世界では一般的?どん底の浪人生活から海外名門大学に進学する方法

 近年、海外名門大学へ進学する学生が増えてきている。とはいえ、海外進学に関する情報はまだ少ない。本シリーズでは、そのロールモデルを紹介すべく、自身もUCLA出身で、世界トップ大学への進学・留学サポートを行うU-LABO代表の小泉涼輔氏にご寄稿いただいた。

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カリフォルニア大学(UCLA)のキャンパス
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  • 多様性の国アメリカの中でも柔軟性に溢れたカリフォルニア州
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 毎年秋、タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)から発表される世界大学ランキング。毎回注目されるこのランキングで、日本の最高峰と言われる東大は35位(2022年)というのをご存じだろうか。つまり「世界には、東大よりも教育研究活動に対する評価が高い大学が34校も存在する」ということ。たとえば教育大国アメリカは、ハーバード大学、スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)・ロサンゼルス校(UCLA)などの名門大学を多数有しており、同ランキング上位を独占している。

 このような状況を知ってか、近年では日本の高校から海外名門大学へ進学する学生が増えているという。「目指すは偏差値の高い大学」という選択肢にとらわれない学生が増えてきているのだ。そこで本シリーズでは、自身もUCLA出身で、世界トップ大学への進学・留学サポートプログラムを運営するU-LABO代表の小泉涼輔氏にご寄稿いただいた。

 海外名門大学への進学を成し遂げた学生たちも、決してトントン拍子に「進学」という切符を手にしたわけではない。挫折や苦労を経験した彼らへのインタビューを通じて、海外名門大学を目指したきっかけやプロセスの事例をご紹介したい。

 今回は、進学校出身でありながらも、二度の浪人生活、そして数々の挫折や焦りを経験した末に、見事に世界大学ランキング8位のカリフォルニア大学バークレー校への合格という道を切り開いた学生のストーリーである。

二度目の浪人生活…モチベーションが上がらない葛藤の日々

 都内でも有数の偏差値を誇る進学校に通い、高校時代は順風満帆だったという高橋さん(仮名)が、今回のインタビュイーだ。理数系が得意なことを生かし、いくつかの選択肢の中から、医療系の大学を目指すことにしたという。心のどこかで楽勝だろうと思っていた大学受験は、まさかの不合格。油断が招いた結果と気を取り直して望んだ再受験でも不合格を受け、二度目の浪人生活を送ることに。「高校時代の自分からは想像も出来ない状況へ陥り、モチベーションが上がらないまま、時間だけが過ぎていきました」と切なそうに当時を振り返る。

 第一志望の大学への合格が叶わず浪人生となる道を選んだものの、「志望校も浪人生活も、選んだ理由はどちらも不透明だった」と話す高橋さん(以下、発言すべて高橋さん)。

 「『絶対に第一志望に受かってやる』という気持ちもなく、行きたい大学はどこですかと聞かれたら口ごもってしまう状態でした。なんとなく受験本番が来て、みんな浪人するから自分も浪人して、あっという間にまた受験本番。だけど、それも不合格で、もうどうしたら良いのか、自分ではわからない状態でした」。

 無慈悲にも、時間を共にした同級生や予備校の仲間から、SNSやメールで合格の報告が高橋さんのもとに続々と舞い込む。自分だけが取り残されたような気分だった。

 「毎日が同じような繰り返しで、本当につまらなくて。自分だけがいつまでもスタート地点で足踏みをしているような感覚がキツかったですね。やるべきことを1年間やってきて迎えた再受験だったのに、不合格を突きつけられた瞬間、それまでに費やした時間や自分の努力って何だったんだろうと」。

浪人からの「留学」という新たな視点

 悶々としながらも今の自分に出来ることをひたすら繰り返す日々のなかで、人生に大きく変化をもたらす出会いが訪れる。

 「たまたま知り合いに留学経験者がいて、その人から『留学』という選択肢を教えてもらいました。浪人生で塞ぎ込んでいた自分にとって、ここから海外大学へ進学するという選択肢は自力では思いつけないことでした。早速留学エージェントのセミナーに参加し、3か月後にはスパッと留学に踏み切っていました」。

 彼の場合は二度目の浪人生活中ということもあり、やる気が冷めないうちに走り切る必要があった。海外大学進学に関する専門知識はインターネット上にもまだ少なく、留学エージェントからのサポートが鍵だったと語る。

 「留学先を調べていく中で、カリフォルニアで4年制大学を卒業したいと思うようになりました。留学カウンセラーの方からのアドバイスで目から鱗だったのは『カリフォルニアであれば、コミュニティカレッジ(アメリカにおける2年制大学)に2年間通って、そのあと4年制大学に編入することができる』ということ。海外大学進学に対するハードルがグッと低くなったように感じ、気持ちが明確になりました。世界でもトップレベルの大学として名高いカリフォルニア大学に挑戦できる可能性は、未来を考える上ですごくモチベーションになりました」。

世界では一般的な「編入学」という選択

 日本ではまだまだ主流ではない「編入学」。海外、特にアメリカでは「編入学」が広く普及している。まずはコミュニティカレッジなどの大学に通い、そこで取得した単位を保有したまま、2年次や3年次から4年制大学に移る方法だ。

 1年次からの入学(通常入学)では、高校3年生時点で高い英語力を有することや高校でのトップレベルの成績などが求められるが、留学生にとってこのハードルは相当に高い。

 一方「編入学」においては、コミュニティカレッジからの編入の場合であれば、入学時に高い英語力は求められず、高校の成績ではなくコミュニティカレッジでの成績が対象となる。コミュニティカレッジでコツコツと良い成績を積み上げ、徐々に英語力や専門能力を高めつつ、4年制大学への入学準備をすることが可能だ。1年次入学と「編入学」で卒業後のステータスにも変わりはない。編入学は日本人学生にとって名門大学を目指しやすい制度と言える。

編入学希望者に優しいカリフォルニア州

 アメリカには、いわゆる公立の「州立大学」と「私立大学」が存在する。ハーバード含むIVYリーグやスタンフォードなどの私立大学には、数万人規模で編入学の受け入れをしている学校が少ない一方で、州立大学は、編入学生の受け入れを積極的に行っており、編入学しやすいのが特徴だ。ワシントン大学やフロリダ大学、ニューヨーク州立大学(SUNY)など、たくさんの州立大学が存在するが、全米の州立大学の中でも最も有名で評価が高いのがカリフォルニア大学(UC)である。

 カリフォルニア大学は、パブリックIVYとも呼ばれており、かの有名なUCバークレー、UCLAを含む9校(正確には10校だが、UCサンフランシスコは医薬学の専門大学院のため、学部生は対象外)のキャンパスから成り立つ名門大学群。レベルの高さもさることながら、カリフォルニア州の学校制度をうまく活用することで、編入学しやすい環境が整備されている。

 さらにカリフォルニア州には、カリフォルニア大学だけでなく、23校のキャンパスから成り立つカリフォルニア州立大学(CSU)も存在する。「UCに受かるか不安だ」という学生でも、CSUへの併願が可能なので、いずれかの4年制大学へ進学できる可能性が高い。カリフォルニア州は、アメリカの中でも編入学を目指す学生の受け入れ体制が最も整っている場所と言えるだろう。

2年制大学での学びをモノにするテクニック

 さて、留学となると避けて通れないのが「英語」だ。高橋さんはどんな点で苦労したのだろうか。

 「僕は受験勉強の時点で英語に対して苦手意識があったので、コミュニティカレッジ入学前にアメリカ現地の語学学校が提供する英語の集中プログラムに4か月ほど通うことにしました。このプログラムに参加してあらためて感じたのは、自分の英語力が、留学生に慣れているカウンセラーや教授には通用しても、ネイティブ相手だと歯が立たないということです。特に、ネイティブとのディスカッションをしたときにそれを痛感しました。英語力が低いまま留学するとなると、本来学びたかった英語以外の勉強時間が削られてしまうので、英語力は高いに越したことはないと思います」。

 一方で、英語以外に「数学」が得意であれば、英語力を補える場合もあるという。

 「数学の分野にもよりますが、答えを書く際にしっかりした英文を書く必要がないというのは数学のメリットですね。これは一例ですが、たとえば連立方程式などの公式は世界共通ですので、数式を使って解答できれば、単位が取れるものもあります。留学後の大学での単位の取り方もコツを掴めば大丈夫です。もし英語にアレルギーがあったとしても、理数系にも得意科目があれば諦めずに留学に挑戦してほしいですね」。

日本での浪人生活では感じられなかった、着実に前に進んでいる感覚

 浪人時代は一度のテストのために時間をかける日々。一方、コミュニティカレッジでの生活は、勉強した分、単位や成績として反映され、前に進んでいると実感できたことが、高橋さんにはとても嬉しかったという。

 「最初は日本とはまったく異なる評価の仕方に戸惑うこともありました。たとえば課題を提出した際、自分なりの独創性を問われることに驚きました。けれども、毎日の課題に対するフィードバックを得ることで、自分の向き不向きを確認でき、その繰り返しの中で『自分のやりたいことは何か』が少しずつ見えてきました」。

 そうこうしている内に1年が経ち、カリフォルニア大学編入のための出願準備が始まった。日本にいた頃とは比べものにならないほど充実していたと語る。

 「アメリカはいろんなルーツをもった人たちが集まっている国。また、日本と違って浪人という足止め期間がなく、挑戦する年齢も一切気にしない。受験に二度失敗して、前に進めていない感覚や焦りに悩まされていた自分は、そういった環境にとても救われました。あのまま日本で浪人生活を続けていたら、自分はダメになっていたかもしれません。今思うと、当時の自分は自信をなくしていたんだと思います。仮に最初は目的がなくても、何かを積み重ねて前へ進んでいることを感じられる毎日を手に入れられたことが、今の僕に繋がっています」。

UC Berkeley・UCLAの経済学部に同時に合格し、伝えたいこと

 浪人期間を経て、2年間のコミュニティカレッジ生活から、見事にUC Berkeley(カリフォルニア大学バークレー校)とUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の経済学部の編入試験に同時合格した高橋さん。最終的に、UC Berkeleyに進学することに決めた。合格したときのことは、今でも鮮明に覚えているという。

 「合格通知を目にしたとき、信じられなくて、頭が真っ白になりました。やれることはやったし、気持ちもとても落ち着いてはいたのですが、これは夢じゃないかというのが1番最初の感想でしたね。嬉しさが込み上げて来たのは少し時間が経ってからで、進学のための実務的な準備を始めてからでした」。

 カリフォルニア大学への進学を勝ち取った今、振り返って何を思うのだろうか。最後に、リセマム読者へのメッセージを聞いた。

 「特に『現役生』から『浪人生』の立場になった方に、キャリアの選択肢の1つとしてコミュニティカレッジを利用する道もあるということを伝えたいです。留学はお金がかかりますが、『留学費用は将来必ず返す』という強い気持ちで両親を説得しました。長期間海外で勉強することになるので、両親はいろいろと不安に感じることもあったかもしれませんが、浪人生として過ごした数年間の自分の葛藤を見ていたこともあり、快く送り出してくれたことに感謝しています。他の留学生のように時間をかけて事前準備をしっかりするというよりも、スピーディに情報を揃え、検討し、タイミングに合わせて短期間で準備を進めた私にとって、抵抗感や違和感を感じることなく留学に踏み切り、合格を勝ち取れたのは、両親を含め、たくさんの方のサポートがあったからこそです」。

 二度目の浪人生活から一念発起し、目先のゴールだけではなく先々の進路を描きながら、納得のいくキャリアを手にした高橋さん。彼自身も言う通り、海外大学への進学は日本国内の大学への受験とタイミングが異なることもあり、まだ浸透していない。「編入試験」を視野に入れた海外留学ともなると、なおさら情報は少ない。私の運営しているU-LABOでは「カリフォルニア大学編入プログラム無料セミナー」を開催している。カリフォルニア大学の概要はもちろん、進学への近道、卒業後の進路などの情報を提供し、世界に挑戦する学生がグローバル社会で戦える未来を作るためのサポートを行っている。

 また本企画でも、迷える受験生の皆さんに、少しでも多くのロールモデルをご紹介すべく、今後も数回にわたりシリーズ連載していく。次回は、今回の記事でも少し触れた「カリフォルニア州の学校制度」の活用法を中心に、学生にインタビューする予定だ。参考に、自らの将来の視野を広げてみてほしい。

小泉涼輔(こいずみりょうすけ)
UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)卒業。世界4大会計事務所の1つであるプライスウォーターハウスクーパース(PwC)入社後、国際税務業務に従事。日本の多国籍企業へのコンサルティング経験を通じて、将来のグローバル人材育成の重要性を痛感し、U-LABOとして世界トップ大学への進学・留学サポートを開始。日本で最もカリフォルニア大学編入に精通した専門家の1人として、これまでに多くの学生を合格に導いており、2022年にはUCLAが選ぶグローバルに影響を与える事業100(「UCLA Bruin Business 100」)に選出されている。公式Webサイト
《小泉涼輔》

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