校は併設型で高校でも募集します。

 巷の情報は、親御さん自身の経験に基づく古い情報の可能性もあるので、どれが最新の情報か、事実か、という選別、またそれによって何が起きているのかの把握、最後に何をすべきか、といった判断が必要です。

--2014年度入試の傾向はいかがでしょうか。

藤島氏:以前は公立と私立の入学者の割合を6:4にするという目安があったのですが、近年の神奈川県の政策として、“不本意な入学”を減らそうという動きがあり、2013年度の公立高校の募集定員が増えました。その結果、倍率が1.17程度と若干下がりました。2014年度の全日制の募集定員は43,959人(県立40,194人・市立3,765人)で、前年より1,200人の定員増と発表されています。

 志願者の動向については、2013年度の改革からまだ2回目であるため、つかみにくいのが実情です。人気校の倍率は平均を上回る傾向は変わらないとしても、安全志向なのか、チャレンジするのかの予測は非常に困難です。

--前期選抜と後期選抜が一本化されていますが、その影響は出ていますか。

高塚氏:推薦を狙っている生徒さんは、公立の前期選抜(自己推薦型)がなくなったことで、私立の推薦入学に流れます。また、神奈川県の以前の高校入試では、公立の前期選抜、私立の推薦、そして後期選抜(学力選抜)と、推薦を狙える生徒の場合、3段階で考えることができました。しかし、いまは入口がひとつ減った形です。

 結果として、これまで推薦を狙っていたような生徒が、学力選抜を目指して勉強により力を入れる傾向もでてきました。またそのことは、行きたい学校を積極的に調べるモチベーションにもなっているようですね。

--面接が全員に課せられますが、どのようなことを聞かれるのでしょうか。

藤島氏:全員の面接を実施するわけですから、高校側の負担も相当なものです。そのためか、面接での質問はどの学校も似たような傾向にあります。事前に提出する面接シートの内容がベースになっており、志望理由、中学校での活動や、入学したら何をしたいかなどが問われることが多いようです。ただし、新しい制度での試験が始まったばかりなので、今後は学校ごとの特色が出てくる可能性もあります。

 湘南ゼミナールでも面接の模擬試験や面接シートの書き方など指導しています。ポイントは、知らない大人と話せるようになること。考えを面接の場で伝えることの訓練を重視しています。

--「重点化」や「S値」といった用語も気になります。これらはどういったものですか。

高塚氏:神奈川県では、学力検査のうち、学校が指定する科目の配点に係数をかけている高校があります。たとえば、英語に力を入れたい学校では、英語の点数を1.5倍や2倍で評価します。これを「重点化」と呼んでいます。

 神奈川県の公立高校の入試では選考の際の、内申書、学力検査、面接、それに特色検査の点数の重みが学校ごとに異なります。それぞれの点数をA値、B値、C値、D値と呼びますが、このうちA値からC値までを4:4:2、3:5:2といった比率で合計1,000点満点で評価するのが基本となり、これを「S値」と呼びます。特色検査を実施する学校はこの点数にD値が加算され、1,100点満点、1,200点満点などの点数で評価します。

--重点化、内申書の比率が高い、学力検査の比率が高いといった違いは、受験対策や志望校の選別においてどのように考えればよいでしょうか。

藤島氏:得意科目が重点化の科目の場合、他の科目で失敗してもカバーできると考えがちですが、その学校には同じことを考える受検者が多く志願してくるでしょう。したがって、テクニックや戦略として利用することを考えるより、その選考方法が学校のカラーやポリシーだと受け止め、自分に合う学校を選べばよいと思います。

高塚氏:A~D値の比率についても同様のことがいえると思います。内申書が期待できないから試験にかけるとか、内申書がよいからこの学校にしようと考えるより、まずどんな高校に行きたいのか、何をしたいのかを考えるべきだと思います。そうしないと、冒頭で述べた“不本意な入学”にもなりかねません。

--最後に受験生やその保護者に、メッセージをお願いします。

高塚氏:今の社会は変化の激しい社会です。同じ考えや同じ状態が続く保証はありません。自分のやりたいことについて「遠く」を見てほしいと思います。ここでいう「遠く」とは、時間的な意味と地理的な意味が含まれています。将来の自分や今後の世の中のことを考え、またグローバル化など国内外の状況などにも目を向けて、将来を考えてほしいということです。

--ありがとうございました。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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