― 日本心理FT協会・吉見聖伸さんに聞く、心理支援の入り口 ―
ストレス社会、複雑化する人間関係、不安定な時代背景──。そんな中、心のケアやカウンセリングへのニーズは高まっている一方で、「心理支援を受ける」ことへの敷居の高さを感じている人は少なくありません。
今回取材したのは、「心理支援の最初の一歩=インテーク」に着目し、誰もが学べる検定制度として「心理FTインテーク検定®」を立ち上げた、日本心理FT協会の代表理事・吉見聖伸さん。医療・福祉・教育の現場で豊富な経験を持つ吉見さんが、なぜ「インテーク」に焦点をあてたのか。資格の意義と可能性について語っていただきました。
心理支援の入り口に、気軽にアクセスできる世の中を

ストレス社会のなか、誰もが悩みを抱える時代。心理支援を受けるとなると「専門的すぎて難しそう」「そもそも相談していいのか分からない」と、ためらう人は少なくありません。
そこで、“心理支援の入り口”のハードルを下げようと設計されたのが、日本心理FT協会の「心理FTインテーク検定®」です。
吉見聖伸さんストレスや人間関係の悩みを抱える人が増える一方で、心理支援を受けることの敷居はまだ高いと感じています。だからこそインテーク(初回面接)に特化した関係づくりのスキルを広めたいと思いました。専門家だけでなく、支援に関心がある一般の方にも“心理支援の第一歩”として学んでいただきたいです。
心理的安全性をどう担保するかは、対人支援の最前線で働くすべての人に共通する学びです。
インテークとは、心理支援の“はじめの一歩”
心理支援の現場で「インテーク」と呼ばれる初回面接は、単なる聞き取りにとどまりません。信頼関係の第一歩として、関係構築・情報収集・心理的安全の提供が求められる重要なプロセスです。
吉見聖伸さんインテークは、信頼関係をつくる足がかりであり、相手が『この人は害を与える存在じゃない』と安心できる場づくりでもあります。そういった意味で、心理支援における基本が凝縮されているプロセスだと感じています。
この考えをもとに設計された検定カリキュラムには、現場でも家庭でも活用できる“信頼関係のつくり方”が詰め込まれています。
心理支援のスキルを、誰もが学べる形に
教材は1日15〜20分程度のワーク形式で構成され、1か月で無理なく修了可能なボリューム。チャット機能を通じて、学習中の質問にも気軽に対応しているそうです。
吉見聖伸さんテキストはすべて私が書いています。心理用語はなるべく使わず、日常生活に置き換えて理解できるように意識しています。困ったらチャットで直接やりとりできる仕組みもあるので、安心して取り組んでくださいね。
電子書籍・紙の書籍の両方に対応しており、自分のペースやスタイルにあわせた学び方が選べます。はじめて心理支援にふれる方にも、無理なく、心地よく学べる設計です。
専門職だけの知識じゃない──日常に活きる心理スキル

医療・福祉・教育・人事・子育て支援……心理的な関わりが必要とされる現場は年々広がりつつあります。
吉見聖伸さん従来の心理資格は、専門職向けが中心でした。でも今は、学校や企業、地域でも“聞く力”へのニーズが高まっていますよね。だからこそ、一般の人が心理支援の基礎を学べる機会も必要だと感じています。
助産師・保健師・キャリア支援者・受付職など、人と関わるあらゆる仕事において、インテークのスキルは有効な武器になります。どんな立場の人でも「大丈夫だよ」と伝えられる存在になれたら──そんな願いに、「聞く力」はそっと寄り添ってくれます。
関係づくりができるかどうかが、支援の質を左右する
相手にとって“安心できる存在”になれるかどうか──インテークにおける最重要ポイントはここにあります。特に精神障害者や高齢者など、警戒心を抱えやすい相手との関係づくりには、丁寧な技術と理解が欠かせません。
吉見聖伸さんカウンセリングの知識を使った関係づくりです。私は安全ですよ、安心ですよと伝えられるかどうかが大切なんです。講演先では、特に警戒感を持つ相手と向き合う職種の方からの共感が多いです。
心を開いてもらえるかどうかは、どんな言葉を使うかより、そこに「誰がいるか」にかかっています。支援者の“在り方”こそが、信頼の扉を開く鍵だと言えます。
“聞く”という技術を、体系的に学ぶ
インテーク検定では、非言語コミュニケーションや傾聴の仕方についても丁寧に扱います。「うなずき方」「目線」「沈黙の受け止め方」など、些細に見える関わり方が、相手の開き方を大きく左右するからです。
吉見聖伸さんたとえばインタビューにおいても、驚くときに体をのけぞったり、声の抑揚をつけてくださっていますよね。“伝える技術”って、実は普段意識してないけれど、人の話を引き出すうえで大事なんです。
なんとなくやっていた関わり方にも、意味や技術があると気づくことが大切です。心理FTインテーク検定®では、相手に向き合う姿勢も含めて丁寧に言語化し、実践につなげていきます。
受講者の変化──「会話が穏やかになった」
受講者からは「相談が増えた」「話を遮らずに聞けるようになった」「会話が穏やかになった」などの声が寄せられているそう。
吉見聖伸さん医療現場や専門学校など、さまざまな領域で講義を行っています。受講者からは“会話は焦らなくても良い”と、大きな気づきがあったという感想もありました。
「聞く力」は他者との関係性だけでなく、自分自身との向き合い方にも影響します。検定を通じて、心のゆとりや対話への自信を手にした受講者も少なくありません。
心理の世界をのぞいてみたい人へ──気軽にはじめられる検定制度

検定はオンライン完結型で、価格も1万円以下と、心理資格の中では試しやすい水準に設定されています。
吉見聖伸さん心理の世界にちょっと興味がある、でもいきなり何万円も払うのは不安……。そんな方にも“心理の入口”として試してもらいやすい価格帯にしました。まずは足を踏み入れてみる、その第一歩になればと思います。
心理支援の世界は、遠いものではなく、私たちのすぐそばにある。支援の入り口に迷わず立てる仕組みが「心理FTインテーク検定®」です。
インテークの可能性は、まだまだ広がる
今後は、発達支援や高齢者支援・企業のメンタルヘルス研修など、より具体的な現場にあわせた応用版の開発も構想中とのこと。
吉見聖伸さん最近は、関係づくりに悩む現場の声をよく耳にします。たとえば職場で大人の発達障害にまつわる困りごとや、接し方に悩むケースも聞かれますね。さまざまな課題に対応できるインテークの応用編も、これからつくっていきたいと思っています。
心理支援のスキルは、医療や福祉の現場だけでなく、学校、地域、家庭、そして企業へと広がっています。「まず話を聴く」「安心できる関係をつくる」という基本に立ち返ることで、対人関係の土台が整っていくのでしょう。
話を聞く力は、これからの時代を支える土台に
人と人がわかりあうのが難しい今だからこそ、「話を聞く」「向き合う」「安心をつくる」力が、あらゆる場面で求められています。心理FTインテーク検定®は、誰かの力になりたいという想いを、実践へとつなげる第一歩を支える資格です。
支援職に限らず、家庭や職場、地域のなかで人と関わるすべての人にとって、関係づくりの技術は一生ものの学びになります。難しい専門用語ではなく、日々の会話やふるまいからはじめる「心理支援」は、自分と相手を大切にする生き方そのものかもしれません。
今だからこそ、「話を聞く」姿勢を、改めて見つめてみませんか?
