厚生労働省が公開している令和4年雇用動向調査結果の概況によると、インフラエンジニアを含むエンジニアの離職率は11.9%。全職種の平均離職率15.0%と比べてエンジニアの離職率は低いものの、辞めていく人もいるのが実情です。
インフラエンジニアとして働く中で、「きつい」「ついていけない」と感じ、辞めたいと思うことは珍しくありません。しかし、辞めたい気持ちがあっても、本当に辞めるべきか判断できず、踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、インフラエンジニアが「辞めたい」と感じる主な理由と、それに対する具体的な対処法を詳しく解説します。さらに、辞めるべきか続けるべきか迷っている方向けに、判断のポイントも紹介しています。今後のキャリアに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
インフラエンジニアを辞めたい理由
インフラエンジニアを辞めたいと感じたときに、辞めたい理由を考えることが大切です。
ここでは、インフラエンジニアを辞めたいと感じる主な理由を紹介します。自分がなぜ辞めたいと感じているか、分析するときの参考にしてください。
夜勤・休日出勤が多くてきつい
インフラエンジニアを辞めたい理由として、夜勤・休日出勤が多くてきついことがあげられます。
インフラエンジニアの仕事は、サーバーやネットワークを安定して稼働させることです。なかでも、運用・保守の業務は24時間365日行う必要があり、インフラエンジニアは24時間体制で働かなければなりません。
運用・保守の業務では夜勤や休日出勤などシフト制で働くことが一般的で、不規則なスケジュールになることが多いのが実情です。その結果、生活リズムが乱れ、体力的・精神的に負担を感じる人も少なくないでしょう。
単純作業が多くてやりがいを感じられない
インフラエンジニアとして働くなかで、単純作業が多くてやりがいを感じられない人もいます。
とくに、保守・運用における主な業務は、システム監視、サポート。マニュアル化された業務の繰り返しばかりで、つまらなく感じる人もいます。また、サービスを作りたいと思ってIT業界を志望した人にとっては、やりがいを感じづらいといえるでしょう。
システムが問題なく動いているのは当たり前で、感謝される機会が少ないことも要因のひとつです。その結果、モチベーションの低下につながり辞めたいと感じるケースもあります。
給料が安くてつらい
インフラエンジニアとして働いている人から、給料が安くてつらいとの声もあります。
dodaの調査からわかるインフラエンジニアの職種別の平均年収は以下のとおりです。
サーバーエンジニア | 約454万円 |
---|---|
ネットワークエンジニア | 約446万円 |
データベースエンジニア | 約403万円 |
セキュリティエンジニア | 約487万円 |
※参考:全体平均 | 約452万円 |
担当する業務内容によって年収は変動しますが、インフラエンジニアは全職種の平均年収と同等以上の平均年収です。ただ、夜勤や休日出勤などの負担を考えると、給与が業務に見合わないと感じる人も多くみられます。
勉強量が多くてついていけない
インフラエンジニアは、高度な技術と知識が必要です。そのため、インフラエンジニアになりたての頃は、業務内容を理解するための勉強が欠かせません。
インフラエンジニアは、ネットワークやサーバー、セキュリティなど幅広い業務に対応するための知識が必要です。また、技術は日々進歩しており、最新の技術を学び続ける姿勢が求められます。
これらの要因から、勉強嫌いの人や積極的に技術を学ぶ姿勢がない人は、勉強がつらく感じることもあるでしょう。また、インフラエンジニアとしてハードに働くなか、勉強の時間が取れずについていけないケースも考えられます。
将来性に不安を感じている
インフラエンジニアの将来性に不安を感じている人もいます。インフラエンジニアの将来性に不安を感じるポイントは以下のとおりです。
- インフラエンジニアスキルを活かせる業界が限られている
- クライアントによれば給与アップが期待できない
- 技術の成長が見込めない
インフラエンジニアは特有の業務に関わるため、ほかのIT職種にも活用できるスキルが身につきづらいと感じる人がいます。また、マニュアル化された業務が多く、成長できないことに不安を感じるケースもあるのが現実です。
さらに、保守運用は成果が見えづらいところもポイント。クライアントからの予算を確保しづらいことから、給与アップが期待できないこともあります。
これらの要因から、インフラエンジニアとして長期的に働けないと感じる人もいるでしょう。
インフラエンジニアに向いている人・向いていない人
インフラエンジニアを辞めたいと感じたとき、まずは自分にインフラエンジニアがあっているのかどうか再確認することが大切です。
インフラエンジニアに向いている人・向いていない人の特徴をチェックして、適正を確認しておきましょう。
インフラエンジニアに向いている人の特徴
インフラエンジニアに向いている人の特徴は以下のとおりです。
- 責任感が強い人
- 好奇心や学習意欲がある人
- 慎重な対応ができる人
- 理解力がある人
- コミュニケーションが得意な人
システムトラブルは企業やユーザーに大きな影響を与えるため、責任感を持って業務に取り組める人が向いているといえます。また、 常に新しい技術や知識を学び続けられる人は、幅広いインフラエンジニア業務に対応でき活躍できるでしょう。
また、トラブルの対応時には、慎重な対応や理解力が必要です。慌てず冷静に、トラブルの原因を理解して解決できる人は、インフラエンジニアの適正があります。
さらに、チームメンバーやクライアントとのやり取りもあるため、コミュニケーション能力もインフラエンジニアに大切なスキルです。
いくつか当てはまる場合、インフラエンジニアに向いているといえます。環境を変えることで働きやすくなる可能性があるため、インフラエンジニアとして働き方を変えることを選択肢に入れておきましょう。
インフラエンジニアに向いていない人の特徴
インフラエンジニアに向いていない人の特徴も解説します。以下のような人はインフラエンジニアに向いていない可能性が高いです。
- 不規則な勤務をしたくない人
- 細かい作業が嫌いな人
- 地道な作業が苦手な人
インフラエンジニアの運用・保守業務では、夜勤や休日出勤が必要です。また、システムトラブルの際にはスピーディに対応するために、急遽業務が発生することもあります。そのため、不規則な勤務をしたくない人にとってストレスになるでしょう。
また、ネットワークの設定やサーバーの構築などの細かい作業が嫌いな人は、インフラエンジニアに向いていません。トラブル発生時には、ひとつずつ検証して原因調査・復旧作業を行うため、地道な作業が苦手な人はつらく感じることも想定されます。
インフラエンジニアは向き不向きがはっきりする職種です。向いていない人の特徴に当てはまる場合は、ほかの働き方も視野に入れましょう。
インフラエンジニアを辞めたいときにできること
次は、インフラエンジニアを辞めたいときに取るべき行動を解説します。さまざまな選択肢があるので、自分に合うものやできそうなことを見つけてください。
今の職場で改善できないか検討する
まずは、今の職場の環境を改善できないか検討しましょう。
インフラエンジニアは、サーバー、ネットワーク、データベースなど専門分野があります。それぞれの分野で業務内容や求められるスキルが異なるため、部署によって働き方が変わる可能性が高いのが特徴です。
状況を整理して、働き方に悩んでいることを上司に相談してみてください。前向きに受け取ってもらえれば、部署異動や配置換えなどで状況を改善してくれるでしょう。
- 夜勤・休日出勤が多くてきつい
- 単純作業が多くてやりがいを感じられない
- 将来性に不安を感じている
働き方を改善できる転職先を探す
インフラエンジニアの仕事が嫌いでない人・適正がある人は、同業他社に転職する方法も有効です。会社の規模で働き方や条件が異なり、転職することで環境改善が期待できます。
大企業・中小企業のインフラエンジニアの働き方の違いは以下のとおりです。
プロジェクトの規模 | 大企業:規模が大きい 中小企業:規模が小さい |
---|---|
業務内容 | 大企業:進行管理が中心 中小企業:設計・構築・テスト・保守運用など |
業務範囲 | 大企業:担当領域が限定的 中小企業:幅広い業務を担当 |
年収・福利厚生 | 大企業:年収が高め・福利厚生も充実 中小企業:企業による |
大企業は、大きなプロジェクトの進行管理に関われて、年収・福利厚生の条件が良い点が特徴です。一方、中小企業は、設計や構築、テスト、保守運用などの開発部分に関わることが多く、担当する業務は幅広いところがポイント。企業の規模感で違いがあることがうかがえます。
人によって向いている働き方は異なるため、企業の特徴を理解して自分に合う働き方を見つけましょう。
- 夜勤・休日出勤が多くてきつい
- 単純作業が多くてやりがいを感じられない
- 給料が安くてつらい
- 将来性に不安を感じている
フリーランスのインフラエンジニアとして働く
インフラエンジニアとしてスキルがあり、職場に不満を感じている人は、フリーランスとして働くことも考えてみると良いでしょう。
レバテックフリーランスの調査によると、フリーランスのインフラエンジニアの平均年収は約768万円。最高年収は1,620万円と、技術力があれば高単価の案件を受注でき、会社員よりも高い収入を得られる可能性があります。
また、勤務時間や場所を自由に決めることができるところもポイントです。リモートワークが可能な案件もあり、ライフスタイルに合わせて働き方を選択できます。
ただし、フリーランスの場合、収入が安定しない・営業力が必要などの負担が大きいところが注意点。会社員のインフラエンジニアを辞める前には、しっかりと準備することが大切です。
- 夜勤・休日出勤が多くてきつい
- 単純作業が多くてやりがいを感じられない
- 給料が安くてつらい
- 将来性に不安を感じている
ほかの業界のエンジニアにキャリアチェンジする
インフラエンジニアを辞めたいときに、ほかの業界のエンジニアに挑戦することも選択肢のひとつです。代表的な業界は以下のようなものがあります。
- 通信業界
- Sler業界
- ソフトウェア業界
- ハードウェア業界
- Web業界
- ゲーム業界
業界によって、関わる仕事や働き方が大きく異なります。夜勤や休日出勤が少ない業界や、サービス開発などのクリエイティブな業務に関われる業界もあり、希望の働き方に近づきやすくなるでしょう。
- 夜勤・休日出勤が多くてきつい
- 単純作業が多くてやりがいを感じられない
- 給料が安くてつらい
- 将来性に不安を感じている
インフラエンジニア経験を活かせるIT職種に挑戦する
インフラエンジニアを辞めたいときに、ほかの職種に挑戦するのも選択肢のひとつです。
ただし、異業種への転職は、スキルや経験が活かしづらくハードルが高いのが実情。一方、IT職種はインフラエンジニアの経験を活かせるため、キャリアチェンジを目指しやすいといえるでしょう。
インフラエンジニアの経験を活かせるIT職種には以下のようなものがあります。
- プロジェクトマネージャー(PM)
- ITコンサルタント
- セールスエンジニア
PMは、マネジメント業務を担当する職種で、インフラエンジニアのキャリアアップの代表的な例です。また、企業のITインフラ・システムのアドバイスをするITコンサルタントも選択肢。インフラシステムの知識を活かして、セールスエンジニアとして活躍する人もいるでしょう。
インフラエンジニアの経験を活かせる働き方から、自分に合う職種を見つけることが大切です。
- 夜勤・休日出勤が多くてきつい
- 単純作業が多くてやりがいを感じられない
- 給料が安くてつらい
- 勉強量が多くてついていけない
- 将来性に不安を感じている
インフラエンジニアを辞めたいときに考えるポイント
インフラエンジニアを辞めたいときに取るべき行動があるとわかったものの、動き出せない人は少なくありません。失敗したくないと思う人もいるのではないでしょうか。
ここでは、インフラエンジニアを辞めたいときに考えるポイントを解説します。後悔しない選択をするためにチェックしておきましょう。
インフラエンジニアのメリットとデメリットを再確認する
インフラエンジニアを辞めたいと感じた場合、まずはインフラエンジニアのメリットとデメリットを再確認してみましょう。
インフラエンジニアのメリット | 需要が安定している 大規模のプロジェクトに関われる 社会貢献度が高い |
---|---|
インフラエンジニアのデメリット | 休日出勤・夜勤があることも 障害発生時に対応する必要がある 幅広い知識が必要 |
インフラはITシステムの基盤のため、常に需要があります。トレンドに左右されないため、安定して働き続けられるところがインフラエンジニアの大きなメリット。また、全国の人が利用するシステムなど大規模のプロジェクトに関われる可能性があり、社会貢献度が高いところも特徴です。
一方、休日出勤や夜勤が多いところが、インフラエンジニアのデメリット。また、障害発生時に急遽対応する必要があり、 サーバー、ネットワーク、データベースなど幅広い知識を身に着けなければならないところに負担を感じる人が多いのが実情です。
これらのメリットとデメリットを理解して、インフラエンジニアを辞めても後悔しないか判断してください。
理想の働き方をはっきりさせる
もし転職するのであれば、インフラエンジニアを辞める前に理想の働き方を明確にしておきましょう。何となくインフラエンジニアを辞めてしまうと、転職後も同じ気持ちになってしまうかもしれません。
たとえば、ワークライフバランスを重視したい場合、残業が少ない・土日祝休みなどの条件で絞り込むことで、理想に近い企業を見つけやすくなります。ほかにも、年収を上げたい、やりたい仕事をしたいなど、譲れない条件を考えておくことが大切です。
このとき、今の職場では本当に実現できないのか、再度確認してみてください。上司に相談することで、理想の働き方ができるなら、転職を焦る必要はないでしょう。
キャリア・スキルの棚卸しをする
今までのキャリアやスキルを棚卸しすることも大切なポイントです。インフラエンジニアとしてのスキルやこれまでの経験、学生時代に学んだことなど、今につながる情報を整理しましょう。
自分のキャリアを確認すれば、将来どうなりたいのかを考えられます。本当にインフラエンジニアを辞めたいのか、見直すきっかけにもなるでしょう。
またスキルを整理しておくと、転職する場合にも役立ちます。転職先を探すのがスムーズになり、面接でもしっかり自分をアピールできるはずです。
ほかの企業の求人情報を見てみる
どうしても環境を変えることに踏み切れない場合は、ほかの企業の求人情報を見てみてください。想定年収・仕事内容など、ある程度の条件は確認できます。自分のスキルを活かせる職場があるかチェックしておくことが大切です。
また、転職口コミサイトの情報もチェックしてみるのもおすすめ。社内の雰囲気・残業時間・辞めたい理由など、リアルな評判を知ることができます。自分の職場と比較して、良い環境があるのか調べる時にも役立つでしょう。
事前に情報を集めておけば、転職するとしてもミスマッチを防げるところがポイント。入社後に再度「辞めたい」と思うことも減らせます。
IT転職エージェントに相談してみる
IT業界に特化した転職エージェントでは、転職市場の動向や自身の市場価値を確認できます。そのため、インフラエンジニアを辞めたいと考えている人にとって、情報収集の場として最適です。
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