皆さんは懸命にスキルを磨き、最高の職務経歴書を作成しているかもしれません。
実は、経験やスキルが全てだと信じている限り、この「ミスマッチによる不幸」からは永遠に逃れられないかもしれない、という事実をご存じでしょうか。
今回は、「転職定着マイスター」である、組織づくりLABO代表 川野智己さんにインタビューしました。
従来の転職本が一切触れてこなかった「転職の適性」の正体と、無意識のうちに私たちを縛る「目に見えない4つ目の円」の構造を徹底的に探ります。

川野智己(かわの・ともみ)さんプロフィール
転職定着マイスター/組織づくりLABO代表
1962年生まれ。(株)伊藤忠アカデミーの教育マネジャーを経て、大手転職エージェントの教育研修部長として従事。斡旋した転職者の多くが早々に離職し、労働市場での価値を自ら下げている人(ジョブホッパー)が多く生まれている惨状に強い問題意識を持つ。そこで、転職定着・離職防止に取り組み、8年間にわたり転職予備軍に対して「転職先での働き方・人間関係構築のノウハウ」を伝え、転職後のミスマッチ退職率を1年間で44.0%から9.1%にまで劇的に引き下げた。
その経験を活かし、2006年に組織づくりLABOを設立、代表に就任。日本初の転職定着マイスターとして、転職者および予備軍のべ約2000人に対して個別カウンセリングやセミナーを行っている。併せて、採用側の企業が取り組むべきリテンション(離職防止)策を普及させるべく、全国での講演登壇や主要経済誌への執筆、TV出演などの幅広い活動を行っており、労使両面からの「職場と働き手の最適解」を発信している。
【転職定着マイスターの警告】なぜ転職者の半数が「不幸な離職」に陥るのか
かつて川野さんが在籍されていた大手転職エージェント(人材紹介会社)の現場では、履歴書に記載されたハイスペックな人材の半数近くが、2〜3年で早期離職するという厳しい現実があったそうです。
なぜ、高いスキルや経験が長期的な成功に結びつかないのでしょうか?
その要因について詳しくお伺いします。
「ミスマッチによる不幸をなくす」組織づくりLABOのサポート術
——現在、貴社で行っているキャリア支援の取り組みについて教えていただけますでしょうか。
私たち「組織づくりLABO」の大きなコンセプトは、ミスマッチによる不幸をなくしていくことです。
——ミスマッチによる不幸をなくすという点で、アプローチが二つあるのですね。
一つ目は、個人向けに最適なキャリアを実現させるという、個人の方へのご支援です。
二つ目は、企業側に対する「迎え入れ」や「定着を支援する離職防止」のご支援です。
個人の力は大きなものではありません。そのため、個人を迎え入れる企業側への支援も必要になります。
このように両面でご支援させていただくことによって、組織としての最終目標であるミスマッチによる不幸をなくしていくという取り組みをしています。
転職エージェント時代の気づき:「スキルより定着」
——個人向けと企業向けのご支援についてお伺いします。例えば、個人の方が希望される転職先について、川野さんがお話を伺い、企業様とのマッチングやその後の支援を行われるのでしょうか?
今のご質問にお答えするにあたって、私のこれまでのキャリアをご説明した方がよりご理解が深まるかと思い、お話しますね。
私は大学を卒業してすぐに製薬メーカーに入りました。
その後、研修コンサルティング会社で、クライアント企業のために人材育成の企画提案や研修講師に従事しておりました。
その流れで教育会社の責任者もしていたのですが、当時は「経験やスキルが全てなんだ」と私自身も勘違いしていたのです。
ところが、大手の転職エージェントで教育研修部長として携わる中で、「実はそうじゃないんだな」と思うようになりました。
——「経験やスキルが全てではない」と感じられたのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか?
その理由は、ほとんど半数近くの方が2、3年のうちに辞めてしまうからです。
履歴書や経歴書に書いてあるようなハイスペックな人材を企業に送り出したにもかかわらず、です。
そこで、「これは、経験やスキル以外の要因が大きいんだな」ということに気づいたのです。
——半数もの方が、早期離職されていたのですか。
発売予定の新刊『転職に向いてない人がそれでも転職に成功する思考法』(東洋経済新報社)の編集部の方が、本の裏に「内定だけなら取れてしまう時代」とキャッチコピーをつけてくれました。
私が今お伝えしたい内容を、実に上手くまとめられています。
「どこでもいいから内定を決めさせてあげますよ」という支援ではなく、「ミスマッチを招かず、自分らしくいられる職場が見つかりますよ」というメッセージを、著書の中でもお伝えしています。
まさに、自分らしい職場を見つけるお手伝いをしたいというのが、個人向けのアプローチになります。
高年収・成長を望むなら「低賃金スキーム」業界から脱却せよ
——転職者が共通して抱えている課題についてお伺いしたいです。
例えば、皆さん給料を上げたいと考えますよね。
しかし、その選ぼうとしている業界の選び方に、そもそも誤りはないでしょうか。
つまり、生産性が低い業界を選び続けることは、いつまで経っても給料が上がらない要因になってしまうのです。
——業界の選び方から考え直す必要がある、ということですね。
そうです。給料が上がらないのは、本人の努力不足の責任だけではないのです。
これは発売予定の新刊にも書いた内容ですが、あるタレントの方が非常に分かりやすい例え話を語っていました。
例えば、陸上競技は選手が何十人集まろうと、競技場は満員になりません。
しかし、野球やサッカー、格闘技といった有名なプロスポーツは、あっという間にアリーナが満員になり、選手はたくさんのお金をもらう、という話です。
——ご本人に十分な実力があったとしても、それぞれ業界自体の構造が異なっているために、お給料に直結するとは限らないということですね。
介護業界や外食業界などは、構造的に低賃金のスキームになってしまっています。
もちろん、これらの業界が悪いというわけではなく、素晴らしい業界なのですが、「もっとお給料をもらいたいという目的があるのなら、少し視点を変える必要がありそうですね」ということをお伝えしたいです。
従来の常識を覆す:キャリアを縛る「4つ目の円 May」の正体
自分のキャリアの方向性を決める際、「Can(できること)」「Want(したいこと)」「Must(すべきこと)」の3つの円を考えることが一般的です。
しかし、実は皆さんの心の中には、無意識のうちにその選択を阻害する「4つ目の円」が潜んでいる、と川野さんは語ります。
「Can, Want, Must」では見えない:「~かもしれない」が無意識に自己を制限する
自分のキャリアをどう決めるのか、ということに関して、一般的にこのような話がよく聞かれます。
それは、「できること(Can)」「したいこと(Want)」「すべきこと(Must)」という3つの要素の円の重なりをキャリアの方向性にしましょう、という話です。
この本で、私は「おそらく他の人の本には絶対書いてないだろう」ということを書きました。
——内容について、ぜひ教えていただけませんでしょうか?
実は、皆さんには目に見えない「4つ目の円」が邪魔をしている、ということ。
それは英語で言えば「May(メイ)」、助動詞です。
これは「〜かもしれない(推量)」や、「〜してもよろしいですか(許可)」という意味を持っています。
そして、皆さんのように転職を考えている人たちの心の中に、その「May」が潜んでいるのです。

——「May」が潜んでいる、とはどのような状態でしょうか?
例えば、自分以外の家族や周りの様々なしがらみに対して、「〜してもいいですか?」と、許可を求めてしまう場合です。
また、「〜かもしれない」と勝手に邪推して、「いや、私なんか通用しないと思います」という推量で、自分で自分を縛ってしまうのです。
転職の適性は「後から身につく」:行動の前提となる「気づき」を提供する支援哲学
——その「May」を払拭する方法というのも、本の中に書かれているのでしょうか。
それは実は簡単なんですよ。
本にも転職に関して意識すべきことを10個書きましたが、要は「意識すること」です。
——意識するだけで、「May」が小さくなっていく、あるいはなくなっていくということなのですね。
その通りです。
私たちは、行動があったからこそ結果が生まれる、と考えがちですが、その行動が生まれるために、まずは「気づき」が必要なのです。
世の中の転職本は、行動について書かれている場合が多々あります。
しかし、その前の気づきがなければ、人は行動を起こしません。
——おっしゃる通りです。
そこで、この本は行動の羅列ではなく、一歩深めて、その前提となる「気づき」、特に適性に関する気づきについて述べています。
2000人以上を支援した成果:個別面談やオンラインセミナー、有料記事(Note)で実現する意識改革
——今までお話しいただいた課題に対して行われている、具体的な支援プログラムをご紹介いただけますでしょうか。
まず一つは、個別カウンセリングです。
これは、ホームページからお申し込みいただければ、60分間ご相談ができるというものです。
それから、ストリートアカデミー、通称「ストアカ」というオンラインセミナーがあります。
そちらでは、「転職した後の人間関係づくり」に関して、90分間で5,500円(税込)という形で、特別にご支援させていただいております。
また、いきなり面談や受講するのも憚(はばか)れるとのお気持ちであれば、SNSのNoteにおいて、有料記事をご提供しています。
「転職で後悔しない最終チェックリスト。残るか・出るか、決める前に読む判断基準」や「採用面接を勝ち抜くメソッド”出来るヤツと思わせる話し方”」など、転職に伴う考え方やスキルを情報発信しています。
——なぜ「人間関係」に着目されているのでしょうか?
どんな経験者であっても、入社後は、転職先の業界特性、商慣習、商品知識、顧客の特性やこれまでの経緯などはもとより、事務所のコピーの使い方ひとつわからない状態です。
まして、即戦力として入社したなら、「こんなこと聞いたら、『なあんだ』と軽んじられるのではないか」との懸念から、周囲の社員へ質問することも躊躇しがちです。
中には「成果を挙げれば、新天地での人間関係など関係ない」と豪語する転職者もいますが、人間関係が築けず、信頼関係がない状態だと、前述のような情報(成果を挙げるための貴重なリソース)を得られなくなり、成果を挙げることなどままならなくなります。
これが、人間関係を重視する理由です。
——ご指導の内容について、お伺いできますか。
転職して入社した人が、入社後に「定着して活躍する」ための職場での個人の心得を、「8Kキャリアハイビジョン技術」と称して、8つの「K」としてお示ししています。
1st K 「観察」・・観察、傾聴、吸収、虚心坦懐、固有の言葉や慣習、形式知化、Knowledge
2nd K 「協働」・・協働、共感、絆、帰属意識、(自己)開示、懐柔、交流
3rd K 「感謝」・・感謝、敬意、謙虚、寛容、気配り
4th K 「堅実」・・堅実、小刻み、生真面目、管理職と連携、工程訴求
5th K 「啓発」・・啓発、学習、教育研修
6th K 「誇示」・・(強みの)誇示、(懐に)knife
7th K 「課題抽出」・・既存のKの検証(KFS、慣習、行動様式、クライアント分析)
8th K 「健康」・・健康、休息、家庭ケア、(志の)keep
がその要素です。
人事を味方につける:求職者が知るべき企業側の「真実と本音」
皆さんが絶対的なものだと考えている求人票ですが、実は人事担当者の裏事情により「極めてテキトー」に作られている可能性があるようです。
また、面接官が面接で最も恐れているのは、応募が来ないことではなく、自分の評価を下げることかもしれません。
ここでは、内定を勝ち取るために知っておくべき、企業側の採用心理と真実を解説します。
実はテキトーに作られている?:採用担当者が語る求人票「過剰スペック化」の裏側
求人票は、個人からすると絶対的な存在のように思いがちですが、実際はそれほど気にする必要はないのです。
——そうなのですか?
なぜならば、人事担当者は、他の部署の仕事のことをよく理解していないからです。
応募する側は、「企業は仕事のスペックを行動レベルまで落とし込み、それが能力レベルまで分解された、練りに練られたものなのだろう」と勝手に思ってしまいがちですが、実際は安易にに作られていることが少なくないのです。
——そのような事情があったとは、非常に驚きました。
採用する部署の部門長に聞きに行ったところで、部門長は自分たちの仕事を「こんなにすごいんだ」と大きく見せたいわけです。
人事がその内容を反映した結果、過剰にスペック設定されたような求人票が出来上がってしまうことがあります。
——では、求職者はどうすべきでしょうか。
だからこそ、応募する側は、「自分がこのスペックにはふさわしくない」と思わずに、どんどん応募することが大切です。
例えば、「私は確かにこのスペックを満たしていませんが、それを実現できるようなこんな経験を別の場でしています」と伝えるのです。
また、「私は求人票に掲示された条件、例えば年齢が高いという点でご懸念の向きもあるかもしれませんが、ただその分、そういう人たちをマネジメントしてきた自信はあります」といったように、自分なりに読み替え、アピールすれば良いわけです。
面接を突破する戦略:「粗探し」を行う一次面接官が最も恐れていること
人事が持つ「心理」というものがあります。
実は、一次面接は、応募者を落とすための粗探しの面接なのです。
——粗探し、ですか。
特に、基本的な動作やマナー、言葉遣いなどを厳しく見ます。
なぜかと言うと、マナーが備わっていない求職者を二次面接に上げてしまうと、自分の評価が下がってしまうからです。
——つまり、「人事としての価値がない」「目利きができていない」と見なされるのを恐れているわけですね。
そうです。それが怖いからこそ、基本的なマナーや基本動作がきちんとできている人を上げたがるのです。
次は二次面接です。
二次面接は、採用部署の部門長や役員などの幹部クラスが担当します。そうすると、人事の採用担当者は応募した求職者の味方に変わります。
人事担当者は、「次になんとか部長がいるけど、ちょっと癖があるかもしれない。でも、君だったら大丈夫だから」というように、途端に味方になってくれるのです。
なぜかと言いますと、先ほどの話と同じです。
二次面接で落とされてしまうような求職者だと、人事担当者が「なぜこの求職者を上げたのか」と幹部に言われる可能性があるからです。
こういう人事が持つ心理的な背景を知っておくと、面接に対する捉え方が全然違ってきますよ。
——これは求職者が知っておくべき情報ですね。
入社後に「定着し活躍する」ための超実践的ノウハウ
内定を獲得し入社した後には、企業側からのフォローを受けられないこともしばしばあります。
即戦力として組織に馴染み、成果を挙げるためには、入社後の人間関係構築が極めて重要です。
面接でのプロセスを語るストーリーテリングから、入社後の「8Kキャリアハイビジョン技術」に至るまで、定着するための超実践的なノウハウをご紹介します。
「釣った魚にエサをやらない」企業に負けない:入社後の人間関係を築く重要性
——求職者が、求人応募の段階ですべきことを教えていただけますか?
入社後に、定着・活躍できる支援(研修体系やメンター制度)があるかどうか確認が必要です。
聞きにくいなら、内定をもらった後に「内定後面談」を申し入れて、企業側の本音・実態を聞き出しましょう。
——あらかじめ知っておくと安心ですね。
企業側のリテンション(離職防止)施策にも取り組んでいますが、その経験から見て、求職者の方が知っておくべき「企業の本音」があります。
——どのようなことなのでしょうか。ぜひ教えてください。
入社後について言えば、産業界において離職防止の機運は高まりつつあるものの、「釣った魚にエサはやらない」とばかりに、入社後の勤務先からのフォローは無い企業は少なくありません。
悪気はないものの「経験者だから分かっているだろう」と放置され、企業の心は次の採用活動にまい進しています。
転職者は、組織になじむことで初めて成果を挙げる土壌を得ることになります。
そこで、入社後に周囲から受け入れられ、いち早く成果を出すためにも、前述の8Kビジョンの徹底をお勧めします。
成果よりプロセスに人は感動する:面接官を魅了する「映画のストーリー」の語り方
個人のキャリア支援においても、やはり同じことが言えます。
この本にも書いてあるのですが、「映画のストーリーを語りましょう」、ということ。
つまりストーリーテラーになることが重要です。
——ストーリーテラー、ですか。こちらについて詳しく教えていただけますか?
単に結果だけを伝えたのでは、誰の心にも刺さりません。
「こんな結果を出しました」と言うのではなく、「自分が最初はこんな障害に直面して、いろんなことができなかった。でも、仲間の助けを借りて、ここまでたどり着くことができました」と、まるで映画のストーリーのように臨場感を持って語るのです。
もちろん、結果を導く過程は順風満帆ではなかったはずです。
これもダメ、あれもダメだったけれども、こんな困難を乗り越えてやりましたという、もがき苦しんだプロセスを見せるのです。
——なるほど、過程を見せるのですね。
はい、もがいて成長したプロセスを語るのです。
人は、そのプロセスに感動するわけです。
皆さんはそれをちゃんと語れていますか。ぜひ振り返ってみていただきたいです。
組織と個人の最適解:ミスマッチによる不幸を減らすプロの哲学
企業が「人材流出を防ぐ」ことの重要性に気づき始めた今、企業側のリテンション戦略と個人のキャリア戦略は不可分となりました。
ここでは、離職率を44%から9.1%に引き下げた企業改革の「4つの柱」 を紹介します。
そして「誤った離脱も残留も防ぐ」という、川野さんがたどり着いた人と組織の真の最適解を深掘りします。
離職率を44%から9.1%に引き下げた企業リテンションの「4つの柱」
——以前、半分近くの方が2、3年で辞めてしまったという事実を知った後、離職率を引き下げられたというお話を伺っております。その成果を実現できた要因は何だったのでしょうか。
企業側にどうアプローチしているのか、というご質問ですね。
私は講演も頻繁に行っているのですが、そこで企業側にお話ししているのは、主に4つの点です。
それぞれの頭文字をとって、私は「SPEC法」と名付けています。
——4つポイント、SPEC法について、具体的にご説明いただいてもよろしいでしょうか。
一つ目は、求人票の段階で、お互いの理解の齟齬が起きないように、誠実に説明を尽くして、認識の違いを解消しておくことです。
入社後に、「話が違う」と離職するケースが多いからです。
(sincerity:誠実さ)
二つ目は、存在意義(パーパス)、つまり、社会的な存在感や存在意味を示し、人と組織が一緒に歩むうえでの目標となるものであり、明確に掲げることが必要です。
人は、ソーシャルグッド(社会に影響を与える活動)に魅了されます。
(purpose:目的)
三つ目は、能力開発、つまり研修体系が揃っていますか、ということです。
人は今現在の辛い思いは耐えられるけれども、将来の希望をなくした時に初めて心が折れてしまいます。
研修体系が必要なのは、社員が「自分はこの仕事、この職場に適性があるのか。務まるのか」と不安に駆られた際に、研修体系が整備されていれば、将来の希望を持てるようになるからです。
(education:教育)
四つ目は、上司との定期的な面談の機会を設けることです。
孤立しがちな人材を、支援し寄り添い伴走する。
「自分は一人ではない」「組織の一員として向け入れられている」と実感させることが必要です。
(com:接頭辞で「共に」「一緒に」という意味)

——これらの4つポイントであるSPEC法を、研修や講演を通じて、クライアント企業に導入し、離職率を下げることができたという成果につながったのですね。
企業が今、最も反響を示すテーマ:「人材流出」を防ぐための風呂の栓の締め方
最近は「人が採りづらい」という状況です。
浴槽に水が入らなくて困っているのなら、水が出ないようにお風呂の栓をしっかり閉めましょう、ということです。
——実際に、そういった人材の定着に関するお話をされた企業様で、定着率が上がっているという実感はございますか。
はい、あります。
「転職の支援をしていると同時に、人材の定着を支援するのは矛盾しているのではないか?」と思われるかもしれません。
しかし、全く矛盾していないのです。
それは、残るべき方々、例えば会社にマッチしていると感じて生き生きと働いている方々に対しては、ちゃんと残っていただくためです。
「誤った離脱も誤った残留も防ぐ」:企業と個人、両方に伴走する組織づくりLABOのパーパス
——最後に、貴社の「パーパス」についてお聞かせください。
組織づくりLABOのパーパス(社会的存在意義)は、「強引に離職を止める」ことでも、一方「無責任に転職を煽る」ことでもありません。
“ミスマッチによる不幸”を減らすことです。
よって、企業と個人、両方に伴走する立場 を選びました。
リテンション戦略とキャリア戦略、両軸から「人と組織の最適解」を導く専門家として私どもは 両方を知っている人間だからこそ見える“真の最適化”がある と考えています。
私どもの役割は――“人と組織の最適な関係性”を論理的にデザインすることです。
「辞めるべきではない人が辞めてしまう」不幸をなくすために。
「辞めるべき人が、迷い続けて動けない」不幸をなくすために。
企業には 「本来残るべき人材が辞めない仕組み(リテンション)」 を、個人には 「本来進むべきキャリアを誤らない思考法(キャリア戦略)」 を届けています。
“人と組織の最適解”をともに探す――それが私どもの仕事です。
「誤った離脱も、誤った残留も防ぎ」、“本人と組織が最も幸せに働ける場所”に導くことこそが、人事の合理的な解です。
だから私は 企業と個人、両方に伴走する立場 を選びました。

「May」を捨て、プロセスを語ろう:自分らしい職場を見つける戦略
今回、川野さんのお話を伺って、従来の転職の常識を覆す「転職の適性」の重要性が明らかになりました。
求職者や転職者が気を付けたいのは、求人票のスペックに囚われることでも、表面的な結果やスキルだけを羅列することでもありません。
自分を縛る無意識の制限「May」を取り払い、「自分らしさ」と「プロセス」をストーリーとして表現することで、企業との最適な関係性を見つけ、転職成功と、その先の定着を実現するための第一歩となるはずです。
ミスマッチを防ぎ、真に活躍できる職場を見つけたいと願う全てのビジネスパーソンは、この「気づき」から始めるべきでしょう。
今回のインタビューでお話を伺った川野さんの著書『転職に向いてない人がそれでも転職に成功する思考法』(東洋経済新報社)が、2025年10月15日に発売されました。
リリース情報の詳細はこちらからご確認ください。

