未来を支える子どもたちのために…CANVAS理事長 石戸奈々子さん

 CANVAS理事長で、デジタルえほんの代表取締役社長、さらに慶應義塾大学准教授で、1児の母である石戸奈々子氏。朝の情報番組のコメンテーターとしてもおなじみとなった石戸氏に、仕事や育児について聞いた。

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--子どもに関する活動をなさっていますが、ご自身の子育てはどのようにされていますか。

石戸さん:仕事でもプライベートでも基本的な考え方は同じです。子どもにはなるべく自由に、のびのびと育ってもらえたらよいと思って子育てをしています。あまり自分の価値観を押し付けるようなことはしないよう心がけています。他人の子どもと自分の子どもは違うものなので、大変だと思うこともありますが、家族の協力もあり楽しんでやっています。

--仕事の現場にお子さんを連れて来ることはありますか。

石戸さん:しょっちゅうです。ここ(CANASオフィス)にも連れて来ますし、ワークショップコレクションに連れて行くこともあります。まだ小さいので仕事というものを明確に理解したり意識したりしているわけではなさそうですが、仕事というものへの興味は持っているようです。

--石戸さんは大学ではロボット工学を専攻したとのことですが、それと現在の仕事とはどのようにつながっていますか。

石戸さん:私自身が中学のときにポケベルに接し、PHS、iモードと、思春期に新しいテクノロジーに触れて育った世代だと思っています。もともと宇宙への憧れが強く、学生のころはNASAで働きたいと思っていました。そのため、大学は航空宇宙学科のある大学に絞っていたのですが、当時その学科がある大学は限られていました。東京大学に入学しましたが、当時の航空宇宙関係のキャリアは重工業などが多く、思っていたものとちょっと違うなと感じ、幅を広げる意味でロボット工学を選びました。

 子どもに関わりを持つようになったのは、大学在学中にMITメディアラボの存在を知ったことがきっかけです。メディアラボは、さまざまな研究をするだけでなく、それを実際の機器やソフトウェアとして開発し、社会や市場にそれを展開・提供しています。その中に、途上国の子どもたちに100ドルPCを開発して配ろうとか、デジタル楽器で音楽や作曲の世界を身近にしようとか、子どもたちも楽しめるプログラミング言語を開発してプログラミング学習を広げようとか、そんな取組みの存在を発見し、「私のやりたいことはこれだ!」と思うようになりました。

 メディアラボでは、中村伊知哉先生(慶應義塾大学大学院教授)に出会い、後押ししてもらい、メディアラボがやっているような活動を日本でも広めるため、日本の子どもたちにもメディアラボのような環境を提供するため、CANVASを設立しました。中村先生には現在CANVASの副理事長をしていただいております。

--最後に、今一番会ってみたい人は誰ですか。

石戸さん:現在、デジタル機器やテクノロジーをそれぞれに使いこなし、自分の才能を伸ばし、いろいろな場面で活躍しているスーパーキッズが増えています。CANVASの活動を通じて、そんなスーパーキッズにもっと会えたらよいと思っています。

--ありがとうございました。

 複数の要職に就く石戸奈々子さんは、未来を支える子どもたちのための活動に精力的に取り組みながらも、自然体でご自身のお子さんやご家族との時間も大切にしている。「他人の子どもと自分の子どもは違う」と言いながらも、「自由に、のびのびと育ってもらいたい」とお母さんの顔も垣間見せてくれた。

【石戸奈々子プロフィール】
 1979年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員研究員となる。2002年、NPO法人CANVASを設立。これまで開催したワークショップは2,000回、約30万人の子供達が参加。2011年、株式会社デジタル絵本設立。総務省情報審議会委員や慶應義塾大学准教授を務める。著書に「子どもの創造力スイッチ!遊びと学びのひみつ基地 CANVASの実践」「デジタル教科書革命」など。デジタルえほん作家&一児のママとしても奮闘中。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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