【2024年最新】税理士試験の科目と試験内容まとめ|受験資格や申込み手順は?

【試験の大まかな構成】
・税理士試験は、会計学に属する科目と税法に関する科目の受験が必要
・合計5科目の合格が必要で、受験者は5科目すべてを一度に合格する必要はない
・累計5科目合格できれば、税理士試験に合格

【科目一覧】

必修科目簿記論、財務諸表論
選択必修科目所得税法、法人税法
選択科目相続税法、消費税法又は酒税法、国税徴収法、住民税又は事業税、固定資産税(所得税法又は法人税法のいずれか1科目は必ず選択)

【税理士試験の特徴】
・科目合格制度を採用
・官報合格によって、税理士試験を合格したと扱われる
・自分で税金の科目を自由に選べられる

【税理士試験概要】

■科目
簿記論、財務諸表論、所得税法、法人税法、相続税法、消費税法又は酒税法、国税徴収法、住民税又は事業税、固定資産税

■回答形式
筆記とマークシート混合(計算問題に対する解答や仕訳の問題は筆記。用語の問題や並び替えはマークシートもしくは選択式。)

■問われる力
正確かつ素早い計算能力、時間内に解ける問題を見極める事務処理能力、お金の流れを読む力(税金が発生する順番)

■所感
税理士試験に合格するためには、数年かかる人も多いです。一度ですべての科目に合格する必要はなく、複数回の試験で必要な科目に合格できれば税理士になれます。

ただし税理士として登録されるためには、2〜3年の実務経験が必要なため、合格すれば良いわけではありません。

合格基準点は6割のため、年によって試験の難易度が変われば合格率は大きく変化するので注意が必要です。

目次

税理士の試験内容・形式

税理士試験における形式は、主に以下3つの形式に分かれています。

会計科目:簿記論、財務諸表論
回答形式:筆記とマークシート混合
実際に使われる業務:企業の財務諸表を開示するための資料作成、投資家や経営陣への経営状況、財務状況の説明
問われる力:正確かつ素早い計算能力

国税科目:所得税法、法人税法、相続税法、消費税法又は酒税法、国税徴収法
回答形式:筆記とマークシート混合
実際に使われる業務:企業や個人が国に税金を払うときの計算を代理で行う、ビジネスで正しく税金の計算が行われているかどうかの確認(自己監査)
問われる力:膨大な知識や理論の暗記と理解、

地方税科目:住民税又は事業税、固定資産税
回答形式:筆記とマークシート混合
実際に使われる業務:個人や企業が県や市などに税金を納めるときの代理で計算
問われる力:お金の流れを読む力、時間内に解ける問題を見極める事務処理能力

税理士試験のスケジュール

税理士試験は8月の初旬に行われます。

3日間の試験構成となっており、令和4年度(第72回)は以下の通りです。

【8/2】簿記論、財務諸表論、消費税法又は酒税法
【8/3】法人税法、相続税法、所得税法
【8/4】国税徴収法、固定資産税、住民税又は事業税

毎年1度しか行われません。

税理士試験の難易度・合格率

税理士試験の合格率は以下の通りです。

年度受験者数(人)合格者数(人)合格率(%)
2023年32,8937,12521.7
2022年28,8535,62619.5
2021年27,2995,13918.8
2020年26,6735,40220.3
2019年29,7795,38818.1
2018年30,8504,71615.3
2017年32,9746,63420.1
引用:国税庁

また各科目の合格率は以下の通りです。

スクロールできます
2019年2020年2021年2022年2023年
簿記論17.4%22.6%17.0%23.0%17.4%
財務諸表論18.9%19.0%23.9%14.8%28.1%
所得税法12.8%12.0%12.6%14.1%13.8%
法人税法14.7%16.1%12.8%12.3%14.0%
相続税法11.7%10.6%12.8%14.2%11.6%
消費税法11.9%12.5%11.9%11.4%11.9%
酒税法12.4%14.0%13.0%13.2%12.7%
国税徴収法12.7%12.2%14.0%13.8%13.9%
住民税19.0%18.1%13.0%17.2%14.7%
事業税14.8%13.1%13.0%14.1%16.4%
固定資産税13.7%14.0%14.0%18.4%17.3%
合計15.5%17.3%17.0%16.7%18.8%
引用:国税庁

税理士試験の受験資格について

税理士の受験資格は以下の通りです。

  • 大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、社会科学に属する科目(※1)を1科目以上履修した者
  • 大学3年次以上で、社会科学に属する科目(※1)を1科目以上含む62単位以上を取得した者
  • 一定の専修学校の専門課程(※2)を修了した者で、社会科学に属する科目(※1)を1科目以上履修した者
  • 司法試験合格者
  • 公認会計士試験の短答式試験に合格した者(※3)
  • 日商簿記検定1級合格者
  • 全経簿記検定上級合格者
  • 法人又は事業行う個人の会計に関する事務(※4)に2年以上(※5)従事した者
  • 銀行、信託会社、保険会社等において、資金の貸付け・運用に関する事務に2年以上(※5)従事した者
  • 税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上(※5)従事した者

※1 「社会科学に属する科目」には、改正前(令和4年度の税理士試験以前)の「法律学に属する科目」に該当していた、法学、法律概論、日本国憲法、民法、刑法、商法、行政法、労働法、国際法等、また、「経済学に属する科目」に該当していた、(マクロ又はミクロ)経済学、経営学、経済原論、経済政策、経済学史、財政学、国際経済論、金融論、貿易論、会計学、簿記学、商品学、農業経済、工業経済等の科目のほか、文系学部・理系学部を問わず、多くの学生に履修の機会があると考えられる、社会学、政治学、行政学、政策学、ビジネス学、コミュニケーション学、教育学、福祉学、心理学、統計学等の科目が該当
※2 一定の専修学校の専門課程とは、1修業年限が2年以上2課程の修了に必要な総授業時間数が1700時間以上であるもの
※3 平成18年度以降の合格者に限る
※4 複式簿記による仕訳、決算、財務諸表作成事務等
※5 異なる勤務先等を通算して2年以上

引用:国税庁

税理士試験の必須科目を分析してみた

税理士試験の必須科目は簿記論と財務諸表論です。

必須科目① 簿記論

簿記論は、例年大問が3大出題されます。簿記検定と似たような試験構成ですが、問題数の多さや難易度から2時間で完答するのが難しいです。

そのため解く問題と解けない問題を取捨選択することが重要です。簿記論は財務会計論と重複する内容が多く、片方を学べばもう片方も学べます。

学習効率を考えると、簿記論と財務諸表論のどちらから始めても問題ありません。計算問題を先に解きたい方は、簿記論を選んで、暗記が得意な方は財務諸表論から始めましょう。

必須科目② 財務会計論

財務会計論は、理論が50点、計算が50点の、合計100点満点の試験です。

計算問題では、会社法や会社計算規則に準拠した、貸借対照表と損益計算書の作成問題が中心に出題されます。理論問題では、会計の原理・原則・基準等に関する基礎理論・応用理論が中心です。

上記でも解説した通り、財務会計論は簿記論と重複する内容が多く、片方を学べばもう片方も学べます。

必須科目③ 「所得税法」または「法人税法」

上記は、どちらか1つを必ず選択しなければいけない選択必修科目です。

必須科目④ 所得税法

所得税法は、理論50点、計算50点の計100点満点の試験です。

理論では、規定について説明をさせる個別問題や出題テーマに該当する規定の総合問題に事例を付け加えた形式で出題されます。

計算問題では、親族図表や財産データなどを活用して、相続税額の納税額まで計算する問題が中心です。

対策がしやすく、高得点を取らなければ合格は難しい科目です。

最近の合格ラインは75%のため、8割以上の点数を目標に学習しなければなりません。

必須科目⑤ 法人税法

法人税法でも理論問題・計算問題ともに50点の合計100点の問題が出題されます。

理論問題では、規定を説明させる問題もしくは法人税法ではどのように取り扱うかなどのような事例方式の問題が近年多いです。

一方計算問題は、法人税額までを計算させる総合問題1題がメインで、最近では実務を意識した問題が多くなっています。

法人税法は所得税法と違い合格ラインが低く、60%台です。そのため7割を目標に点数を獲得しましょう。

税理士試験の選択科目を解説

税理士試験には5つの選択科目があり、この中から2科目を選ぶ必要があります。

  • 相続税法
  • 消費税法又は酒税法
  • 国税徴収法
  • 住民税又は事業税
  • 固定資産税

選択科目は、合格最低点数が毎年変わるため注意が必要です。

年によっては最低点数が7割以上になるため、試験の手応えがあっても不合格になる恐れがあります。

また計算問題が出題されるため、一つひとつの問題を丁寧に解いていくことが重要です。

最初の問題を間違えて、連鎖的に点数を落とす危険性もあるため繰り返し見直しと解き直しが必要です。

選択科目① 相続税法

相続税法は、理論問題と計算問題が1問ずつ各50点、合計100点満点の試験です。

理論問題では、個別問題と総合問題が出題され、計算問題では財産評価や相続税額を問われることが多いです。

相続税法の合格ラインは60%台といわれており、合格率は例年10%前後のため、ほかの科目よりも十分な対策が必要です。

ーメリットー
・今後取り扱われることの多い税金案件
・人によっては、多額の報酬が期待できる

ーデメリットー
・案件獲得の競争率が高い
・合格が難しい

選択科目② 消費税法又は酒税法

消費税法もしくは酒税法を選択できます。

両方の科目を選択科目として同時に扱うことはできません。

消費税法も酒税法も重点的に学習すべき論点が限られており、対策が立てやすい科目です。

受験者レベルは相対的に高くなるため、ミスをできる限り減らす工夫が必要です。

近年では消費税の変更や酒税の変更など一般消費者に大きく関わる項目のため、定期的に注目を浴びます。

ーメリットー
・勉強量が少ないため短期で合格を目指せる
・計算問題が多めのため、数学が得意な人に有利

ーデメリットー
・受験者のレベルが高く、合格最低ラインが9割以上だったときもある
・酒税は過去に廃止を検討した科目のため、今後無くなる可能性がある

選択科目③ 国税徴収法

国税徴収法は、国税を滞納した人に対する処分や手続きの執行について定めた法律です。

国税には下記の税金が含まれています。

  • 所得税
  • 法人税
  • 関税

試験では条文や学習項目が少ないため、受験者数が比較的多い科目です。

計算問題が比較的少なく、理論や暗記が多いため、数学が苦手な人が受験します。

ーメリットー
・ミニ税法の中では人気のあり、受験者数が比較的多い科目
・計算問題がほとんど出題されず、理論問題がメインのため暗記が得意な人に有利

ーデメリットー
・一つのミスが許されない
・受験者が多く競争率も非常に高い

選択科目④ 住民税又は事業税

住民税と事業税はミニ税法と呼ばれ、学習量が少なく税理士試験1年目でも合格しやすい科目です。

理論と計算問題が1題ずつ出題され、計算と理論の両方の理解が必要です。

必要な勉強時間は200時間程度のため、受験者には人気の科目として扱われています。

ーメリットー
・税理士として独立するときに役に立つ知識が多い
・個人事業主やフリーランスが増えている世の中のため、相談案件が多い

ーデメリットー
・ほかの選択科目よりも勉強が必要

選択科目⑤ 固定資産税

固定資産税とは、土地や家などの建物の資産価値に応じて所有者が払う税金です。

不動産を保有したことのない人や家を購入したことのない人には、馴染みの薄い税でしょう。

ミニ税法とも呼ばれるため、比較的勉強時間が短くても合格が可能です。

理論と計算問題が出題され、理論問題が難しいときがあるため注意が必要です。

勉強時間が200時間ほどで、とくに不動産関連に関わった方は短い時間で理解が可能です。

ーメリットー
・試験対策が簡単
・学習量が少なく、1年目で合格も可能

ーデメリットー
・不動産を持ったことのない人には難しい
・将来的には税理士試験科目から除外される可能性あり

税理士試験における各科目の 勉強時間について

各科目の勉強時間の目安は以下の通りです。

科目種別勉強時間(目安)
簿記論必修450~500時間
財務諸表論必修450~500時間
所得税法選択必修600~700時間
法人税法選択必修600~700時間
相続税法選択450~500時間
消費税法選択450~500時間
酒税法選択150~200時間
国税徴収法選択150~200時間
住民税選択150~200時間
事業税選択150~200時間
固定資産税選択150~200時間

選択科目のおすすめできる選び方

選択科目の選び方は以下の通りです。

  1. 国とのやり取りなど大きい案件に関わる税を選ぶ
  2. 案件が多い税から選ぶ
  3. 企業や個人事業主など経営者と関わる税から選ぶ

選び方① 国とのやり取りなど大きい案件に関わる税を選ぶ

大きい税金案件を獲得したい人は、国税関連の事務所に入るための科目を選択しましょう。

法人税や相続税など需要が大きく国とのやり取りの案件を取りたい方は、相続税法や法人税法を必ず選びましょう。

ほかにも国税徴収法もおすすめです。

選び方② 案件が多い税から選ぶ

とにかく稼ぎたい方や安定した収入を得たい人は、案件が今後増えるもしくは単価が高い税案件を選びましょう。

法人税や相続税は需要が安定しており、とくに相続税は高齢者の増加によって年々需要が増えています。

法人税は企業とのやり取りのため、信頼と実績があれば相手から逆指名を受けることも珍しくありません。

選び方③ 企業や個人事業主など経営者と関わる税から選ぶ

今後税理士として働くだけでなく、開業や経営者を目指す方はきぎょうや個人事業主との関わりが強い科目を選びましょう。

とくに法人税法や事業税がおすすめです。

経営者とのやりとりがあるため、ビジネスモデルを学べて、経営者とのパイプができます。

経営者から学んだノウハウを活かせば開業でも役に立ちます。

税理士試験にて免除される科目について

税理士試験には科目免除制度があります。

科目免除を受けるための条件は以下の通りです。

  • 税法に属する科目、すなわち税理士試験の税法の試験科目を修士もしくは博士のときに論文を執筆
  • 修了単位の中に、税法に属する科目等を内容とする単位を4単位以上履修
  • 法学研究科、経済学研究科、商学研究科または経営学研究科を卒業

【結論】配点から徹底分析!科目別の勉強順とは?

試験科目配点
簿記論100点
財務諸表論100点
所得税法、法人税法100点
選択科目
(相続税法、消費税法又は酒税法、国税徴収法、住民税又は事業税、固定資産税)
100点

税理士試験の科目別配点は上記の通りです。

最後に「配点」「難易度」「学習時間」を踏まえたうえで、科目別のおすすめ勉強順をまとめておきます。

①簿記論
②財務諸表論
③法人税法
④消費税法
⑤相続税法

最初に簿記論と財務諸表論を学習しましょう。

2つの科目の知識と計算方法は、ほかの選択科目でも応用されるため先に学ぶと学習効率が上がります。

次に勉強するべき科目は法人税法です。法人税法は勉強時間が長く、合格するのが難しい科目だからです。

早めに対策をすれば勉強時間の短い選択科目と同時に受験して短期間で合格が可能です。

消費税法と相続税法では勉強時間に大きな差はありませんが、消費税法を先に勉強しましょう。

消費税法は、日常生活でも取り上げられる内容ですが、学ぶ範囲が若干相続税法よりも多いです。

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