【AO入試の基礎4】自己分析はプロ・第三者のチェックが必要

 AO入試や推薦入試について、教員経験をもち総合キャリア支援団体「MyCareerCenter」を運営する岡村洋平氏が答える連載「AO入試の基礎」。第4弾では「時間をかけてお子さまに向き合った指導をしてもらうこと」の必要性について聞いた。

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 AO入試や推薦入試について、教員経験をもち総合キャリア支援団体「MyCareerCenter」を運営する岡村洋平氏が答える連載「AO入試の基礎」。第4弾では「時間をかけてお子さまに向き合った指導をしてもらうこと」の必要性について話を聞いた。

◆AO入試対策に不可欠な「自己分析」は、高校生が一人でやるのは難しい?

 AO入試対策において、「時間をかけてお子さまに向き合った指導をしてもらうこと」が必要な理由は、以下の3つです。

 1つめは、これまでのこの連載で繰り返し述べてきたように、AO入試では、(1)大学で学ぶ目的、(2)将来への目的意識、の2点を明確にすることが非常に重要です。志望理由書や面接など、アウトプットの仕方にはバリエーションがありますが、基本的に、AO入試の試験内容というのは、受験生がこの2点が明確になっているかをさまざまな方法で問うているものです。ですから、AO入試の対策をするうえでは、志望動機を書き始めたり模擬面接を始めたりする前に、まず「自分と向き合うこと」が必要になります。

 ただ、だからといって自分一人で自分と向き合っても、具体的にどこから何を考えればいいかわからないことがほとんどです。実際、考えようと思っても、多くの高校生は「◯◯大学の法学部に行きたい」「なぜなら、弁護士になりたいからだ」くらいのところから先にはなかなか進めないものです。今の例で言えば、本当は、「なぜ弁護士になりたいのか」からどんどん問いを掘り下げていかないと、自分が本当に思っていることにたどり着けないものです。

 こうしたプロセスは、大学生の就職活動で言うところの「自己分析」ですが、そのための本が、毎年数多く出されているほど。つまり、言うなれば、例年多くの大学生が試行錯誤していることなのです。高校生にとって、一人でやるのが難しいのも当然といえば当然です。

 自分の考えに対して問いを投げかけてくれる人に付いてもらい、コミュニケーションをとりながら答えを深めていく方が、時間の短縮にもなるうえ、より効率的に自分の考えがまとまっていくでしょう。

◆正解がないからこそ、評価者の目を持った第三者が必要に

 2つめは、(1)(2)についてある程度考えがまとまってきたところで、その内容やストーリーに説得力があるかどうかを客観的に判断をしてもらう必要があるからです。例えば、「中学生のときに、テレビドラマを見て弁護士に憧れ、それ以来、ずっと弁護士になりたいと思っていた。だから法学部を志望している」という志望動機があったとします。これだけだと、結論的には「これでは内容が少し浅いな」という印象を受けるものの、そもそもこの判断自体、数多くの受験生を見てきたからこその感覚です。

 このことは逆もまた然りで、初めての受験となる高校生が、評価者の視点になってそうした判断をすることは、一定の経験なくしては極めて難しいもの。一般入試と異なり、回答する内容も表現の仕方にも正解や公式が存在しないのがAO入試。このことは、受験生を曖昧で不安にさせてしまうかもしれませんが、逆にいえば、合格へのアプローチは多様でいいわけです。

 この点は、自分が持っているものを最大限に生かしうるという特長につなっているのです。とはいえ、それが入試で評価されるに足るものかどうかを知るためには、やはり、評価者の目を持った第三者が必要なのです。

【次ページ】自己分析のプロセスには「合格まで一貫して指導をしてくれる人がいることが望ましい」
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◆合格まで一貫して指導をしてくれる人がいることが望ましい

 3つめは、(1)(2)を深める自己分析のプロセスには一定の期間が必要となるからです。そのため、受験を決めてから入試まで、一貫して継続的に指導(アドバイス)をしてくれる人がいることが望ましいです。

 というのは、このプロセスは、単に「自分と向き合う」だけではなく、必要な情報収集を行ったり、アドバイスや集めた情報をもとに、再度考え直して、またそれをもとに話しをして…というサイクルで、時間をかけて対策を行うことが重要だからです。単にコミュニケーションが必要だというだけであれば、たとえば予備校の夏期講習のように「1週間集中」「直前対策」のようなコースもありえます。

 しかし、自己分析は、あらためて考え直す機会や、必要な情報を取るために志望する大学などに足を運んだり、人と会ったり、学ぶ内容について理解を深めたり、動機付けを高めるために何かに参加をして具体的な経験をしてみたりといったことが重要になります。

 つまり、自己分析とは、今、ここにいる自分を「分析する」だけではなく、「深め、高めていく」プロセスでもあるのです。そのためにはやはり、スポットでの「点」としての指導ではなく、プロセスを見通した「線」としての指導が求められます。

◆外部の予備校などを活用するという選択肢も

 こうした役割は、学校の先生であればそれがよいでしょう。ただ、ほとんどの場合、学校の先生は忙しいためにひとりひとりに時間をかけた指導ができないことが多いでしょう。また、学校として、一般入試への指導にはノウハウはあるものの、AO入試にはあまり詳しくないこともあります。それで、多くの受験生は手探りでの対策を余儀なくされるか、AO入試で合格した先輩をなんとかして見つけるなどしているようです。

 また、近年では、大学受験予備校でも、AO対策に本格的に乗り出しているところが少なくありません。それ以外にも、AO入試専門の予備校や塾も散見されるようになっています。学校の指導だけでは不安だという方は、こうした予備校を活用するのも視野に入れてはいかがでしょうか。

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 連載「AO入試の基礎」は、AO入試や推薦入試を、学生やその保護者が受験をする際の「前向きな選択肢のひとつ」にするべく掲載されるシリーズ。

 次回からは、AO入試の対策についてさらに取り上げていく。
《編集部》

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