新入学・進級シーズン到来…おおたとしまさ氏に聞く「親の心構え」

 桜の蕾も膨らみ始め、新入学・進級の季節が近づいてきた。子どもはもちろん、親にとっても環境ががらりと変わる節目のとき。期待と共に不安や心配もあるだろう。そんなお父さん、お母さんたちの「心構え」について、おおたとしまさ氏に聞いた。

教育・受験 小学生
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◆「手を離して抱きしめる」という距離感

--子どもの成長とともに、子どもとの距離感をどう取って行くか、難しいところです。

 子どもとの関わり方ってシャワーの温度調整と一緒で、ちょうどいいかなと思ったら、やっぱり熱いぞと思うこともある。子どもは日々成長しているので、ピタッと温度調整できるわけではないんですよね。だから注意深く見てあげることは大事だけど、ずっと癒着したままではまずい。「手を離して抱きしめる」という距離感で、いちいち口には出さないまでも見守るという感じで。とまぁ僕も抽象的にはこうやって言えるんですけど、実際は見守れていないのに口ばっかり出しちゃうし、オロオロするし……現実はそれでいいのではないですかね。子育ての正解なんて誰も永遠にわからないですから。

 ただ、中学に入ると、子どもは部活や友達の方に目が向くようになり、徐々に親から離れて行くものです。そういう意味でも中学受験は、思春期の前に、一つの目標に向かって家族が一致団結して、時には本気でぶつかり合いながら濃密な時間を共有できる貴重な機会だと思います。

 入試当日、受験会場に一人で向かって行く我が子の背中を見て、あぁもう自分には何もできないと、あれほど自分の無力さを強く感じる瞬間はないはずです。中学受験を、我が子の成長に気づくことのできる「成長の節目」として捉え、そこから親子関係を適切な距離に定めて行ければいいのではないでしょうか。

◆失敗こそが学び

--人工知能(AI)の発達など、先行きの見えないこれからの時代。我が子にどんな能力を授ければいいのか、迷えるお父さん、お母さんたちにメッセージをお願いします。

 社会がこう変わりそうだからカリキュラムをこう変えようとか、こんな習い事をさせなくちゃとか、学校も親も右往左往しがちですが、僕は、その考え方そのものが違うと思っています。子どもが未来の世の中に適応するのではなくて、子どもが未来の世の中を「つくる」んだから。そもそも学校って社会の縮図ではなくて、未来の理想の社会の縮図でなければいけないと思うのです。

 だからこそ、子どもたちには、自分なりの価値観をもったうえで、自分の手で世の中の見取り図を描いて、どうやったらそこで自分が幸せに生きていけるかを考えられるように、「主体的に思考できる力」が必要でしょう。その人にしかない答えにたどり着くための思考力、それを鍛えておかなければならない。

 では、これを応援するために親ができることって、すごく綺麗事なんですけど、有り体に言えば「子どもを信じること」。親が思い込みで子どものやりたいことを邪魔しないことです。

 子どもを信じて任せれば、子どもはいっぱい失敗するだろうけど、その失敗こそが学びなのです。親が近くにいてフォローができるうちにたくさん失敗させればいい。親が近くにいるうちは失敗しないで、親が離れると失敗するというケースが多くなってきているのではないでしょうか。子どもの失敗は子育ての失敗ではありません。その失敗をきっかけに親子でじっくり話し合えばいい。子どもの頃にたくさん失敗することが、子どもの真の学びに繋がるのです。

--ありがとうございました。

 「子育てで成功した人って誰ですか?」おおたさんに唐突にそう聞かれて言葉に詰まった。「子どもが『幸せな人生だった』と思えて死ねるかどうかは親には知りようがない。自分が生きているうちに、子どもが世の中で高く評価されている姿を見たい、というのは親のエゴ。親のエゴを叶えてあげるという目的ならば近道はあるような気がするけど、本質はそこではないですね。」と、おおたさんは語る。

 おおたさんの視点は、いつも子どもの側にある。だからなのか、おおたさんの本を読み終わると、心の中に温かみや優しさがふわりと残る。「子どもが未来をつくる」ーー子どものことを思うとき、忘れないようにしたい。

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《加藤紀子》

加藤紀子

京都市出まれ。東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、海外大学進学、経済産業省『未来の教室』など、教育分野を中心に様々なメディアで取材・執筆。初の自著『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)は17万部のベストセラーに。現在はリセマムで編集長を務める。

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