被害現場は裏サイトからSNSへ…スマホが変えた情報モラル

 3月12日に開催された日本スマートフォンセキュリティ協会主催の「スマートフォンセキュリティ シンポジウム」で、千葉大学藤川大祐教授は基調講演「子どもたちのスマートフォン利用状況と課題」を行った。

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千葉大学教育学部、同副学部長 藤川大祐教授
  • 千葉大学教育学部、同副学部長 藤川大祐教授
  • ここ数年で高校生のスマホ利用率が急激に上昇
  • スマホ利用時間も増えているが、勉強や睡眠が減っているわけでもない
  • スマホ利用時間と学力試験の正答率には負の相関がみられる。因果関係はないが要注意
  • ネットいじめなどはこのところ減少傾向にあったが、スマホによって再び増え始めた
  • 最近のネットいじめはLINEからFB、TWなどへシフト
  • フィルタリングに実質的な利用率は低い
  • 藤川教授が監修などを手掛けた教材、啓発コンテンツ
◆対策は設計時の保護機能と問題解決型のルール

 対策としては、スマートフォン向けに統合的にフィルタリングの設定ができる仕組みやサービスの整備が必要だが、これには通信キャリアや端末メーカーが、設計段階から子どもを守る機能を組み込む「青少年保護・バイ・デザイン」の考え方が重要だという。

 また、ネットいじめはSNSの友達グループの中で発生するため、フィルタリング機能、運営側のID管理やプライバシー設定では、本質的な対策はできない部分である。青少年保護・バイ・デザインという考え方に加えて、情報モラル教育との2本立ての対策ができなければならない。藤川教授は、放送局、ゲーム運営会社、インターネット関連企業らと産学連携の形で啓発コンテンツや教材を開発している。

 テキストベースのガイドラインや教材も有効だが、ネットリテラシーについては子どもの中でも個人差が大きいので、映像・動画コンテンツによるものがより効果的だという。ドラマ仕立て、RPG風なゲーム形式などを監修し、指導案つきのコンテンツも制作・提供しているそうだ。ドラマやゲームとするのは、決め事やルールを一方的に教えるのではなく、生徒・児童に考えさせるための工夫でもある。さらに、情報モラルだけでなく一般的な社会常識やマナーといった要素も組み込みやすいともいう。

 歩きスマホや食事中のスマホなど、文字で「危険」「マナー違反」とするより、映像で危険な場面、態度の悪い人などを見せる方が伝わるということだ。そして、藤川教授はこれらの教材を見せたあと、子どもたちに議論させ提起させた問題について、問題解決型のルールを作らせる方法が効果的だとして基調講演を締めくくった。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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