近年、デジタルトランスフォーメーション（DX）の進展が企業に大きな変革をもたらしています。特に中小企業の変革を支援するITコーディネータの資格取得が注目されています。
経済産業省推進資格であるITコーディネータは、企業の経営とITを橋渡しし、デジタル技術を経営に生かすための専門家です。今回は、ITコーディネータ資格の重要性や取得後のキャリアパスについて、野村会長にお話を伺いました。
ITコーディネータ資格の役割とその重要性
──ITコーディネータ資格を取得することで、どのような役割を担うことができるのでしょうか？
野村会長ITコーディネータは、中小企業や自治体への支援、また大手企業のシステム戦略部門を担当する役割を担います。
特に重要なのは、経営者の立場に立ち、進化の激しいITをどのように経営に組み込むかを考えることです。
ITコーディネータの資格取得を目指すことで、ITエンジニアが経営を学んだり、マネジメント経験者の方がITを活用する方法を学んだりする場が提供されます。各種の資格をお持ちの方がダブルライセンスを目指すときにITコーディネータを選択される方も増えています。
ITと経営、両方の知識をつなげることが求められるため、企業内でデジタル化を進める際にも不可欠な人材となるのです。
また、デジタル化が進む中で、企業が直面する複雑な経営課題に対して、ITコーディネータプロセスガイドラインという実践的な課題解決プロセスを持っています。
経営者や部署間の意見交換の場において、戦略的な議論をリードできる専門家となれるでしょう。
──現在のIT業界におけるITコーディネータ資格の位置づけや社会的な需要について、どのようにお考えですか？
野村会長現在、ITコーディネータ資格はさまざまな業界から非常に注目されています。
この資格は、企業のDX（デジタルトランスフォーメーション）を進めるために役立つ人材を育成することを目的にしています。
近年はITの進化が進み、競争力向上のために経営者とIT担当者が一丸となって企業が抱える経営課題の解決に取り組む必要があります。
ITコーディネータ資格を取得した人材は、経営者の視点を持ちながら、ITを活用してビジネスの課題解決に取り組むノウハウを持っています。
このノウハウが、デジタル技術が経営戦略にどう組み込まれるべきかを見極める上で非常に重要です。そのため、ITコーディネータは、企業のデジタル化を推進する役割を担うキーパーソンとなっています。
──有資格者の需要は今後も高まり続けると思いますか？
野村会長もちろんです。
ITコーディネータ資格の需要は、DXの進行とともに急激に高まりました。多くの企業で、ITを経営戦略に組み込む必要性が増し、ただの技術者ではなく、経営層との対話を通じて戦略を導き出せる人材が求められるようになったからです。
以前のIT職種のポジションは、主に技術的な役割に留まっていましたが、今では企業全体の戦略に関わる役割が重要視されています。
今後さらにその傾向は高まるでしょう。ITコーディネータ資格を取得した人材が、さまざまな業界で活躍をし続けると思います。
デジタル化時代におけるITコーディネータ資格の価値向上
──今後の資格制度の進化についてもお聞かせください。
野村会長2025年6月より「ITコーディネータ アソシエイト」制度を新設しました。アソシエイトはITコーディネータのエントリー資格です。こちらは経済産業省からの要請により、中小企業の支援を行うDX推進人材のすそ野を広げるためにスタートしたものです。
また現在、AI技術（特に生成AI）が普及する中で、企業がこれらの技術をどのように業務に組み込むかを考える能力が求められています。そのため、ITC協会では「中小企業向けAI活用ガイド」を作成中です。このガイドにより、スムースなAI活用が実践され、ITコーディネータ資格の価値はますます高まり、有資格者の需要も高まっていくでしょう。
ITコーディネータ資格は、経済産業省推進資格であり、国の掲げたスキル体系であるDSS（デジタルスキルスタンダード）においても重要な資格と位置付けられています。具体的には、DX推進スキル上の「ビジネスアーキテクト」という人材像です。有資格者の市場価値は、今後も高まり続けるはずです。
資格取得後も学び続ける重要性 ― 継続的学習のサポート体制
──ITコーディネータ資格を学ぶ上での工夫やサポート体制はありますか？
野村会長ITコーディネータの資格は、ケース研修を通じて実務に即した学びが得られるのが特徴です。このような実践的な学びの場が、資格取得後に即戦力として活躍するために非常に重要です。
またITコーディネータ資格取得者は、資格を維持するために継続的な学習が求められます。資格取得後も新たな技術や経営戦略を常に学び続ける仕組みがあり、変化の激しいIT業界においても陳腐化せずに活躍し続けることができるはずです。
継続的な学習は、資格更新のために必要なポイントを積み上げるだけでなく、企業内でのキャリアアップにも直結します。
ITコーディネータは常に新しい知識を取り入れ、最新の技術動向を把握することが求められるため、学び続ける姿勢がキャリアにおいて非常に重要です。
──ITコーディネータ資格を取得後、どのようなキャリアパスが開けるのでしょうか？
野村会長資格を取得した多くの人は、企業内でのキャリアアップに加え、コンサルタントとして活躍の幅を広げるケースもあります。また大手企業では、経営層との対話を通じて、DX戦略を立案・実行できるポジションが増えてきています。
資格取得後には、企業内での役職アップだけでなく、独立して自分のコンサルティング事業を始めるというキャリアパスもあります。ITコーディネータは企業のDX推進を支援するだけでなく、自分自身の事業を立ち上げるという新たな挑戦もできるでしょう。
また最近ではITコーディネータ資格を持つ人材を求める企業が増えており、企業内でデジタル化を推進するためのポジションで活躍するチャンスが広がっています。特に、経営視点でITを活用できる人材が必要とされているため、ITコーディネータは今後も高い需要が期待される職業です。
ケース研修とグループディスカッションで実務に直結するスキルを習得
──ITコーディネータ資格を取得するために推奨される学習方法や教材について教えてください。
野村会長ITコーディネータ資格を取得するための学習方法として、まずバイブルである「プロセスガイドライン」を読み込むことが推奨されています。このガイドラインは、デジタル経営推進のための基本的なプロセスを学ぶための教材として最も基本的なものです。
なおこの教材は無料でダウンロードできるため、いつでも、どこでも学習を始めることができます。
また試験対策としては、サンプル問題を協会HPに掲載しており、さらにキーマンズネットでは、ITコーディネータ模擬試験を毎日1問配信しています。（登録無料）
また先ほどお話した通り、資格を取得するためには、ケース研修を受ける必要があります。試験対策に自信のない方は、受験よりも前にケース研修を受講することで、試験対策にもなります。（「試験の合格」と「ケース研修受講」は、どちらが先でもOKです）
ケース研修では、実際の企業が抱える課題を解決するために、グループディスカッションを行いながら解決策を導き出します。実務を想定した研修を実施することで、実務に活かせるスキルが身に付きます。
また「プロセスガイドライン」を理解するために、eラーニングでいつでも場所を問わず学習ができる環境も整っています。このような柔軟な学習方法であれば、働きながら資格取得を目指すこともできるのではないでしょうか。
企業のデジタル化を牽引するITコーディネータの新たな役割
──社会におけるITコーディネータの役割はどのように変化していくと考えられますか？
野村会長今後、ITコーディネータは地域のけん引役としてもさらに進化していくと考えています。
DX推進が加速する中で、より多くの企業がデジタル化を進めていく必要がありますが、地方では推進役不在のケースも多く、ITコーディネータがその重責を担うことも今後高まるでしょう。
具体的には、経済産業省の推進する地域DX推進ラボでの推進役やさらに地域金融機関の方がITコーディネータ資格を取得し、内閣府の「地域デジタル化支援促進事業」等でITコーディネータ資格を活かして活躍しています。
また、資格制度自体も進化し、より多くの中小企業支援者が参加できるよう前述したアソシエイト制度を開始し、ITC協会も邁進していきます。
社会におけるITコーディネータの役割は、単にITを導入するだけでなく、コミュニケーション力やファシリテーション力を活かし、企業全体のデジタル化を推進し、経営戦略にITを組み込むことにあります。
ITコーディネータ資格を取得した後、重要なのは、知識を得たことだけに満足しないことです。この資格は、ただの“名刺代わり”ではなく、実際に現場でどのように活用するかが非常に大切です。
日本経済発展のため、地域創生のため、今日もITコーディネータは活躍していますので、もっと多くの方がITコーディネータ資格にチャレンジいただけるよう、祈念しております。
──本日は貴重なお話をありがとうございました。
ITコーディネータ資格は、単なる技術的なスキルを超えて、経営戦略にITをどう活かすかを学ぶ資格です。デジタル経営推進が求められる今後、企業にとってITコーディネータ資格を持つ人材はますます重要な存在になるでしょう。
また、資格取得後の活用方法について、野村会長は「学び続けることが大切」と語ります。ITコーディネータ資格は、単に知識を得るためのものではなく、その知識をどう活かすかが重要です。
継続的に学び続け、実務に役立てていくことで、キャリアを大きく前進させることができるでしょう。