文理融合が最強のビジネススキル! データ時代を生き抜く「数学力」でキャリアを爆速化せよ

日々膨大なデータに囲まれながら、「結局、この数字は何を意味するんだ?」「どうすればこのデータをビジネスに活かせるのか?」と、頭を悩ませていませんか。

公益財団法人 日本数学検定協会 理事長の髙田 忍さんは、数学とは「生きる知恵」であり、難しく考え過ぎる必要はないと語ります。本インタビューでは、ビジネスにおける数学の真価と、未来を拓く「文理融合人材」の可能性を深掘りします。

目次

ビジネスにおける数学の必然とは。「ビジネス数学検定」が紐解くキャリアの可能性

公益財団法人 日本数学検定協会 理事長 髙田 忍さん

ビジネスの現場では毎日数字に触れているにもかかわらず、多くの社会人が数学の重要性を認識しきれていない現状があります。本セクションでは、「ビジネス数学検定」が生まれた背景と、社会人が数学を学び直すことで得られる具体的なメリットについて深掘りします。

「ビジネス数学検定」が生まれた背景とその役割 

——貴会で実施されている「ビジネス数学検定」は、どのようなきっかけで作られたのでしょうか。

髙田 忍さん

はい。まず検定を創設した背景からお話しします。私たちはもともと、一般によく知られている実用数学技能検定「数検」を実施してきました。約20年前、様々なイベントに参加し、数学の面白さを広める活動をしていたのですが、そこでよく耳にしたのが、お子さんからの「数学って大人になってから役に立つの?」という質問でした。そして、それに対して保護者が「いや、使っていないよ」と答えてしまう。このやり取りを目の当たりにし、学校で学ぶ数学が社会と結びついておらず、数学的リテラシーが低いという課題を痛感したのです。

——なるほど。私も学生時代は数学が苦手でしたが、社会人になってから数字の重要性を痛感する場面が多々あります。

髙田 忍さん

同じような方は非常に多いと思います。ビジネスの現場で日々数字に触れているはずの社会人の方々が、その知識や考え方を体系的に学べていない。この現状を解決するため、ビジネスの様々な場面で実践的に役立つ数学的な思考力を身につけられる検定が必要という課題を基に、この「ビジネス数学検定」を構築しました

——身近に存在するからこそ、その重要性を意識的に学ぶことが大切だ、ということですね。

髙田 忍さん

おっしゃる通りです。数学はあまりにも身近にありすぎるため、かえってその大切さが伝わりにくい側面があります。ですから、日常生活の具体的なシチュエーションの中に「実はここに数学的な考え方が活かされているんですよ」ということを示せるような問題作りを重要視しています。

——では、社会人が「ビジネス数学検定」を受検するメリットはどのような点にあるのでしょうか。

髙田 忍さん

はい。現代のビジネスシーンでは、勘や経験だけに頼るのではなく、データという客観的な根拠に基づいて意思決定を行うことが強く求められています。過去のデータを読み解いて“分析”し、未来がどうなるかを“予測”する。「ビジネス数学検定」は、こうした一連の思考プロセスを体系的に学ぶことができるため、その学習過程自体が、社会人にとって大きな価値を持つと考えています。それこそが最大のメリットではないでしょうか。

AI時代をリードする若年層:世代間ギャップを乗り越えるには

——近年、「ビジネス数学検定」はどのような層の方々が受検されているのでしょうか。

髙田 忍さん

はい。最近の傾向として、若い方の受検が非常に増えています。高校生も含めて、16歳から30歳までの層で、全体の半数以上を占めているのが現状です。

——それはなぜでしょうか。

髙田 忍さん

この背景には、政府が打ち出した「AI戦略2019」が大きく影響しているでしょう。これからの日本にはAIやデータに強い人材が不可欠であるとし、ほとんどの学生にデータサイエンスの素養を身につけさせるべきだ、という方針が示されたのです。

——なるほど。若い世代はその変化を敏感に感じ取っているのですね。

髙田 忍さん

ええ。しかし、問題は彼らを受け入れる企業側、特にマネジメント層がデータサイエンスの重要性を理解していなければ、そこに深刻なミスマッチが生じてしまうということです。データサイエンスの基礎を学んできた若者と、これまで勘と経験を頼りにしてきたマネジメント層が同じプロジェクトチームを組んだとしても、物事の見方や判断基準といった共通言語がなければ、同じ方向性で企画立案などを進めるのは非常に困難になります。

——実際にビジネスの現場でも、「理数系の人材が欲しい」というニーズの高まりを感じられることはありますか。

髙田 忍さん

その点は大きく変わってきていると感じます。例えば、かつては文系学生の就職先の代表格であった銀行ですが、現在では経営トップが理系出身者に代わりつつあるのです。

ビジネスを動かす「5つの力」数字で考え、伝える技術

——会社員であれ個人事業主であれ、「数字を見る力」がなければ、売上を伸ばし、適切に管理していくことは非常に難しいと感じます。

髙田 忍さん

まさにおっしゃる通りです。その「数字を見る力」を体系化したものが、私たちが提唱するビジネス数学における「5つの力」です。

第一に、現状起きていることを数字で正しく読み解く「把握力」があります。そして、ただ現状を把握するだけでなく、「なぜそうなっているのか」という原因を探る必要があります。これが第二の「分析力」です。

——把握、分析、と進むのですね。

髙田 忍さん

はい。分析を経て次の一手を考える段階では、複数の選択肢が出てくるはずです。その中から最善のものを選ぶ力が、第三の「選択力」となります。さらに、より良い選択をするために、将来どのような結果をもたらすかを考える、第四の「予測力」も欠かせません。

そして、第五の力は、それら全てを根拠に基づき、他者に分かりやすく伝える「表現力」です。数字という客観的な根拠に基づいて提案すれば、受け手もそれを基に判断し、仕事を進めやすくなります。これは「あなたの考えですよね」といった属人的な議論を避けることにも繋がります。従来は提案者個人に集中しがちだった責任が分散され、ある意味で「数字」が責任を負ってくれる形になるため、個人のプレッシャーやストレスを軽減する効果もあるのです。

キャリアを加速させる数学力の戦略的価値

公益財団法人 日本数学検定協会 理事長 髙田 忍さん

ビジネスにおける数学力は、単なる知識としてだけでなく、個人のキャリアを戦略的に加速させる強力な武器となります。特に文系・理系の枠を超えた「文理融合人材」の価値が高まる現代において、どのように自身の数学的スキルを磨き、キャリアアップに繋げていくべきでしょうか。本章では、その具体的な戦略と、採用市場でのアピール方法についてお話いただきました。

「文理融合人材」とは? 市場価値を高める理由 

——転職やキャリアアップにおいて、数学のスキルを持つことはどのような強みになるのでしょうか。

髙田 忍さん

一つ興味深い事例があります。私の知人に、数学が非常に得意でありながら、あえて文系の学部に進学し、いわゆる文系職種が多い企業に就職した人がいます。彼の職場では、周囲に数学的な素養を持つ人が少なかったため、彼の能力が際立ち、すぐに頭角を現したそうです。

——なるほど、希少価値が生まれたわけですね。

髙田 忍さん

はい。これからのビジネスでは、過去のデータを基に現状を分析し、今後どのように成長していくか、次にどんな手を打つべきかを考える場面が必ず出てきます。その際に、彼の持っていた数学的な思考力に加え、文系学部で培った素養も大いに役立ったのです。つまり、彼は文系・理系の枠を超えた「文理融合人材」になったわけです。このような人材は、これからの時代に非常に強い競争力を持つと考えています。

——逆のパターン、つまり理系出身の方が文系的な素養を求めるようなケースもあるのでしょうか。

髙田 忍さん

ええ、まさに逆の視点からの事例もあります。以前、ある大手ビール会社の研究開発チームの部長とお話する機会がありました。商品開発には、数値データに基づく「定量分析」と、コンセプトやデザインといった数値化しにくい要素を扱う「定性分析」があります。そのチームでは、データ重視の定量分析に非常に力を入れて開発を進めていたそうですが、その方向性に偏りすぎた結果、ある問題に直面したとおっしゃっていました。

——どのような問題でしょうか。

髙田 忍さん

お客様に商品を手に取ってもらうためには、パッケージのデザインや心に響くキャッチフレーズといった、文系的あるいはアーティスティックな感性が極めて重要になります。定量的なデータばかりを追い求めるうちに、そうした感性を活かした開発がおろそかになってしまった、と嘆いておられたのです。

——どちらか一方に偏るのではなく、両方の視点が必要だということですね。

髙田 忍さん

その通りです。この話が示すように、定量的なセンスと、アートや言葉を扱う文系的なセンス、この両方を兼ね備えることで、大きな相乗効果が生まれます。これからのキャリアを形成していく上で非常に重要な視点です。ですから、これまでご自身のことを「文系だ」と捉えてきた方が、新たに数学的なスキルを身につけることは、「文理両方の視点を持つ人材」という極めて強力なアピールにつながるのではないでしょうか。

DX・AI時代の人材戦略。「勘と経験」から「データと根拠」へ 

髙田 忍さん

「これまでは経験と勘でやってこられたが、これからの時代はそれでは通用しない」。こうした声が多くの現場から聞かれるようになりました。その背景には、現在の政府も推進している「EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)」という考え方があります。これは日本語で「根拠に基づく政策立案」と訳されますが、特に海外の投資家は、企業経営におけるこの「根拠」を非常に重視します。それが株価にも影響を及ぼすため、今や企業もEBPMの考え方に対応せざるを得なくなっているのです。

AIなどによって膨大な情報を得ることはできますが、重要なのは、その情報を人間側がいかに正しく読み解き、活用して次の戦略を立案できるかです。そのための基礎的な能力を全社員が身につけることは、今後の企業経営において極めて重要であり、社会的なニーズの高まりを強く感じています。

——グローバル化が加速する中で、日本の企業が海外と渡り合っていくためには、データを的確に読み解ける人材が不可欠なのですね。

採用市場でどう評価されるのか。 数学的スキルを効果的にアピールする方法 

——「ビジネス数学検定」を研修や評価制度に取り入れている企業も増えていると伺います。現在の採用や人事評価において、数学関連の資格はどのように位置づけられているのでしょうか。また、転職活動の際に、このようなスキルを効果的にアピールするポイントがあれば教えてください。

髙田 忍さん

先ほどお話した通り、「文理融合人材」が求められる時代になっています。そのため、たとえ文系学部の出身であっても、「ビジネス数学検定」のような資格を取得していると、採用担当者の関心を引くケースが事実として増えています。資格取得という事実に加え、自身の経験と結びつけてアピールすることで、「君はそうした分野にも興味を持っているんだね」と、人事側が前のめりになるのです。この傾向は数年前に比べて明らかに強まっており、企業側の意識が大きく変化してきていることを実感しています。

——具体的に、スキルを効果的に証明する方法はあるのでしょうか。

髙田 忍さん

はい。そのための仕組みとして、私たちの検定では「オープンバッジ」というデジタル証明を発行しています。認定者はこのオープンバッジを、エントリーシートなどに添付して応募することができます。採用担当者はそのバッジを見ることで、応募者が「どのような内容を学習し、その結果どのようなスキルを身につけたのか」という学習履歴まで正確に把握できるのです。オープンバッジは改ざんができない技術で証明されているため、企業側も安心してその人の能力を評価できます。こうした客観的で信頼性の高いスキル証明は、今後ますます重要になっていくでしょう。

苦手意識を越える、日常に息づく数学の面白さ

公益財団法人 日本数学検定協会 理事長 髙田 忍さん

学生時代の「受験数学」の経験から、数学に苦手意識を持つ社会人は少なくありません。しかし、数学の本来の姿は、私たちの日常生活に深く根ざした「生きるための知恵」であり、「考えること」そのものです。ここでは、数学への固定観念を打ち破り、日常の中から数学的思考の面白さを見出すアプローチを探ります。

「受験数学」の呪縛から抜け出そう。身近な場面で感じる「考えること」の喜び

——学生時代に数学が苦手だったという社会人は少なくないと思います。そうした方々が、数学の面白さを知り、好きになるためには、どのようなことから始めればよいでしょうか。

髙田 忍さん

そのご質問はよくいただきます。まず考えていただきたいのは、「嫌いだった数学とは、一体どのような数学だったのか」ということです。おそらく、多くの方が嫌っているのは、数学そのものではなく、「受験のための数学」ではないかと私は考えています。

——「受験のための数学」ですか。

髙田 忍さん

はい。例えば大学受験、特に国公立大学を目指す場合は数学が必須となります。そこでは時間的な制約の中で問題を解かなければならず、「解けないと点数が取れない」という厳しい現実に直面します。この時の経験が、ある種の挫折感として心に残り、数学への苦手意識を形成しているケースが非常に多いように感じます。

——確かに、そうした経験を持つ方は多そうです。では、本来の数学とはどのようなものなのでしょうか。

髙田 忍さん

本来の数学は受験数学とは全く異なります。数学を意味する英語の「mathematics」は、ギリシャ語の「mathema(マテマ)」という言葉に由来します。この「マテマ」が意味するのは、「学ぶべきこと」、すなわち人間が他の動物と違う最も優れた能力である「考えること」そのものなのです。ですから私は、何かを論理的に「考えた」瞬間、それはもう数学なのだ、とお伝えしたいのです。

——具体的にどのような瞬間が「数学」と言えるのでしょうか?

髙田 忍さん

例えば、他社との打ち合わせに間に合うように移動計画を立てるとします。「電車の遅延リスクを考慮して、通常の1.5倍の移動時間を見積もっておこう」。これもまた、リスクを予測し、論理的に考えて導き出した結論ですから、立派な数学的思考です。案外、身近で簡単なことだと思いませんか。

——なるほど。そう聞くと、とても身近に感じられます。

髙田 忍さん

「考えた瞬間が数学」だと捉えれば、決して難しいものではありません。多くの方が抱いている数学のイメージは、おそらくシグマ(Σ)や積分(∫)といった、複雑で難解な数式が並んでいるものでしょう。そして、その記号が何を意味しているのかを理解する前につまずき、苦手意識を持ってしまったのではないでしょうか。

もちろん、データサイエンスのような専門分野ではそうした数式も重要になります。しかし、それだけが数学の全てではありません。もっと視野を広げれば、私たちの身の回りには数学が溢れています。例えば、このペンのインクの残量を見て、「あとこれくらいでなくなりそうだから、次の機会に買っておこう」と考える。これだけでも立派な数学なのです。

学習の鍵は日常の「気づき」にあり。数学的センスを磨き、学びの原動力を得る方法

——資格を取得したいと考えても、多忙な社会人が学習時間を確保するのは大変です。特に数学関連の資格について、効率的に学習を進めるためのアプローチ方法など、何かアドバイスはありますか。

髙田 忍さん

学習のモチベーションは、必ずしも自発的なものだけではありません。例えば、昇進のために「この資格を取らなければならない」といった強い外的プレッシャーが動機になるケースも多く見られます。ビジネス数学のような基礎力の場合、そこまで強い強制は難しいかもしれませんが、社会全体で「これはビジネスパーソンにとって必須のスキルだ」という共通認識が醸成されれば、それが一種の“柔らかいプレッシャー”となり、「自分も学ばなければ」という意識を高めることにつながると考えています。

——外的要因だけでなく、自ら学びたいという意欲も重要になりそうですね。

髙田 忍さん

はい。最終的にはご自身の内発的な動機が重要になります。そのためには、まず日常生活や社会の中に、数学がどのように使われているかに「気づく」ことが第一歩です。例えば、新聞やニュースで報じられる様々な数値(前年比、出生率、視聴率など)が、何を何で割り、どのような視点から比較されているのか。そうした数字の背景を常に意識する習慣をつけることで、徐々に数学的なセンスが磨かれていきます。

——センスが磨かれると、どのような変化があるのでしょうか。

髙田 忍さん

そのセンスが向上すると、例えば資料に示された数値データを見たとき、「この数字、何かおかしいのではないか?」という違和感に気づけるようになります。このように、自ら「気づく」機会を増やしていくことが、学習への原動力につながるのだと思います

——なるほど。日常の意識が学びのきっかけになるのですね。

髙田 忍さん

はい。もちろん、鶏が先か卵が先かという議論はありますが、皆様が「気づく」ためのきっかけをご提供することも、私たちの重要な役割です。書籍をはじめとする学習コンテンツを充実させることはもちろん、今回のような機会を通じて、ビジネス数学の重要性を社会に広く伝えていきたいと考えています。

——確かに、私も本日お話を伺うまで、ビジネスにおける数学の重要性をここまで深くは認識していませんでした。世間一般では、なおさらそうかもしれません。

髙田 忍さん

そのように認識していただけたこと自体が、私たちにとって一つの大きな成果です。それこそが、私たちが今まさに取り組むべきことであり、活動の意義だと感じています

「学び直し」を現実に。ビジネスシーンに根差した学習サポートとは

——社会人の「学び直し」を支援する上で、貴会ではどのようなサポート体制や具体的な取り組みをされていますか。

髙田 忍さん

はい。まず最も注力しているのは、検定で出題する「問題」そのものです。私たちは、ビジネス数学が実際に活用される場面を、いかにリアルな問題として提示できるかが非常に重要だと考えています。

日常生活では数学を意識していなくても、ビジネスの現場では様々な課題に直面します。そうした具体的な場面を取り上げ、「実はこの課題は、このような数学的な考え方で解決できるんですよ」と示すことで、学習者は初めてその必要性を実感できるのです。単なる計算問題ではなく、より身近に感じられるような問題を通じて、学ぶべきことが明確に見える問題作りを徹底しています

——なるほど、学習コンテンツそのものが最大のサポートなのですね。他に具体的な取り組みはありますか。

髙田 忍さん

はい。具体的な取り組みとしては、現在、大学と共同で新しいe-learningコンテンツを開発しているところです。近年重要性が増しているデータサイエンスの分野も、その基礎にはビジネス数学の基本的な概念が不可欠です。そこで、この新しいe-learningでは、「ビジネス数学検定」3級レベルから、私たちが実施しているもう一つの資格「データサイエンス数学ストラテジスト」の中級レベルまでを網羅する内容を学ぶことができるようになります。

激変する時代を「生きるための知恵」としての数学

公益財団法人 日本数学検定協会 理事長 髙田 忍さん

変化の激しい現代において、数学は単なる学問を超え、私たち一人ひとりが未来を生き抜くための不可欠な「知恵」となります。複雑な社会の課題を読み解き、自身のキャリアを切り拓くために、数学的思考はどのように役立つのでしょうか。キャリアに悩む読者に向けて、髙田さんから素敵なメッセージをいただきました。

日常業務への新たな観点:資格がもたらす自己変革の扉

——本日お話を伺って痛感したのは、「学生時代に、数学をもっと多角的に捉えられていれば」という後悔です。単に「学校で必要だから」という視点ではなく、これが「生きるための知恵」なのだと理解していれば、きっと楽しく学べたのだろうと感じました。

髙田 忍さん

おっしゃる通りですね。「生きるための知恵」とは、例えば日常のあらゆる場面で「どちらが得か」を考えることです。損得というと金銭的な話に聞こえるかもしれませんが、それだけではありません。

例えば、ビジネスにおいて1年かかる工程を8ヶ月に短縮できれば、その分リスクが減り、企業にとっては大きな「得」になります。このように、日々の生活や仕事の中で、無駄を省き、物事をより良くしていくために数学的な視点は非常に役立ちます。大切なのは、そうした視点をいかに自分なりに積み重ね、実践していくかです

——なるほど。

髙田 忍さん

そうした実践を自発的に、前向きに行うための「後押し」こそが、まさに資格取得や検定へのチャレンジなのです。目標を設定して挑戦し、「合格できた」という成功体験が自信となり、次のステップへと進む力になる。私たちは、学習を通じてそのような成長の好循環を生み出したいと考えています。

未来を共に創る。日本数学検定協会からのエール

——最後に、転職やキャリアチェンジを考えている読者に向けて、メッセージをお願いいたします。

髙田 忍さん

読者の皆様にお伝えしたいのは、これからの時代に求められる「生きる力」の中に、データサイエンス的な視点が不可欠であることは、もはや変えようのない事実だということです。私たちは、皆様がそのスキルを身につけるための様々なツールや機会を提供していきます。ぜひ、私たちと一緒に未来を切り拓いていきましょう。

時代を見通す視点––数学が導く、確かな前進力

公益財団法人 日本数学検定協会 理事長 髙田 忍さん

髙田さんのお話から感じたことは、「数学は私たちにとって身近で親しみやすい存在である」ということです。いわゆる「受験数学」が原因で苦手意識を持つ人が多い中、実は「生き抜く力」になるという最大の魅力に気づき、数学に対する認識が改まりました。

転職やキャリアチェンジを考える際も、数字を読み解き、課題解決に繋げる力は、変化の激しい時代を力強く生き抜くための不可欠なスキルとなります。身近な数字に目を向け、日々の生活や業務の中でその本質を捉え実践することで、あなたのキャリアと未来は大きく開かれるでしょう。

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