個別化と学習者主導が主流…米国で急速に普及「ブレンディッドラーニング」

 21世紀に入り、ネットの発達とデジタル機器の進化により社会の情報化、グローバル化が急速に進んでいます。これに合わせて欧米先進国では、工業化社会の発展にともない進化してきた教育制度を改革し始めています。

教育・受験 学校・塾・予備校
写真はイメージです
  • 写真はイメージです
  • 写真はイメージです
◆BLのモデル進化

 初期のブレンディッドラーニングは、ローテーションモデルとよばれる手法が主流でした。クラスを3つのグループに分けて、「先生の講義」「オンライン学習」「少人数指導」の間を時間を決めて循環する方法です。先生の講義は従来の集団一斉授業に近いものですので、いわば従来型とのハイブリッド型です。

 自宅でオンライン学習をし、学校で演習型の授業を受ける反転授業は最近日本でも導入され始めましたが、これもブレンディッドラーニングの一種といえます。ただし、自宅でのオンライン学習では生徒の主体性が問われますが、クラス全員が同じ内容の授業を同時に受けることから個別化という面では十分とは言えません。

 最近はより進化したモデルとして、フレックスやアラカルト方式が導入されています。これらは文字通り、教科書や時間割が全員一律ではなく生徒ごとのニーズに応じて柔軟に導入され、進級のペースも個々の努力や達成度によって決まるという制度です。こうなると、教材の選定から学習進捗状況の管理までICTの積極的な活用が欠かせません。

◆日本の教育界への提言

 ブレンディッドラーニングでは、教科書に書かれている内容を口頭で説明するだけの従来型の講義はオンライン学習に代替されるため、これまで教壇に立って授業をすることに情熱を注いできたベテランの先生には抵抗を感じる方もいるかもしれません。しかし、純粋に子ども目線で「ひとりひとりにとって何が一番必要か」と考えれば、多様化した21世紀を生きる子どもたちにとって、個別カリキュラムと生徒主体の学習が重要であることは容易に理解できるはずです。ブレンディッドラーニングが導入されると、教師には生徒・児童により異なるニーズに応じて、より付加価値の高い個別指導が求められるようになります。

 上述したとおり、ブレンディッドラーニングは日本が明治以来国策として進めてきた教育水準の「平均」を押し上げる集団画一教育とは正反対の指導法であるため、一般の公立学校では直ちに導入することは難しいでしょう。しかしながら、国の制度改革を待っていては、今の子どもたちには手遅れになります。学年の枠を超えた柔軟なカリキュラムを組みやすい地方の一貫私立校や地元密着型の個人塾などにブレンディッドラーニングの導入を期待したいと思います。
《小松健司》

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top