税理士の国家試験は平均合格率が18%のため、国内でも屈指の難関資格です。
“18%”という数値は独学に限らず、通信講座で学んだ受験者も含まれているため、独学のみで考えると合格率は”10%”以下になることが想定できます。
また税理士試験の勉強時間についても、12月から始めたとして、2年から3年以上はかかると言われているので、計画的に進めなければいけません。
公認会計士や弁護士並みの資格の取得は難しいです。
そこで、そんな税理士の試験を独学で合格を目指すにあたって、必要な情報を調査してまとめました。
今回は、上記の内容をそれぞれ詳しく解説していきます。(5分ほどでサックリ理解できるようまとめました。)
【結論】税理士に独学で合格することは可能か?
“独学”で税理士の合格を目指すうえで「勉強はどのくらい必要なのか?難しいのか?」など、多くの方が不安に感じる要素はいくつか存在します。
しかし、まずは勉強量を度外視して「そもそも税理士は、大学や講座に通わなくても合格する可能性は1%でもあるのか…?」について、調査結果をまとめました。
いくら独学で勉強しても「受験資格」などが必要だった場合は、学校や講座に通う必要が出てくるものです。
ここでは大きく以下2つの観点から、調査結果をまとめています。
- 「合格率から分析する試験の難易度」の観点
- 「受験資格」の観点
①合格率から導く!税理士の一般的な難易度レベル
税理士の難易度は以下の通りです。
| 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 2024年 | 34,757人 | 5,762人 | 16.6% |
| 2023年 | 32,893人 | 7,125人 | 21.7% |
| 2022年 | 28,853人 | 5,626人 | 19.5% |
| 2021年 | 27,299人 | 5,139人 | 18.8% |
| 2020年 | 26,673人 | 5,402人 | 20.3% |
| 2019年 | 29,779人 | 5,388人 | 18.1% |
| 2018年 | 30,850人 | 4,716人 | 15.3% |
| 2017年 | 32,974人 | 6,634人 | 20.1% |
税理士試験は例年8月頃に開催され、11月の終わりに公表されます。
一般的に弁護士並みに難しいと言われ、合格率は税理士のほうが低いです。(弁護士は法科大学院で勉強するため、合格率が上がりやすいです。)
国税庁が示す税理士の合格ラインは以下の通りです。
「会計学に属する科目2科目及び税法に属する科目3科目の合計5科目」が60%もしくはそれ以上。合格ラインが変化せず、難易度に一切の変化がないため、独学でも合格できます。
②クリアすべき受験資格は無いのか?
税理士試験に必要な資格は以下の3つから選べます。
- 学識による受験資格
- 資格による受験資格
- 職歴による受験資格
一つを選び証明書類を提示できれば、税理士試験の受験が可能です。
| 項目 | 受験資格 |
| 学識 | ・大学、短大又は高等専門学校を卒業し、社会科学に属する科目を履修した人 ・大学3年次以上で、社会科学に属する科目を1科目以上含む62単位以上を取得した人 ・一定の専修学校の専門課程を修了した人で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した人 ・司法試験合格した人 ・公認会計士試験の短答式試験に合格した人 |
| 資格 | ・日商簿記検定1級に合格した人 ・全経簿記検定上級に合格した人 |
| 職歴 | ・法人又は事業行う個人の会計に関する事務に2年以上従事した人 ・銀行、信託会社、保険会社等において、資金の貸付け ・運用に関する事務に2年以上従事した人 ・税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上従事した人 |
【押さえるべき】合格の可能性を左右する3つの要素
独学で税理士の合格を目指すうえでは、一人で勉強するとなると、それなりの苦労も。
早速ですが、一番気になるであろう「独学で~~の勉強をする上で、重要になるであろう要素」について答えをまとめておきました。
【No.1】受験へのやる気やモチベーションの管理
税理士試験に対してモチベーションの管理は重要です。税理士試験に合格するには3,000時間や4,000時間が必要といわれています。途中で諦めてしまったり、モチベーションが保てなくなったりするかもしれません。
一つの資格のために長時間の勉強をし続けるのは難しいため、具体的な行動計画や仲間を探すようにモチベーションの維持が大事です。
TwitterやInstagramで検索すれば簡単に勉強している人を見つけられます。そのため長時間の勉強が続けられるように、モチベーションの維持の対策をしましょう。
【No.2】受験科目選択
試験に合格するために、簡単な科目を選ぶ方法もあります。
各科目ごとの合格率は以下の通りです。
| 年度 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 簿記論 | 14.2% | 15% | 17.4% | 22.6% | 17% | 23.0% | 17.4% | 17.4% |
| 財務諸表論 | 29.6% | 13% | 18.9% | 19% | 23.9% | 14.8% | 28.1% | 8.0% |
| 所得税法 | 13% | 12.3% | 12.8% | 12% | 12.6% | 14.1% | 13.8% | 12.6% |
| 法人税法 | 12.1% | 12% | 14.7% | 16.1% | 12.8% | 12.3% | 14.0% | 16.4% |
| 相続税法 | 12.1% | 12% | 11.7% | 10.6% | 12.8% | 14.2% | 11.6% | 18.7% |
| 消費税法 | 13.3% | 11% | 11.9% | 12.5% | 11.9% | 11.4% | 11.9% | 10.3% |
| 酒税法 | 12.2% | 12.8% | 12.4% | 14% | 13% | 13.2% | 12.7% | 12.1% |
| 国税徴収法 | 11.6% | 10.7% | 12.7% | 12.2% | 14% | 13.8% | 13.9% | 13.0% |
| 住民税 | 14.3% | 13.5% | 19% | 18.1% | 13% | 17.2% | 14.7% | 18.2% |
| 事業税 | 11.9% | 11% | 14.8% | 13.1% | 13% | 14.1% | 16.4% | 13.7% |
| 固定資産税 | 13.3% | 14.9% | 13.7% | 14% | 14% | 18.4% | 17.3% | 18.0% |
| 合計 | 17% | 12.8% | 15.5% | 17.3% | 17% | 16.7% | 18.8% | 13.5% |
合格率が低い科目は、「消費税法」と「相続税法」です。僅差ですが、住民税の合格率や固定資産税の合格率は高いです。
また税理士に合格するには以下のような勉強時間が必要です。
| 科目 | 種別 | 勉強時間(目安) |
|---|---|---|
| 簿記論 | 必修 | 450~500時間 |
| 財務諸表論 | 必修 | 450~500時間 |
| 所得税法 | 選択必修 | 600~700時間 |
| 法人税法 | 選択必修 | 600~700時間 |
| 相続税法 | 選択 | 450~500時間 |
| 消費税法 | 選択 | 450~500時間 |
| 酒税法 | 選択 | 150~200時間 |
| 国税徴収法 | 選択 | 150~200時間 |
| 住民税 | 選択 | 150~200時間 |
| 事業税 | 選択 | 150~200時間 |
| 固定資産税 | 選択 | 150~200時間 |
「相続税法」や「消費税法」は勉強時間も長いため、合格が難しいです。
以上から比較的必要な勉強時間が短い科目を受験しましょう。
【No.3】税理士試験の全体像を理解する
試験勉強では、全体の学習範囲を確認しなければなりません。理由は勉強時間が限られているため、すべての科目で満点を取るような勉強が出来ないからです。
合格に必要な点数は、6割もしくは6割以上です。すべての科目で満点を取るのは難しく、必要な勉強時間が長くなります。
しかし試験勉強の時間は限られているため、全体的に点数を取らなければ資格を取得できません。そのため一つの科目に集中せず、全体を見て弱点を克服しながら勉強するのが有効です。
試験概要も把握し、科目別の学習時間や復習をする時期なども決めましょう。
| 受験申込用紙の交付 | 令和7年4月7日(月)~ 令和7年5月9日(金) |
| 受験申込受付 | 令和7年4月21日(月)~5月9日(金) |
| 試験日 | 令和7年8月5日(火)〜8月7日(木) |
| 合格発表 | 令和7年11月28日(金) |
税理士の勉強を独学で進めるメリット・デメリット
独学で税理士に挑むことは、かなり苦労することはわかりますが、もちろん良いこともあります…!
もちろん「苦労する」などのデメリットがあることも事実ですので、その両面から税理士の独学について分析しました。
【分析】独学がメリットの理由
独学に比べて通信講座や専門学校は費用が高額です。独学なら10万円ほどで安く済むのに対して、通信講座や専門学校は20万円から100万円かかります。税理士合格の通信講座予備校で有名なクレアールは70万円から80万円ほどかかります。
また市販の優秀な教科書や参考書は、有名な講師や通信講座運営会社が出版していることも。そのため勉強に費用をかけられない方は独学がおすすめです。
独学で学ぶと、自分に合った勉強時間の配分が可能です。試験勉強で最も効率よく点数を上げる方法は弱点の補強です。
しかし予備校のようにスケジュールが組まれていて、勉強時間の配分が自由にできないと、苦手な分野を置き去りにしてしまうでしょう。
得意科目の授業を受けても、点数が上がりにくく、勉強時間が無駄になります。自分の好きな教科書や参考書を選べるため、苦手な部分への適切な学習が可能です。そのため独学の方が自分に合った勉強時間の配分が可能。
3つ目のメリットは独学だと、仕事や家事と両立しやすいです。企業で働いていたり、育児をしていたりすると予備校に通うのは難しいからです。
まとまった時間をとって勉強するのは、社会人には難しいでしょう。
「少しの空き時間はできるけど、数時間まとめて勉強は、、、」
子育てが必要な家庭では、簡単に予備校には通えません。独学だと、スマートフォンで少しのスキマ時間でも学習が可能です。
【分析】独学のデメリットと対策法
税理士の試験は単年で終わるものではなく、5科目合格するまで勉強しなければならないため、複数年勉強しなければなりません。
教科書の選定から学習スケジュールまですべての工程を自分で決めなければなりません。独学では、学習面で不安に感じるポイントも多くあります。
たくさんの不安を抱えたまま数年にわたって学習するのは難しく、モチベーションが続きません。試験に落ちてしまったら、後悔するかもしれません。
※対策法※
モチベーションの維持や学習スケジュールの対策として、同じ試験を受ける仲間を探すのが良いでしょう。仲間や競い合う相手がいれば、必ず勉強をします。
毎日お互い勉強した内容を共有して、お互いに教え合ったり、目標を宣言したりすれば、モチベーションの維持にもつながります。
とくにTwitterやInstagramでは、勉強の報告をする人が一定数いるのでその人たちにメッセージを送れば、勉強仲間になれるかもしれません。
勉強仲間を探すのは一苦労ですが、見つかればモチベーションの維持につながります。
独学だと税理士試験のための勉強が非効率になるかもしれません。独学だと、試験対策向けのテクニックが身につきません。通信講座やスクールだと試験に合格するための裏技や、簡単に問題を解く方法が解説されます。
自分の苦手な分野で簡単に解く方法があれば、ほかの分野に勉強時間を使えます。全体的にまんべんなく、勉強をすれば合格しやすいでしょう。
独学でも参考書によっては、裏技を解説しているかもしれませんが、すべてを教えられるわけではありません。
※対策法※
試験向けのテクニックを取得するには、元大手予備校の講師のブログを訪問するのがおすすめです。ブログでは、攻略法や一部添削を受け付けています。
たとえば、資格の大原で相続税の講師を担当した、尾藤 武英さんはブログを運営しています。
尾藤武英税理士事務所のブログでは、合格に向けて必要な知識や勉強法、豆知識を解説しています。
独学の場合、わからない問題は自分で解決しなければなりません。通信講座だと、わからない問題は講師に質問すれば回答がもらえます。
スクールだと質問すればすぐに講師の方が解説します。参考書の解説だけでは、物足りなかったり、不十分だったりするかもしれません。誰か問題を教えてくれる人が必要になるでしょう。
※対策法※
問題が解ける人を探すには、SNSがおすすめです。
SNSユーザーの中には、解説を無料でしてくれたり、おすすめの独学法を教えてくれたりする人もいます。
たとえば、独学で税理士の資格を取得した人を検索すれば教えてくれるでしょう。
ユーザーによっては、税理士の試験問題を解説している投稿もあります。仲良くなれば、おすすめの参考書や試験対策を教えてくれるでしょう。
メッセージを送れば、わからない部分を解説してくれる人もいます。そのため独学で合格したい人は、SNSで仲間を探すと良いでしょう。
独学で効率良く勉強する方法とは?
最後に、独学で効率良く合格を目指すために!押さえておくべき、3つのポイントをまとめておきました。
ポイント① 受験する科目から選ぶ
1つ目の方法は、受験する科目から選択する方法です。得意科目と苦手な科目の2つに着目して紹介します。税理士の試験を独学で学ぶ方は、できる限り早く得意科目と苦手科目を把握しなければなりません。
得意科目を受験すると、ほかの科目で点数が取れなくても任意科目で高得点が取れます。苦手科目も重点的に勉強しなければなりません。
参考書や教科書は得意科目よりもわかりやすいものを選びましょう。
ポイント② 学習用途で選ぶ
2つ目の参考書の選び方は、学習用途で選ぶ方法です。教科書と問題集の2つにわけて紹介します。教科書を選定するときは、一目でわかるかどうかで選びましょう。
辞書のように、情報量が多ければ多いほどよいわけではありません。図解やイラストが多い視覚的にわかりやすい教科書を選ぶのも重要です。
また問題集は、解説が丁寧に書かれていて、基本の内容も含まれているのがおすすめです。基礎基本がわからない初学者に、標準レベルの内容を解かせても理解できません。問題集の解説がわかりにくければ学習効率が落ちるでしょう。
わかりやすく、初学者でも解ける内容が含まれている問題集を選びましょう。
ポイント③ 参考書や問題集の出版社で選ぶ
有名な専門学校が出版した問題集や参考書で選ぶのも一つの方法です。TACや大原のような大手の参考書や問題集は、市販で販売されている内容よりもわかりやすく作られています。
TACは40年かけて合格へ導く独自のメソッドをつくりあげている、全国に予備校が点在しているのが何よりの強みです。大原は「税理士受験対策シリーズ」の参考書が出版されています。2社とも最新の試験傾向に沿って頻繁に内容を更新しています。
ただし複数の出版社からテキストを選ぶと誤解を生んだり、間違えて覚えてしまったりするので注意しましょう。
【考察結果まとめ】税理士試験の独学は難しいのか?
今回は以下のポイントについて、それぞれ詳しく調査結果をまとめました。
・独学で税理士になる方法と押さえるべきポイント
・独学者向けにおすすめの税理士資格の参考書や問題集
・税理士試験を受験するに当たっての必要な書類や資格
・そもそも独学で税理士の試験に合格できるのかどうか
・独学で勉強と通信講座での勉強なら、どちらがよいのか
独学でのチャレンジはもちろん難しいですが、誰にでも可能性はあるので、ぜひ当サイトの情報も役立てながら、挑戦してみてください。
