カギは「報酬」、東北大学が長期記憶に重要なフィードバック回路を解明

 東北大学は11月17日、ショウジョウバエを用いた研究で、「長期記憶」を形成するのに重要な脳内神経接続を発見したことを発表。研究で明らかになった「フィードバック回路」に関わる神経回路が機能不全となったハエは、記憶が長続きしないことが実験から証明された。

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  • フィードバック回路の顕微鏡写真と長期記憶を形成するモデル
 東北大学は11月17日、ショウジョウバエを用いた研究で、「長期記憶」を形成するのに重要な脳内神経接続を発見したことを発表。研究で明らかになった「フィードバック回路」に関わる神経回路が機能不全となったハエは、記憶が長続きしないことが実験から証明された。

 ショウジョウバエの長期記憶形成に重要な脳内の神経接続を発見したのは、東北大学大学院生命科学研究科による研究グループ。文部科学研究費補助金、倉田記念日立科学技術財団、および内藤記念科学振興財団研究助成金の支援を受けて行われた研究で、2015年11月17日付けで「eLIFE誌(電子版)」に掲載される。

 東北大学によると、一般に、長期に渡って情報を保存する「長期記憶」の形成のためには何度も反復学習を行う必要があるが、毒または食べ物といった生存に特に重要な情報は、1回の学習で長期記憶が形成されるという。ショウジョウバエは、砂糖を報酬に用いた1回の匂い条件付け学習により長期記憶を形成することができ、砂糖による報酬情報は、特定のドーパミン神経を通して神経構造であるキノコ体に伝達されることがわかっていた。

 研究グループは、キノコ体はドーパミン神経から報酬情報を受け取るだけでなく、別の神経を介してドーパミン神経を制御する「フィードバック回路」を形成することを見出した。このフィードバック回路が長期記憶の形成と安定に重要であるという。また、砂糖と匂いを用いた報酬学習時において、フィードバック回路を構成するコンポーネントを抑制すると、長期記憶の形成が著しく阻害された。学習時だけでなく、学習直後にも重要であることもわかった。

 これらの結果から、砂糖報酬という重要な情報がフィードバック回路によって一定時間「保持」され、それが長期記憶を形成・安定化することを示唆している。東北大学では、ヒトの脳にもドーパミンが脳の報酬情報に深く関わっており、選択的な長期記憶障害のメカニズムのモデルとなるとしている。
《黄金崎綾乃》

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