デジタル化が急速に進む昨今、地方企業においてもDX(デジタルトランスフォーメーション)は避けて通れない課題です。しかし、多くの現場では「何から始めればいいのかわからない」「ITツールを導入したが活用しきれていない」といった悩みが渦巻いています。
こうした課題に対し、ITスキルの習得ではなく「自走できる人材」の育成を通じて地域変革に挑んでいるのが、沖縄を中心に全国で活動する「一般社団法人REIONE」です。
最大の特徴は、都市部の大企業で活躍するプロフェッショナルたちがメンターとなり、地方特有の組織文化や人間関係にまで踏み込んだ、「泥臭い」課題解決手法を伝授している点にあります。
今回は、REIONEの理事を務められている中村 彰宏さんにインタビューを行いました。ITツールの活用の前になぜ「戦略思考」が必要なのか、そして、孤独な変革リーダーを支える「メンター」や「コミュニティ」について詳しくお伺いします。
デジタル技術の前に学ぶべき「課題解決」の本質と地方のリアル
DX推進において、最新ツールの導入は必ずしも正解ではありません。なぜITスキル習得よりも「課題解決」の思考が最優先されるのか、DX推進に不可欠な戦略思考や現場を動かす地道な手法、そして地方が抱える情報格差の課題について紐解きます。
ITツール活用は二の次。戦略思考と「現場を巻き込む力」を養うREIONEの人材育成
——ホームページにて「地域DXを自走させる」というミッションを拝見しました。現在、DX人材の育成事業に注力されていますが、その背景や事業に込めた思いについて詳しくお聞かせいただけますでしょうか。
中村 彰宏さん実は、もともと「DX」という言葉そのものに強くこだわっていたわけではありませんでした。
私たちの団体は、新規事業に携わっているメンバーが集まって結成されています。「自分たちが持っているスキルを、社外でも発揮して貢献したい」という思いがきっかけです。その後、たまたま沖縄県様とのご縁があり、デジタル活用やDXという文脈で講座を開催することになりました。
——ツールありきではなく、スキルの発揮という原点があったのですね。
中村 彰宏さん私たちの講座は「DX」を冠してはいますが、ITツールの使い方や具体的なハウツーについては、実はほとんど教えません。
——デジタル技術そのものよりも、別の側面を重視されているということでしょうか。
中村 彰宏さんその通りです。私たちが教えているのは、本質的な「課題解決」です。具体的には、ミッション・ビジョン・バリューの策定から、ゴールから逆算して今何をすべきかを考える「バックキャスト」の思考法、そして現場における課題の可視化や真因分析といった課題解決の具体的な手法を伝えています。
さらに、社内の決裁者をいかに納得させ、現場をどう巻き込んでいくかという、非常に「泥臭い」実践的な部分に重きを置いています。
——かなり実務に即した内容ですね。
中村 彰宏さんこうした取り組みを継続し、沖縄県様とはすでに4年ほどご一緒させていただいています。その活動を続ける中で痛感しているのが、地方と首都圏との間にある圧倒的な「情報格差」という現実です。
ネット社会でも埋まらない「情報の鮮度」という格差をどう乗り越えるか
——地方と都内の「情報格差」について、具体的にどのようなことが起きていると感じていらっしゃいますか。
中村 彰宏さんまず、周囲に自分と同じような「情報感度」を持つ人が、数として非常に少ないという点が挙げられます。周囲の感度がそれほど高くないと、自分自身も「そこまで意識しなくていいのではないか」という心理になりがちです。
——周囲の環境が、個人の意識にも影響を与えてしまうのですね。
中村 彰宏さん例えば東京であれば、IT関連の展示会が頻繁に開催されていますよね。沖縄でも年に一度「ResorTech EXPO(リゾテックエキスポ)」という大きなイベントがあり、環境としては恵まれている方かもしれませんが、それでも都内と比べれば機会は限定的です。また、技術者コミュニティなどの活動も、都内に比べればまだ広がりきっていない印象があります。
——確かに、都内であれば毎日のように交流会や展示会がどこかで開催されていますが、沖縄では年に一度の大きなイベントが中心になります。情報にアクセスするタイミングそのものが限定的ということでしょうか。
中村 彰宏さんまさにその通りです。情報の接点となる機会自体が少ないことが、情報格差の要因の一つだと考えています。
都市部の知見を地方へ。複業人材の「ギバー精神」が地域経済を活性化させる
——REIONEに所属されているメンバーについても教えてください。
中村 彰宏さんメンバーの多くは首都圏を拠点に大手企業で働いており、いわゆる「副業」としてREIONEに集まっています。彼らが持つ知見を少しでも地方の企業に共有することで、そこで学んだ方が次は「教える側」に回ったり、社内に課題解決のための組織ができたり、予算がついたりするようになります。こうしたサイクルを継続していくことで、ボトムアップによる地方企業の成長、ひいては地域経済圏の活性化につながると考えています。
また、集まっているメンバーは基本的に「ギバー(与える人)」の精神を大切にしており、私たちの活動趣旨に共感して取り組んでいます。
——高度な知識や知見を持ったプロフェッショナルが、組織として課題解決にあたっているのですね。「DX」という言葉を入り口にしつつも、本質はそこにあると感じます。つまり、課題解決を提案できる人材を育てていくというイメージでしょうか。
中村 彰宏さんその通りです。デジタルツールはあくまで手段の一つに過ぎません。まずは経営的な視点や戦略的な目線を持ちながら、現場に潜む真の課題を発見すること。そして、その原因を特定し、解決策を検討していく。こうした一連のプロセスを遂行できる人材の育成を重視しています。

地方特有の組織文化を攻略し、社内変革をリードするためのマインドセット
地方企業特有の人間関係や組織文化の中では、時に正論だけでは物事が進まないこともあります。変革の旗振り役が身につけるべき、周囲を味方につけ、孤独な闘いを避けるための具体的な智慧を探ります。
正論だけでは動かない。「シージャー文化」を尊重し、年上世代を味方につける交渉術
——地方には、都内とは異なる特有の課題が多くあると思います。そうした課題を解決できる人材を育成するために、カリキュラムやマインドセットの面で特に重視されていることは何でしょうか。
中村 彰宏さん「地方」と一括りにすると見えづらい部分もありますが、例えば沖縄の場合、「シージャー(先輩・年長者)文化」という、年長者を敬う文化が深く浸透しています。変革を進めるにあたって、これまで年長者の方々が築き上げてきたものを否定しても、物事はうまく進みません。むしろ、そうした方々を尊重し、いかに味方になってもらうか、気持ちよくプロジェクトに参加してもらうかが非常に重要です。
——目上の方といかに上手く付き合っていくかという、実戦的なコミュニケーションが求められるのでしょうか。
中村 彰宏さん相手の経験を「尊重する」姿勢や、経営層に刺さる経営指標やワードの選び方、また、円滑な人間関係を築くためのコミュニケーションの図り方を、非常に重視してお伝えしています。
オーナー企業での孤独を打破する、社内での「最初の1人」を見つける仲間作り
——地方でのプロジェクト推進において、都心とは異なる独自の難しさがあると思います。特に、地域の人間関係や組織のあり方という点では、どのような壁に直面することが多いのでしょうか。
中村 彰宏さん地方か都会かという軸だけでなく、組織のあり方も大きく影響します。沖縄でも大手企業であれば、ガバナンスが効いており、人事評価制度も論理的に設計されていることがほとんどです。一方で、小規模な企業やオーナー企業の場合、人事考課の基準が明文化されていなかったり、慣習に基づいた運用になっていたりするケースが多々あります。
——具体的にはどのような状況なのでしょうか。
中村 彰宏さん例えば、給与テーブルが実態と合っていなかったり、経営者の一声で物事が決まってしまったりといった文化ですね。こうした独特の企業文化が残る中で、自分が「やりたい」と思ったことをいかに正しく伝え、通していくかが重要になります。
——そうした環境で変革を起こすのは、一人では難しそうですね。
中村 彰宏さんおっしゃる通りです。だからこそ、まずは自分の近くにいる「最初の仲間」を一人見つけることから始めよう、といった具体的なアドバイスも講座の中でお伝えしています。
挫折を防ぐ「伴走型メンター」と、挑戦の土台となる「心理的安全性」の仕組み
新しい挑戦には不安がつきものだからこそ、REIONEでは「心理的安全性」を学びの出発点に置いています。社内政治の悩みまで共有し、受講生自らが答えを導き出す力を養う「伴走型メンター」の本質的な役割に迫ります。
変革の第一歩は「心の安全」から。組織を動かすマインドを整える心理的安全性
——先ほど、ITスキルを教える前にマインドセットや課題解決の手法を重視しているとお話しいただきました。具体的に、受講生が最初に直面するカリキュラムでは、どのようなアプローチからスタートするのでしょうか。
中村 彰宏さん講座のカリキュラムでも、必ず最初に「心理的安全性」を扱っています。まずは心理的安全性の第一人者である株式会社ZENTech様から講師を招き、そこからスタートします。「まずはマインドから変えていくのだ」という姿勢を明確に打ち出すことが、受講生が立ち上がるきっかけや、変革に向けた力になると考えています。
——確かに、企業規模や上司・オーナーの世代に合わせて、社内でどう立ち振る舞い、自分のポジションを築いていくかという点は、現代において手取り足取り教えてもらえることではありませんよね。
中村 彰宏さんそうですね。こうしたノウハウは、自分の会社の中だけで悩んでいても、なかなか答えが見つからないものです。
——だからこそ、外部の視点が必要になるのですね。
中村 彰宏さんその通りです。そのため、私たちの講座では豊富な経験を持つメンターを必ず配置しています。受講生はメンターと毎週「1on1」を実施し、客観的なアドバイスを受けられる体制を整えています。
社内政治の悩みも共有。外部メンターとの週次面談が、実働的な突破口を生む
——メンター制度について、詳しく伺えますか。
中村 彰宏さんメンターの役割は、講座の内容をより深く理解してもらうことはもちろんですが、それ以上に「社内でどうアプローチしていくか」といった、いわゆる社内政治のような領域まで踏み込んで相談に乗ることです。外部の視点を持つメンターに、実務的な悩みまで相談できる体制を整えています。
——単に知識を手取り足取り教えるというよりは、「一緒に解決策を考える」という、まさに「伴走型」の支援ですね。メンターの方々はどのような基準で選定されているのでしょうか。
中村 彰宏さん私たちの団体は、基本的に完全紹介制で運営しています。そのため、あえて厳しい選定基準を設ける必要がないほど、信頼できるプロフェッショナルが自然と集まっています。
——メンターの方々が具体的にどのようなアプローチで受講生と接しているのか、もう少し詳しく教えてください。
中村 彰宏さん私たちの講座は「DX」を冠していますが、メンターに求めているのは必ずしもITに関する深い専門知識ではありません。それよりも、ビジネスパーソンとしての基礎スキルや課題解決能力、戦略の構築力といった「ベーススキル」を重視しています。また、メンタリングにおいて大切なのは、何かを教えることではなく、相手の中から「聞き出す」力、つまり聞き上手であることだと考えています。
——単に答えを与えるのではなく、ヒアリングやコーチングを通じて、受講生に示唆を与えるようなイメージでしょうか。
中村 彰宏さんまさにその通りです。ティーチングではなく、コーチングに近い手法ですね。私たちは、なるべく答えを直接言わないようにしています。
——あえて「問い」を置くことで、受講生自身が自分の考えを整理し、答えを引き出していくプロセスを大切にされているのですね。
中村 彰宏さん受講生が「自分は実際にはどう考えているのか」を一緒に深掘りし、整理していくことを目指しています。
知識の習得から「社内課題の可視化」へ。メンター制度がもたらす実戦的な価値
——メンター制度を導入した当初の目的について教えてください。
中村 彰宏さんもともとは、講座が終わった後に理解が足りなかった部分を補うためのフォローアップを目的として設置しました。
——学習を継続させるためのサポート体制だったのですね。
中村 彰宏さんはい。しかし、実際に運用してみると興味深い変化がありました。受講生が自社の課題解決を具体的に進めるフェーズに入ると、相談内容が「講座の知識」そのものよりも、社内の問題や組織の力学、人間関係といった生々しい悩みへと移っていったのです。それらを可視化してどう打破すべきかを話し合う、いわば「よろず相談所」のような役割へと進化しました。
——現場のリアルな障壁に対して、外部のメンターが向き合う形になったのですね。
中村 彰宏さんその結果、受講生にとってもメンターとの対話が課題解決の有効なツールになり、新しい視点を得ることでプロジェクトがうまく回り始めました。
——なるほど。当初は学習を継続してもらうための一つの「マイルストーン」として設定したものが、より実戦的で価値のある仕組みへと育っていったということですね。
中村 彰宏さんまさに、そのような経緯でした。運用していく中でポジティブに作用した結果だと感じています。

自走を促すコミュニティの力。継続学習を支える仕掛け
講座を「受け身」で終わらせないためには、受講生自身が主体的に動くための仕掛けが不可欠です。中だるみを防ぐ工夫や有志の勉強会を通じて、修了後も自走し続けるための「地力」をいかに鍛えるのかを解説します。
チーム制と「カンフル剤」的講義。長期プログラムの中だるみを防ぎ、熱量を維持する設計
——継続学習を支える仕組みについて、さらにお聞かせいただけますでしょうか。
中村 彰宏さん私たちのプログラムは期間が長いため、どうしても中だるみしてしまう時期があります。そこで、モチベーションが下がりそうなタイミングを見計らって、受講生の「カンフル剤」になるような特別な講義を組み込んでいます。
——適度な刺激を投入されるのですね。
中村 彰宏さん有志による懇親会も積極的に開催しています。毎回のように熱意あるメンバーで集まっているのですが、こうした交流が学習を続ける大きな原動力になっていると感じます。
——受講生同士の繋がりも、継続の鍵になっているのですね。
中村 彰宏さんその通りです。また、私たちの講座では「チーム制」を採用し、受講生を10人ほどで1チームに分けています。チーム内で励まし合ったり、教え合ったりすることで、互いに良い刺激を与え合える構造にしています。さらに有志の勉強会を企画するなど、常に何らかの刺激があるよう、多様な仕掛けを施しています。
——常に新しい刺激やコンテンツを発信し続けていらっしゃるのですね。先ほどおっしゃった「カンフル剤」について、差し支えない範囲で具体的にどのようなことをされているのか教えていただけますか。
中村 彰宏さん私たちの講座のメイン講師を務める常盤木龍治氏は沖縄のIT番長と呼ばれており、氏のパーソナリティそのものが一つの刺激になっています。非常にエネルギッシュな人物で、受講生のやる気を引き出すのが非常にうまいのです。
受講生が自ら運営する勉強会。アウトプットを通じて「自走できる人材」に
——メイン講師の方以外にも、受講生にとって刺激となる「カンフル剤」のような要素は何かありますか。
中村 彰宏さん有志による勉強会ですね。これが非常に良い刺激になっています。特に昨年度は「生成AI」をテーマにした勉強会を4回ほど開催しました。概ね1シーズンに1回のペースで実施しています。興味深いのは、受講生が持ち回りで司会を務める点です。運営側が手助けはしますが、基本的には受講生が「自分発信」で取り組むようにしています。
——受講生が自ら運営に関わることで、講座を修了した後も、自社のなかで自ら動く力が身につきそうです。
中村 彰宏さんおっしゃる通りです。私たちの講座のコンセプトは、最終的に私たちが伴走しなくても、受講生が自律・自走して社内でプロジェクトを進めていけるようになることです。自ら情報を発信し、周囲を巻き込んでいく。勉強会という場を「練習台」にすることで、そうした実践的なスキルの向上に繋がっていると考えています。
——受講生同士の交流を促すために、意図的な仕掛けをされているようですね。
中村 彰宏さんプログラムが始まった当初は必ず講座の開始前に、「必ず知らない人の隣に座ってください」とルールを決めています。初期に横の繋がりがしっかりできると、講座の期間が終わった後もずっと関係が続いていくのです。
——DXの推進というのは、どうしても社内で孤独になりがちな側面がありますよね。
中村 彰宏さんおっしゃる通りです。「あの人は、ひとりで何かに取り組んでいる」と周囲から冷ややかな目で見られたり、上司の理解が得られなかったりすることも少なくありません。そうした苦境に立たされたとき、受講生同士で集まって悩みを聞いてもらい、「大変だよね」と言い合いながら一緒に進んでいける仲間がいる。これは非常に大きな力になります。
仕事での付き合いとなると、必ず何らかの「肩書き」がついて回ります。そうした背景に関係なく、フラットに繋がれる場所は社会人にとって非常に貴重だと思います。
——卒業後のフォローアップについてはいかがでしょうか?
中村 彰宏さん4年間で築いてきた卒業生のコミュニティがあります。Slackなどを通じて卒業後も繋がりが維持されており、さらに年2回、同窓会のような「フォローアップ講座」を開催しています。
——卒業生コミュニティの存在は大きいですね。半年ごとに報告の場があると思うと、その期間の活動にも身が入りますね。
中村 彰宏さんそうですね。「次の機会に良い報告をしよう」という思いが、受講生の皆さんの頑張りの源泉になっています。

組織を根底から変えた劇的成功事例と、地域自らが変革を駆動する未来へ
徹底した伴走支援とコミュニティでの刺激は、受講生の意識をどう変え、どのような具体的な成果に結びついているのでしょうか。本章では、組織の風土を根本から変革させた2つの劇的な成功事例をご紹介します。そして、事例の背景にある「都市部のナレッジを地方の現場へ最適化する意義」と、地域内で自律的な成長サイクルが回り出す「地産地消のDX」の展望について伺います。
経営の本質を捉え、組織を根底から変革した2つの成功事例
——REIONEのプラットフォームを通じて学び、実際に地域や企業、自治体で活躍されている方の具体的な成功事例を教えていただけますか。
中村 彰宏さん補助金採択やメディア掲載に至るケースは非常に多いです。例えば沖縄県の事例集にも掲載された「いまいパン」の今井さんは象徴的な卒業生です。彼が参加されたのはコロナ禍の真っ只中で、飲食店として非常に厳しい時期でした。当時は売上と並んで、従業員とのコミュニケーションに大きな課題を感じておられたそうです。
——地元の有名店でも、当時は組織のあり方に悩まれていたのですね。技術的な支援よりも、まずは対話からスタートされたのでしょうか。
中村 彰宏さん最初に取り組んだのはITツールの導入ではなく、「自分の想いを従業員に伝える」という、まさに「泥臭い」ともいえる手法でした。そこから土台を固め、Instagramの発信やサイト制作といったデジタル活用へ進みました。今では中小企業庁長官賞や那覇市長賞を受賞し、県を代表する企業へと成長されています。危機的状況下で歯を食いしばり、変革を遂げられた姿には非常に感慨深いものがあります。
——まさに組織の根幹を立て直した見事な事例ですね。続いて、もう一つの事例として「琉球警備保障」様についても詳しくお聞かせください。
中村 彰宏さん琉球警備保障の受講生が直面していたのは、警備業界全体の構造的な課題でした。従業員の高齢化や深刻な人手不足などにより、採用に苦労されていたという背景があります。
——業界全体の課題にどう立ち向かわれたのでしょうか。当初はデジタルによる売上拡大を狙っていたと伺いましたが、そこから視点の転換があったのですか。
中村 彰宏さんはい。当初は売上をテーマにしていましたが、メンターとの対話を通じて「まず従業員が誇りを持って働ける会社にしなければならない」という本質的な目的に至りました。そこでまずは労働環境の改善に着手し、手書き報告書のデジタル化やスマホでの打刻管理を導入することで、現場の負担軽減と適切な労働時間の確保を実現されました。
——現場の負を取り除くだけでなく、それが「採用ブランディング」という形でも大きな成果に繋がったそうですね。
中村 彰宏さんその通りです。先進的な取り組みを外部へ発信することで「誇りを持って働ける警備会社」としての地位を築き、離職率の低下や定着率の向上といった組織風土の変革を実現されました。現在はAIやVRを活用した次世代の警備会社の土台を確立されています。
——お話を伺うと、経営層が取り組むべき「本質的な課題」を特定できたことが、業績や組織の改善に直結したのだと感じます。やはり、メンターによる1on1での深い問いかけが効果を発揮したのでしょうか。
中村 彰宏さんまさにそうです。単に「カードを電子化する」といった小手先の手段ではなく、「長期的に何を目指すのか」という本質をメンターが問い続けたからこそ、従業員へのメッセージや接し方が変わり、ここまでの成果に繋がったのだと考えています。
大企業のナレッジを、地方の現場に合わせて「噛み砕く」価値
——受講者の方々が直面しやすい課題や、それに対する支援のあり方についてどのようにお考えでしょうか。
中村 彰宏さんそもそも地方では、情報へのアクセス自体が難しいという側面があります。都心の大企業は研修制度が非常に充実していますが、地方の中小企業では、人材育成に対する手厚いサポートがまだ十分ではないと感じることが多いですね。また、個人が「学びたい」と思っても、周囲の理解を得るのが難しいといった壁も、大企業に比べると存在しているように思います。
——REIONEのメンバーは、冒頭のお話にもあった通り、大企業で活躍されている方が多いですよね。そうした方々が高いレベルで受けてきた研修のナレッジを共有してくれることが、REIONEの強みなのではないかと感じました。
中村 彰宏さんまさにその通りです。私たちが大企業で当たり前のように受けてきた研修内容も、地方の中小企業の従業員の方々からすれば、非常に価値のある知識やスキルであることが多いのです。その格差を埋めるために、私たちがナレッジを現場に合わせて噛み砕き、実践的な形でお伝えしていく。それが私たちの大きな貢献の形だと考えています。
——企業の規模や知識のベースに合わせて、目線を合わせてお話しいただけるからこそ、相手に深く伝わるのでしょうね。
中村 彰宏さんオンラインで知識を学ぶだけならいくらでも方法はありますが、「これが自社にとってどういう意味を持つのか」をフィットさせるのは非常に難しい作業です。「学んだけれど使い方がわからない」という事態はよく起こります。そこを実際の課題解決に並走しながらサポートするメンターの存在が、オーダーメイドで血の通ったカリキュラムを実現しているのだと思います。
「伴走」から「自走」へ。地域内でサイクルが回る未来図
——「加速する地域DX推進」を掲げていらっしゃいますが、地方の中小企業におけるDX推進において、REIONEが目指す未来像と、これから学びたいと考えている方へのメッセージをいただけますか。
中村 彰宏さん私たちがずっと外部から伴走し続けることには、限界があると考えています。理想は、例えば沖縄県で学んだ方が、次は「教える側」に回ることです。私はこれを「地産地消のDX」と呼んでいますが、地域で育った人材が地域に貢献していく、そんな自律的なサイクルを作っていきたいですね。
もちろん、私たちのような都心部での経験を持つ人間も、パートナーとして適度に関わり続け、新しい知見を提供し続けます。外の知恵と地域の活力がうまく絡み合いながら、経済や企業活動がどんどん盛り上がる。現在は沖縄県が中心ですが、このモデルを他の地域にも広げていきたいという思いがあります。
——「DX」や「IT」と聞くと、専門家でないと難しいと思われがちですが、まずは「自分が何をしたいか」を明確にすることで、ぐっと身近なものになりますよね。
中村 彰宏さんこれから学び始める方にお伝えしたいのは、積極的に「他流試合(外の世界との交流)」をしてほしいということです。自社の中だけに閉じこもらず、社外の人たちと触れ合い、刺激を与え合う。これこそが「コミュニティ・ラーニング」の醍醐味です。
仲間がいれば学習も続きますし、何より楽しく取り組めます。一人で孤独に頑張るのではなく、刺激し合える仲間を作ること。それがDXという高い壁を乗り越えるための一番の近道だと思います。
自律的な学びが、あなたと地域に新たな可能性をもたらす
今回のインタビューを通じて明らかになったのは、REIONEが提供しているのは学習機会だけでなく、孤独になりがちな変革リーダーたちが本音で切磋琢磨できる、心理的安全性の高い「居場所」そのものだということです。自ら情報を発信し、周囲を巻き込んで自走する。そのプロセスこそが、個人にとっては最大のキャリアアップとなり、地域企業にとっては次の一歩を踏み出す原動力となります。学びを止めず、信頼できる仲間と共に歩むこと。それこそが、地域経済の活性化という大きな波を作る確かな一歩となるでしょう。
