日本国内でバイリンガルを育てる極意とは?ぐんま国際アカデミーの12年一貫イマージョン教育に迫る

日本国内でバイリンガルを育てる極意とは?ぐんま国際アカデミーの12年一貫イマージョン教育に迫る

「英語を学びたいけれど、日本国内の環境では限界があるのではないか」

そんな悩みを抱える学習者や保護者にとって、一つの理想的な解を示しているのが、群馬県太田市にある「ぐんま国際アカデミー(GKA)」です。

日本初の「英語イマージョン教育」を行う構造改革特区校として産声を上げてから21年。

主要科目の大半を英語で学ぶ12年一貫教育を通じ、英語を「目的」ではなく、世界で活躍するための「ツール」として体得させる独自のメソッドは、圧倒的な進学実績によってその正当性を証明してきました。

この革新的な教育の現場で、子どもたちの成長の土台を築いている初等部校長の野澤 弘道先生に、同校の教育の核心についてお話を伺いました。

実社会で通用する発信力の育て方はもちろん、その原動力となる「家庭での情緒的基盤」の重要性に至るまで、教育のプロとしての深い知見を紐解きます。

ぐんま国際アカデミー
目次

設立から21年、進学実績で示した「英語イマージョン教育」の正当性

日本初の「英語イマージョン教育」を導入した当初、周囲には母国語への影響を懸念する声もありました。なぜ同校はあえて困難な道を選び、いかにしてその教育効果を証明してきたのか、設立の原点にある強い危機感と信念を紐解きます。

世界で通用するリーダーの条件:校訓「知性・創造・品格」とツールとしての英語教育

——貴校が、教育の拠点として最も大切にされている理念についてお伺いできますでしょうか。

野澤 弘道先生

現在の社会は、これからどのように変化していくのか誰にも予想できない状況にあります。その中で、国籍や年齢を問わず、多様な集団の中でリーダーシップを発揮できる人材を育成すること。それが私たちの掲げている理念です。

——変化の激しい時代に対応できるリーダーの育成ですね。

そのために「知性・創造・品格」という3つの校訓を定め、日々の教育活動を行っています。中等部・高等部ではこの3つの校訓を引き継ぎつつ、IB(国際バカロレア)教育を実践しています。

IBには「10の学習者像(IBラーナープロファイル)」という指針がありますが、私たちはそれを通じて、生涯にわたって学び続けていくような人材を輩出したいと考えています。そうした教育の中で、「英語イマージョン」は、世界レベルで活躍するために必要な一つの要素、いわば「言語というツール」であると捉えています。

——つまり、英語を習得すること自体が主目的ではなく、あくまでその先の学びや活動のための「手段」として位置づけていらっしゃるということでしょうか。

英語イマージョン教育なので、主目的の1つではあります。ただ、英語習得の先にも目指すべきものがあるということが大事なことです。英語習得の先を見据えるという意味で、英語はあくまでツールですね。

——英語を使いこなしながら、その先にある「どの世界でもリーダーシップを取れる人材」を育てること。それこそが、貴校の教育理念の核心なのですね。

はい、その通りです。

設立の原点は「危機感」。工業都市・太田市から始まった国内初・12年一貫教育の挑戦

——貴校では教科の約70%を英語で教える「英語イマージョン教育」を実践されていると伺いました。この教育体制を構築された背景や、設立当初の思いについてお聞かせいただけますか。

野澤 弘道先生

本校が開校したのは21年前の2005年ですが、設置に向けた申請自体はそのさらに2年ほど前から進めていました。当時の日本を振り返ると、都市部には英語を話せる方が多少はいらしたものの、ここ群馬県においてはまだ非常に稀な存在でした。「使える英語」を身につけている日本人が圧倒的に少ないという現実があったのです。

——20年以上前となると、今よりもさらに英語教育への意識や環境に差があった時代ですね。

そうですね。その状況を打破しようと動いたのが、本校の理事長です。理事長は当時、群馬県太田市の市長を務めていました。太田市は非常に盛んな工業都市で、多くの企業の工場が集まっています。

ある時、世界的なタイヤメーカーの日本法人を訪れた理事長は、社内の会議がすべて英語で行われている光景を目の当たりにしたのです。

——当時の地方都市において、会議が英語で行われているというのは相当な衝撃だったのではないでしょうか。

理事長はその様子を見て、「このレベルで世界と渡り合える日本人を育成しなければ、この国は大変なことになる」という強い危機感を抱きました。それが、この学園を設立したいと考えた原点です。

折しも、当時の小泉純一郎内閣による「構造改革特区」の制度が始まり、本校はその第1号として認められました。そうして、国内初の12年一貫教育による英語イマージョン校が誕生したのです。

——まさに時代の最先端を行く取り組みだったのですね。21年前という早い段階で、現場の状況から日本の将来を見据えて決断されたのは素晴らしいことだと感じます。

企業の最前線で起きている変化を目の当たりにし、「このままではいけない」と確信したことが、すべての始まりでした。

「日本語が疎かになる」という懸念をどう払拭したか?卒業生が築いた保護者との信頼関係

——まったく前例のない試みをゼロからスタートさせるのは、非常に大変だったかと思います。周囲の反応や、社会に受け入れられるまでの過程はいかがでしたか。

野澤 弘道先生

開校前や開校当初は、「英語で教科を学ぶことで、日本語がおろそかになってしまうのではないか」という懸念の声が周囲から多く寄せられました。

——母国語への影響を心配する声はあったのですね。

はい。しかし、実際に通わせている保護者の方々は、そのような心配はされていませんでした。日々成長していくお子さんの姿を間近で見ているからです。

そうした懸念の声が次第に消えていった大きな要因は、やはり卒業生の「進学実績」にあります。

——具体的な結果が出たことで、納得感が生まれたということでしょうか。

その通りです。「この教育法で、希望する進路に進むことができる」という客観的な数字が出始めたことで、周囲の反応も劇的に変わりました。
実績が出ることによって「日本語力がおろそかになるわけではないのだ」ということが証明され、自然と理解が広まっていったのです。

保護者の皆さんも、懸念点を探すのではなく、この教育によって得られるメリットの大きさに目を向けてくださるようになったと感じています。今では、当時の心配の声が話題に上ることもほとんどなくなりました。

ぐんま国際アカデミー
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国内で「英語漬け」を実現する、独自の環境設計と運営の舞台裏

校門を通ると、そこには日本にいながらにして「英語で生活する」ための緻密な空間設計が施されています。物理的な教室配置から日常の放送に至るまで、子どもたちの「言語スイッチ」を自然に切り替えるための、独自の運営ノウハウをご紹介します。

多様な進路選択を尊重する柔軟性。12年間の学びの中で描く児童・生徒それぞれのキャリアパス

——独自の教育環境を維持する上で、児童・生徒の受け入れや進路についてはどのようにお考えでしょうか。

野澤 弘道先生

本校は英語イマージョン教育を基盤としているため、帰国生やインターナショナルスクール出身者といった背景がない限り、途中から入学することは非常に困難です。英語で授業が行われるため、基礎がない状態では内容を理解することが難しくなってしまうからです。そのため、英語力があまり問われない、初等部1年生からの入学を検討していただくことが重要です。

——基本的には初等部からのスタートが中心になるのですね。

在籍人数は初等部が最も多くなり、各学年約100人となります。中等部は80人、高等部は60人で、学園全体で約1000人の児童・生徒が在籍しています。12年一貫教育ではありますが、中等部や高等部に進学するタイミングで、国立校や公立校の一般入試での進路を検討されている方は、外部へ進学されることもあります。

——途中で外部の学校へ進む選択をされる方もいらっしゃるのですね。

はい、いらっしゃいます。中等部から高等部へ進む際にも、いわゆる「日本国内の従来型の進路」を具体的に描き、それを希望される方は、外部の高校へ進むケースもあります。本校ではそうした個々のキャリアパスも一つの選択肢として捉えています。

校門をくぐればそこは「英語圏」。日常の放送から教室配置まで徹底された環境デザイン

——児童・生徒の皆さんが日常生活の中で自然に英語を使い、主体的に学び続けるために、授業以外の「環境設計」や「学校生活」の中で工夫されている点はありますか。

野澤 弘道先生

私たちは「楽しさ」を前面に出しているわけではありません。英会話スクールのような場とは異なり、英語はあくまで「ツール(道具)」だと考えています。自分の意思を伝える手段であり、学習するための言語である。それが大前提としてあります。

——「学ぶ対象」ではなく、すでに「使うもの」として存在しているのですね。

その通りです。その環境を象徴するのが教室の配置です。本校には、最大36名が入る大きなメイン教室の隣に、少し小さな教室が併設されています。例えば、クラスの半分である18名がメイン教室で外国人教師から英語で算数の授業を受けている間、残りの18名は隣の小さい教室へ移動し、日本人教師から国語などの授業を日本語で受けます。次の時間にはこれらを入れ替えることで、少人数教育を実践しています。

——物理的な空間を分けることで、言語の切り替えを促しているのですね。

メインの教室は「英語で生活する場所」として位置づけています。校門をくぐり、玄関を通って教室に入った瞬間から、ホームルームを含め英語の環境が始まります。基本は英語で生活し、「ここからは日本語の教室へ行って国語を学ぼう」「戻ってきて次は算数を英語で学ぼう」というように、空間と教科を紐づけています。標準的な流れとしては、1日6時間授業のうち、4時間をメイン教室での英語による学習、2時間を小さい教室での日本語(国語や社会など)による学習に充てています。

——校内放送なども基本的には英語で行われるのでしょうか。

もちろん、校内放送もすべて英語です。これは入学直後の1年生であっても変わりません。

——入学したばかりで、まだ英語に慣れていない時期からその環境に身を置くのですね。

4月の時点では、当然ながら英語がわからない子もたくさんいます。それでも、まずは英語で一気にアナウンスを流します。その上で、必要に応じて「今の放送の内容を先生から説明しておいてください」と英語で補足し、各担任が状況を見て日本語でフォローを入れるといった形をとっています。ホームルームから何気ない放送まで、徹底して英語の環境を作るようにしています。

ぐんま国際アカデミー
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「脱・座学」で身につける、学びを成果に変えるアクティブラーニング

「ただ席に座って先生の話を聞くだけ」という、従来の受け身な授業スタイルを最小限に抑え、児童・生徒が能動的に参加する時間を中心に据えています。得た知識を即座に「使う」ための「出口活動」を全教科で実践し、子どもたちの主体性を引き出す革新的な教育メソッドの全容に迫ります。

「アウトプット重視」の授業。主体性を引き出す「出口活動」の単元計画

——校内で使用する言語が自然なものとなるような環境づくりを徹底されているのですね。その一環として、実際の授業においても「活動」を非常に重視されているとお伺いしました。

野澤 弘道先生

本校では英語や算数、生活科など、英語で教える教科か日本語で教える教科かを問わず、一貫して「活動」を重視しています。具体的には、まず「得た知識を積み上げた先に、それを活用して何を行うか」というゴールを決めます。これを私たちは「出口活動」と呼んでおり、この出口活動を起点に逆算して単元計画を組み立てています。

——単元計画の段階から、アウトプットを前提にされているのですね。一方的に話を聞くだけの時間は少ないのでしょうか。

中には、じっくりと話を聞く講義形式の授業もありますが、基本的には「何かをやってみる」ことが中心です。一般的な授業の流れとしては、最初の10分から15分ほどで知識の伝達や確認、説明等を行い、「じゃあ実際にやってみよう」と活動に移ります。そして最後に振り返りを行う、という形が標準的ですね。

——日本の一般的な教育のイメージだと、授業時間中、ずっと席に座って先生の話を聞いているのが当たり前という感覚がありますが、それを多くの教科で実践されているのは驚きです。

多くの教科において積極的に取り入れるよう強く意識しています。やはり、子どもがずっと話を聞いているだけでは集中力に限界が来てしまいますから。

——確かに、受け身の姿勢が続くと飽きてしまって、結果的に内容が頭に入らないということも起こり得ますね。

自分の子どもを見ていても感じますが、それが現在の日本の教育における一つの課題かもしれません。本校では、ただ「やらせる」のではなく、子どもたちが自分たちから「やりたい」と思えるような状況を作ること、つまり「脱・座学」の姿勢に重きを置いています。

——知識を得るだけでなく、それを使って何をするかという「主体性」を育むことに主眼を置いているのですね。

その通りです。

英語初心者も置き去りにしない。1年生を18名に分ける少人数指導と日本人アシスタントの併走

——英語を使う楽しさというお話がありましたが、入学したばかりの1年生の段階で、英語が分からずつまずいてしまうお子さんはいないのでしょうか。

野澤 弘道先生

学習において子どもたちがつまずかないよう、万全の体制を整えています。まず、学級担任は日本人と外国人の2人体制です。さらに、1年生の授業には「TA(ティーチング・アシスタント)」と呼ばれる日本人のアシスタントをもう1人配置しています。

——1クラスに対して3人体制ということですか。

1クラスの定員は最大36名ですが、英語の授業の際はこれを18人ずつの2グループに分けます。一方のグループで日本人の担任が国語などを教えている時、もう一方のグループでは外国人の担任が英語で授業を行うのですが、その際にTAがサポートに入ります。

1年生は、トイレの失敗やケガなど、学習以前のケアが必要な場面も多い時期です。18名の子どもたちを2人の大人が見守ることで、そうした細かな変化にも対応でき、学習面でも一人ひとりをしっかりとフォローできる環境にしています。

——18人を2人で見るというのは、非常に手厚いですね。TAの方も英語で話されるのでしょうか。

基本的には英語で話しますが、子どもが授業に集中できるよう、状況に応じて日本語も交えながら導いていきます。こうした手厚いサポートは、まずは学校生活に慣れる必要がある1年生を対象に行っています。

——2年生以降のサポート体制はいかがでしょうか。

2年生くらいになると、どうしても「英語が一番好きな子」もいれば「苦手意識を持ってしまう子」も出てきます。英語に対して後ろ向きになり、学習のスピードに差が生じる場合もあるということは、事実です。

そうした子たちに対しては、放課後などに「エクストラヘルプ」と呼んでいる補習の機会を設けています。みんなと一緒に進んでいけるよう、学校側からオファーを出してサポートしています。

——手厚いフォローの仕組みがあるのですね。

私たちが大切にしているのは、難問を次々と解くような先取り教育ではありません。まずは「教科書レベルの内容をきちんと理解し、使いこなせるようになること」を目標としています。

——お話を伺っていると、知識の先取りを優先する進学校というよりも、あくまで「公立学校の教育内容を英語で行っている」という、温かみのある立ち位置に近い印象を受けます。

まさにその通りです。その表現が私たちのあり方に一番近いと思います。学習の進度に不安を感じている子を置いていくのではなく、全員で一緒に学んでいこうという姿勢を大切にしています。

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論理的思考と発信力を磨く、世界標準のカリキュラムと教員体制

小学1年生から頻繁に発表の機会を設け、人前で自分の考えを述べる訓練を積むことで、圧倒的な発信力が養われていきます。それを支えるのは、世界10カ国以上から集まる教員たちと、20年にわたり蓄積された膨大な指導データに基づく教育の標準化です。

1年生から日常的に人前で自分の考えを伝える訓練

——貴校独自のカリキュラムの中で、思考力や表現力を養うために、特に重視されている特徴はありますか。

野澤 弘道先生

発表の機会が圧倒的に多いことですね。小学1年生から積極的に取り組んでいます。最初は覚えた文章を読み上げるだけでも構いませんが、早い段階から人前で話す経験を積んでいます。

入学直後のゴールデンウィーク頃までは準備期間ですが、その後は「Show and Tell」といって、自分の好きなものを持参してクラスの前で説明したり、週末の出来事を発表したりする時間を設けています。順番を決めて全員が必ず経験できるよう、1年生から徹底しています。もちろん、それらの発表はすべて英語で行います。

——単元の終わりに発表があり、みんなで議論する。まさに「参加型」の授業を徹底されているのだと感じます。自ら参加することで、知識も着実に定着しそうですね。

本校の基本的な授業の流れは、まず習得すべき知識や技能を学び、その後に「出口活動」として、得た知識をフルに活用します。

出口活動の内容は、発表だけでなく、ポスター制作、レポート作成、作文、あるいは音声のレコーディングなど多岐にわたります。

——具体的には、どのような内容を取り扱っているのでしょうか。

例えば理科の電磁石の授業では、グループ対抗で「クリップをいくつ付けられるかコンテスト」を行います。コイルの巻き方や電池の数を工夫するのはもちろんですが、グループ活動を通じて円滑なコミュニケーション能力も養われます。

そして何より大切にしているのは、活動後の振り返りです。「何が課題だったのか」「次はどう改善すればいいのか」を自分たちで論理的に考える機会を常に設けています。

評価基準を事前に示して主体性を促す。国際バカロレアの視点を取り入れた学びの可視化

——先ほどのお話にもありましたが、「どこに課題があったのか」を自ら考えるプロセスは非常に大切ですね。貴校では、この「振り返り」の時間を特に重要視されているのでしょうか。

野澤 弘道先生

現在の学習指導要領でも重視されていますが、本校では児童が自らの学びを見つめ直すことができるように、 振り返りを意識して取り入れるようにしています。また、特徴的な点として、学習を始める前に「評価の観点」をあらかじめ児童・生徒に提示するようにしています。

——評価の基準を、最初にお知らせするのですね。

その通りです。例えば作文であれば「今回はこのテーマについて学ぶので、この要素が文章の中に含まれている必要があります」と事前に伝えます。レポート作成や新聞作りにおいても、「誰がどのような功績を挙げたかをまとめ、最後に自分の考えを書きなさい。その中で、〇〇というテーマについて触れること」といった具体的な評価ポイントを明確にしてから取り組ませるのです。

——核心となる評価基準を事前に共有しておくことで、子どもたち自身が「何をすべきか」を理解して取り組めるわけですね。

何を求められているのかが分かれば、子どもたちは主体的に動けます。こうした取り組みは、小学生のうちから徹底して行っています。

教員の質を世界基準で標準化。20年分のデータ蓄積と研究授業が支える「外さない」教育

——ネイティブの教員の方が非常に多いかと思いますが、多国籍なスタッフの採用や育成において、どのような基準や教育方針を重視されているのでしょうか。

野澤 弘道先生

まず採用基準として、母国で教員免許を取得していることを原則としています。その上で、群馬県教育委員会に申請を行い、日本の免許状に書き換える(特別免許状などの授与)手続きを経て、教員免許を持った者が一人で授業を担当できるよう、法的な要件をすべてクリアしています。

また、多くの教員が母国や海外のインターナショナルスクールでの指導経験を持っています。日本やアジアの教育に高い関心を持つ優秀な人材が、本校に応募してくれています。

——経験豊富なスペシャリストが集まっているのですね。

はい。ただ、本校はあくまで日本の学習指導要領に従っている学校です。「一般の日本人が学ぶ内容を、外国人が英語で教える」というスタンスですので、各国の指導内容との違いを埋める必要があります。例えば算数は、西洋圏に比べると日本の方が、非常にレベルが高い傾向にあります。教育のトレンドや指導方法にも違いがあるため、日本の教科書の内容を英語できちんと教えられるよう、環境を整えています。

——指導の質を一定に保つための、具体的な仕組みはあるのでしょうか。

各学年にはA・B・Cの3クラスがあり、日本人と外国人の担任が2名ずつ配置されています。学年内では「この人は英語の授業計画」「この人は算数」といった役割分担をして授業案を作成します。もし新しく赴任した教員がいても、基本的には全クラスで同じ指導計画をもとに授業を行うため、横のつながりで「この部分はうまくいかなかったから、次はこうしよう」と密にサポートし合える体制になっています。

——チームで授業を作り上げているのですね。

加えて、開校以来20年分の指導資料を蓄積しています。直近数年分のデータをベースに、「この単元ではこういう授業にしよう」という成功パターンを積み上げてきたことで、現在はどの教員であっても一定以上の質を保った、精度の高い授業ができるようになっています。

——組織としてのナレッジが共有されているのですね。開校当初は、その標準化が難しかったのでしょうか。

そうですね。以前は教員によって指導のばらつきが出ることもありました。特に算数などは、確実に教えるべきラインがあるため、日本人の教員が横からフォローすることもありました。

現在はさらなる質向上のため、全教員に年1回の「研究授業」を義務付けています。他の教員や管理職が授業を参観し、終了後には「この部分は良かった」「ここはもっとこうすべきだ」といったフィードバックを行います。自分の授業を客観的に見直し、すぐに改善へつなげるサイクルを大切にしています。

ぐんま国際アカデミー
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一生モノの武器を手にする。卒業生の活躍とAI時代の英語の価値

卒業生たちは、大学や社会という新しいステージに立った時、自らが培ってきた力の真価を実感することになります。AIが瞬時に翻訳を行う時代だからこそ、あえてデバイスを介さず「自分の言葉」で語ることの重みと、それを支える家庭での情緒的基盤についてお聞きしました。

家庭は「日本語で愛情を伝える場所」。情緒的基盤が子どものパフォーマンスを最大化させる

——お子様が帰宅された際、保護者が外国の方でない場合は日本語で会話されると思います。学校側から「家庭でも英語を使ってほしい」といった要望はあるのでしょうか。それとも、家では完全に日本語で大丈夫なのでしょうか。

野澤 弘道先生

全く問題ありません。ご自身の意思で英語を使って会話されているご家庭もありますが、大切なのは、言葉を通じてお子様が満足感を得たり、愛情をしっかり受け取っていると実感できたりすることです。もし保護者の方が英語に堪能で、機知に富んだ表現で豊かに語りかけられるのであれば英語でも良いでしょう。しかし、それが難しいのであれば、日本語で深くコミュニケーションを取る方がお子様のためになります。

——確かに、複雑な感情やニュアンスを伝えるには、使い慣れた母国語の方が適していますね。

中にはお子様が英語を話す姿を見て、保護者も一緒に学んでいくというご家庭もありますが、そのくらいのスタンスで十分だと思います。学校側から保護者の方へ特にお願いしているのは、むしろ「生活の基盤」の部分です。規則正しい生活を送り、しっかりと朝食をとって、お子様が「自分は家で愛され、認められている」という安心感で満たされるようにしていただきたいと考えています。そして、元気に学校へ送り出してほしい、ということです。

——「愛されている実感」を持たせることまで、定期的にお話しされているのですね。

そうですね。時には「今日はお子さんをハグしてあげてください」といった「ハグの宿題」を出すこともあります。

——それは素敵ですね。日本人は照れもあってなかなか自分からは難しいかもしれませんが、「宿題」と言われれば実行するきっかけになります。

実際に保護者の方からも「宿題のおかげで実行できました、ありがとうございます」といった感謝の言葉をいただくことがあります。

——一般的な学校ではそこまでのフォローはなかなかないと思いますが、勉強以前の「生活や情緒の基盤」を整えることも、貴校の重要な理念の一つなのでしょうか。

家庭での情緒的な基盤が安定していなければ、子どもたちは学習において高いパフォーマンスを発揮することはできません。学習内容そのものよりも、実はこうした基盤作りこそが、教育において何よりも大切だと考えています。

大学の議論で発揮される圧倒的な発信力。地域活動を通じて磨かれた「社会に貢献する志」

——卒業生の皆さんの活躍について、具体的な事例や印象に残っているエピソードがあれば教えていただけますでしょうか。

野澤 弘道先生

卒業生が大学進学後に母校を訪ねてくれた際によく耳にするのが、「大学の授業が、GKAで受けてきた授業の延長線のようで、特に難しさを感じない」という言葉です。これは知識面というよりも、主に「授業の進め方」についての話ですね。

——授業の進め方とは、具体的にどのようなお話をされるのですか?

昨今の大学の授業では、討論やグループワーク、人前での発表といった形式が増えています。本校の生徒たちは初等部の頃からこうした環境で育っているため、自分の考えを述べることに全く抵抗がありません。周りの学生がなかなか発言できない中で、自分たちがどれほど鍛えられてきたのかを、大学に出て初めて客観的に気づくようです。

——長年の積み重ねが、大学という新しい環境で大きなアドバンテージになっているのですね。

また、近年の大学入試、特に推薦入試などでは「自分がこれまでどのような活動に取り組んできたか」を伝える機会が多くなっています。本校の教育は、机に向かって学習するだけではありません。地域社会のニーズを自分たちで探し、実際に関わりを持つ活動を行う必要があります。こうした学外活動での経験が、入試の場でも大きな強みになっています。

——国際舞台という点ではいかがでしょうか。海外で活躍されている卒業生も多いかと思います。

もちろん、海外へ転勤して活躍している卒業生もたくさんいます。彼らが共通して言うのは、「英語を話すことが苦にならない」という強みです。在学中は英語がある環境が当たり前すぎて気づかなかったけれど、社会に出て初めて、それがどれほど強力な「武器」であるかを実感したと伝えてくれた卒業生もいました。GKAで学べて本当に良かったという言葉を聞くと、私たちも非常に嬉しく思います。

オーストラリア研修での試練。AI時代だからこそ価値を持つ「翻訳機を通さない信頼構築」

——実際に海外で英語力を試すような、実践的な機会も設けられているのでしょうか。

野澤 弘道先生

本校では小学6年生の時に、2週間のオーストラリア・ホームステイ研修を実施しています。1家庭に1人で滞在するため、非常に濃密な経験になります。教員が同行し、最初の数日はホテルに宿泊して観光も行いますが、その後はそれぞれの滞在先へと分かれて、現地の学校へ通います。

——小学生がたった一人で現地の家庭に飛び込むのは、大きな挑戦ですね。

私たちはこれを「短期留学」と呼んでいます。現地校での授業やホストファミリーとの生活を通じて、自分の要求を伝えたり、現地の家族のルールに従って生活したりといった、実践的な経験を積んでいます。その段階で、すでに基礎的な英語力がしっかり備わっているからです。やはり、英語を聞き取る「耳」の力が圧倒的に違いますね。

——帰国した児童の皆さんからは、どのような感想が寄せられますか?

楽しかったという声はもちろんありますが、それ以上に「家族のありがたさがわかった」という感想が非常に多いです。日本にいた頃は、保護者が当たり前のようにやってくれていた洗濯や朝食の準備も、海外では基本的に自分で行う必要があります。そうした生活を通じて、自分がどれほど恵まれた環境にいたのかを実感するようです。また、現地で寂しさや苦労を経験する中で、支え合える友人の大切さを再認識するなど、精神的な成長も大きく見られます。

——現地で生の英語に触れることで、これまでの学習との違いを肌で感じることも、早い段階での貴重な経験になりますね。

おっしゃる通りです。本校のような「6年間英語漬け」の環境にいた児童であっても、現地のリアルな英語に直面して、ネイティブの英会話のスピードについていけず、悔しい思いをすることもあります。しかし、その壁にぶつかるのは早ければ早いほど良いと考えています。早い段階で自分の通用しない部分を知ることで、その後の学びへの向き合い方も変わってくるからです。

——日本における英語教育のフロントランナーである貴校が、今後どのような次世代のリーダーを育成していきたいとお考えか、メッセージをお願いいたします。

現在、AIが急速に台頭し、英語教育の意義そのものが問い直されている段階にあると感じています。

——確かに、翻訳技術の向上で「英語を学ぶ必要はあるのか」という議論も増えていますね。

私はどれだけAIが発展しても、最終的に他者と物事を共有し、信頼を築くのは「自分自身の言葉」であると信じています。現在、翻訳機を使えば誤差のない訳が瞬時に出せるようになりました。しかし、本当に大切な話をしようとする時、常にデバイスを介して話す相手と、深い信頼関係を築けるでしょうか。

——自分の言葉で直接語りかけるからこそ、伝わる熱量や信頼があるということですね。

そこで重要になるのが、やはり本校の校訓である「知性・創造・品格」です。これらを備え、かつ英語をツールとして自然に使いこなせる人物。そんな次世代のリーダーを育成していければ、子どもたちは十分な資質を持って成長していけるはずです。先の見通せない世界においても、自分の力と自分の言葉で、自らの人生を切り拓いていける。そんな逞しいリーダーをこれからも輩出していきたいと考えています。

英語の先にある「自分の人生を切り拓く力」を育てるために

ぐんま国際アカデミーの教育の本質は、流暢な英語を話すことそのものではありません。取材を通じて見えてきたのは、英語という強力なツールを自在に操りながら、その根底にある「知性・創造・品格」という人間としての核を育もうとする、真摯な教育の姿でした。AIが進化し続ける現代だからこそ、デバイスを介さない「自分の言葉」で語る力は、他者と深い信頼を築くための何よりの資質となります。

英語を「学ぶ対象」から「世界と繋がるための手段」へと変え、自らの手で未来を切り拓いていく。そんな逞しくも品格あるリーダーへの第一歩を、この学び舎から踏み出してみませんか。自律した個として豊かな人生を歩んでいくための確かな準備が、ここでの学びを通じて形になっていくはずです。

※当ページにて記載されている内容は執筆時点での情報です。最新の情報は公式サイトをご確認ください。