一流の知識人になぜ昆虫マニアが多いのか?

 子どもの学力を上げる方法に限らず、より広い「子育てのヒント」を名門指導会代表 中学受験相談局主任相談員 塾ソムリエ 西村 則康氏が伝授。名門難関中学に2,500人以上を合格させてきたカリスマ家庭教師の最強の子育てのノウハウ、理系脳を育む秘訣とは。

教育・受験 小学生
一流の知識人になぜ昆虫マニアが多いのか
  • 一流の知識人になぜ昆虫マニアが多いのか
  • 「頭のいい子の育て方」(西村 則康 著/アスコム)
 子どもの学力を上げる方法に限らず、より広い「子育てのヒント」を名門指導会代表 中学受験相談局主任相談員 塾ソムリエ 西村 則康氏が伝授。名門難関中学に2,500人以上を合格させてきたカリスマ家庭教師の最強の子育てのノウハウ、理系脳を育む秘訣とは。

「納得」して学習する基礎の蓄積



 今、第一線で活躍している著名な知識人の書いた伝記やエッセイを読むと、幼い頃から昆虫に夢中になっている人がかなり多いことに気づきます。

 生物学者の福岡伸一さんはもちろん、解剖学者の養老孟司さん、故人では精神科医であり作家でもあった北杜夫さんも、幼い頃からファーブルに憧れて、昆虫採集に熱中していたそうです。

 そういったエピソードを知ると、テストの成績とは直接的には関係ない、こういった遊びの経験が、どれだけ幼い子どもの頭と心の栄養になっているかがわかります。

 小学4年生以降になると、単に暗記したり機械的に問題を解いたりするのではなく、「理解」や「納得」を積み重ねながらの学習が必要になります。でも、4年生までにそういった昆虫遊びなどのさまざまな経験がなければ、納得して学習するための基礎が、その子どものなかにそもそも蓄積されていないのです。

カエルを解剖して知る生物の仕組み



 私の教えている生徒のお父さんに、岡山県出身の歯科医の方がいます。その人は自分が小学3年生の時、雑誌に出ていたフナの解剖の記事に興味を持ち、親に解剖バサミを買ってもらったのだそうです。

 そして、ちょっと残酷な話ですが川に行ってカエルをつかまえ、解剖してみたそうです。解剖したカエルの心臓を取り出してみたらビクビク動いていて感動した。食塩水に浸けると心臓の鼓動が長くもつと書いてあったので、やってみたら確かにそうだった、と話していました。

 さらに、2匹のカエルの心臓を取りかえてみたらどうなるか興味を持ってやってみると、まあ当たり前なのですが、2匹とも死んでしまいました。でも、このまま捨ててしまうのはかわいそうだからと、最後はライギョのエサにした、というのです。

 この話を聞いて、そこまで実験心に富んだ小学3年生がいるのかと、これまで多くの子どもたちを見てきた私も驚きました。

 こういった生きた体験ほどすばらしいものはありません。そうやって自分で興味を持ち、見て、実際に触れた感覚というのは決して忘れないものです。それがのちに、人生の豊かな素養となるのは確実です。

脊椎動物や節足動物が何か知っているか



 たとえばこういう問題があったとします。
「無脊椎動物のなかの節足動物のなかの多足類は何ですか?」

 すると、最後の「多足類」という言葉だけに反応して、「タコ」と答える子どもがいます。

 原因は二つ考えられます。一つ目は、言葉理解の不注意で、「多足」だけに反応してしまったことで起きた勘違いです。二つ目は、「節足動物は硬い」という身体感覚を持っていなかったから。小6生でも「タコ」と答える子はいますから、二つ目が原因になっている子も多いと考えています。

 でも身体感覚があれば、次のように考えることができます。

 まずはじめの条件の「無脊椎動物」について、
「無脊椎動物ということは背骨がないんだな。そのなかにはフニャフニャしてるものもいるし、硬いものもいるな」
と思考を巡らせます。そして、
「でも節足動物ということは、その無脊椎動物のなかでも硬いもののほうだな。それで足が多いものはムカデだ」
と答えを出せるのです。

 その時、実際にムカデと触れ合った経験があればもちろん理想的です。でもムカデを触ったり、見たりしたことがなかったとしても、日頃から昆虫採集などが好きな子どもなら、姿かたちを想像することはそれほど難しくはないでしょう。

 そういうすべてのことが原体験として役立ち、将来その子がどんどん伸びていく要素につながっていくのです。

 普段の生活や遊びのなかで知識や感覚を得ることを、私は「体験学習」と名づけています。幼少期は、この体験学習をなるべくたくさん積むように注意をはらってあげてください。

御三家・灘中合格率日本一の家庭教師が教える 頭のいい子の育て方(西村 則康 著/アスコム)より「最強頭脳のベースをつくる23の法則」

御三家・灘中合格率日本一の家庭教師が教える 頭のいい子の育て方

<著者プロフィール:西村 則康(にしむら のりやす)>

名門指導会代表 中学受験相談局主任相談員 塾ソムリエ.。30年以上、難関中学・高校受験指導を一筋に行う家庭教師のプロフェッショナル。一つの解法を押しつけるのでなく、その子に合った方法を瞬時に提示する授業で毎年多数の生徒を最難関中学の合格に導く。これまでに男子御三家の開成、麻布、武蔵、女子御三家の桜蔭、女子学院、雙葉をはじめ、灘、洛南高附属、東大寺学園、神戸女学院などの難関校に合格させた生徒は2,500人以上にものぼる。受験学習を、暗記や単なる作業だけのものにせず、「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込んでいく「名門指導会」の授業は、いずれの講師も翌年まで予約が殺到するほどの人気を誇る。また、授業を通して親子の絆を深めてほしいと、父母と子どものコミュニケーション術や声かけ法についてもアドバイスしている。家庭教育雑誌や新聞などに頻繁に登場し、情報発信も積極的に行う。特に16万人のお母さんが参考にしている中学受験No.1サイト「かしこい塾の使い方」では、保護者の質問一つずつに丁寧に答えることをライフワークとしている。

《リセマム》

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