燃料電池の発電を「超高効率」…九大と東京ガスが理論設計

 九州大学は7月29日、燃料電池に関する研究と、先天性免疫不全症候群に関する研究の成果について発表。高効率発電を特長とする固体酸化物形燃料電池(SOFC)の発電効率を、飛躍的に向上させる技術の理論設計に成功したという。

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 九州大学は7月29日、燃料電池に関する研究と、先天性免疫不全症候群に関する研究の成果について発表。高効率発電を特長とする固体酸化物形燃料電池(SOFC)の発電効率を、飛躍的に向上させる技術の理論設計に成功したという。

 燃料電池に関する研究は東京ガスとの共同研究で、高効率発電を特長とする固体酸化物形燃料電池(SOFC)の発電効率を飛躍的に向上させる革新技術の理論設計に成功したというもの。家庭用や業務用に実用化されているSOFCシステムでは、45~55%LHV程度の発電効率を実現している。現状の分散型電源としては最高効率だが、大規模な普及に向けて高効率化などが望まれていた。

 今回の研究では、SOFCの2つ以上のセルスタックを燃料の上流から下流へ燃料の流れに沿って多段に配置した構成において、固体電解質内部の電荷担体(イオン)を従来の酸化物イオンからプロトンに置き換えた。これにより、発電効率として80%LHVを超える「超高効率」が発現することを世界で初めて示した。この「超高効率」を示した構成を用いた実験でも、超高効率発電を高精度に再現できたという。

 このような超高効率で行われる化石燃料から電力へのエネルギー変換は、スマートエネルギー社会実現への基幹発電技術として期待される。今後は、「超高効率発電」実現のキーとなるプロトン導電性酸化物の開発、それを用いた多段酸化SOFCの研究開発に取り組むという。この研究成果は7月28日、科学誌「Nature」姉妹紙のオンラインジャーナル「Scientific Reports」で公開された。

 先天性免疫不全症候群(ICF症候群)に関する研究は、同大、オランダのLeiden大学、フランスのParis Diderot大学の研究グループによる共同研究。常染色体劣性遺伝病であるICF症候群では、免疫応答に必要なBリンパ球ができず、多くの患者が重度の感染症により幼児期に亡くなるという。

 これまでの研究から、ICF症候群には染色体のある領域のDNA低メチル化が関与することがわかっていた。患者の約半数である「1型ICF症候群」、さらに約4分の1である「2型ICF症候群」では、特定の遺伝子に変異が発見されていたが、残りの約4分の1については原因遺伝子が不明であった。今回の研究で新たに2つの原因遺伝子を発見し、3型と4型に分類。いまだ原因遺伝子が特定できない患者がいるものの、90%以上のICF症候群患者の原因遺伝子がわかり、早期の確定診断が可能になったという。早期の診断が、適切な治療選択につながることが期待される。

 また、原因遺伝子のひとつが「DNAメチル化制御」に関わる新たな因子であることも発見した。解明することにより、染色体の安定性や免疫細胞の分化の機構が明らかになると考えられるという。この研究成果は7月28日、英国科学誌「Nature Communications」にオンライン掲載された。
《黄金崎綾乃》

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