子育ては喜びも多い一方で、「なぜ私だけこんなに大変なの?」と孤独を感じ、インターネットに溢れる情報に翻弄されてしまうことはありませんか。特に、妊娠中から小さな子どもを育てるお母さんにとって、社会との断絶感や周囲へのSOSの出しにくさは、大きな壁となりがちです。また、現代の子育ては、昔とは異なる新たな課題も浮上しています。
今回は、そんな現代の保護者の悩みに真摯に向き合い、包括的な支援を展開するNPO法人きびる(以下、きびる)の活動に迫りました。代表理事の野口 和恵さんと事務局の川原 美穂さんへのインタビューを通じて、心と体を整え、安心して子育てができるヒント、そして未来の子どもたちに必要な知識とは何かを探ります。
「一人じゃない」を実感できる場所:きびるが提供する多様な支援

子育ては喜びも多い一方で、孤独を感じやすい側面もあります。きびるは、そんな保護者の心に寄り添い、「一人じゃない」と実感できる多角的な支援を提供しています。具体的な活動内容を通じて、その温かいサポートの秘密を探ります。
母親の孤独に寄り添う「きびるカフェ」:託児で得られる「自分だけの時間」
──きびるさんが特に力を入れている活動についてお伺いします。非常に幅広く活動されている印象ですが、現在特に注力されているのはどのような活動でしょうか?
野口 和恵さん大きな柱として一つ行っているのが「きびるカフェ」です。このきびるカフェは、ミニ講座のような講義形式の学びと、ワークショップ形式で共に一緒に行う内容を提供しています。きびるの居場所である「きびるの家」を使って、きびるカフェでは毎月テーマを変えて開催しています。例えば、歯並びのこと、睡眠のこと、栄養のことなど、様々なテーマを取り上げています。
──「きびるカフェ」は、お子さんを連れてきて、抱っこしながら賑やかな中でお話するのではなく、お子さんと一度離れて、ご自身のマインドでしっかりお話できる空間が整えられているのですね。
野口 和恵さんはい、おっしゃる通りです。
──お子さんと空間をしっかり分けようと考えられたのは、母親に一人の時間をしっかり作ってあげたい、心を穏やかにしてあげたいという思いからでしょうか?
野口 和恵さんそうですね。お子さんが膝の上にいても構わないという方は、そのままご参加いただいて全く問題ありません。ただ、私自身も、例えば子どもと一緒に美味しいご飯を食べに連れて行ってもらったとしても、食べているようで食べていない、休んでいるようで休めていないと感じることがよくあります。ですから、そういった時ぐらいは誰かに預けても良いのではないかと考えています。お子さんからしっかり離れることができるのが大事だと感じています。
いつでも繋がれる安心感:公式LINE相談が子育ての強力な味方に
野口 和恵さんそして、二つ目の柱が「LINEでの相談」です。かなり相談件数が多くあります。
──アクセスしやすい媒体で、適切で正しい情報を配信していくということですね。
野口 和恵さんはい、その通りです。
──現代は情報過多の時代だと思います。情報が多すぎるからこそ、正しい情報にアクセスしづらくなっているのが現状ではないでしょうか。この「正しい情報発信」を行っていく上で、特に注意しなければならないと感じていることはありますか?
野口 和恵さんそうですね。使える情報は使ってもらって良いと思っています。便利に活用できるものは、積極的に活用して良いと思います。しかし、今の若い方々からの相談を受けていると、LINEなどの情報だけで済ませようとしている方もいるのが現状です。
私は診察や診断ができるわけではないので、必要な場合は病院にかかるなど、専門機関に相談してもらわなければなりません。きびるのLINEだけで全てが解決すると考えられてしまうのは、違うと考えています。情報は、使える情報や使えるITツールは最大限活用していただいて良いのですが、リアルな診察や診断が必要な場合も存在するということを理解していただきたいです。
育児参加を諦めない! パパの悩みに特化したユニークなイベントとは
──最近の課題感として、パパの意識改革という点がありました。働く場や企業の理解を深めてもらうために、きびるさんとして何か取り組んでいることはありますか?
野口 和恵さんそうですね。先日、男性100人に大規模なアンケートを取らせていただく機会があったのですが、結果を見ると、やはり経済的な悩みを心配されている方が多いことがわかりました。「一家の大黒柱」と言われる男性は、経済的なことや仕事との両立について深く悩みを抱えている若い方々が多いと感じました。育児にも参加したいけれど、当然お金も必要です。
仕事と育児の両立は、もちろん社会全体で取り組み、企業が考えるべきことも多いと思います。しかし、休む権利ばかり主張して会社での出世が遅れてしまったり、煙たがられたりすることは、男性が望むことではないでしょう。
そこで、工夫して育児に参加してもらうために、今回きびるではパパ向けのイベントを年に大きく2回開催します。これまでの経験から、ただ「こういうイベントがあるから来てね」と言っても、男性はなかなか集まっていただけません。
ですから、今回きびるで行うのは、外遊び、いわゆるキャンプと育児をかけ合わせたイベントです。火起こしやテント張りなど、キャンプ初心者の人、そして育児初心者の人を組み合わせ、男性だからこそできるダイナミックな遊びを年間2回開催し、男性を呼び込もうと考えています。
──すごく楽しそうな取り組みですね! 「キャンプ初心者×育児初心者」という点が、ほほえましいです。実際にイベントに参加された方の声は、いかがでしょうか?
野口 和恵さんパパからは「こういったイベントがあると出かけやすい」といった声や、「ママたちが言うと聞いてくれないけれど、専門の人が言ってくれると聞いてくれた」といったママの意見もありました。そのような点で、専門家をうまく使っていただくのも良いかと思います。
情報社会の落とし穴と母親の孤立——現代の子育てが抱える、見えない壁

現代の子育てには、表面からは見えにくいものの、深刻な影響を及ぼす課題が数多く存在します。特に、若年層の性に関する誤った情報や、母親が完璧主義ゆえにSOSを出せないといった問題は、見過ごされがちです。専門家が警鐘を鳴らす、これらの「見えにくい課題」の現実とその背景に迫ります。
ネット情報に要注意。中高生が身につけたい「情報の取捨選択力」
──中高生の性や体の悩みに対する相談支援について、野口さんの印象に残っているエピソードや、改善が必要だと感じた課題があればお聞かせください。
野口 和恵さんそうですね。例えば、好きな人ができて、その人と距離が近くなり、温もりを感じたいと思う気持ちは、昔も今も変わらないですし、それはとても大切なことだと思っています。
しかし、一方で、妊娠するはずがない状況なのに心から心配したり、絶対にありえない状況なのに妊娠検査薬を使って心配を取り除こうとしたりする高校生が多いと感じています。妊娠に関する基礎知識からしっかりと伝えていきたいと強く思います。
──なるほど。つまり、保健の授業である程度の知識は入っているはずなのに、友達同士の噂や信憑性のない情報に振り回されている中高生がいるということですね。
野口 和恵さんその通りです。本当に都市伝説的なネットの情報を聞きかじって、そこだけにリスクがあると思い込んでいるのだと思います。
──こういった課題に対して、どのような活動を通じて解決していきたいと考えていらっしゃいますか?
野口 和恵さん今、LINEの友達登録が非常に増えているので、現在そういったサポートをしてくれる方と打ち合わせをしているところです。例えば、短編の動画を制作していただき、「まずこれを見てください」とか「この悩みはこれを見てください」というように、情報を分けられると良いなと考えています。読み物だけの媒体だけでなく、動画やショートムービーのような形で伝えられると良いと思っています。
そして、情報過多な時代において、最も大事なのは、やはり取捨選択がどれだけできるかという点になると思います。私が「大丈夫だよ、それで妊娠するわけないよ」と言っても、それでも不安が拭えない人というのは、かなりいます。では、そういう人に対してどうするのかというと、やはり「自分のことは自分で決められる」という自信を持ってもらうこと、そして「自分の出した答えに自信を持つ」という、本当に人間教育のようなところに最後は突き詰めていくことになると思います。
なぜSOSが出せないのか? 母親を追い詰める「完璧主義」と社会の壁
──孤立しやすいママさんとそうでないママさんの違いや、孤立から早く抜け出せるママさんの特徴について、何かポイントがあればお伺いできますでしょうか?
野口 和恵さん私を含め専門的な知識を持っている人ほど、「聞くのは恥ずかしい」「こんなことを知らないのは」と考えてしまい、意外と闇が深く孤独になりやすい傾向があるように思います。
また、高学歴な方も含め、人に弱さを見せられない人は子育てで孤立しやすいでしょう。さらに、自分に厳しい完璧主義の人は、70点でも100点と思えず、100点を出さないと100点ではないと思ってしまうことが多いのではないでしょうか。専門的な人は凝り固まった知識が邪魔をしてSOSを出しづらいという側面もありますし、完璧主義の人もSOSを出しづらいと感じています。
──なるほど。専門性があるからこそ、その知識を活かして孤立を跳ね除けられるのかと考えていたので、目から鱗でした。きちんとSOSを出せる人の方が、孤立から抜け出しやすいということですね。
野口 和恵さんおっしゃる通りです。そして、せっかくSOSを出してもらったにもかかわらず、社会全体が「子育てはこういうものだよ」「まだマシだよ」といった反応をしてしまうと、さらに孤独を深めてしまうことにつながってしまいます。ですから、子育てが大変だと思うのは無理がない、とみんなが共通認識を持っていれば、SOSも出しやすくなると思うのです。
──母親がSOSを出す側にも課題があるかもしれませんが、やはり社会にも課題があると感じます。特に子育ての悩みを口にするのは、かなりハードルが高いですよね。
野口 和恵さん母親にとって、子育ては自分自身と同義のようなものですから、「自分がダメです」とはなかなか言えないものですよね。それくらい子育ての悩みを口にすることが非常に重いことだという共通認識を社会が持っていれば、状況は変わると思います。「子育てが辛い」なんて言った途端に「可愛くないのか」とか「母親失格だ」などと思われてしまうようでは、かなり問題だと思います。
きびるを支える「多様なプロフェッショナル」と「若い世代の力」

きびるの活動は、助産師や看護師といった専門職だけでなく、多様な分野のプロフェッショナルたちによって支えられています。さらに、若い世代の学生ボランティアが加わることで、常に時代に即した、信頼性の高い支援が実現しています。連携の力がどのように連携し、子育て支援の最前線を牽引しているのでしょうか。
助産師・看護師だけじゃない! 弁護士や経営者が支える団体の信頼性
──きびるさんには助産師や看護師の方々以外にも、医師、弁護士、経営者など、様々な職種の方が関わっていらっしゃると、伺いました。それぞれ異なる専門性や専門分野を持つ方々を活かす上で大切にされていることや、アサインする際の基準などがあれば、ぜひお伺いしたいです。
野口 和恵さんそうですね。本日参加してもらっている川原さんを含め、助産師や看護師以外の方々もたくさんいらっしゃいます。どうしても私たちは、本来の活動を発揮するためには、事務的なことや縁の下の力持ち的なサポートが必要になります。そういった面でサポートしてくれるスタッフがいるのが一つ大きな点です。
あとは、冒頭でもお伝えしたように、子育てに関する悩みは多岐にわたると改めて感じました。そのため、助産師や看護師という視点だけではなく、子育て経験者や同じ母親、同じ育児者として、様々な方々の力を借りながら活動させてもらっています。
──多くの専門家の方々が関わることで、「この先生に入ってもらって良かった」「弁護士の先生に入ってもらって良かった」と感じるような、特に印象に残っているエピソードはありますか?
野口 和恵さん現在のところ、例えば弁護士さんに何かトラブルを解決していただいたという具体的な事例はありません。しかし、理事として関わっていただいているので、何か問題になりそうな時、特に私たちはデリケートな問題を扱うことが多いので、より専門的な方々の力を借りることは重要だと考えています。
具体的に困ることはなくても、今後、ガバナンス、つまり「団体が正しく事業を運営しているか」という点は非常に重要視されると思います。会計もそうですし、そういった事務的なこと、そして法的な面で目を光らせてもらうことで、団体として信頼に足るかどうかをこういった方々が固めてくださっているのだと感じています。
──団体の安定した運営に大きく貢献しているということですね。
野口 和恵さんはい、特に事務的な面では、川原さんのサポートも大きいですし、今後、寄付を募るような活動も増えていくと思います。今でも、「寄付はしたいけれど団体の内容が見えない」という企業の声を聞くことがあります。企業のCSR(企業の社会的責任)活動なども含め、社会貢献したいと考えている企業は非常に多いと肌で感じますが、一方で「どこにお金を寄付すれば良いか分からない」と思っている経営者も多いと感じています。
そのような状況で、財務面も含め事務的な面でもきちんと運営されている団体だ、と信頼していただくことは非常に重要だと考えています。そういった意味で、多岐にわたる専門家の方々の協力は、私たちの活動にとって非常に大切な部分です。
令和の子育てを創る:学生ボランティアがもたらす「時代に即した」視点
──看護学生や教育学生など、若い世代のボランティアスタッフが多く関わっていると伺いました。彼らが関わる背景にはどのような意図があり、どのような効果をもたらしているのでしょうか?
野口 和恵さんはい。学生さんは、経験を増やしたいという表向きの理由もあると思いますが、正直なところ、履歴書に書きたい、就職や進学に役立てたいと考えている子も多いでしょう。実際に、助産師の道に進むために進学面接でNPOでのエピソードを話したところ、面接官にとても関心を持ってもらえたという学生もたくさんいます。ですから、学生さんにとっては、経験を増やし、自分の知らない知識を得て、就職や進学に有利に働くというメリットもあると思います。
私たちにとってのメリットは、やはり妊娠、出産、育児は時代によって大きく変化するということです。「私の時はこうだったよ」という経験談は正直通用しませんし、逆にそれを押し付けてしまうと、令和の時代にふさわしくない団体になってしまう懸念があります。そのため、若い人たちからのアイデアも積極的に吸収しています。例えば、私が知らないようなデートDVなどのテーマを彼女たちが議題として持ってきたりもします。若い世代の学生たちと一緒に企画運営を行うことで、令和の時代にふさわしいコンテンツを作れる団体になれると良いなと思っています。
「昔はこうだった」は通用しない? 月経・出産観の変化から見る世代間ギャップ
──実際に、学生が参加することで「そういう考え方もあるんだ」とハッとさせられた瞬間はありましたか?
野口 和恵さんはい、ありました。例えば、月経に対する考え方は、昔と今では大きく変わっています。
私たちの世代では、ピルを飲むとなると「性交渉が多い人」や「病気の人」といったイメージがありましたが、今は痛いものを我慢せずに取り除こうという時代でもあります。ですから、「ピルを飲んで楽になるなら飲んで良いよね」という考え方があります。
また、出産に関しても、昔は「腹を痛めてこそ」という言葉に代表されるように、痛みに耐えるのが当たり前のようなところがありました。しかし、今は無痛分娩もかなり主流になってきています。麻酔の考え方も大きく違うので、その辺りの月経に対する若い子たちの考え方や症状に対する認識も、私たちとはかなり異なっています。
孤立を乗り越えるために:既存制度の活用と社会への提言

手厚いサポート体制が整いつつある現代においても、なぜ母親の孤立は解消されないのでしょうか。子育てにおける孤立を乗り越え、より良い社会を築くための具体的な提言を探ります。
退院後の分断をなくす:妊娠期からの包括的地域支援の必要性
──活動を通じて、母親が孤立しやすい瞬間や制度の隙間が見えてきたとのこと。なぜ母親が孤立してしまうのか、まだ制度の隙間があるのではないかと感じたのですが、その点についてお考えをお聞かせください。
野口 和恵さんそうですね。おっしゃる通り、やはり子どもが小さいうちは孤立しやすいのです。小学生くらいになるとママ友ができたりして世界が広がりますが、小さければ小さいほど孤立しやすいと感じています。
それに、お産の現場では、今後入院日数がさらに短くなるでしょう。3日や4日くらいで退院するようになると、助産師が「このお母さんは心配だ」と思っていても退院させなければいけません。そして、退院させてしまえば、その後のことなど知る由もありません。やはり、そこで支援が分断されていると感じています。
ですから、妊娠中から10ヶ月ほど助産師が関わり、出産したら終わりではなく、病院も地域へ歩み寄ること。そして同時に、地域は地域で、お母さんたちが妊娠中から抱えている課題を、正直にみんなが共有できると良いなと思います。本当に妊娠期から地域で、赤ちゃんが退院して暮らす場所まで、ワンストップで包括的な支援ができる体制に、今後日本もなっていくことができればと願っています。北欧のように、その人の思春期くらいまでずっと寄り添うような、「このことを相談すれば分かっている人」という制度が日本でも広まっていくと良いですね。
今すぐできる「産前・産後ケア」など既存制度の賢い活用法
──今、日本の制度も推進されている途中かと思いますが、これから赤ちゃんを産む方、また産んでこれから育てていく方に対して、孤立を少なくするために、現状の制度をどのように活用すれば良いとお考えですか?
野口 和恵さん今ある制度を活用するとなると、産前・産後ケアが少しずつ市町村で整備されてきていると思います。産後ケアなどは、昔よりも無料や低料金で非常に使いやすくなっているので、そういった市町村独自のサービスを利用するのが一つの手だと思います。
マミーシェイミングを乗り越え、共感し合える社会へ
──北欧ではマミーシェイミング(母親への批判)をやめようという動きが近年強まっているようです。もちろん現役の母親の意識改革も必要だと思いますが、マミーシェイミングをしてしまうのは、子育てを終えた母親(義母や実母)の言葉であることも少なくないかと思います。
子育てが終わり、お孫さんができるような年齢の方々へ向けての活動は、実施されていますか?
野口 和恵さんそうですね。きびるカフェにはキッチンの担当として、子育てが終わった地域の大先輩のお母さん方がいらっしゃるのです。ですから、そういった方々も含め、今度はその方たちがスピーカーになっていただけるように、「令和の時代ってこんな感じなんですよ」というのを、ボランティアを通して伝えています。
「教えます」と言って大先輩方に、いわゆる「じぃじ・ばぁば教室」のようなものを開催するよりも、一緒に子育てをやっていただく中で、学びや気づきを感じてもらうことの方が大きいと考えています。
きびるが描く未来:すべての親子が笑顔でいられるために

きびるは現在の活動にとどまらず、すべての親子が笑顔で豊かな日々を送れる未来を真剣に描いています。子育てに悩む人々にとっての「通過点」でありたいという団体の哲学と、社会全体に子育てへの共通認識を促す力強いメッセージ。きびるが目指す、希望に満ちたビジョンをお伝えします。
子育ての「通過点」でありたい:保護者の自立を促すきびるの哲学
──これからきびるさんの展望として、地域や社会に対して具体的にどのような変化を起こしていきたいか、ビジョンをお伺いできればと思います。
野口 和恵さんそうですね。団体としても安定した運営ができるように、寄付などを集めていきたいと考えています。そして、地域の方々が妊娠、出産、子育てで悩んだ時に、私たちきびるの名前を真っ先に思い出していただけるような団体でありたいです。団体としては、皆さんにいつまでも頼り切ってほしいというよりも、皆さんがいつか自立していくための「通過点」であってほしいと願っています。
──現在は地域の方がメインかと思いますが、LINEなどのオンラインツールや情報発信を通じて、全国的な展開も見据えているのでしょうか?
野口 和恵さんそうですね。相談の割合でいうと、群馬の次に多いのが東京なんです。ですから、LINEやITの準備が整い次第、順次全国へ拡大していきたいと考えています。
大変な時は「当たり前」:社会全体で子育てを支えるメッセージ
──最後に、子育てに向き合っている保護者の皆さんへ、メッセージをお願いできますでしょうか。
野口 和恵さん子育てが大変だと感じ、一時的に辛いと思うのは当たり前のことだと思います。その気持ちを丸ごと受け止められるような団体でありたいですし、何かご不安なことや心配なことがあれば、発信しやすい社会づくりの一助を担えれば良いなと思っています。
川原 美穂さん私は専門職でもなければ、保健師でも助産師でもありません。ただ、一人の子どもの母親として、そして会社員として仕事と育児を両立してきた一人の一般人です。私自身、子どもが小さかった時に、本当にきびるのような団体が近所にあったら、どんなに励まされ、もっと早く楽になれていただろうと感じています。もしお近くにそういった団体があったら積極的に利用していただきたいですし、もしなければ、ぜひきびるを頼っていただけたら嬉しいです。
「一人じゃない」子育てへ:きびるが紡ぐ、専門性と共感のサポート
今回のインタビューで明らかになったのは、現代の子育てが抱える課題の深さと、それに対するきびるの多角的かつきめ細やかなアプローチでした。母親の孤立、パパの育児参加、若年層の性教育、そして情報過多な社会での正しい情報の取捨選択力など、様々な側面に光を当て、具体的な支援策を講じています。
野口さんが語るように、子育てにおいて困難を感じることは自然なことであり、SOSを出すことは決して恥ずかしいことではありません。この認識を社会全体で共有し、お互いに支え合うことで、より良い未来へと繋がるでしょう。
もし今、あなたが子育てに悩んでいたり、不安を感じていたりするなら、ぜひ「きびる」という存在を思い出してください。あなたとあなたの家族が、より豊かで、笑顔あふれる日々を送るための羅針盤となるはずです。
