中高生がITサービスを提案する起業マインド育成講座、広尾学園

 中高生が起業マインドを学ぶ特別授業が、広尾学園にて開催された。計6回の90分授業からなる起業講座「ITサービスを作って起業しよう!」の最終回となった7月16日の特別授業では、中高生からなる各グループが事業内容のプレゼンテーションを行った。

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 3回目と4回目の授業では、各チームの事業をPRするためのビデオを作成。各チームは、事業部名やビジョンはもちろん、詳細な事業内容や提供するITサービスのモックアップを盛り込んだ動画の作成に取り組んだ。各チームが設計担当と制作担当に分かれ、設計担当は動画の全体像のディレクション、制作側はイラストレーターを使ったモックアップの作成や、Preziというプレゼンテーション作成アプリを利用した動画制作に挑んだ。

 プロモーションビデオはYouTubeに公開され、各チームは視聴数を事業内容の評価の指標として参考にする。授業に参加する生徒のほとんどがイラストレーターやPreziといったソフトに初めて触れるという中、事業内容の可視化とプロモーション動画の作成に集中して取り組んだ。

 5回目の授業では、各チームが考えた新規事業を、「株主総会」で説明するプレゼンテーション資料として作成し、最後となる6回目の授業で仕上げた資料とプロモーションビデオを使ってチームごとのプレゼンテーションを行う。6回目の授業となった7月26日に行われたプレゼンテーションでは、各チームが事業のビジョンと魅力を紹介。各事業の価値と、事業が解決するであろう課題について発表した。

 プレゼンテーションでは、中高生が日々の生活において感じるさまざまな課題を解決するためのITを活用した事業が紹介された。「Hit Me Acteens」は、「大人が思っているより、子どもは自分で動けるハズ」をテーマに、職業体験を求める生徒と企業の受入れ体制を紹介するアプリを提案。「WoVi」は、通勤ラッシュをより快適に過ごせるよう、過去のデータに基づいた電車の車両別混雑状況などを紹介するアプリを紹介。どちらも現状の課題を表面化し、ITを活用した解決策を提案する内容となっていた。

 また、宿題をひとつの課題と捉え、生徒同士が繋がることでモチベーションの向上を図る中高生ならではの提案もあった。1人で勉強することの難しさを課題にしたチームは、単元別の検索機能とチャット機能を組み合わせ、生徒同士がわからないところの共有および解説を行えるアプリを提案した。また、夏休み中の宿題を終わらせるためのモチベーション向上策として、ほかの生徒の進行状況を共有するアプリの提案をしたチームのアイディアも興味深い。

 講師を務めた水野氏は、「起業は課題解決をすること」だと話す。水野氏のアドバイスどおり、発表された事業はどれも生徒たちが趣味としていることや好きなこと、身近で困っていることからアイディアが出されている。

 インターネットサービスに限定されたため、SNSやコミュニティサイト風なものが多いが、体裁はアプリの形式でGoogle Earth、Facebook、Twitter、YouTubeなど既存サービスとの連携が考えられていることが特徴的だった。中には、バーチャルリアリティやアグリゲーションメディアの手法を取り入れたものや、リアルタイム性を重視したりマネタイズも考えられている高度なものもあった。

 今回は起業の基本的な考え方に特化したため、サービスはモックアップまでしか完成させず、最後のプレゼンテーションに重点が置かれた。水野氏は、次のステップで各チームが考えたサービスを実際に動くものにしたいと話す。解決したい課題を明確にし、解決するためのソリューションを可視化し、発表するまでが今回の講座。そのソリューションをプログラミングを通じて現実のものとすることで、「中高生の私たちにもできる」という感覚を育成することに必要性を感じているのだろう。

 ICT機器の導入など、先進的な取り組みを数多く実践していることで知られる広尾学園。今回の特別講座においては、4月に入学したばかりの中学1年生と、受験を控える高校3年生が異なる経験や目線で同じ課題に取り組む姿が新鮮だった。特別講座ならではの魅力だろう。「起業」というキャッチフレーズを元に、学校の授業では学ぶことのできない学習を、多くの生徒が楽しんでいた。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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