CoNETS、デジタル教科書実証授業の成果や国際標準を見据えた取組みを説明

 デジタル教科書のコンソーシアム「CoNETS(コネッツ)」は4月15日、共通プラットフォームを採用したデジタル教科書に関する報道機関向け説明会を都内で開催した。

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東京学芸大学 教授 加藤直樹 氏
  • 東京学芸大学 教授 加藤直樹 氏
  • 日本電子出版協会 チーフ・テクニカル・オフィサー 村田真 氏
  • CoNETSベータ版での実証授業の成果
  • EDUPUBに関わる標準化団体
  • CoNETS版デジタル教科書の構造
  • ビューアを起ち上げるとインストールされている教科書が一覧表示される
  • 書き込んだ画面のスナップショットが取れる
  • 画面下のタブでコンテンツを切り替える
 デジタル教科書のコンソーシアム「CoNETS(コネッツ)」は4月15日、共通プラットフォームを採用したデジタル教科書に関する報道機関向け説明会を都内で開催した。説明会では実証授業の成果や、国際標準を見据えた取組みが紹介されたほか、日立製作所と教科書会社各社によるCoNETS版デジタル教科書のデモンストレーションが行われた。

 CoNETS(Connecting to the Next Education for Teachers and Students)は、教科書会社12社と日立ソリューションズの全13社によって2013年9月に設立されたコンソーシアム。これまで1つのソフトウェアとして提供されてきたデジタル教科書を「教材コンテンツ」と「ビューア」に分割し、教科書会社や使用機器に依存しない次世代デジタル教科書の共通プラットフォーム開発に取り組んでいる。複数の教科書会社が共通のプラットフォームを利用するのはCoNETSが日本初という。

 教材コンテンツは教科書会社が開発し、ビューアは日立ソリューションズが開発(2015年4月より日立製作所へ事業移管)。コンテンツ形式としては、HTMLに基づいた国際標準の電子書籍フォーマット「EPUB3」が採用され、ビューアは指導者用がWindows7/8(PC)、学習者用がWindows8(タブレット)/iOS(iPad)に対応している。

 すでに、3月20日より小学校の指導者向けとして、CoNETSに参加する教科書会社のうち8社の教科書コンテンツ、およびビューアが提供開始となっており、学習者向けは4月末以降、WindowsストアとApp Storeで順次公開される。また教科書改訂に合わせて、中学校用は2016年、高校生用は2017年に提供開始される予定だ。

 新興出版社啓林館と日立製作所によるCoNETS版デジタル教科書のデモンストレーションでは、作業状態を保存できるスナップショット機能や端末間通信、教材間リンクなどが紹介された。まず、指導者画面でCoNETSビューアを開くと、インストールされている全教科書が表示される。各教科書の画面では、前回の授業の最後に開いていた全コンテンツをタブで切り替えることができ、復習からのスタートに便利になっている。また、ペンツールで教科書に書き込んだ状態でスナップショットを残しておき、後でその書き込みを振り返ったり、指導者が用意したワークシートを学習者ひとりひとりの端末に送信し、またそれを学習者が送り返すことで指導者画面に一覧表示することもできる。さらに共通プラットフォームの特長を活かして、たとえば国語の教科書の任意の個所に理科のページをリンクするなど、別の教科書を資料として使う使い方も紹介された。

 CoNETS版デジタル教科書のベータ版で実証授業を行った東京学芸大学の教授 加藤直樹氏は、「子ども達からは“楽しかった”“わかりやすかった”といった肯定的な意見が出た。また、デジタル教科書はラインマーカーを何度でも書いたり消したりできるので、自分の考えを視覚化・客観視してもう一回考え直す作業は学習において有意義なことだ」と説明。さらに、文科省のデジタル教材等の標準化事業に委員という立場からは、「実証授業で出た課題を吸収していただき今回の提供開始となった。今後も実用化を通じてさらなる改良に取り組み、文科省が進める標準化事業へも貢献していただきたい」と期待した。

 続いて、日本電子出版協会のチーフ・テクニカル・オフィサー、およびISOやIDPF(EPUBを制定した団体)のワーキンググループ議長である村田真氏は、「Webと出版を一体化させるために“EPUB”が構築された。そして現在、そのEPUBと教育を一体化させるために“EDUPUB”と呼ばれるデジタル教科書の国際標準が構築されつつある。EPUBがISO/IECで登録されたように、EDUPUBも同様に登録される可能性が多分にある」と世界の動向を紹介。CoNETSはこうした動向をとらえ、教科書のレイアウトを忠実に再現するなどの目的で拡張したEPUBの仕様を、EDUPUBの標準化に関わるIDPFに登録済みという。「CoNETSのEPUB拡張は日本独自にとどまらず、国際的にも認知されたことになる」と、CONETSのオープンな姿勢を評価した。

 文部科学省の調査によると、2013年度の指導者用デジタル教科書の普及率は40%を超え、今後はさらに普及が進むと予想されている。現在、CoNETSで提供される教材コンテンツ数は約25,000。導入校数については、教育委員会単位の導入もあるため正確な数値ではないものの、目安としては約3,000校としている。
《柏木由美子》

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