主婦が始めた「算数大会」キャンセル待ちの秘密<後編>

 計算大会を一人で立ち上げ、自ら自治体や企業と交渉して協賛を取り、500人近くを集めているイベントを仕切るのは、プラダを着た鉄の女のような主婦?

教育・受験 その他
「すぎなみKids」代表の西端麻理子さん。プラダを着た鉄の女、メリルストリープとは真逆な方でした。
  • 「すぎなみKids」代表の西端麻理子さん。プラダを着た鉄の女、メリルストリープとは真逆な方でした。
  • 「すぎなみKids」代表の西端麻理子さん(左)と、「和差積商一本方式」を考案した山田幸子先生。(余談ですが、ドカベンの妹さんと同姓同名)
  • ナマステポーズが癖なのでしょうか(笑)山田先生は常に笑顔でした。
  • 山田幸子先生が書かれた「中学高校で役立つ算数力」
  • 高井戸小学校でのインタビュー風景
 理系離れや数学力の低下など、理数系学力の低下に関する言葉をよく耳にします。戦後、理系出身者が工業国を支え、リケジョというバズワードも生み出されるほどに、日本人にとって身近で関心の高い理系教育ですが、どこに問題があり、どんな解決の糸口があるのでしょうか。

 今回、インタビューさせて頂いた「すぎなみKids」代表の西端麻理子さんは、SE経験のある主婦の立場で、子どもの算数教育に問題を感じておられました。そこまではよく聞く悩みだと思うのですが、驚くべきことに、その問題解決の方法を国や学校に任せるのではなく、彼女は自分自身で行うという選択をされ、その解決方法として子どもたちが楽しく算数を勉強できる場として計算大会を一人で立ち上げてしまったのです。

 彼女とは、共通の友人からのご紹介がご縁だったのですが、最初にお会いした時には、線が細くおとなしそうで決して目立つタイプではない印象に、少し面喰らいました。なぜなら事前に「計算大会を一人で立ち上げ、自ら自治体や企業と交渉して協賛を取り、500人近くを集めているイベントを仕切る主婦」という説明を受けていたので、プラダを着た鉄の女のような方をイメージしていたからです。(西端さん、ごめんなさい。)

 しかし最初にお会いした時に「子どもにとってよい環境がないなら、作っちゃえばいいと思いました。」と、静かに話される姿に、起業家精神のような強い意志と、しなやかな行動力を強く感じました。今回、その「計算大会すぎなみKids杯」(前回参照)を立ち上げた西端さんと、計算方式を創作された山田幸子さんに、イベント直後にインタビューさせて頂きました。


<<インタビュー(敬称略)>>
筆者: 本日はお疲れさまでした。参加された方はみなさん楽しそうで、とてもよいイベントだと率直な感想を持ちました。ところで、何故「すぎなみ」なんでしょうか。

西端: それは住んでいるところが杉並区だったからです。(笑)

筆者: それは愚問でしたね、失礼しました。(苦笑)

西端: ただ、それ以外にも理由がありまして、杉並区には「子育て応援券」という制度があったので、やりやすい環境が杉並にあったことも影響しています。

筆者: なるほど、そういう自治体の制度が活動を支援したのですね。とはいえ、なぜ計算大会をご自分で立ち上げようとなさったのですか?

西端: 立ち上げたのは4年前なのですが、私は2人の子どもの母親なので、当時子どもの教育について考えていました。例えば、漢字の学習だと漢字検定のような学校の勉強とは異なるイベントがあるじゃないですか。でも計算にはプリントを渡してやらすくらいのことしかなかったのです。ですので、ないのなら作っちゃえばいいと思いました。

筆者: それはすごい発想ですね。(笑)

西端: 百ます計算で有名な陰山英男先生の「徹底反復」という考え方に共感していて、どうやったら楽しく徹底した反復ができるのか、それを実践してみたかったのです。
計算大会がご縁で徹底反復研究会にも入会しました。その研究会つながりで山田先生に出会えたことは幸運でした。山田先生には、計算大会のオリジナル問題を考案してもらいました。

筆者: 山田先生、「和差積商一本方式」にはどういう特長があるのですか?

山田: 問題をたくさん解いていくことで、反復の効果がでてくるのですが、足し算しかできなくても、ひたすら足し算を解くことで参加できます。私は引き算がきらいなのですが(笑)、ひき算を避けてもよいのです(笑)。

筆者: なるほど。確かに大人は横方向に、「+-×÷」を解いていきますが、お子さんは縦に足し算だけしている姿を拝見しました。

山田: 今回の問題には仕掛けがありまして、引き算は、答えが「0000・・・、11111・・」と昇順になるようにしました。なぜ「0」になるのか、それは同じ数をマイナスしているから。なぜ「1」になるのか、それは隣の数だから。そんなことに気付いてもらえれば、苦手意識をなくして算数に親しみが持てるのではないかと考えたからなのです。

筆者: 引き算が難しいなんて、あまり考えたことがありませんでしたが、確かにアメリカ人のつり銭の数え方は足し算ですし、本当は足し算で頭を回した方が早く、自然なのかもしれませんね。

山田: そうなんですよ。省エネで計算を楽しんでほしいというのもあるんです。

筆者: いろいろ深い話をありがとうございました。話は尽きないのですが、最後にinspi読者に一言お願いいたします。

山田: 私は文房具が大好きなので、文具ニュースに取材を頂いて嬉しかったです。

西端: いままでは杉並区で計算大会を開催してましたが、今後全国に広めたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

筆者: ぜひ全国に広めてください! 本日はどうもありがとうございました。

1人の主婦がはじめた、キャンセル待ちが出るほど人気の「計算大会」の秘密・後編

《防災訓練生.S》

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