【NEE2014】「未来の教室」が提示するもの…筑波大附属小の公開授業研究会

 New Education EXPO 2014最終日の6月7日、筑波大学附属小学校の5年生による恒例の公開授業が実施された。公開授業終了後には、教師や専門家らにより、パネルディスカッション形式で授業の振り返りが行われた。

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筑波大学付属小学校公開授業研究会
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◆子どもの心や考えの変化が読み取れる授業

 二人の授業について文科省の冨山氏は「青山先生の授業は、子どもの心や考えの変化が読み取れる授業でした。ただ、重要な図表はどれかという質問について、読者が重要と感じるものはひとつではないので、今後の授業での扱いに興味があります。中田先生の授業はツールをうまく使いとても面白い授業でした。言葉の定義や敷き詰められない理由の説明などの文字化を取り入れたらどうだろうか。」と感想を述べた。

 同校元教諭の正木氏は 「国語は専門ではないが、授業の狙いがわかりにくかったかもしれない。文章にサイドラインを引く作業などは、操作的になっていたような気がします。算数は生徒フォローもよくできており、とてもわかりやすい授業でしたが、正五角形でなければ敷き詰められることを事例で示してもよかったのではないか。また、子どもたちが、隙間を作らないときの360度という角度をどこまで理解しているかが気になりました。」と評価した。

 これに対して、青山先生は「事実や筆者の意見の掘り下げをもっとやるつもりだったのですが、児童たちの意見や質問がさまざまであり想定外の反応もあり、授業をしながら流れを変えていったため、サイドラインの箇所をいったりきたりしたので、操作的になったのだと思います。文章の解釈や感動した部分の個人の違いについては、流れの中で考えており、このあと自分で文章を書かせる単元まででフォローしていく予定です。」と答えていた。

 中田先生は「正五角形でない五角形は、事前に素材画像を用意しておけばよかったかもしれません。360度の理解については、ご指摘どおり、隙間にできた形でも360度になっていることの説明などがあるとよかったと思います。七角形、八角形、そのほか11角形というのは、授業の中での子どもたちの意見から出たもので、本来なくてもよかったのかもしれませんが、形のきれいさや子どもたちの興味を広げるために取り上げました。この部分は時間の関係もあり、分担して好きな形を敷き詰めさせてみました。」と発言した。

◆ICT利用力より授業力

 公開授業やパネルディスカッションは、電子黒板やタブレットを使った授業を知ってもらうという意味もあったが、実際に議論が始まると、タブレットや電子黒板の機能や使い方の話より、授業の進め方、構成、教える内容、児童への接し方など、授業力や先生の指導力に関わる話に終始していた。電子黒板やタブレットでできることは増えたかもしれないが(生徒の端末画面を指導用端末で見ながら、授業の組み立てを変える、教科書への書き込みの試行錯誤ができるなど)、わかりやすい授業や児童の意欲を高める授業には本質ではないようだ。

 どちらの先生も、児童が間違った答えや期待したものではない反応に対して、いったん受け入れ、他の人の意見を聞くなどしていた。単に否定したり、そうではないと指導するより児童に考えさせる機会や時間を与える工夫といえるだろう。集団学習では、わかっていない児童に注意を払い、必要なら別の説明を別の児童にさせたりする工夫も必要だ。個別学習ならツールを使って習熟度別の学習が簡単だが、両教諭ともに教室を巡回したり、児童のチェックを怠らない。電子黒板やタブレットを使って、教壇から全員のタブレットの状態を見ることもできる。

 いずれにせよ、これらの工夫やスキルは、ICT利用力というよりも、従来からの授業がどれくらいうまくできているか、教師のスキルや授業力の問題に帰着する。タブレットの普及期に入る今こそ、ツールやICTに頼る授業から脱却する必要があるともいえる。公開授業は、60分という長い授業だったが、終了時に児童から自然と「えーっ?」(もう終わり?)という声が上がっていた。公開授業という「ハレ」の要素を差し引いても、児童のこのような反応は、マニュアルやテクノロジーに依存した授業では出てこないだろう。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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