「Change Maker Awards」個人部門で渋幕、団体部門でSFCが金賞獲得

 2019年9月1日に開かれた中高生のための英語プレゼンテーションコンテスト「Change Maker Awards」の第2回大会本選。個人部門では渋谷教育学園幕張高等学校の今西さんが、団体部門では慶應義塾湘南藤沢中等部・高等部のチームTKCが金賞を受賞した。

教育・受験 中学生
個人部門金賞の渋谷教育学園幕張高等学校・今西はなさん
  • 個人部門金賞の渋谷教育学園幕張高等学校・今西はなさん
  • 一般社団法人 英語4技能・探究学習推進協会 代表理事 辻村直也氏
  • ユーモア溢れる司会の京都造形芸術大学 副学長 本間正人氏
  • 堂々たる今西さんのプレゼンのようす
  • 団体部門金賞の慶應義塾湘南藤沢高等部・TCK
  • 大人も顔負けの質の高いプレゼン。時間を見つけては舞台上でリハを繰り返していた
  • Global Link賞、頌栄女子学院のチームRirika and Tohkoはシンガポールへ
  • 会場を盛り上げたチームRirika and Tohkoの実演
 中高生のための英語プレゼンテーションコンテスト「Change Maker Awards」の第2回大会本選が、2019年9月1日に東京国際交流館国際交流会議場で開催された。個人部門では渋谷教育学園幕張高等学校の今西はなさんによる「JK ヘルスブック」、団体部門では慶應義塾湘南藤沢中等部・高等部のチームTKC(井上千愛さん・稲垣栞さん・五十嵐玲奈さん・中村美佐さん)による「サードカルチャーキッズ」が金賞を獲得した。

「英語4技能×探求」で未来を切り拓く



 2回目の開催となる今回は前回より参加者数が大幅に増え、全国から226校、総勢412名の中高生が参加。その中から個人部門で10名、団体部門10チームが本選に進んだ。

 司会は京都造形芸術大学副学長 本間正人氏。大会審査員は、審査委員長として上智大学特別招聘教授言語教育研究センター長 吉田研作氏のほか、中央大学国際情報学部准教授 斎藤裕紀恵氏、EF International Language Centers アカデミックディレクターのKristoffer Kullengren氏、東京工業大学環境・社会理工学院融合理工学系教授 野原佳代子氏の4名が務めた。

ユーモア溢れる司会の京都造形芸術大学 副学長 本間正人氏

 各登壇者はオリジナリティあふれる多彩なテーマを掲げ、英語4技能×探究学習のプレゼンテーション技術を競った。なお、金賞には50万円分、銀賞では30万円分、銅賞では20万円分の学習支援プログラムが提供される。またGlobal Link賞は、科学・社会課題をテーマとした、アジア太平洋における中高生の課題研究コンテスト「Global Link Singapore」の出場権が得られることになっている。

 冒頭の挨拶で英語4技能・探究学習推進協会代表理事の辻村直也氏は「探求学習や英語学習の成果を披露する場として、全国規模の大会に育つことをかねてから希望していた。中高生の新しい人生を切り拓くきっかけとなってほしい」と語り、いよいよ審査がスタートした。

一般社団法人 英語4 技能・探究学習推進協会 代表理事 辻村直也氏

日常に密接した課題の研究成果を高い英語力で表現



 個人部門10名・団体部門10チームの中から、個人部門は金賞1名・銀賞2名・銅賞3名の計6チームが入賞。チーム部門は金賞1チーム・銀賞2チーム・銅賞3チームに加え、Global Link賞を加えた計7チームが入賞した。

 受賞者と、プレゼンテーションの内容は以下のとおり。

個人部門 金賞
渋谷教育学園幕張高等学校「JKヘルスブック」(今西はなさん)



個人部門金賞の渋谷教育学園幕張高等学校・今西はなさん

圧巻の落ち着きと説得力

 昨年冬に怪我でサッカー選手の夢を諦めたという今西さんは、その立ち居ふるまい、自然な話し方で、納得感のあるプレゼンを披露した

 スポーツができない中で体型の維持を考え、さまざまな情報を調べたところ、インターネット上にはダイエットに関する信頼のおける情報がほとんどなかったことに着目。そこに危険性を感じ、以降、専門家も交えておもに女子高生に向けたダイエットの情報を発信するWebサイト「JKヘルスブック」を制作している。将来的にはさらに多くの人に見てもらえるよう英語版の制作も視野に入れているという。

堂々たる今西さんのプレゼンのようす

団体部門 金賞
慶應義塾湘南藤沢高等部「サードカルチャーキッズ」(井上千愛さん・稲垣栞さん・五十嵐玲奈さん・中村美佐さん)



団体部門金賞の慶應義塾湘南藤沢高等部・TCK

洗練されたスライド、壇上の動きにも工夫

 「Third Culture Kids(TCK、サードカルチャーキッズ)」とは、親の文化とは違う文化の中で生まれ育つ子どもたちのこと。世界的に人の行き来が多くなっている現在、新しい文化に溶け込めずにさまざまなストレスを抱えている子どもたちが増えている。

 このチームでは、300人以上のTCKにインタビューし、課題を可視化。新しい文化に簡単に溶け込めるように、自身の経験も含めてサポートできるサイトを立ち上げたという。

 スライドのデザインや壇上における4人の動きは鮮やかで、洗練されたプレゼンだった。

大人も顔負けの質の高いプレゼン。時間を見つけては舞台上でリハを繰り返していた

Global Link賞
頌栄女子学院「3Rs→5Rs」(菊池里々花さん・川崎瞳子さん)



Global Link賞、頌栄女子学院のチームRirika and Tohkoはシンガポールへ

社会的な課題に新たな考え方を

 昨今、プラスティックゴミや食品ロスが社会的に大きな問題になっている。自分を含めた消費者の問題だと考えたふたりは、消費者の意識改革のため、従来の3Rs(Reduce、Reuse、Recycle)に、Rethink(考え直す)、Refuse(拒否する)の2つを加えた「5Rs」を提唱。

 RethinkやRefuseする際のアクションも交え、誰にでもわかりやすいプレゼンとなった。

会場を盛り上げたチームRirika and Tohkoの実演

個人部門 銀賞
横浜市立南高等学校「私がつくる二つのネット」(加藤舞さん)



 ESAアジア教育支援の会の手作りプロジェクトに参加し、バングラディシュの教育状況を知った加藤さん。教育が平和をつくるという思いから、手作り算数教材の制作プロジェクトを立ち上げ、クラウドファンディングで資金も募ったという。将来は起業し、その利益をさらにプロジェクトに投入し、貢献したいと夢を語るシーンもあった。

個人部門 銀賞
東京学芸大学附属国際中等教育学校「ドキュメンタリー作品による原子力発電に対する意識改革」(矢座孟之進さん)



 「日本一大きいやかんの話」は、矢座さんが制作した原発に関するドキュメンタリー映画。東京電力やフランスの原子力参事官、政府関係者、NPO、科学者などへのインタビューや福島でのフィールドワークを重ねた。SDGsの観点からも、原発に関して理解を深める意図がある。プレゼンは非常に力強く、聞くものを圧倒。

団体部門 銀賞
高志高等学校「昆布が貢献する持続可能な社会」(竹中俊平さん・岡本孟士さん・小澤柊生さん・濱田孝太さん)



 中学校時代から昆布を探求してきたグループ。彼らの推進している「K-Salt」プロジェクトは、昆布のもつ食物繊維“フコダイン”に着目し、脂質やコレステロールの軽減から肥満問題を解決することが目的だ。外国人が苦手な昆布の外見や粘り気を抑える工夫、塩との成分比を考えてプロジェクトは進む。

団体部門 銀賞
東京学芸大学附属国際中等教育学校「外国人観光客が日本の医療を受けやすくするための改善策」(廣岡沙和さん・八尋有彩さん・山下もも・吉田理紗さん)



 訪日外国人の増加に対して、日本の医療を受けやすくするための改善策を提案。受診をサポートするパンフレットは、病院の探し方や診断の流れ、症状記入スペース、役立つ団体やサイトの情報を掲載している。審査員からは「2020年の東京オリンピックに間に合うと良いので、訪日外国人向けのサービスとタイアップも視野にすると良い」との声も。

個人部門 銅賞
北杜市立甲陵中学校高等学校「今、人生が動く。」(佐々木健人さん)



 自分自身の体験をきっかけに、「きぼうの桜サミット」に参加している佐々木さんは、人生が動くきっかけの大切さをアピールした。

個人部門 銅賞
自修館中等教育学校「フェアトレードを普及するためには」(加藤陽菜さん)



 フェアトレードを普及するために、メディアの露出やフェアトレード商品の接触機会が増えることの大事さを伝えた加藤さん。スライドの使い方も良く、笑顔も多かった。

個人部門 銅賞
神戸女学院中学部高等学部「結婚する権利」(江嶋柚香子さん)



 江嶋さんは、日本人の13人に1人がLGBTという数字をもとに、いかに身近であるかをわかりやすく例示。LGBTの存在周知や理解を進める強いメッセージが発せられた。

団体部門 銅賞
城ノ内高等学校「エシカル消費~世界へ繋がれ~」(村部大騎さん・泉奈那さん・浅野千帆莉さん・山川智大さん)



 校内アンケートで認知度が低かった「エシカル消費」。文化祭での展示・販売、藍染の学習、エシカルツアーの企画など多岐にわたる活動を実施。その結果、今春のアンケートでは認知度は90%になったと発表した。

団体部門 銅賞
飯山高等学校「高齢社会の豪雪地域におけるエネルギー消費と安全に考慮した屋根の形状についての研究」(中村翔音さん・湯本深月さん)



 飯山市という日本でも有数の豪雪地帯で、雪降ろしを必要とする屋根の構造を調査し、模型作成して実験。高齢者が安心して暮らせる街づくりという、SDGsの目標達成へ向け研究を進めているという。

団体部門 銅賞
頌栄女子学院「質の高い教育をみんなに」(六車莉奈さん・三枝千詠美さん)



 自分たちが受けられる教育に感謝すること、教育の力を信じること、質の高い教育をみんなに実現するため協力することを提言。プレゼン後の質疑応答での対応力も目を引くグループだった。

日々の疑問や気付きがスタート…実践的な探求へ



 審査員長の吉田研作氏が総評でも述べていたが、本選出場者の言葉は力強いメッセージとして伝わってきた。日常の「なぜ?」から発する探求を通じ、本当に伝えたいものが明確になっているために、発表を聞く者にとっても内容がわかりやすく、より印象に残るプレゼンテーションだったといえるのではないだろうか。

審査員長である上智大学特別招聘教授 言語教育研究センター長 吉田研作氏

 第2回の「Change Maker Awards」は、一般社団法人 英語4技能・探究学習推進協会理事である斉藤智氏の「借り物ではない自分の言葉だった。世界に届いて、世界を変えていくだろうと確信する」という言葉で閉会となった。

一般社団法人 英語4技能・探究学習推進協会理事 斉藤智氏

 学生たちの問題発見力や行動力は大人の先入観をいともたやすく壊し、「できない」を「できる」に変えていくのではないかと期待の高まる内容の数々だった。「Change Maker Awards」が、英語4技能×探求プレゼン大会としてさらに認知され、今後も数多くの学生たちの飛躍を後押しすることを期待したい。

個人部門10名の学校名とタイトル



愛知県 南山中学校女子部 「アクアリウムセラピーにおける可能性の追求~アクアリウムセラピーとストレス軽減の関係性~」
山梨県 北杜市立甲陵中学校高等学校 「今、人生が動く。」
秋田県 鹿角市立花輪第二中学校 「全ての人に教育を」
愛媛県 松山市立東中学校 「科学技術で全ての人により良い暮らしを!」
神奈川県 自修館中等教育学校 「フェアトレードを普及するためには」
東京都 東京都立国際高等学校 「ディスカッションしようよ」
兵庫県 神戸女学院中学部高等学部 「結婚する権利」
千葉県 渋谷教育学園幕張高等学校 「JK ヘルスブック」
神奈川県 横浜市立南高等学校 「私がつくる二つのネット」
東京都 東京学芸大学附属国際中等教育学校 「ドキュメンタリー作品による原子力発電に対する意識改革」

団体部門9チームの学校名とタイトル


※当日1チーム棄権

福岡県 福岡雙葉中学校 「みんなのためのフェミニズム」
徳島県 城ノ内高等学校 「エシカル消費~世界へ繋がれ~」
長野県 飯山高等学校 「高齢社会の豪雪地域におけるエネルギー消費と安全に考慮した屋根の形状についての研究」
福井県 高志高等学校 「昆布が貢献する持続可能な社会」
東京都 頌栄女子学院 「質の高い教育をみんなに」
神奈川県 慶應義塾湘南藤沢高等部 「サードカルチャーキッズ」
東京都 東京学芸大学附属国際中等教育学校 「外国人観光客が日本の医療を受けやすくするための改善策」
兵庫県 甲南高等学校 「ボランティアをしよう!」
東京都 頌栄女子学院 「3Rs→5Rs」
《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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