簿記1級の平均合格率は約10%といわれています。
“10%”という数値は独学に限らず、通信講座で学んだ受験者も含まれているため、独学のみで考えると合格率は”5%”以下になることが想定できます。
合格率10%は、公認会計士と同じ程度の合格率で非常に難しいです。
ちなみに簿記2級と3級の合格率は約20%と約50%です。
そこで、そんな簿記の独学での合格を目指すにあたって、必要な情報を調査してまとめました。
【結論】簿記に独学で合格することは可能か?
“独学”で簿記の合格を目指すうえで「勉強はどのくらい必要なのか?難しいのか?」など、多くの方が不安に感じる要素はいくつか存在します。
しかし、まずは勉強量を度外視して「そもそも簿記は、大学や講座に通わなくても合格する可能性は1%でもあるのか…?」について、調査結果をまとめました。
いくら独学で勉強しても「受験資格」などが必要だった場合は、学校や講座に通う必要が出てくるものです。
ここでは大きく以下2つの観点から、調査結果をまとめています。
- 「合格率から分析する試験の難易度」の観点
- 「受験資格」の観点
①合格率から導く!簿記の一般的な難易度レベル
簿記1級試験の合格率は以下の通りです。
簿記1級試験 | 受験者数(申込者数) | 実受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
165回 (2023.11.19) | 12,886名 | 10,251名 | 1,722名 | 16.8% |
164回 (2023.6.11) | 11,468名 | 9,295名 | 1,164名 | 12.5% |
162回 (2022.11.20) | 12,286名 | 9,828名 | 1,027名 | 10.4% |
161回 (2022.6.12) | 11,002名 | 8,918名 | 902名 | 10.1% |
159回 (2021.11.21) | 11,389名 | 9,194名 | 935名 | 10.2% |
158回 (2021.6.13) | 9,310名 | 7,594名 | 746名 | 9.8% |
157回 (2021.2.28) | 7,785名 | 6,351名 | 502名 | 7.9% |
156回 (2020.11.15) | 10,078名 | 8,553名 | 1,158名 | 13.5% |
155回 (2020.6.14) | 中止 | 中止 | 中止 | 中止 |
153回 (2019.11.17) | 9,481名 | 7,520名 | 735名 | 9.8% |
簿記2級試験(統一試験)の合格率は以下の通りです。
簿記2級試験 | 受験者数(申込者数) | 実受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
165回 (2023.11.19) | 11,572名 | 9,511名 | 1,133名 | 11.9% |
164回 (2023.6.11) | 10,618名 | 8,454名 | 1,788名 | 21.1% |
163回 (2023.2.26) | 15,103名 | 12,033名 | 2,083名 | 24.8% |
162回 (2022.11.20) | 19,141名 | 15,570名 | 3,257名 | 20.9% |
161回 (2022.6.12) | 16,856名 | 13,118名 | 3,524名 | 26.9% |
160回 (2022.2.27) | 21,974名 | 17,448名 | 3,057名 | 17.5% |
159回 (2021.11.21) | 27,854名 | 22,626名 | 6,932名 | 30.6% |
158回 (2021.6.13) | 28,572名 | 22,711名 | 5,440名 | 24.0% |
157回 (2021.2.28) | 45,173名 | 35,898名 | 3,091名 | 8.6% |
156回 (2020.11.15) | 51,727名 | 39,830名 | 7,255名 | 18.2% |
簿記3級試験(統一試験)の合格率は以下の通りです。
簿記3級試験 | 受験者数(申込者数) | 実受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
165回 (2023.11.19) | 30,387名 | 25,727名 | 8,653名 | 33.6% |
164回 (2023.6.11) | 31,818名 | 26,757名 | 9,107名 | 34.0% |
163回 (2023.2.26) | 37,493名 | 31,556名 | 11,516名 | 36.5% |
162回 (2022.11.20) | 39,055名 | 32,422名 | 9,786名 | 30.2% |
161回 (2022.6.12) | 43,723名 | 36,654名 | 16,770名 | 45.8% |
160回 (2022.2.27) | 52,649名 | 44,218名 | 22,512名 | 50.9% |
159回 (2021.11.21) | 58,025名 | 49,095名 | 13,296名 | 27.1% |
158回 (2021.6.13) | 58,070名 | 49,313名 | 14,252名 | 28.9% |
157回 (2021.2.28) | 70,748名 | 59,747名 | 40,129名 | 67.2% |
156回 (2020.11.15) | 77,064名 | 64,655名 | 30,654名 | 47.4% |
簿記試験は例年、6、11、2月に開催されています。注意点は簿記1級試験は2月に開催されないことです。
1~3級の難易度には大きな差があり、3級や2級は高校生でも簡単に取得が可能です。
日本商工会議所では以下のように定義されています。
簿記のレベル | 内容 |
---|---|
1級 | 極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析を行うために求められるレベル。 合格すると税理士試験の受験資格が得られる。公認会計士、税理士などの国家資格への登竜門。 |
2級 | 経営管理に役立つ知識として、企業から最も求められる資格の一つ。 高度な商業簿記・工業簿記(原価計算を含む)を修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できるなど、企業活動や会計実務を踏まえ適切な処理や分析を行うために求められるレベル。 |
3級 | 業種・職種にかかわらずビジネスパーソンが身に付けておくべき「必須の基本知識」として、多くの企業から評価される資格。 基本的な商業簿記を修得し、小規模企業における企業活動や会計実務を踏まえ、経理関連書類の適切な処理を行うために求められるレベル。 |
合格ラインは各級以下の通りです。
試験科目(簿記1級) | 試験時間(途中、休憩あり) | 合格基準 |
---|---|---|
商業簿記、会計学 | 90分 | 70%以上ただし、1科目ごとの得点は40%以上 |
工業簿記、原価計算 | 90分 |
試験科目(簿記2級) | 試験時間 | 合格基準 |
---|---|---|
商業簿記工業簿記(原価計算を含む)5題以内 | 90分 | 70%以上 |
試験科目(簿記3級) | 試験時間 | 合格基準 |
---|---|---|
商業簿記3題以内 | 60分 | 70%以上 |
2級と3級は合格ラインが7割と設定されていますが、1級は各科目で最低4割が必要です。
合格率や内容を見る限り、簿記2級と3級は独学でも合格はできます。
しかし1級は難しいため、独学でも難しいでしょう。
②クリアすべき受験資格は無いのか?
簿記の試験に受験資格はありません。
最初から1級や2級を最初に受験しても問題ないです。
【おさえるべき】合格の可能性を左右する3つの要素
独学で簿記の合格を目指すうえでは、一人で勉強するとなると、それなりの苦労も。
早速ですが、一番気になるであろう「独学で簿記の勉強をする上で、重要になるであろう要素」について答えをまとめておきました。
【No.1】過去問の入手
簿記の試験に合格するかどうかは過去問の入手が一番重要です。理由は過去問なしで勉強すると、試験の感覚がつかめず不合格になるからです。
具体的には、簿記の試験では問題数が多く、時間との勝負になります。簿記3級では大問が3つあり、1時間以内に30問以上解答しなければなりません。
また2問目と3問目は正確に計算しなければ、全問間違える可能性もあります。合格するためには、過去問で解くスピードや試験問題に慣れる必要があります。
【No.2】会計用の電卓で問題を解く
練習問題や過去問では会計用の電卓を使いましょう。電卓を活用すれば勘定科目の計算を早くできるからです。
一般の電卓はボタンの大きさが不均一だったり、押しにくかったりします。会計用の電卓はボタン一つひとつが大きく、押しやすいのが特徴。
上記でもお伝えした通り、簿記は時間との勝負です。使いやすい電卓を使い慣れれば早く問題を解けるため、試験に合格する確率が大きく向上します。
【No.3】仕訳の内容を瞬時に判断できるようにする
簿記では仕訳の判断速度が合否に大きく影響を与えます。仕分けができれなければ、どの問題も間違えたり、勘定が合わなくなるからです。
大問1では仕訳の問題が出題され、簡単な問題が多いため高得点が必須です。大問2と3は問題文を読んで、仕訳を行いそれぞれの項目の計算をしなければなりません。
仕訳を間違えれば、売掛金や買掛金の計算が合わず、ほかの項目に違う数値で計算するリスクもあります。仕訳ができれば、全体的に問題が解けるようになります。
簿記試験の勉強を独学で進めるメリット・デメリット
独学で簿記に挑むことは、かなり苦労することはわかりますが、もちろん良いこともあります…!
もちろん「苦労する」などのデメリットがあることも事実ですので、その両面から簿記の独学について分析しました。
【分析】独学がメリットの理由
資格に独学で挑戦するメリットはコストを抑えられる点です。
安く学べるため、お金がない学生や入社してから年数が浅い社会人に向いています。
テキストと問題集だけで数千円で済む独学と違い、通信講座なら数万円も費用が発生するところも少なくありません。
通信講座は以下の通りです。
会社名 | 講座名 | 価格 |
---|---|---|
クレアール | 3級・2級目標講義パックWeb通信 | 50,000円 |
STUDYing | 簿記3級・2級セットコース | 22,000円 |
ユーキャン | 簿記2級講座 | 49,000円 |
フォーサイト | 簿記2級スピード合格講座 | 31,800円 |
資格のキャリカレ | 簿記3級・2級日商簿記 | 37,400円 |
通信講座は高価であり、独学のほうが圧倒的に安価で済みます。
自分の好きなときに好きな場所で勉強が可能なため、ストレスなく学べます。
自分のお気に入りのカフェや図書館はもちろん、自分が勉強したい場所を自由に設定可能です。予備校に通うとなると、学校に行ったり、指定の場所に移動しなければなりません。
またスキマ時間にも独学の人は学べます。電車の待ち時間やテレビコマーシャルの合間に少しだけ勉強が可能。
勉強したい場所で勉強できるため、ストレスを感じずリラックスして勉強できます。
自分で勉強したいと思ったもののため、自主的に簿記の内容を学びます。自主的に学ぶので内容が頭に入りやすく、試験へのモチベーションを高くしたまま維持が可能。
強制的に勉強をさせられても学習内容が頭に入らないでしょう。予備校や通信講座は相手から情報が一方的に流れてくるため、覚えにくく勉強へのモチベーションが保てません。
独学なら自分から勉強するため、内容が身につきやすいです。
【分析】独学のデメリットと対策法
独学は通信講座や予備校に比べて、勉強の効率が悪くなる可能性があります。
理由はテキストや問題集が市販の内容よりもわかりやすく、内容が頭に入りやすいからです。
市販の内容もわかりやすいものは多いですが、最新の問題傾向を分析したり、試験の予想問題を作成する能力は予備校のほうが圧倒的に高いです。
※対策法※
自分に合う参考書を選びましょう。予備校や通信講座のテキストではなくても理解しやすい市販の参考書は多いです。
選ぶときは一度目を通してすぐに理解できるかどうかで判断しましょう。
勉強仲間がいないため、モチベーションを維持できないのも、デメリットの一つです。
独学で資格勉強をすると、モチベーションを維持できる仲間がいません。
予備校だと同じ教室に同じ資格に向けて勉強する仲間がいます。自分では解けなくても誰かの助けがあれば、理解できるかもしれません。
※対策法※
TwitterやInstagram、YouTubeで仲間を探してみましょう。
とくにTwitterでは、簿記の勉強している人をすぐに見つけられます。Twitterで勉強内容を発信すると、同じ内容を勉強している人とつながれます。
ほかにも簿記の問題解説や過去問の予想を発信しているアカウントも存在。お互い勉強内容を発信すれば、お互いを高め合えるのでおすすめです。
独学の人は自分で勉強スケジュールを立てなければなりません。
学習の開始から試験合格までの綿密な計画が必要不可欠です。毎日のタスクはもちろん、過去問演習の結果から勉強時間を長くしたり、調整したりしなければなりません。
また計画ができても、やる気が起きない日もあると思います。そういうときでも試験勉強をやり遂げる強い意志を持って、簿記試験の勉強に向かわなければなりません。
※対策法※
対策法としては以下の通りです。
- TwitterやInstagram、YouTubeで目標を宣言する
- 勉強仲間を作る
- 一日のタスクを無理に詰め込まない
- 試験には余裕を持って勉強する
- 過去問をすぐに始める(テキストを1周するだけでもよい)
とにかく逃げ道をなくすのが先決です。周りに伝えれば、自然と勉強するようになります。
独学で効率良く勉強する方法とは?
最後に、独学で効率良く合格を目指すために!押さえておくべき、3つのポイントをまとめておきました。
ポイント① 教材の選び方
教材の選び方は以下の3つです。
- 図解やイラストが充実していること
- 説明がわかりやすく、自分に合うこと
- 最新の出題範囲や会計基準に対応していること
テキストの内容が、辞書のような文のみで理解するのが難しくなるかもしれません。
またテキストによって説明の方法が違うため、自分に合う内容を選びましょう。インターネットでおすすめと紹介されても自分に合うとは限らないので注意が必要。
簿記の出題範囲は定期的に変更され、過去には試験の出題方法が大幅に変更されて、合格率が大幅に下がった回もあります。
ポイント② 過去問を早く解き始める
簿記の試験に合格する近道は過去問に慣れることです。
簿記の試験範囲は毎年多少の変更はありますが、大枠は変わりません。
たとえば簿記3級なら、
- 仕訳問題
- 帳簿記入
- 勘定記入問題
- 決算整理絡みの総合問題
が出題されます。
試験の内容に違いはありますが、解き方や考え方は全く同じです。つまり上記の4題を完璧に理解できれば、3級は十分に合格が可能です。
合格するためには、過去問でなれて十分な対策が必要なため、できる限り早く過去問を解かなければなりません。
ポイント③ 試験の解答可能時間より短い時間で過去問を解く
3つ目のポイントは試験時間よりも短く解くことです。
試験中の残り時間に余裕があると、点数を上げやすくなるからです。
試験の残り時間がながければ、以下のことができます。
- 解答の見直しを複数回できる
- 焦らずに自分のペースで解ける
- 計算ミスを減らせる
- 解答に不安な場所に多く時間を使える
簿記の試験では早く正確に解くことが重要です。
過去には試験問題の数が少ししか減っていないのに、試験時間が半分になった例もあります。(157回と158回の簿記3級を比較)
試験対策を万全にするため、解答時間を短くして余裕で合格できる準備が必要です。