【中学受験2014】センター試験廃止を見越した動きも…2014年の首都圏入試

 2月1日の東京・神奈川の中学入試解禁日も目前。首都圏の中学入試もいよいよ本番だ。今年の首都圏中学入試について、難関中学に多くの合格者を送り出してきた、個別指導教室SS-1代表の小川大介氏に聞いた。

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中学受験専門プロ個別指導教室SS-1代表の小川大介氏
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 2月1日の東京・神奈川の中学入試解禁日も目前。首都圏の中学入試もいよいよ本番だ。今年の首都圏中学入試について、難関中学に多くの合格者を送り出してきた、個別指導教室SS-1代表の小川大介氏に聞いた。

--2014年の首都圏入試には、どのような傾向がありますか。

 栄東の志願者が大幅増となりました。開智も人気を持続しています。市川、渋谷幕張、昭和学院秀英など、千葉の人気校も志願者を増加させています。

 2月入試の前哨戦と位置づけられる学校群の中でも、第1志望が不合格だった場合には進学しても良い学校を選択する傾向が強まっているといえます。

◆進学先を厳選、子どもが望む学校を

 やみくもに受験回数を増やすのではなく、進学先を厳選しようとする意識が見られます。また、ハードルが高くても子どもが望む学校を受けさせてやろうとする家庭が増加している印象があります。

 その分、1月入試の意味が「試し受験」から「進学候補」へと変化してきています。大学受験における女子の医薬系志望の高さを反映して、理系教育に強い学校が人気を集めています。ただ、女子の場合は医学部合格者数の多い学校を目指しつつも、合格可能性も考慮に入れて慎重に出願する家庭が多いのが特徴といえます。

 フェリスが2013年には志願者が前年比で大幅増となり、今年は大幅減となったのも、理系人気と手堅い受験志向の現れと考えられます。

◆プチサンデーショックの年

 また、今年はプチサンデーショックの年ということで、2月2日、2月3日の出願校をどこにするかで迷ってしまい、過去問対策が絞り込めない家庭も散見されました。

 以上の受験傾向に対応するため、過去問を例年より早く、夏休みから着手される大手塾が増加しました。しかも古い年度からではなく、入試最新年度から取り組むよう指導する塾が目立ちました。本命校、併願校が二転三転する生徒の増加を見越して、受験校変更が起きても過去問対策が後手に回らないようにする意図と思われます。

--ここ数年の大きな変化がありましたら教えてください。

 医学部志向、難関大学志向が高まり、附属校よりも進学校を選択する家庭が増えてきています。特に女子の進学志向は年々高まりをみせ、豊島岡の躍進につながっています。

 また公立中高一貫校の人気が定着したことで、特徴のない私立校は志願者を集めるのに苦労するようになっています。

 中堅校、一般校では特別進学コースを新設したり、奨学金制度を準備して成績優秀児の確保に入る動きがみられます。複数回入試、午後入試の導入によって、各校が多様な受験生を集めようと工夫する動きも目立ち、受験生にとっては併願パターンの選択幅が広がる傾向にあります。

 1月受験から始まる入試の組み立てで、意欲と自信をどう高めていくかの作戦立て、SS-1でいうところの「合格ストーリー」作りが重要になってきました。

 学校の特徴作りで先行した都市大附属が人気化、難化したように、伝統やブランドだけに左右されず、学校の取組み姿勢を冷静に見極める家庭が増えています。そうしたなか、芝や巣鴨のように、派手さはありませんが、着実に生徒を成長させている学校が高く評価されるようになったのも同様の流れといえます。

◆帰国生入試の活発化

 帰国生入試が活発になったのも近年の特徴です。シンガポールやアメリカに分校を開校する学校も増え、海外在住の日本人子弟に向け、様々な学校が積極的に情報発信を行っています。国際競争力を持った人材を育てることで差別化を打ち出す戦略であり、私立校の生き残り競争が激しさを増しています。

 その分、教育方針を確立している家庭にとっては、学校選択が明確になってきたといえるでしょう。

--関西では、最難関の灘中がここ数年でもっとも多い出願者を集めました。大学受験では難関校を敬遠する傾向が出ているようですが、中学受験ではいかがでしょうか。

◆難関校、進学校を志向する傾向

 関東でも難関校、進学校を志向する傾向が強まっています。

 大学附属校、大学系列校についても、外部大学の受験にも積極的に取り組む、半附属・半進学校タイプの学校が増えています。純然たる附属校は、慶應や早稲田などを除き、近年は志願者が減少傾向にあります。

 医学部志向、難関大学を経ての大企業志向が強いことから、この傾向は今後も続くと思われます。

 「1つでもランクが上の学校に進学させたい」という親の思いがあるためか、成績が伸び悩んだ際の受験校の変更時期が、徐々に後ろにずれる傾向も見られます。

 以前は、9月ごろから学校選択の検討が始まり、10月には合格可能性を考慮して志望校変更する家庭が目だって増え、11月末までには最終決断するのがスタンダードな受験でした。しかし最近は、11月模試の時点で合格偏差値と本人偏差値が10以上離れていても、難関校志望を変えずに進む家庭が増えています。

 中学受験の成果が子どもの将来を左右するという切迫感と、本人の選択をできるだけ認めてやりたいという現在の親世代の気質が表れていると言えそうです。

◆攻めと守りのバランスを考えた受験戦略で納得の受験

 一つ気をつけたいのは、ギリギリまで目標校を追い求める受験スタイルは大きなリスクを背負っている分、受験の組み立てには入念な検討が必要だという点です。1月受験の組み立てと、2月の併願校選定を熟慮したうえで、2月1日だけは合格可能性が低くてもチャレンジさせようといった、「攻めと守りのバランスを考えた受験戦略」をとる家庭は、本命校の合否結果に関わらず、納得の受験となりやすいですね。

 しかし、最終決断を12月まで先延ばししたうえに併願校研究も放置したままという、「単なる先送り型の受験姿勢」をとる家庭は、最終的に、本来なら合格可能圏にあった学校よりさらに1ランク下の学校を受験するしかなくなることも多いです。これには、家庭の受験リテラシーと塾のサポート力が問われています。
《田村麻里子》

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