【年頭所感】教育業界のキーマンに聞く2022年…社会変化を乗り越える教育へ

 「さまざまな社会的変化」を乗り越えていくためにあるべき教育の姿について、業界のキーマンはどのように考えるのか。これからの教育を率いていかれるであろう方々に、2022年の年頭所感をお寄せいただきました

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【年頭所感】教育業界のキーマンに聞く2022年…社会変化を乗り越える教育へ
  • 【年頭所感】教育業界のキーマンに聞く2022年…社会変化を乗り越える教育へ
  • サイタコーディネーション代表 江藤真規氏
  • 教育ジャーナリスト おおたとしまさ氏
  • 教育家・見守る子育て研究所 所長 小川大介氏
  • 文部科学省 大臣官房文部科学戦略官・総合教育政策局教育DX推進室長  桐生崇氏
  • 慶應義塾大学環境情報学部(SFC)教授 冨田勝氏
  • 株式会社steAm代表、大阪・関西万博テーマ事業プロデューサー 中島さち子氏
  • 情報通信総合研究所 平井総一郎氏
 公立の小・中学校への「1人1台端末」の2020年度中の配布を目指して急ピッチで進められたGIGAスクール構想のもとで、学校教育におけるIT環境の整備が大きく動いた感のある2021年。機器やインフラ環境が整いつつある一方で、それを授業にどのように生かしていくのかといった点では模索が続いている。

 パンデミックや災害時のみだけではない、ICTのメリットを生かした授業をいかにつくるかという課題や今後も生じるであろう「さまざまな社会的変化」を乗り越えていくためにあるべき教育の姿について、業界のキーマンはどのように考えるのか。これからの教育を率いていかれるであろう方々に、2022年の年頭所感をお寄せいただきました(掲載は、お名前五十音順)。

2022年の年頭所感をお寄せくださったサイタコーディネーション代表の江藤真規氏

サイタコーディネーション代表 江藤真規氏


 あけましておめでとうございます。COVID-19に度重なる自然災害、世界中の人々が未経験の課題に直面する中、昨年は、人々の働き方や暮らしにニューノーマルが表れ始めた1年だったと振り返ります。人の有する底力の大きさを再確認するとともに、「つながり」の価値が浮き彫りになりました。子育て世代においては社会の変容に加え、教育の大規模改革もあり、混乱の1年だったと感じます。数値化されない力への着目に入試改革、オンラインの進展による学びの多様化、これらの変化は、保護者の子育て観に変化をもたらし、また、家庭教育への期待も高めました。「みんながやっているから」という考え方から、「我が子にあった学び」へ。子どもを尊重した社会に移行しつつあるのは、とても良い流れだと感じつつ、過渡期を生きる保護者には、見通しの立たない未来への不安も多くあります。
 このような時代に求められるは「つながり」だと考えます。「教える―教えられる」という一方向の関係性は、正解なき世界では機能しません。子育ての不安を軽減し、家庭教育力を高めるためには、人と人との「つながり」が必要です。そして、この「つながり」は、親の学びを通して実現できると考えます。弊社では、子どもの育ちを応援する多様な方々のつながりの場、学びの場を展開すべく、本年も子育てコーチングスクール運営に尽力してまいりたいと思います。

公式Web:サイタコーチングスクール




2022年の年頭所感をお寄せくださった育児・教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏

育児・教育ジャーナリスト おおたとしまさ氏


 年始の抱負などそういったものを特に抱いたことはありません。年が変わっても、私にとっては明日が今日になっただけなのですが、せっかくなので少しだけ説教じみたことを言わせていただこうと思います。もちろん教育は社会にとって非常に大事なことですが、教育は社会を変える万能薬ではありません。教育を語る前に、まずは大人がしっかりしなくてはと思います。
 さて、私事ではありますが、昨年12月にオンラインサロンなるものを開設してみました。「ついにおおたも信者ビジネスを始めたか」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、そうではありません。「オンラインで、安心して子育てや教育について語り合える場をつくりたい」そう思いました。システム上の最低金額設定の月額参加費を頂きますが、会費収益の全額を無料塾と「子どもシェルター」に寄付します。ぜひ、「思うところ」だけでもご覧になってください。

公式Web:オンラインサロン「正解がない時代の育児・教育・受験・進学について気軽に語り合える井戸端」





教育家・見守る子育て研究所 所長 小川大介氏


 明けましておめでとうございます。2022年の幕開けは人と人との交流が戻ってきた喜びを感じます。手探りの未来ではあるけれど希望を胸に、人の力を信じて新たな社会を築いていく一年となることを願っています。
 私の2021年は、「見守る子育て」を世に広める「発信」の一年でした。オンラインサロンを開始し、例年以上にメディア取材をいただき、Youtubeチャンネル「小川大介の見守る子育て研究所」を育ててきました。ありのままを認めるということ、「遊び」の価値、自分自身を大切にする考え方が、少しずつ、でも着実に世の理解を得ていることを実感しています。そして2022年、私は「見守る子育て」の理念をより広く深く届ける5つのチャレンジを行います。
 1)全国講演により「見守る子育て」を各地に届けます。
 2)「子どもの才能診断」サービスをリリースします。
 3)「親も子も幸せになれる中学受験」を提案し、受験家庭をサポートします。
 4)「見守る」メソッドにより社会人のメンタルヘルスをサポートします。
 5)子育てしやすい社会の実現に向けて、男性意識の変革を進める一助となります。
 私の根幹にある思いは、「子どもを信じる」そして「親も信じる」ということ。子どもたちそれぞれの才能と可能性を引き出し、親御さんの笑顔が広がるように取り組んでいきます。今年も応援のほどなにとぞよろしくお願いいたします。

公式Web:YouTubeチャンネル「小川大介の見守る子育て研究所」





文部科学省 大臣官房文部科学戦略官・総合教育政策局教育DX推進室長 桐生崇氏


 あけましておめでとうございます。本年は、GIGAスクール構想による1人1台環境と高速ネットワークが本格的に普段の学びで活用され、データや知見をフルに活用して学びそのものを豊かにする教育DXがさらに進む年になります。
 教育DXは3段階に分かれますが、現在の取組みの多くはアナログをデジタルにしていく第1段階であり、まずはこの部分をしっかり取り組むことが重要です。そのうえで、並行してあるべき未来を描き、第2段階、第3段階も取組みを進められるところは進め、試行や議論を行っていく必要があります。
文科省においては教育DXの実現に向けてルールとツールの整備を加速化しています。具体的には、教育データの相互利活用を行うためにまず必要なデータの内容と規格を揃える「教育データ標準」の公表を進めてまいります。また、公教育のCBTプラットフォームシステム「MEXCBT:メクビット」は、昨年12月から希望する全国の小中高等で活用できるようになっており、令和4年度はさらに大学等でも活用できるようになります。また、地方自治体における学力調査等においてもMEXCBTを活用していただけるようにしていきます。国レベルでDXに取り組まれる学校設置者や学校のみなさま、関係のみなさまの動きを文部科学省は強力に支援いたします。また、これらの取組みは、学校内外を通じた教育や、様々な分野のDXを行うデジタル庁等の関係省庁とも緊密に連携しながら進めていきます。
教育DXのコアは、知見・ノウハウを共有し、教育に関わる人々(子供に限りません)の成長自体を引き上げていくことです。その実現に向け、本年も教育に携わる多方面の皆さまのご意見を伺いながら取り組んでまいりますのでよろしくお願いいたします。

公式Web:文部科学省





慶應義塾大学環境情報学部(SFC)教授 冨田勝氏


 AO入試を日本で初めて導入したSFCは今年で開設32年。偏差値教育全盛の当時、AO入試は「学力低下を招く」とか「合格基準がはっきりせずリスクが高い」などとよく批判されました。今、その卒業生たちの起業やメディア、大企業や官庁などさまざまな分野での活躍が目立ってきました。まさに日本社会はAO的人間を必要としているのです。
 現在、AO入試(またはそれに類する入試)はほとんどの大学が導入しています。今年度のSFCのAO面接はリモートでしたが、全国から元気の良い高校生が、「人生を賭けて挑むに値する目標」を掲げ、それに向けて、今まで何をしてきたか、大学で何をしたいのか、そして卒業後はどのような人生を歩きたいのか、自分の言葉で楽しそうに熱く語ってくれました。得意なことや興味関心事を、どうしたら社会の価値に結び付けられるか、本気で考えているこの子たちは、低迷する日本をきっと将来輝かせてくれるに違いない、と頼もしく思います。
 みんなと同じ勉強をして、受験競争に勝って難関大学に進学して、大会社に就職する。そのような旧世代の価値観を子供に押しつけるのはもうやめましょう。今の大人がやるべきことは、子供たちが生きる30年後の社会を想像し、どうしたら得意を伸ばして未来社会に必要とされる人間になるか、一緒に悩み応援してあげることだと私は思います。

関連記事:「好きを貫いた学び」が評価される入試を(リセマム掲載記事)





steAm代表、大阪・関西万博テーマ事業プロデューサー 中島さち子氏


 2022年、新春心よりお喜び申し上げます。
 激動の世界ではありますが、それは、海のように日々波打ちながらも壮大な空、海、陸、宇宙を感じとることができる大きな旅路の時代ということ。ジャズのように、いろんな存在のいのちの声に耳を澄まし、自分の声もゆっくり聴き出しながら、「今」ここに生きる私たちの音楽を生み出していけたらと思います。
 世界でも日本でも、学びの世界に大きな変革の嵐が起こっています。STEAMというと、一挙にモンゴルや中国やドイツ、カンボジア、ドミニカ共和国、ウガンダ…といろんな国の人が興味関心をもって集まってきます。みんなせっかくの貴重な「人生」の中でもっともっとワクワクしたい。心踊る世界を覗き、覗くだけでなく1かけらの「価値」を残したい。日本の中でもさまざまな多様な場と存在があり、多様性はかけ合わさって分断をこえて見事な音楽を奏でます。
 2023年には国際数学・物理オリンピック、2025年には大阪・関西万博が開催されます。すべてのものにいのちを感じる日本が、世界に対して発信できる思想・世界観はたくさんある。ここからの数年で大きく世界や宇宙とつながり、心がワクワクドキドキするような多様ないのち輝く社会を、0~150歳児の皆さんと一緒に模索していけたら幸いです。

公式Web:steAm




2022年の年頭所感をお寄せくださった情報通信総合研究所の平井聡一郎氏

情報通信総合研究所特別研究員、合同会社未来教育デザイン 代表社員 平井聡一郎氏


 2021年、新学習指導要領の実施とGIGAスクール構想によるICT機器活用という教育改革が動きだしました。COVID-19対応で前倒し実施となったICT機器整備は教育現場に困惑と混乱をもたらしましたが、先生方は戸惑いながらも活用に取り組みました。「ICT機器をまずは使う、とにかく使う」という先生や学校が都市部のみならず、地方の自治体、学校でも増えています。まさに、全国各地に教育改革の点が打たれ、地方からの教育改革が始まったと言えます。
 さて、来年は、これらのICT機器活用の先行事例が全国で見られるようになったことで、周りの学校が具体的な授業のイメージをもちやすくなりました。また、先生や学校、自治体が取り組まれた実践をオンライン研修会やセミナーで発信することが増え、地方の先生の情報収集、共有の機会が格段に増えました。このような背景の中で、2022年は新学習指導要領による個別最適化の学び、協働的な学びの実現を目指し、学校の学びを質的に変えていきます。それによって学校そのものの姿が変わっていき、そこで学ぶ子供たちの未来が変わっていくと思います。そのような2022年をみなさんと共に創っていきましょう。

公式Web:情報通信総合研究所





Shigeko Bork BYBS Coaching LLC代表 ボーク重子氏


 みなさま、新年あけましておめでとうございます。2年間の暗闇を抜けて2022年はパッションを爆発させる年にしたいですよね。
 みなさんの今年の目標はなんですか?コーチは目標設定・達成のプロ、ということで、私も目標を掲げています。2022年はこれまで以上に女性の新しい生き方を応援していきたい。
 そこで今年の私の標語は「女性の新しい3K=個性・キャリア・心の強さ」です。自分軸をしっかりと見つめ、仕事のみならず自分の生き方を見つめ・非認知能力を高めて自分らしい最高に幸せな人生を作っていく。自分のために、そして親の背中を見て育つ子どものために。そんな女性の応援団に是非ともなりたい!
 そこで新しい自己肯定感とキャリアコーチングのコースを春にスタートします。子育てコーチングに関しては非認知能力育児のパイオニアだからこそできる新しい試み「受験X非認知能力」が始まります。受験は子どもの非認知能力を高める最高の機会ともなれば、低めてしまうことにもなる。ここでも鍵は親にあります。受験塾がコミットするのが合格なら、BYBSがコミットするのは受験の先を生きる子どもの心の強さです。
 2022年も「一人でも多くの方に非認知能力の育成を伝える」を胸に進化し続ける非認知能力育成のプロ集団BYBSコーチングを、どうぞよろしくお願いします。
最大の愛を込めて。

公式Web:Shigeko Bork BYBS Coaching LLC




2022年の年頭所感をお寄せくださった東北大学大学院情報科学研究科 教授の堀田龍也氏

東北大学大学院情報科学研究科・東京学芸大学大学院教育学研究科 教授、日本教育工学会 会長 堀田龍也氏


 あけましておめでとうございます。新型コロナウイルスの蔓延も落ち着き始め、まだ予断を許さない状況とはいえ、次第にウィズコロナの時代へと入ってきた年明けとなりました。令和2年度に小学校から全面実施となった学習指導要領の前文には次のような記述があります。「一人一人の児童(生徒)が、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながらさまざまな社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められる。」まさにコロナ禍を予言したかのような前文です。
 今後も「さまざまな社会的変化」が生じることでしょう。私たちはこれらを「乗り越え」ていく必要があります。その際には「あらゆる他者を価値のある存在として尊重」し、「多様な人々と協働」していくことが求められます。その根本には、児童生徒が「自分の良さや可能性を認識する」ということがあります。この前文からも読み取れるように、流れが速く見通しをもちにくいこれからの時代には、従来までの「学んだ結果としての学力」のみならず、「学びに向かう力」が重要となります。「学びに向かう力」とは、学ぶために必要なスキルと学び続けようという意欲に他なりません。学ぶために必要なスキルとしての情報活用能力の育成は、喫緊の課題とも言えます。
 学力観がシフトしているのですから、授業の方法も従来通りというわけにはいきません。従来の授業のどこで情報端末を活用すると有効かという考え方から、1人1台の情報端末が児童生徒の手元にあることを前提とした授業の組み立て方はどうあるべきかを考える必要があることでしょう。そのような授業研究が盛んに行われることを期待したいと思っています。

公式Web:メディアと教育を考える



 年の瀬のお忙しい時期にも拘らずご寄稿いただいた皆さま、ご調整いただきました広報担当の皆さま、誠にありがとうございました。リセマム編集部一同、この場を借りて、あらためて厚く御礼申し上げます。

 本年もお子さまのよりよい未来のために、教育の「今」がわかる時代に即した情報を発信していくよう努めてまいります。今後とも一層のご愛読ご支援を賜りますようお願い申し上げます。

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