ポテンシャルを解放する「安心感」の作り方。中央高等学院が実践するフラットな教育環境とは

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ポテンシャルを解放する「安心感」の作り方。中央高等学院が実践するフラットな教育環境とは

「学校に行けない」「周囲と馴染めない」――そんな悩みを抱え、自責の念に苦しむ生徒や保護者は少なくありません。

1978年の創立以来、通信制高校サポート校として半世紀近い歴史を刻んできた中央高等学院は、葛藤を抱える一人ひとりの心に寄り添い続けてきました。

今回のインタビューでは、同学院さいたま校で教頭を務める龍崎 雄太先生にお話を伺いました。

ここで語られる教育理念は、さいたま校に留まらず、中央高等学院全体に共通する揺るぎない指針です。

生徒のポテンシャルを信じ、本来の力を呼び覚ますための「安心」の正体に迫ります。

目次

本来の力を呼び覚ます「安心」と「ポテンシャル」への着目

多くの生徒が「自分にはできない」と自信を失った状態でこの門を叩きますが、そこには本人さえ気づいていない輝かしいポテンシャルが必ず眠っています。まずは、その潜在能力を再び呼び覚ますために不可欠な「武器」としての自信と、土台となる「安心感」の重要性について詳しく伺いました。

他者比較による自信喪失を乗り越え、社会を生き抜く「武器」を手に入れる

——中央高等学院様では「社会で生き抜く力を育む」という教育理念を掲げていらっしゃいます。学院として、その中で特に大切にされている点について詳しくお聞かせいただけますでしょうか。

龍崎 雄太先生

端的に申し上げますと、生徒に「武器」を身につけてもらうことを何よりも大切にしています。社会に出ていく際、本人が自分自身に自信を持てることは非常に重要な武器になります。

当校にはさまざまな背景を持つ生徒がいますが、一つの典型的な例として「他者との比較」によって自信を失ってしまったケースが挙げられます。昨今、小中学校では全国学力テストが実施されており、学校現場には「平均点を上げなければならない」というプレッシャーがかかりがちです。その結果、テストの成績順位が張り出されるなど、どうしても点数重視の評価になりやすい側面があります。

こうした環境下で、順位という「他者比較」にさらされ、「自分はできないんだ」と自信を失い、自己肯定感が低下してしまう。それがきっかけで学校に通えなくなってしまう生徒が少なくありません。

——本来持っている力があるにもかかわらず、環境や評価軸によってそれが埋もれてしまっているのですね。

龍崎 雄太先生

たまたま点数が振るわなかったり、偶発的な要因で同学年の中での学力形成に差が出たりすることもあります。そうした要因で一度自信をなくすと、本人が本来持っているポテンシャルはなかなか発揮できなくなってしまいます。

私たちは、その生徒が本来持っているポテンシャルや背景を正しく評価することを重視しています。例えば、進路決定の場面が分かりやすいでしょう。転校・入学当初には本人ですら想像できなかったような大学への合格を勝ち取る。そうした成功体験を通じて「自分にもできるんだ」という自信を深め、それを一生の武器にしてもらうのです。

また、共通して言えるのは、多くの生徒や保護者が「普通」という言葉に縛られている点です。「毎日学校に通うことが当然である」という価値観の中で、いわゆる「普通の学校生活」ができなくなったことをきっかけに、当校への進学や転校を検討されるケースが依然として多いのが現状です。

「今のままでいい」という全肯定の安心が、将来へ目を向けるゆとりを生む

——通信制高校を選択する方は年々増えている一方、「転校前の学校では馴染めなかった」「中学時代から学校に行けていない」といった心配や不安を抱えて転校・入学される方もいらっしゃるかと存じます。そうした生徒さんを迎え入れる際、どのようなアプローチをされているのでしょうか?

龍崎 雄太先生

現在、通信制高校への進学者や在籍者数は10人に1人の割合となっており、決して珍しい存在ではありません。しかし、ネガティブなきっかけがなく通信制高校を選ぶというケースは、未だに少ないのが現状です。多くの生徒は、何らかの挫折や自信を失った経験を経て当校へやってきます。

そのため、まずは学校生活を通じて「安心」してもらうことを最優先に考えています。

——まずは心の土台を整える、ということですね。

龍崎 雄太先生

安心がなければ、先のことを考えるゆとりは生まれません。「今の安心」があって初めて、生徒は「自分の将来はどうしようか」と前を向くことができるのです。

前を向けるようになれば、自分の得意なことや好きなことにも自ずと気づけるようになります。それを足がかりに、専門学校や大学など、それぞれの進路を選んでいくことになります。

——生徒が本来持っている力を引き出すためのプロセスとして、その「安心」が不可欠なのですね。

龍崎 雄太先生

私たちは経験上、生徒のポテンシャルが環境次第で大きく開花することを知っています。しかし、自信を失ったり自己肯定感が下がったりしている状態では、本来の力を伸ばすことができません。

ポテンシャルを秘めたまま動けなくなっている生徒が多いからこそ、その力を発揮できるように、まずは学校生活における安心を最優先に確保する。それが、私たちが最も大切にしている教育のあり方です。

日常の成功体験が「自分にはできない」という制限を取り払い、表情を変えていく

——実際に中央高等学院に入学された生徒さんが安心感を得て、ポテンシャルが大きく伸びたと感じる瞬間はありますか?

龍崎 雄太先生

日々多くの場面で実感しています。ただ、それは何か劇的な瞬間に訪れるというより、日常の積み重ねの中で「生活が変わっていく」という表現が近いかもしれません。

——具体的には、どのような変化が見られますか?

龍崎 雄太先生

顔つきや目つきが少しずつ変わっていくのです。当校の生徒の多くは、入学当初「自分にはこの程度が限界だ」と、自分の可能性を低く見積もっています。

自信を失っている状況では、むしろ「自分はこの程度だ」と期待値を下げておく方が、目の前のプレッシャーを和らげ、自分を守るための安心材料になるからです。最初から自分の潜在能力を制限し、「自分にはできない」という大前提を持って入学する生徒がほとんどです。

——その制限がどのように取り払われていくのでしょうか?

龍崎 雄太先生

例えば、進路相談でその生徒の背景や能力をしっかり見ることで、「総合型選抜(旧AO入試)などを活用すれば、あなたが希望した大学よりもさらに難関な大学も十分に狙えるよ」といった提案ができる場合が多々あります。

最初は驚く生徒も少なくありませんが、日々の学校生活で安心感を積み重ねるうちに、徐々にその高い目標に向かって生徒自ら動き始めます。

——本来持っていたキャパシティが、少しずつ解放されていくのですね。

龍崎 雄太先生

その通りです。「自分にはできない」という思い込みが外れ、本来のポテンシャルを信じて日常が動き出す。当校で過ごすほぼすべての生徒が、そのような変化のプロセスを歩んでいきます。

中央高等学院

「壁」のない環境が育む、教職員と生徒のフラットな対話

中央高等学院を象徴するのは、生徒と教職員のスペースを隔てる壁が一切ない、徹底して開放的な校舎設計です。この物理的な仕切りのなさが、生徒たちの心理的な障壁をどのように取り払い、対等な関係性の中での「対話」を生み出しているのか、その意図を深掘りします。

職員室の仕切りをなくし、些細な困りごとを「その場」で相談できる空間設計

——ホームページを拝見した際、職員室が非常にオープンな造りになっているのが印象的でした。このような開放的なデザインを採用された背景と、それによってどのような効果があったのかを教えていただけますでしょうか。

龍崎 雄太先生

開放的であること、つまり「閉鎖的ではないこと」は、生徒にとっての安心感を生む大前提だと考えています。

この設計の意図は、教職員と生徒の関係を、いわゆる「上下(垂直)関係」ではなく、フラットな「水平」や「斜め」の関係にすることにあります。

——あえて「上下」を作らないことが、安心に繋がるのですね。

龍崎 雄太先生

垂直な関係性の中では、生徒がちょっとした困りごとを抱えていても、「それくらい自分でなんとかしなさい」と言われてしまうのではないかと萎縮してしまい、声を上げにくくなります。

しかし、空間がフラットで開放的であれば、必然的に会話のハードルが下がります。教職員に対して、日常の些細な悩みも気軽に相談し、一つひとつクリアしていくことができるのです。

——空間のデザインが、心理的な安心感を生み出しているのですね。

龍崎 雄太先生

その通りです。こうした環境があるからこそ、生徒は安心感を得ることができます。そして、その安心を土台にして、これまでは無意識に制限してしまっていた「自らの可能性の枠」を、日常の中で少しずつ広げていく。そんな未来に向けた変化を、この空間から生み出したいと考えています。

——開校当初からこのようなデザインにしようと決まっていたのでしょうか。

龍崎 雄太先生

そうですね。中央高等学院の歴史からお話ししますと、私たちは約50年の歩みがあります。今でこそ通信制高校のサポート校という存在は一般的になりましたが、こうした仕組みが広まるずっと前から、私たちは「大検(大学入学資格検定)」の受検指導を行ってきました。

つまり、いわゆる「社会の普通」とされるコースではない選択をした生徒たちを、半世紀にわたってずっと見守り続けてきたのです。

——長年の経験から導き出された設計なのですね。中央高等学院は複数の校舎を展開されていますが、他の校舎も同様にオープンな職員室になっているのでしょうか。

龍崎 雄太先生

すべての校舎で同じ設計です。最初に開校された吉祥寺本校から始まった「壁のない」スタイルを、今も大切に引き継いでいます。

家族背景まで丸ごと受け止め、一人の人間としてコース選択に伴走する

——中央高等学院には、通信制高校サポートコースや大学入試コースなど多彩なコースがありますが、中には選択に迷ってしまう生徒もいるかと思います。そうした生徒へのアドバイスや、目標が変わった際の伴走支援については、どのように取り組まれていますか。

龍崎 雄太先生

迷っている生徒には、個別でじっくりと話を聞くようにしています。「迷ったらこうする」といった既定のマニュアルがあるわけではなく、その生徒が「なぜ迷っているのか」を掘り下げることが重要だからです。

——その生徒自身の思いを丁寧に紐解いていくのですね。

龍崎 雄太先生

当然ながら、生徒は一人で生活しているわけではありません。家族や保護者の方との関係性の中で悩んでいることも多いものです。

そのため、周囲との関係性も含めて、どのような背景で迷いが生じているのかを把握するように努めています。本人の持つ可能性や強みを踏まえ、今の状態や日常生活のバランスを総合的に捉えた上で、「今、この生徒にとって何が望ましいか」を一緒に考えていきます。

——「何が望ましいか」という判断は、非常に繊細なものだと思います。

龍崎 雄太先生

おっしゃる通り、非常に難しい判断です。大人の目線で「こうすべきだ」と決めつけるのは良くありません。だからこそ、個別に対話を重ねることが不可欠なのです。

——生徒さんとじっくり向き合い、悩みや迷いの理由を柔軟に聞き取っていく、というわけですね。

龍崎 雄太先生

そうですね。ただ、それも一筋縄ではいきません。思春期の生徒たちにとって、自分が何に迷い、何に苦しんでいるのかを言葉にするのは、とても難しいことだからです。私たちは、そうした言語化しきれない思いも含めて、根気強く寄り添うことを大切にしています。

複雑な感情を無理に引き出さず、対話を通じて「可能性」を共に発見する姿勢

——生徒さんの思いをどのように聞き出していらっしゃるのでしょうか。

龍崎 雄太先生

「聞き出す」というよりも、会話を重ねる中で教職員側も「一緒に気づいていく」という感覚に近いです。私たちは常に「生徒から学ぶ」という姿勢を大切にしています。そのため、「話を聞いてあげる」といった上下関係のある垂直なコミュニケーションでは、本当の意味での対話は成立しません。

生徒自身も自分の状況を言語化するのが難しく、私たちもすぐには答えを見出せないのです。その「難しさ」を共有しながら、対話を通じて共に答えを発見していくようなイメージです。

——日々の関わりの中で、常にアンテナを張って生徒の変化を感じ取っているのですね。

龍崎 雄太先生

中央高等学院の開放的な空間設計は、まさにそのためにあります。仕切りのない環境だからこそ、生徒との接点が自然に増えるのです。

例えば、進路やコース選択に迷っている生徒と一度だけ面談したとしても、それだけで本質を理解するのは困難です。日常の何気ないやり取りを積み重ねているからこそ、深い相談を受けた際にも適切な対話が可能になります。

——普段からの信頼関係があるからこそ、生徒さんも納得して自分の道を選べるようになるのですね。

龍崎 雄太先生

そのような環境を整え続けることが、教育において非常に重要だと考えています。

中央高等学院
中央高等学院

不登校は「自然な反応」。社会の構造を捉え直し、心の安全を確保する

「学校に行けないのは自分が弱いからだ」と、自責の念に押しつぶされそうになっている生徒や保護者は少なくありません。しかし、現在の標準化された教育制度と社会のニーズの乖離を見つめ直すと、実は「馴染めないことは自然な反応である」という真実が見えてきます。

「あなたが悪いわけではない」——教職員が共有する、自責感を取り払うための認識

——対人関係に不安を抱えていたり、メンタル面や学習面での遅れに悩んだりしている生徒さんが多くいらっしゃると思います。そうした生徒さんに対し、貴学院ならではの配慮や接し方の工夫があれば教えていただけますでしょうか。

龍崎 雄太先生

メンタル面での困難や学習面の遅れという課題は、現実として確実に存在しています。それは、社会が「望ましい」とするコースから外れることを「逸脱」と見なしてしまう風潮があるからです。

私個人としては、今の通信制高校のようなあり方こそが「普通」であってもいいと考えていますが、社会的な事実としては未だに逸脱と捉えられがちです。そのため、生徒本人や保護者の方までもが「みんなができることができない自分は、落ちこぼれだ」という主観的な認識を持ってしまうのです。

——自分を責めてしまう生徒さんが多いのですね。

龍崎 雄太先生

真面目な生徒ほど「普通にできない自分」を責め、メンタルを削ってしまいます。しかし、中央高等学院の教職員全体として共有しているのは、「それはあなたがそう思わされているだけで、決してあなたが悪いわけではない」という認識です。

——「個人の問題ではなく、社会の問題である」という視点ですね。

龍崎 雄太先生

教職員の世界には、授業の研究や成功事例(ベストプラクティス)を共有する文化があります。全国どこの学校の先生が書いたレポートを読んでも、実は語り口がほぼ同じなのです。それは、日本全国どこの学校でも、学年主任がいて、教科担当がいる、といった組織の形がほぼ同一に「標準化」されているからだと考えています。

この標準化は、インフラとしては効率的かもしれません。しかし、教育のアウトプットは「子どもの成長」です。かつての産業社会では平均的な学力の達成という標準化されたアウトプットが求められましたが、多様性が重視される今の時代とは、構造的に乖離してしまっているのではないかと思っています。

既存の学校教育の現状を知ることで、心の回復と「居場所」の再構築が始まる

——実際に学校に通えなくなっている子どもたちの数は、全国的に増えている印象がありますが、現状をどのように分析されていますか?

龍崎 雄太先生

現在、小中高生約900万人のうち、不登校や長期欠席、保健室登校などを含め、学校との接続が弱まっている生徒は約100万人にものぼると言われています。これほど多くの児童・生徒たちが、標準化された学校制度の中で苦しんでいるのが現状です。この矛盾を踏まえると、子どもが学校に馴染めないのではなく、今のシステムそのものが現代の子どもに合わなくなっている、と考えられます。

——その「矛盾を抱えている」という前提を、生徒さんへのサポートには、どのように反映されていらっしゃいますか。

龍崎 雄太先生

生徒に「あなたが悪いんじゃないよ」と口で言っただけで、すぐに自責の念が消えるわけではないでしょう。メンタルの不調は、頭では分かっていても自分ではコントロールできないものだからです。

だからこそ、まずは「日常の安心」が必要だと考えています。自分が承認され、安心してそこにいられる「居場所」があって初めて、心は回復に向かいます。

中央高等学院
中央高等学院

生徒のペースを最優先し、傷ついた心をゆっくりと癒やす環境設計

心の回復には、誰にも邪魔されない「自分のペース」が守られることが何よりも大切です。登校のプレッシャーをなくすデジタル技術の活用や、現代特有の複雑な人間関係に配慮した適切な距離感など、一人ひとりの心に寄り添う具体的な支援のあり方を紹介します。

Zoom配信とアーカイブの活用で、登校へのプレッシャーをゼロにする学習支援

——生徒さんが安心できる「居場所」づくりとして、具体的にはどのような取り組みをされていますか。

龍崎 雄太先生

先ほどお話しした開放的な職員スペースというハード面の設計に加え、ソフト面では「登校を強要しない」という方針を徹底しています。

現在、ほぼすべての授業をZoomでリアルタイム配信しています。さらに授業によってはアーカイブも残しているため、「学校に行かなければ勉強が遅れてしまう」というプレッシャーを生徒に与えることはありません。

——無理に登校しなくても学習が継続できるという安心感は、生徒さんにとって非常に大きいですね。

龍崎 雄太先生

登校を強要しない一方で、本人が「今日は学校に行ってみよう」と思ったときには、いつでも話のできる教職員や同級生がそこにいる。そうした環境を常に保ち続けることが重要だと考えています。

そのような環境の中で、生徒たちは少しずつ安心感を取り戻し、自分自身の「居場所」を再構築していきます。メンタル面の不調が回復してくれば、それは自ずと学習面にも良い影響を与え始めます。

——学習面の遅れを心配される保護者の方もいらっしゃるかと思いますが、その点はいかがでしょうか。

龍崎 雄太先生

学習の遅れに関しては、それほど大きな問題とは捉えていません。当校では、中学校レベルの基礎的な英語・数学・国語を復習できる「やり直し学習」の授業や教材を完備しています。

また、必要に応じて個別対応も可能ですので、本人の意欲が回復した段階で十分にカバーすることができます。まずは心を癒やし、前を向ける状態を作ることが、結果として学習面での成長にも繋がっていくのです。

SNS時代の複雑な人間関係に配慮し、「友達作り」を強要しない見守り

——貴学院のホームページを拝見すると、掲示板の活用や、先生が友人を紹介するサポートなど、生徒さんの「居場所」を支える取り組みが紹介されています。生徒さんが過ごしやすくなるための工夫について、詳しくお聞かせいただけますか。

龍崎 雄太先生

世間一般では「友達がいるのが当たり前」という風潮がありますが、私個人は「いなくても問題はない」と考えています。人間関係のあり方は人それぞれですから。もちろん、友達を紹介してほしいという生徒には橋渡しをしますが、ここは非常に慎重な判断が求められる部分でもあります。

——「友達を作れば解決する」とは考えない、ということですね。その「慎重さ」が必要な背景には、どのような理由があるのでしょうか。

龍崎 雄太先生

スマートフォンの普及以降、人間関係の不確実性や不透明性は確実に増しており、非常に複雑になっています。目の前の「顔の見える関係」の背景には、常に目に見えないネット上の関係が張り巡らされています。

たとえ仲良く話していても、「自分のいないところで何か書かれているのではないか」と、お互いが疑心暗鬼にならざるを得ない側面があるのです。こうした状況下では、無理に友達を作ることがかえってマイナスに働くケースも少なくありません。

——今の時代ならではの難しさですね。

龍崎 雄太先生

私たちの世代が抱く「友達」のイメージは、何でも正直に話せて、悩みも打ち明けられる存在というものでした。しかし現在の若い世代は、本音を出すことで「鬱陶しい」と思われることを極端に恐れる傾向があります。そのため、友達関係の中でもなかなか本音を出せず、その苦しさから学校に行けなくなってしまった生徒もいるのです。

——だからこそ、安易な紹介は避けていらっしゃるのですね。

龍崎 雄太先生

そうですね。私たちは、まずは見守ることを大切にしています。

もちろん、「少しずつ関係を広げたいな」と願っている生徒や、転校してきたばかりで既存の輪に入りづらそうにしている生徒がいた場合には、そっと背中を押したり、自然に馴染めるようサポートしたりしています。一人ひとりの心の距離感に合わせ、適切な「居場所」を共に探していく姿勢を貫いています。

「危害を加えない存在」だと伝わるまで、数ヶ月かけてじっくりと築く信頼関係

——生徒さんとの信頼関係を築くのは非常に大変なことだと思いますが、構築までにはどのくらいの時間がかかるものなのでしょうか。

龍崎 雄太先生

期間については、本当に人それぞれですね。信頼関係の出発点は、相手に対して「この人は自分に危害を加える存在ではない」ということを、頭での理解ではなく感覚的に掴んでもらうことにあると考えています。

——過去に人間関係で傷ついた経験を持つ生徒さんの場合は、時間がかかるのでしょうか。

龍崎 雄太先生

これまでの学校生活において、周囲の人間から傷つけられてきた経験がある場合は、どうしても時間が必要です。

例えば、過去の経験から特定の「役割」に恐怖心を抱いている場合、目の前の教職員の資質とは関係なく苦手意識が生じることがあります。たとえ顔も性格も違っていても、「男性の先生」という属性そのものが、過去に傷つけられた記憶を呼び起こしてしまうこともあるのです。

そのような場合は、男性教職員ではなく女性教職員が対応するなど、柔軟な体制をとっています。

——どのような経緯でここに来たかによって、スタートラインが異なるのですね。

龍崎 雄太先生

この空間や人間が、自分にとって危害を加えるものではないと心から安心してもらうためには、焦らずに時間をかけなければなりません。人間関係で深く傷ついてきた生徒さんの場合、信頼の土台ができるまでに数ヶ月かかることは、決して珍しいことではないのです。

中央高等学院
中央高等学院

「個性をプロデュース」し、輝く未来を自ら切り拓く力へ

確かな信頼関係が築けた先にあるのは、生徒一人ひとりの個性を社会で通用する強みへと昇華させる「プロデュース」の段階です。過去の挫折や些細な経験さえも「一生の宝物」へと変え、自らの足で未来へと踏み出すための、型にはまらない進路支援について伺いました。

本人も気づいていない「キラリと光る宝物」を、進路実現の強力なストーリーに

——中央高等学院様が取り入れている「全員担任制」の強みや、具体的な進路指導のあり方についてお聞かせください。

龍崎 雄太先生

信頼関係を構築する上で、どうしても「合う・合わない」という相性は存在します。そのため、当校では特定の教職員が一人で抱え込むような「学年担任制」にはこだわりません。

「この生徒に関しては、〇〇先生が担当するのが望ましい」といった情報を教職員間で常に共有し、担任という枠を超えてチームでカバーし合う。これが、私たちの考える全員担任制の具体的な姿です。

——教職員同士の連携が、生徒さんの安心感に直結しているのですね。

龍崎 雄太先生

職員室がオープンスペースであることは、教職員と生徒の間でメリットがあるだけでなく、教職員同士の意思疎通をも非常に円滑にします。気軽な相談から深い情報共有まで、常にスピーディーに行える環境が整っています。

——その強固な信頼関係をベースに、どのようにして進路指導へ繋げられているのでしょうか。

龍崎 雄太先生

単なる「進路指導」というよりも、むしろ「プロデュース」に近い感覚を持っています。「この生徒の個性や背景なら、こういう道も開けるのではないか」「こんな選択肢も面白いのではないか」と、教職員側がクリエイティブに可能性を探ります。

——これまでに「プロデュース」された、実際のエピソードについて教えていただけますか?

龍崎 雄太先生

例えば、幼少期に「親子料理コンテスト」で賞を取った経験を持つ生徒がいました。本人は「理系大学を目指す自分には、料理コンテストなんて関係ない」と思い込んでいたのですが、見方を変えればそれは立派なアピールポイントになります。

——料理と理系の進路が、どのようにつながるのでしょうか?

龍崎 雄太先生

面接の場で、「他者と共同して共通の目標を達成する力を、幼少期から積み重ねてきました」と伝える際、そのコンテストのエピソードは非常に説得力のある原体験となります。

「幼少期の成功体験があり、不登校という挫折も経験したが、通信制高校でのスクーリングや文化祭のグループワークを通じて、再び他者と協力する力を磨いてきた。理系の研究室でも、この協調性を活かして共同研究に貢献したい」――。このようにこれまでの歩みを一本の線でつなげば、大学の総合型選抜などでも高く評価され、合格を勝ち取ることができます。

——生徒自身のポートフォリオを、先生方が一緒に編み上げているようなイメージですね。

龍崎 雄太先生

生徒本人たちは、それが自分の持っている「キラリと光る宝物」だとは気づいていないことが多いのです。だからこそ、私たちは日々のやり取りを通じて、多角的な視点でその子の光る部分を見つけるようにしています。

それが、本人すら想像していなかったような納得感のある進路決定に繋がっていくのだと考えています。

Jリーグボランティアや宿泊行事など、一歩踏み出すきっかけを作る多様な機会

——入学当初は通学や対人関係に強い不安を抱えていた生徒さんが、学院生活を通じて主体的になり、明るく変わっていくような、印象的なエピソードがあればぜひお聞かせください。

龍崎 雄太先生

そうした事例は毎年たくさんあります。例えば、中学校時代に不登校で、高校1年生の頃もほとんど登校できず、授業は専らZoomで受けていた生徒がいました。

当校には、1年生の臨海学校や集中スクーリングといった宿泊行事のほか、私たちがスポンサーを務めているJリーグ「東京ヴェルディ」の試合運営ボランティアなど、多彩なイベントがあります。スタジアム周りや座席の清掃、希望者はチケットもぎりなどを丸一日体験する機会です。

——学校の外での体験が、大きな刺激になりそうですね。

龍崎 雄太先生

体調やメンタル面を考慮し、「必ず出席しなければならない」という強制は一切しません。しかし、こうした機会が豊富にあることで、ふとした瞬間に繋がりができ、それが自信に変わることがあります。その生徒も、行事をきっかけに2年生からは毎日登校するようになり、見違えるほど変わりました。こうした「きっかけ」となる機会が多いことは、当校の強みだと感じています。

——「無理に来なくても大丈夫」という安心感があるからこそ、一歩を踏み出しやすいのでしょうか。

龍崎 雄太先生

その通りです。登校できないからといって、学習が遅れたり卒業後の進路が閉ざされたりすることを焦って心配する必要はありません。

例えば、高校3年生になるまでほとんど学校に来られなかった生徒がいました。しかし、夏頃に「この大学を受けたい」という目標が定まった際、総合型選抜や学校推薦型選抜の対策として、個別面談のために学校へ通うようになりました。

——登校日数が少なくても、そこからのリカバリーが可能なのですね。

龍崎 雄太先生

適切な指導を行えば、合格を勝ち取ることは十分に可能です。極端な話、3年間のうち、受験直前の1ヶ月間ほど集中して登校しただけでも、希望する進路を実現できている生徒はいます。

このように、特に進路の方向性が決まると、生徒は劇的に変わります。内面から自信が滲み出て、本当にキラキラと輝き始めるのです。その変化にはいつも驚かされますが、それこそが私たちがこの仕事をしていて最も嬉しく感じる瞬間です。

「学校に通えていなくても、希望の進路は叶う」——卒業生が証明する、未来を諦めないための新常識

——最後に、進路に悩んでいる中高生やその保護者の方々に向けて、メッセージをお願いいたします。

龍崎 雄太先生

まずお伝えしたいのは、「学校に行けない」ということは、今の社会においてむしろ自然なことだということです。お子さんが学校に馴染めないのではなく、学校教育のシステム自体が、現代の子どもたちに合わなくなっている面が大きいのです。決して自分のせいだと思わないでください。

——「自分たちが悪いわけではない」という認識を持つことが、第一歩なのですね。

龍崎 雄太先生

その通りです。保護者の方からは「今学校に行けないのに、大学なんて行けるのでしょうか」という不安の声をよく聞きます。しかし、実際には高校時代にほとんど登校できなかった生徒であっても、大学に入ると一変して毎日通い、単位を取って卒業しています。

小中高という場所は、同年齢の集団が同じ教室という閉鎖的な空間に集まり、「絶対に行かなければならない」という強い心理的プレッシャーにさらされがちです。この仕組みは、人によっては過酷な設定とも言えます。その環境に馴染めないことは自然な反応であり、何ら心配することはありません。大学という自由度の高い開放的な環境に入れば、その息苦しさは解消されるからです。

そのため、高校に通えていなくても、大学進学には問題もないと言えるのです。これは、今までの卒業生たちが事実として証明してくれています。

——そのメッセージは、多くの方の救いになると思います。こうした一人ひとりに寄り添う教育のあり方は、今後どのように展開されていくのでしょうか。

龍崎 雄太先生

私たちは、これまで培ってきた経験をさらに広げていきたいと考えています。昨今の小中学校の現状を鑑みると、高校生だけでなく中学生に対してもサポートの手を広げる必要性を強く感じています。そのため、今後は「中等部」の展開も検討中です。

進路に迷い、立ち止まっている方も、中央高等学院に来ていただければ大丈夫です。私たちは、皆さんが自分らしく前を向けるようになるまで、全力で伴走していきます。

中央高等学院
中央高等学院

「自分らしさ」を羅針盤に、新しい世界へ踏み出す

学校が合わないという経験は、決して個人の挫折ではなく、多様な生き方への扉を開くきっかけに過ぎません。今回のインタビューを通じて見えてきたのは、中央高等学院が提供する「画一的な評価から解放されたフラットな対話の場」の姿です。それは、停滞していた個々のポテンシャルを、確かな自己信頼へと変えていく大切なプロセスでもあります。ここで見つけた自分だけの物語と強みは、大学や社会という広い舞台へ踏み出すための羅針盤となるでしょう。

中央高等学院
中央高等学院からのお知らせ

中央高等学院は、45年以上の歴史を持つ通信制高校サポート校です。新入学の中学生から、転校・編入を希望する高校生まで、幅広い層に「安心のサポート体制」を提供しています。

最大の特長は、生徒一人ひとりの目標やライフスタイルに合わせて選べる多彩なコース設定です。大学進学を目指すコースから、専門的な技術を学ぶコース、中学生向けの準備コースまで、個々の状況に寄り添った学習環境が整っています。

自分らしく前を向くための一歩として、まずはお気軽に「資料請求」や「個別相談会」へお申し込みください。

設置コース ・通信制高校サポートコース
・大学入試コース
・ライフサポートコース
・介護福祉就職コース
・中等部フリースクール
対象者 中学生、高校生(新入・転入・編入)、高校中退者
校舎所在地吉祥寺、池袋、渋谷原宿、横浜、千葉、さいたま、名古屋
主な特徴 ・駅から近い開放的な校舎
・ICT教育の導入
・充実した大学進学指導
・友だち作りに最適な豊富なイベント
公式サイト https://chuos.com/ 

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