「聴く力」の深淵。ヤギゼミで学ぶ、日本文化の精神を活かした「包み込む」対人支援とは

「聴く力」の深淵。ヤギゼミで学ぶ、日本文化の精神を活かした「包み込む」対人支援とは

今回は、対人支援のプロフェッショナルとして多方面で活躍する、株式会社M代表取締役の八木橋 英男さんにインタビューを行いました。

八木橋さんは、東京大学卒業後にシステムエンジニアとしてキャリアをスタート。

その後、大手証券会社の人事担当部長などを歴任し、現場のモチベーション向上や組織改善に奔走した経歴を持ちます。

自らの資格試験の受検経験をロジカルに分析し、独自の指導法を編み出した、まさに「現場を知る」専門家です。

主宰する「ヤギゼミ」は、解決志向アプローチを用いた実践的な研修やキャリアコンサルタント養成で高い実績を上げています。

ビジネスの最前線で求められる、相手の潜在意識にまで寄り添う「本物の支援力」を、少人数・対話重視のスタイルで伝えています。

ヤギゼミ
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「夢喪失の時代」と呼ばれる現代において、資格をどう活かし、停滞する社会にどう活力を吹き込むのか。

単なるテクニック解説に留まらない、アナログな対話を通じた「支援の本質」に迫ります。

目次

資格取得はゴールではない。キャリアコンサルタントの「現実」と「付加価値」

「国家資格を取得すれば安泰」というイメージを持ちがちですが、実態はどうなのでしょうか。

専門家の口から語られるのは、意外にも厳しい経済的現実と、それを踏まえた上での「賢い資格の活かし方」でした。


——キャリアコンサルタントの資格取得を検討されている方の中には、資格を取るメリットはあるのか、と迷われる方も多いようです。そのあたりの現実はいかがでしょうか?

八木橋 英男さん

まずは、「本当に資格を取る必要があるのか」という部分を考えてみてはどうでしょうか。

現在の仕事の延長線上で特に問題がないのであれば、あえて資格という形にこだわらなくても良いのではないか、と感じることもあります。

実際のところ、キャリアコンサルタントの資格を取得したからといって、すぐに高収入が得られるような仕事が用意されているわけではありません。

——そうなのですか。

八木橋 英男さん

現実はそれほど甘いものではありません。

例えばハローワークなどの公的機関で働いたとしても、報酬はアルバイトより少し良い程度といっても過言ではなく、それだけで生計を立てていくのはとても大変なのが実情です。

——国家資格であるにもかかわらず、それほど大変なのですね。

八木橋 英男さん

はい、報酬水準はまだ決して高いとは言えません。

歴史のある資格ではありますが、知名度を上げて個人で高く設定できたとしても、1時間あたり1万5千円程度が上限ではないでしょうか。

1日に対応できる人数には限りがありますから、ビジネスとして大きく成立させるのは難しい側面があります。

ちなみに、ハローワークなどの時給は1,500円~2,000円程度が相場と伺ったことがあり、決して高待遇とは言えません。

——それは非常に意外です。相談者の人生を豊かにするような、素晴らしいスキルが詰まった資格だというイメージがあるのですが。

八木橋 英男さん

ですから、この資格一本で独立しようとすると苦労することになります。

実際には、企業の人事部門などで働いている方が、自身の専門性に「プラスアルファ」の武器としてこの資格を掛け合わせるケースが多いですね。

まずは生活の基盤となる本業があり、そこに資格の知見を活かす。

あるいは、定年退職後のセカンドキャリアとして、これまでの経験に資格を添えて活動するといった形が一般的ではないでしょうか。

「夢喪失の時代」を生きる私たち。なぜ今、日本人に元気がないのか

現代の日本社会を、八木橋さんは「夢喪失の時代」と定義します。

豊かになったはずの私たちが、なぜ働く意欲を失い、未来に希望を持てなくなっているのか、その構造的な背景を紐解いていきます。


——今後、先生がどのような役割を担い、どういったコンサルタントを増やしていきたいとお考えか伺う前に、まず現在の社会をどのように捉えていらっしゃるかお聞かせください。

八木橋 英男さん

私は、現代を「夢喪失の時代」であると認識しています。

私自身、さまざまな研修に登壇しますが、「夢を持っている人はいますか?」と問いかけても、手が挙がるのはせいぜい1人か2人。

時にはゼロという場合もあります。

今の日本は、若者に限らずマネージャー層も含めて、夢を持っている人が非常に少ないと感じます。

マネージャーの方に「なぜそんなに一生懸命仕事をしているのですか?」と聞いても、「仕事だから」「当たり前だから」という答えが返ってくるばかりで、習慣で仕事をしていて、夢を持って働いている人はごくわずかです。

まさに、上から下にいたるまで夢を失っている時代と言えます。

——若い世代に関していえば、日本はすでに成熟した社会であり、インフラも十分に整っています。そうした環境も影響しているのでしょうか。

八木橋 英男さん

おっしゃる通りです。現代はそれほど必死に頑張らなくても、生活できてしまう環境にあります。

私たちの時代の高度経済成長期は、戦後で何もなかったからこそ、国も会社も個人もインフラ作りに必死でした。

月に200時間ほど残業して、給料を倍もらい、その半分を使いながらも「もっと豊かになろう」とがむしゃらに突き進んでいました。

——周囲の皆さんも、同じような熱量で動いていたのですね。

八木橋 英男さん

当時はそれが楽しかったですし、みんな遅くまで働いていたので平気でした。

しかし、現在は成熟社会となり、すでに物が溢れています。

そうなると、かつてのようなハングリー精神を持って頑張る必要がなくなってしまいました。

——その結果、「このままで、そこそこ過ごせればいい」という守りの姿勢に入ってしまう傾向が強いのですね。

八木橋 英男さん

ええ、そこそこ満足でみんな夢を追わなくなっています。

これは成熟社会の大きな特徴といえるでしょう。

少子化や、結婚をしない男女が増えているといった社会問題も、その延長線上にあるのではないでしょうか。

——現状の生活にそれなりに満足してしまっていることが、根底にあるのかもしれません。

八木橋 英男さん

その満足感が、結果として社会全体の「元気のなさ」につながっているのではないかと考えます。

現状維持は「退化」への道。成長を支える2つの目標設定

「今のままでいい」という現状維持の姿勢は、変化の激しい現代においては相対的な「退化」を意味すると八木橋氏は警鐘を鳴らします。

成長を止めることなく、自分らしい歩みを続けるために必要な目標の捉え方について解説します。


——社会の活気を取り戻すためには、どのようなことが大切であるとお考えでしょうか?

八木橋 英男さん

向かうべき目標を明確に定め、それに向けて努力し、一つひとつ達成していくプロセスが必要です。

そうした「目標に挑み、達成していく」というサイクルがある社会こそが、本来の発展的な社会であると考えています。

万物は常に変化していますから、決して「淀まない」ことが重要なのです。

——淀まないこと、つまり常に動き続けることが大切なのですね。そのために必要なのが「成長に向けた目標」ということでしょうか。

八木橋 英男さん

はい。ただし「成長」と言っても、2つの側面があります。

一般的に、企業などで評価されやすいのは「目的指向」の人ですが、実は「プロセス指向」の人も非常に重要であり、その取り組みは十分に目標と呼べるものです。

例えば、農家の方に目標を尋ねた際、「特別に何かを目指しているわけではなく、ただたんたんとお米を作るやり方を維持し続けているだけだ」という答えが返ってくるのではないでしょうか。

——確かに、私たちが普段イメージする「目標」という言葉の響きとは、少しニュアンスが違う感じがしますね。

八木橋 英男さん

そうですよね。ですが、その方たちは「すでにあるプロセスを維持し、改善し続けること」を目標にしているのです。

これは決して軽視されるべきものではなく、今までにない新しいものを生み出すことと同様に、非常に大切な目標です。

——新しい挑戦だけが目標ではない、ということですね。

八木橋 英男さん

その通りです。比率で言えば、企業活動の約8割は既存プロセスの維持であり、新規の目標はせいぜい2割程度でしょう。

ですから、「何か新しいことを創り出さなければ目標ではない」と考えるのは間違いです。

今ある仕組みを維持し、磨き続けることもまた、大切な目標なのです。

——広い視野で目標を捉えることが、納得感を持って働く鍵になりそうです。

八木橋 英男さん

こうした幅広い観点から目標を明確化し、自分に合った目標に向かって生きていくことが不可欠です。

そうでなければ、世の中が絶えず変化し続けている以上、自分では維持しているつもりでも、保守的だけでは相対的にはどんどん落ちていってしまいます。

つまり、現状維持は実のところ「退化」を意味するのです。

ティーチングから「伴走」へ。相談者の問題を小さくする支援の極意

支援の本質は、正しい答えを教えることではなく、相談者の抱える重荷を共に分かち合い、問題を「小さく」することにあります。

一人では解決できない課題にどう寄り添い、再び前を向く元気を引き出すのか、対人支援の極意に迫ります。

八木橋 英男さん

目標設定に加えて、仲間を大切にする「チームワーク」も欠かせない要素です。

かつての日本社会の成長を支えたのは、まさに「小集団活動」でした。

——小集団活動、ですか。

八木橋 英男さん

戦後、人材が不足していた時代、一つの企業だけで何かを成し遂げるのは困難でした。

そこで当時の成長を支えたのが、企業の枠を超え、大学や他企業など多様な外部の力を借りて新しいものを創り出す、いわば「小集団活動」としてのネットワークの力です。

そうした組織の垣根を越えた連携による「元気づくり」こそが日本の本来の強みであったと捉えています。

今こそ、その助け合いの精神を復活させてほしいと考えています。

——確かに、一人では成し遂げられないことも多いですよね。そのキーポイントを担い、人々の声を「聴ける存在」を増やす。先生のもとでスキルを身につけることは、そうした社会を実現する一歩になるのかもしれません。

八木橋 英男さん

大切なのは「みんな喜怒哀楽で一喜一憂する同じ人間なのだ」と理解することです。

悩むときもあれば嬉しいときもありますが、その状態が永遠に続くことはありません。

大きな問題に直面して身動きが取れなくなっている相談者に対し、視点を変えることで「それほど深刻なことではないのかもしれない」「こうやれば、変わるかもしれない」と問題を小さく捉えられるように支援し、「大丈夫ですよ」と背中を押して送り出す。

そんなキャリアコンサルタントのあり方が、非常に理想的だと考えています。

——コンサルタント自らも、自分の目標に向かって生きていることが大切なのですね。お話を伺う中で、私の中のキャリアコンサルタントに対するイメージ、いわば「色眼鏡」が外れた気がします。

八木橋 英男さん

以前は、どのようなイメージを持たれていたのですか?

——恥ずかしながら、正解を教える「ティーチング」のような役割だと思い込んでいました。仕事柄、私も人のお話を聴く機会は多いのですが、今日は「人の話を聴くことの本質」に触れられた気がします。

日本文化の「和」と「テトラレンマ」。アナログな対人コミュニケーションの復活

効率化が進む現代だからこそ、日本人が古来より大切にしてきた「包み込む」コミュニケーションの価値が見直されています。

デジタルでは決して代替できない、リアルな人間関係から得られるエネルギーの源泉について語っていただきました。


——最後にお伺いしたいのですが、これからの日本社会やコミュニケーションのあり方について、どのようにお考えでしょうか。

八木橋 英男さん

日本の文化や風土が持つ素晴らしい価値を、もう一度再認識すべきだと考えています。

日本人は古来より「調和(和)」や「清潔さ」を非常に重んじてきました。

華道や茶道、あるいは剣道や柔道といった「道」のつく文化には、日本が大切に守ってきた精神性が宿っています。

日本は本来、人種差別もなく、非常に素晴らしい独自の文化を持った国なのです。

——そうですね。ただ、現代はあまりにストレス社会となってしまい、人々の元気がなくなっているようにも感じます。

八木橋 英男さん

だからこそ、私は「アナログの力」を復活させて、活気を取り戻してほしいと願っています。

創造的な思考のベースとして、少し専門的な話になりますが「テトラレンマ(四段論法)」という論理があります。

これは一言で表現するなら「風呂敷」のようなものです。
風呂敷はどんな形のものでも包み込み、支えることができますよね。

例えば企業であれば、創業者が大切にしている価値観や企業理念という「風呂敷」で、社員一人ひとりを包み込むイメージです。

誰かにレッテルを貼って排除するのではなく、その場にいる全員を大切な存在として尊重し、共通の価値観で包み込みながら共に成長していく。

こうした包容力のあるアプローチが、今の日本には非常に重要だと思います。

——人間同士の泥臭い、アナログなコミュニケーションの重要性をもう一度見直そう、ということですね。

八木橋 英男さん

その通りです。本来、それは日本の大きな特徴であり強みだったはずですが、残念ながら現在は失われつつあります。

——例えば、飲み会で上司の熱い思いをじっくり聞くといった時間も、アナログな繋がりの一つだったのかもしれませんね。

八木橋 英男さん

今は一人で楽しく過ごせるツールが増えましたからね。

仕事が終わればすぐに帰宅して、一人でゲームをしたり動画を見たりする。

確かにそれも面白いですが、それはあくまで「仮想(バーチャル)」の世界です。

リアルな人間関係から得られるエネルギーは、それとは本質的に異なります。

そこに立ち返ることが、今の時代には必要なのではないでしょうか。

あなたの「聴く力」が、誰かの明日を変える一歩になる

本インタビューを通じて見えてきたのは、キャリアコンサルタントという資格の真価は、技術の習得以上に「人間への深い理解と尊重」にあるということです。

夢を見出しにくい現代において、相談者が自身の役割に誇りを持てるよう支援することは、社会全体の活力を取り戻す一歩となります。

理論に縛られず、一回一回を真剣勝負として向き合うアナログな対話こそが、現状維持という停滞を打破する原動力です。

相手を丸ごと包み込むような「聴く力」を磨くことから、あなた自身の新しいキャリアを切り拓いてみませんか。

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