地震国の学校のづくりとは? ニュージーランドと日本の知見

 国立教育政策研究所は、「地震国の学校建築」報告書を掲載した。本報告書は、耐震対策や災害復興に関する海外の現状、および避難所となる学校の課題をテーマに、今年1月24日に開催された講演会をもとに作成された。

生活・健康
キム・シャノン(ニュージーランド教育省)
  • キム・シャノン(ニュージーランド教育省)
  • ウェイン・タコン(ニュージーランド教育省)
  • 上野淳(首都大学東京副学長)
  • 壁谷澤寿海(東京大学地震研究所教授)
 国立教育政策研究所は、「地震国の学校建築」報告書を掲載した。本報告書は、耐震対策や災害復興に関する海外の現状、および避難所となる学校の課題をテーマに、今年1月24日に開催された講演会をもとに作成された。

 本講演会は、昨年11月の「東日本大震災と学校」と題した同研究所の公開シンポジウムを受けて開催された。日本と同じ地震国で耐震設計の先進国でもあるニュージーランドの取組みや、東日本大震災の避難所となった学校の実態、学校建設の被害実態について、4名の専門家が解説している。

 ニュージーランドの教育省のキム・シャノン部長とウェイン・タコンマネージャーによると、次の3つが重要という。まず、「建築に使われた建築材の種類や建物の築年数が被害の大きさと直接関係がある」。2つ目のポイントとして、「規制の枠組みや設計基準により被害を軽減できた」ということで、教育省は、これまでも新基準を満たすように建物を強化することに投資し、大半の学校は修復が可能だったという。3つ目のポイントとして、「どの地域も地震がないと過信することができない」ということで、今回の地震で、校舎の立地や地盤の状態に大きな注意を払う必要があることを学んだという。

 首都大学東京の上野淳副学長によると、何よりも強調しておきたいのは「学校という場における教師の存在だ」という。東日本大震災だけでなく、阪神淡路大震災でも、教師たちは、自ら被災しているにもかかわらず学校に踏みとどまって避難者の方々の差配をし、生徒たちの面倒も見てこられた。そういう日本の教師たちの資質の高さ、冷静沈着かつ献身的な努力、こういうことで何とか避難所が維持できたのだろうという。

 東京大学地震研究所の壁谷澤寿海教授は、「これからの構造計画では、とにかく今ぐらいの想定地震動レベルであれば倒壊しないというだけではなくて、地震の後に確実に使えることが重要。」と強調する。大地震後でも継続使用が可能であることを、いかにして保証していくかというのがこれからの課題だという。

 ニュージーランドや日本における大きな震災の経験を踏まえて、より安全で安心な学校づくりを進めていくことが重要だ。
《工藤めぐみ》

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