日本の高校として初めてeスポーツコースを開講した、通信制高校「ルネサンス高校グループ」。
その取り組みは「ゲーム教育」の枠を超え、現代社会で必要とされる「課題解決能力」を多角的かつ実践的に育む場として進化を続けています。本記事では、同校eスポーツ担当の今井 康平さんにインタビューを実施しました。
SNS時代のプレッシャーにさらされる子どもたちの現状から、ゲームを起点に英語やコミュニケーション能力を磨き、大学進学や就職という未来を勝ち取るまでの軌跡を紐解きます。
「好きなこと」が、いかにして社会で生き抜く力へと変えられるのか。従来の学校教育の常識を覆す、新しい学びのカタチをご紹介します。
ゲームを入り口に「社会で生きる力」を養う教育方針
ゲームスキルの向上だけに留まらない、ルネサンス高校の教育の本質とは何でしょうか。そこには、変化の激しい現代社会で自立していくための明確な指針と、子どもたちが直面するSNS社会特有のプレッシャーに対する深い洞察がありました。
技術習得の先にある「人を育てる」ための4つの教育軸
——貴校には多彩なコースが設置されていますが、今回は「eスポーツコース」についてお伺いしたいと思います。
今井 康平さん私たちルネサンス高校グループは、2018年に高校のeスポーツコースとして日本で初めて開講しました。当校はゲームの技術を教えるだけではなく、「ゲームを通して人を育てる」ことを軸としています。
開講当初は「eスポーツ=競技」という認識が非常に強かったため、実技指導を中心とした拠点展開を行っていました。しかし現在では、全国に7拠点にまで広がり、生徒数やニーズの多様化に伴って教育内容も大きく変化しています。
——生徒数が増え、ニーズが多様化していく中で、どのような教育内容へと変化したのでしょうか。
今井 康平さん現在、コース内ではコミュニケーション能力や自己管理能力の育成、チームで協働する力の醸成、そして将来の進路形成といった4つの要素に注力しています。
最近は特に「将来の進路形成」に力を入れており、ゲームを起点として配信、実況解説、大会運営、動画編集など、培ったスキルを社会につなげるための教育を行っています。
——開講当初から進化している点についてはいかがでしょうか。
今井 康平さんeスポーツの「専門学校」などはすでに存在していましたが、2018年ごろから「高校生」のeスポーツ全国大会が大きく開かれるようになりました。今では当時の参加人数よりも遥かに多くなっており、業界全体はもちろん、高校教育の中でもeスポーツという存在がしっかりと定着してきたと感じています。
コースを開講した当初は、eスポーツを教える「講師」という職業も今ほどメジャーではなかったため、優秀な人材の確保が大きな課題の一つでした。
——eスポーツでプロになれる生徒さんは決して多くはないのではないかと推測しています。実際のところ、どれくらいの生徒さんがプロ選手になれるものなのでしょうか。
今井 康平さんプロとして活躍できるのは、本当に限られた一握りだけというのが現状です。ただ、学校としてプロの輩出を第一の目的に置いているわけではない、ということは一貫して大切にしているスタンスです。
——非常に厳しい世界なのですね。そうなると、入学希望者の「プロになりたい」という期待と、貴校側の「プロ輩出が第一目的ではない」というスタンスとの間に、ギャップが生まれることはありませんか。
今井 康平さん保護者や生徒のみなさんが当校のeスポーツコースを選ぶ際、プロのプレイヤーをめざして入学される方は少なからずいらっしゃいます。もちろん、過去にはプロ選手になった卒業生もいますし、現在もプロ選手として活躍しながら当校に在籍している生徒もいます。
そのため、事前のお問い合わせの段階で「プロになりたい」という強いご要望をいただいた際にも、「当校はプロ養成所ではなく、ゲームを通じて人を育てる教育を提供しています」という趣旨の説明をきちんとお伝えするようにしています。
SNS社会特有の「失敗できないプレッシャー」にさらされる現代の子どもたち
——現在、中学生や小学生も含め、子どもの教育を取り巻く環境は非常にシビアになっていると感じます。不登校の児童生徒が増加しているというデータもありますが、今の日本の教育にはどのような課題があると感じていらっしゃいますか。
今井 康平さん私たちルネサンス高校グループでは、通信制高校だけでなく、「ルネ中等部」というフリースクールも運営しています。そのため、高校生の入学相談はもちろん、不登校の生徒さんをメインとしたフリースクールを通じて、保護者の方々と関わる機会が非常に多くあります。
現場で感じるのは、コロナ禍の影響や近年のSNSの普及によって、現代の中高生はあらゆる方面から非常に多くのストレスを抱えているということです。
——具体的に、今の子どもたちはどのようなことにプレッシャーを感じているのでしょうか。
今井 康平さんコロナ禍では部活動が制限されるなどの影響がありましたが、現在はSNSによる「常時接続のプレッシャー」が深刻です。常に誰かとつながっている状態の中で、「友達とどうコミュニケーションを取り続ければいいのか」という人間関係の不安が常に付きまといます。
さらに、メッセージを1つ送るにしても「1つの送り間違いで、クラスの中から浮いた存在になってしまうのではないか」という、昔以上の「失敗できない空気感」が厳しくなっている印象を受けます。
——常に周囲の目を気にしながら、一度のミスも許されないような、非常に窮屈な環境に置かれているのですね。
今井 康平さんこうしたことがきっかけで不登校になってしまったり、自分の居場所に安心できなくなったりしたというご相談を非常によくいただきます。これは学校教育の現場というよりも、子どもたちを取り巻く社会環境が大きく変化していることが原因です。
そのため、子どもたちの「居場所を作る」ということ自体が、今の学校にとっての大きな課題になっていると感じます。
居場所が「学校の教室」という1箇所しか存在しない状態は、現状では非常にリスクが高く、対応が難しいと思います。教室以外の場所に、自分の話が合う空間や、避難所・シェルターの役割を果たすような場所がもう1箇所あること。そうした多様な居場所が、今の学校や社会には求められているのではないでしょうか。
——最近よく注目される「サードプレイス(第3の居場所)」の重要性は、まさにそうした背景からきているのだと感じます。
今井 康平さん当校が2006年に開校した頃はフィーチャーフォン(いわゆるガラケー)の時代で、まだネット学習が一般的ではありませんでした。
当時から在籍している職員の話によると、開校当初のルネサンス高校の取り組みに対して、「勉強とは紙に書いて覚えるものだ」といった批判的なご意見も少なくなかったようです。
——それから時代とともに、学習ツールへの認識も大きく変わりましたね。
今井 康平さんSNSの普及を含めて社会状況や子どもたちを取り巻く環境は激変しています。時代は従来型の携帯電話からスマートフォンへと移り変わり、今や誰もが端末を持つ時代になりました。このように変化の激しい時代において、その時々の社会に合わせた最適な教育をフットワーク軽く実践できる点こそが、ルネサンス高校の大きな強みであると考えています。

「課題解決能力」を育む多角的な講義カリキュラム
eスポーツの世界で求められるのは、卓越した操作技術だけではありません。チーム戦での葛藤や海外タイトルの分析を通じて培われる「課題解決能力」が、いかに生徒たちの知性を刺激し、未来の選択肢を増やせるのかを紐解きます。
チーム戦の試行錯誤で身につける、高度なコミュニケーション能力
——続いて、具体的な講義内容について伺います。eスポーツコースでは、ゲームの実技だけでなく、メンタルコミュニケーション、英語、動画編集といった、一般教養や周辺スキルの教育にも力を入れていると伺いました。こうした実技プラスアルファの講義を導入している理由と、それによってどのような力を育てたいと考えているのか、詳しくお聞かせください。
今井 康平さんeスポーツや、これからeスポーツ業界で仕事をしようと考えたとき、実は非常に高い「課題解決能力」が求められます。まだ新しい業界であるため、今後どのような職種が増えていくのか、業界で働いている大人たち自身も模索している段階です。だからこそ、生徒たちには「ゲームへの興味」を起点にしながら、将来この業界で幅広く通用する人材に育ってほしいと考え、多様な講義を展開しています。
その中でも、特に「メンタルコミュニケーション」の講義は、競技そのものの結果にも直結する重要な内容です。
eスポーツは「勝ちか負けか」のどちらかしかなく、非常に結果がシビアに求められる世界です。しかし、中高生という年代は精神的にまだ不安定な時期でもあります。そのため、負けてしまったときにどう気持ちを切り替えるか、どのように前向きに反省し、次へ活かすかという「レジリエンス(精神的な回復力)」を身につける必要があります。
——そうした個人の内面を鍛える講義が、周囲との関わり方やチームのコミュニケーションにはどのように結びついていくのでしょうか。
今井 康平さん集団の中でのコミュニケーションにおいて、つい誰かを非難してしまったり、逆にチーム全体のモチベーションを上げるためにどう言葉をかければいいか分からなかったりする生徒も少なくありません。本来であれば、全日制高校などの集団生活の中で自然と身につけていく領域かもしれませんが、通信制高校の生徒はそうした機会が不足しがちです。
だからこそ、改めて座学の中で普段の生活や練習と照らし合わせながら、コミュニケーションのあり方を再確認していく時間が非常に大切になります。そういう意味では、このメンタルコミュニケーションの講義は、当校における最重要の「教養科目」になっていると感じます。
——お話を伺っていると、ゲームは技術の向上もさることながら、それ以上に精神的なコントロールができないと、なかなか勝ち上がれない世界なのだと感じました。
今井 康平さん100%のパフォーマンスを発揮するためには、常に落ち着いた精神状態で臨まなければなりません。
また、高校生のeスポーツ大会の種目は、実は「チーム戦」が非常に多いという特徴があります。1人で戦う格闘ゲームなどもありますが、主流となっているタイトルの多くは2人ペア、あるいは5人のチーム戦です。そのため、基本的にはどれだけ1人だけが強くても、周囲とうまく連携が取れなければ負けてしまいます。それほどチームの連携やモチベーションの維持が勝敗を左右するのです。
——個人のスキル以上に、チームとして機能するためのコミュニケーションや連帯感が重要になってくるのですね。日々の練習のプロセスにおいても、その連携の差は大きく表れるものですか。
今井 康平さん高校生という時期は、真剣に練習すればするほど実力が伸びる絶好の成長期です。例えば8月に大きな大会があるとした場合、4月から仲間同士で密にコミュニケーションを取りながら全員で練習を重ねてきたチームと、一人ひとりがバラバラに個人練習をしてきたチームとでは、本番での完成度に圧倒的な差が出ます。
つまり、大会という本番の瞬間だけでなく、そこに至るまでの「事前準備の段階」でどうやって良好なコミュニケーションを築いていくかが、実は最大の勝負のポイントになります。それを普段の講義や練習の中から一貫して指導できる点こそが、私たちの大きな強みですね。
「英語=ゲームの共通言語」として、第一歩を踏み出すアプローチ
——カリキュラムの中にある「英語」について伺います。eスポーツの世界において、英語はどのような場面で、どう関連してくるのでしょうか。
今井 康平さん基本的に、eスポーツの世界でも英語が「共通言語」になっているからです。
プロチームに所属した際、チームメイトが必ずしも日本人だけとは限りません。チーム内の共通言語が英語になるケースも非常に多く、英語が話せないと、先ほど申し上げたようなチームの連携(コミュニケーション)が一切取れないという状況に陥ってしまいます。
また、ゲームのアップデート情報などを仕入れる際にも英語が必要です。現在、世界的に人気のゲームは海外製が非常に多いため、最新の公式リリースノートはまず英語で発表されます。もちろん翻訳機能などもありますが、一次情報として英語のまま最速で確認するのが一般的です。そのため、情報収集の段階からある程度の英語力が求められます。
——実戦での連携はもちろん、最新の情報を最速で手に入れるためにも、英語は必要不可欠なのですね。
今井 康平さんルネサンス高校として、これまで英語の学習カリキュラムには何度もチャレンジしてきたのですが、従来のやり方ではなかなか生徒に響きませんでした。
そこで、「もう一度英語のコースを作ろう」となった際に、生徒たちが大好きな「eスポーツ」をツールとして掛け合わせることで、現在の形が生まれました。
——具体的にはどのような講義を行っているのでしょうか。
今井 康平さん当校の英語の講義は、皆さんが想像するような机の上の勉強とは少し違います。
実際によく行われているのは、「すべて英語縛りでeスポーツをみんなでプレイしてみましょう」という講義や、ゲーム内で頻繁に使われる独特の用語(Idiom(慣用句)、Buzzword(流行語))を講師が教え、実際にゲームをしながらその言葉を使ってみる、といった内容です。
生徒からすると、非常に馴染みやすいところからスタートできます。文法を型通りに学ぶことよりも、「今すぐゲームで使える実践的な会話を学ぼう」というアプローチをメインに据えています。
大学進学やグローバルな進路へと繋がる英語学習の転換点
——卒業後に、その英語力を活かした仕事に就く生徒さんも結構いらっしゃるのでしょうか。
今井 康平さん「英語を専門に活かした職業」というよりは、あらゆる仕事のベースとして役立っているという印象です。
当校の職員もよく話していますが、英語に苦手意識がある人は、英語の文字を見た瞬間に拒絶反応を起こしてしまいます。つまり、「英語が分からない」という以前に、教科書すら開いていないケースが非常に多いのです。
そのため、まず英語に対する苦手意識をなくし、興味を持ってもらうことを最優先にしています。少しでも興味を持てれば、世の中には教科書や教材があふれているので、自ら進んで学ぶようになります。しかし、その「最初のページを開く」という第1段階のハードルが非常に高いのです。
——まずは心理的な障壁を取り払うアプローチから、スタートされているのですね。
今井 康平さん今や英語は世界共通の言語になっていますので、特別な「英語を活かした仕事」でなくても、通常の業務の中で英語力が求められる時代です。
例えば、有名なテーマパークの運営会社に就職した卒業生がいます。その卒業生は「英語を活かしたいから」という理由で入社したわけではありませんが、業務の中で海外からのインバウンドのお客様と英語でコミュニケーションを取る機会が日常的にあります。
私たちとしても、「英語を強みとして就職や進学してほしい」と意識していたわけではありませんが、結果として当校のeスポーツコースで学んだ英語が、それぞれの進路先でしっかりと役に立っていると感じています。
——卒業後も、生徒たちの中に大きな財産として残っているのですね。
今井 康平さん生徒たちの中で「英語のチャンネルが開かれた」ということに、何よりも大きな意味があると思っています。

「成功体験」を積み、生徒の主体性を引き出す指導体制
「学校に通えない」という葛藤を抱えて入学した生徒たちが、大好きなゲームをきっかけに劇的な変化を遂げています。過去の挫折をどのように「自分への自信」へと塗り替え、自ら未来を掴み取る主体性を獲得していくのか、その支援の仕組みに迫ります。
オンライン上の「ありがとう」が、現実世界の自己肯定感を支える
——生徒のみなさんについて伺います。貴校のeスポーツコースに在籍する生徒の約半数が、不登校の経験者だと伺いました。このコースでeスポーツを通じて自己肯定感が向上し、再び学校に通えるようになる事例も多いかと思いますが、このように自信が回復していく背景には、どのような理由があるのでしょうか。
今井 康平さん自己肯定感を高める上では、「成功体験をどれだけ積み重ねられるか」が非常に重要なポイントになると考えています。
不登校になり、自宅で過ごしているお子さまに対して、保護者の方はどうしても「社会との接点が途絶えている」という不安を感じてしまいがちです。しかし、実はそのお子さまも、ゲームの世界では豊富な知識や経験を持った輝ける存在であるケースが多々あります。
実際にオンラインで仲間と一緒にプレイする中で、「ありがとう!」と感謝されたり、「助かったよ!」と声をかけられたりしています。このように、誰かに感謝され、人の役に立てたという実感こそが、子どもたちにとっての確固たる成功体験になります。
——オンライン上での他者との繋がりや感謝される経験が、現実世界での自信を取り戻す一歩になるのですね。さらに、その「ゲームのスキル」が学校というリアルな集団生活の中でも活きてくるのでしょうか。
今井 康平さん現在の若い世代にとって、eスポーツは一種の共通言語のようなものなのではないでしょうか。そのため、「ゲームができること」自体が、大きな成功体験や自信に繋がりやすい環境が整っています。
当校の生徒たちは、初対面であっても「何のゲームが好き?」という質問ひとつで、すぐに意気投合して仲良くなります。
——共通の話題があることで、心をひらくきっかけが生まれるのですね。入学当初は心を閉ざしていた生徒が、具体的に変わっていくような印象的なエピソードはありますか。
今井 康平さん最初は、例えばオープンキャンパスや個別の相談会といった場に、保護者の方に引っ張られるようにして教室へ来る生徒もいます。当初は私たち職員とも全く目を合わせられないほど内向的だった子が、半年後には大会のチームリーダーを務めるようになるなど、本当に見違えるほど変わっていく事例があります。
その劇的な変化のきっかけになった理由を本人に聞いてみると、「先輩と一緒にゲームをしてコミュニケーションを取ってみたら、自分が思っていたほど外の世界は怖くなかった」と話してくれました。
それまでは周囲への恐怖心や不安でいっぱいだった子どもたちが、大好きなゲームをきっかけに心を開き、他者と繋がっていけるようになる。そんな生徒たちの素晴らしい成長の瞬間を、私たちは日々の教育現場で毎日のように目の当たりにしています。
——eスポーツコースであれば、当然ながらゲーム好きの生徒が集まっているため、そこを起点として人間関係が非常に深まりやすいのでしょうね。
今井 康平さん確かに全日制の一般的な高校などでは、初対面の相手にいきなり「何のゲームが好き?」と聞くのは、少しハードルが高い行為かもしれません。「もし相手がゲームに全く興味がなかったらどうしよう」という不安が先に立ってしまうからです。
ゲームをきっかけに人間関係のハードルが下がり、そこから自然とコミュニケーションが生まれる。この「好き」を通じて成功体験に繋がりやすい環境を提供できていることこそが、当校の大きな価値だと感じています。
海外研修や後輩指導を通じて、内向的な生徒がリーダーへと進化する
——これまでの教育現場の中で、他にも「この子は本当に劇的に変わった」という印象的なエピソードはありますか。
今井 康平さん最近の事例で、eスポーツコースの生徒限定で実施している学びの旅行 (以下、eスポーツキャンプ)での出来事があります。池袋の拠点から、空港までの長距離を1人で電車移動して、韓国のeスポーツキャンプに参加した生徒がいました。
その研修の中で、韓国の高校や大学の講義を体験するプログラムがあったのですが、ちょうど世界トップクラスのチームに所属するプロ選手が教えに来てくれるタイミングと重なったのです。本人にとって憧れのスター選手からマンツーマンで直接指導を受けるという、かけがえのない経験をしました。実は、その生徒は旅行前、大会の結果などで少し落ち込み気味だったのですが、帰国後は見違えるほどやる気を出して、今も猛練習に取り組んでいます。
保護者の方からすると、そもそも電車の一人旅をすることや、海外へ行くということ自体が驚きだったそうなのですが、帰ってきたあとの本人の劇的なモチベーションの変化にさらに驚かれ、学校へ感謝のお電話やお手紙をくださるほどでした。これも、ゲームやその周辺の環境をきっかけに生徒が大きく変わった素晴らしい事例の一つだと感じています。
——憧れの選手との出会いが、本人の世界や可能性を大きく広げてくれたのですね。そうした実体験を通じて自信を得ることで、内面的にはどのような変化が生まれてくるのでしょうか。
今井 康平さん入学当初の生徒や保護者の方は、「自分が不登校になってしまった」「これからどうしよう」という不安で頭がいっぱいで、自分のことしか考えられない状態であることが少なくありません。しかし、ゲームを通じて自己肯定感が高まり、周囲に友達ができて生活が落ち着いてくると、少しずつ周りを見る心の余裕が生まれてきます。
先ほどご紹介した、中学生を対象としたフリースクール「ルネ中等部」では、当校の高校生たちが講師となって中学生にゲームを教えるという形を取っています。
参加してくれる高校生たちに「なぜ講師をやってみたいと思ったの?」と聞くと、多くの生徒が「自分がルネサンス高校に入学したとき、先輩たちにすごく良くしてもらったから。今度は自分が下の世代に、その恩を還元できるようなことがしたい」と答えてくれるのです。
しかも、これは特定の誰か1人だけではなく、全国どの拠点でも同じように思ってくれる生徒たちが非常に多く、温かい循環が生まれています。
特定の一人ではなく、全生徒のレベルを伸ばす独自のメソッド
——実績の面にも焦点を当てていきたいと思います。貴校は全国優勝19回(2026年5月時点)という実績をお持ちですが、これほどの成果を出すための指導体制にはどのような特徴があるのでしょうか。また、生徒のみなさんはゲームで「勝つこと」にどう向き合っているのかをお聞かせください。
今井 康平さんルネサンス高校の教育の最大の特徴は、「競技(強さの追求)」と「教育」を極めて高いレベルで両立させている点にあります。私たちは、eスポーツコースに在籍する「生徒全員のレベルを底上げすること」を徹底して追求しています。
そのため、19回という優勝回数よりも、私たちが本当に誇りに思っているのは「地方予選の突破数の多さ」です。つまり、選手層の厚さこそが、私たちの最大の強みであり自慢です。
例えば「フォートナイト」や「ヴァロラント」といったタイトルごとのクラスでも、生徒の習熟度に応じて「上級」「初級」といった形で細かくレベル分けを行っています。そして、それぞれのレベルに最適な指導体制と指導者を配置し、すべての生徒が確実にステップアップできるような指導を行っています。
——一部のスター選手だけを育てるのではなく、一人ひとりの個人の成長にフォーカスされているのですね。
今井 康平さんはい。ただ、当然ながら「将来プロをめざしたい」「大会で絶対に勝ちたい」という高い目標を持つ生徒もおりますので、そうしたトップ層のクラスには、プロ経験者やプロチームの現役コーチを指導者として配備しています。
一方で、勝つことだけが全てではありません。先ほど申し上げたように、負けてしまったときの向き合い方を学ぶ「メンタルコミュニケーション」の講義を行ったり、まずは仲間と楽しくコミュニケーションを取ることを目的とした指導が得意な講師を配置したりしています。本当に、各レベル帯の生徒のニーズに合わせた指導体制を構築しているのが特徴です。
私たちはあくまで教育機関としてeスポーツを取り扱っています。そのため、「勝利だけが価値ではない」という前提を日頃から生徒たちに伝えた上で、日々の練習に向き合ってもらっています。
——チーム戦や団体戦で勝つためには、まさに先ほど伺った「課題解決能力」が必要になりますよね。全体のレベルを底上げしなければ、地方予選を数多く突破することは難しいと思います。そこに一番力を入れてらっしゃるのだとよく分かります。
今井 康平さん種目にもよりますが、大阪、横浜、池袋といった大型拠点を筆頭に、全国のどの拠点からも満遍なく実力のあるチームが輩出できています。
例えば「フォートナイト」というタイトルでは、全国大会の決勝に勝ち上がったチームのうち、約半数近くがルネサンス高校グループのチームで占められることもあります。この圧倒的な予選突破率は、他の高校の追随を許さないレベルだと自負しています。特定の拠点だけが強いのではなく、全国的に質の高い教育と指導が均一に行き届いている証拠だと感じています。

安心して一歩を踏み出すための「環境」と「距離」の設計
画面越しでは伝わらない熱量や連帯感を育むために、あえて「通学」というリアルな接点をどうデザインしているのでしょうか。過去の試行錯誤と統計から導き出された「週2日」という絶妙な距離感と、生徒の心を守るための空間づくりの秘密を明かします。
オフラインでの対面交流が育む、画面越しでは伝わらない感情と連帯感
——ルネサンス高校のeスポーツコースでは、オプションとして週2日の通学スタイルが用意されていると伺いました。全員が通学を選択しているわけではないと思いますが、この「リアルに通学する環境」を取り入れることで、生徒のみなさんには具体的にどのような良い影響があるのでしょうか。
今井 康平さん前提として、通常のルネサンス高校の仕組みは、オンラインで自分のペースで学習できる点が大きなメリットです。自分の時間を大切にできるからこそ、当校を選んでくださる方が非常に多いという背景があります。
その上で、私たちはeスポーツコースにおける「オフライン(対面)」の価値に、非常に強いこだわりを持っています。
何より大きいのは、ゲームで勝ったときの喜びや負けたときの悔しさを、お互いの表情を見ながらリアルタイムで共有できる点です。友達を作る上ではオンラインでの繋がりも大事ですが、実際に同じ現場に足を運び、顔を合わせてプレイするオフラインならではの良さや、育まれる連帯感は確実に存在します。
——画面越しではなく、同じ空間で感情を共有することが生徒たちの絆を深めるのですね。
今井 康平さんただ、先ほど申し上げたように当校には不登校を経験した生徒が非常に多く在籍しています。「学校に行きたい、行かなければいけないのは分かっているけれど、なかなか一歩が踏み出せない」という葛藤を抱えている生徒がとても多いのが現実です。
そのため、私たちは指導体制を徹底して構築するのはもちろんのこと、それ以上に「生徒が安心して通える場所にする」という環境づくりに最も注力しています。
——具体的には、どのような工夫をされているのでしょうか。
今井 康平さん教室のほかにも、生徒がつらいと感じた時に避難できるようなシェルター(相談室・休憩室)的な部屋を用意したり、ゲームの練習に疲れたときに気分を変えて思い思いに過ごしたり、読書ができる場所を設けたりしています。そうした多様なスペースを準備しながら、まずは「週2日」から無理なく通える環境を整えています。週2日という通学日数は、一見すると少なく感じる方もいるかもしれませんが、生徒たちの心理的なハードルを下げる意味では、非常にライトで通いやすい絶妙な距離感だと思います。
試行錯誤の末に辿り着いた、無理なく社会復帰をめざせる「週2日通学」のバランス
——「週2日」という日数にはどのような意図があるのでしょうか。
今井 康平さん実は、この「週2日」という設定に辿り着くまでには、開講前の準備段階でさまざまなシミュレーションを重ねてきました。「もし週5日だったら負担が大きすぎないか」「週1日では物足りないか」「週3日がベストか」と、あらゆる通学パターンを想定して検討を重ねてきたのです。
——正式にスタートする前に、あらゆる日数のパターンを検討・調整されたのですね。 週5日や週3日の通学だと、生徒たちにとっては負担が大きかったということでしょうか。
今井 康平さん不登校の経験が長い生徒たちは、「高校への入学を機に自分を変えたい」「ここをリスタートの場所にして、もう一度頑張りたい」という強い向上心を持って入学してきます。
しかし、不登校の期間が長かったがゆえに、自分が無理なく頑張れる範囲がどこまでなのか、その「線引き」が自分自身でうまくできない子が非常に多いのです。そのため、自分のキャパシティ以上に必要以上に頑張りすぎてしまう傾向があります。
そうなると、入学直後の4月は張り切って通えても、ゴールデンウィークが明け、5月末頃になって張り詰めていた緊張の糸が切れると、一気に燃え尽きてしまいます。そして、また不登校に逆戻りしてしまうというケースが、過去の経験上、多々見られました。
——生徒の持続力や心理的バランスを考慮した結果、週2日という日数が最適だということですね。
今井 康平さんもし当校側が基準を週4日などに設定してしまうと、それに合わせて通えなかった生徒にとって、それがまた新たな「失敗体験」になってしまうリスクがあります。
私たちは生徒たちに、自己肯定感を高め、成功体験を積み重ねてほしいという強い思いを持っています。そのため、学校側から提示する通学日数を多く設定することには、非常に慎重でありたいと考えています。
——あくまで生徒が無理なく達成できる基準を設けているのですね。では、週2日以外の日、生徒たちはどのように過ごしているのでしょうか。
今井 康平さん実は、週3日や週4日、あるいは週5日で教室に遊びに来ている生徒はたくさんいます。
当校では、自分の指定された週2日の通学日以外であっても、講義が終わったあと教室のスケジュールが空いている日であれば、夕方の時間帯を練習の場として活用できるようにしています。 その時間を活用して、自主的に毎日のように通う生徒は珍しくありません。
また、先ほどお話しした中学生向けのフリースクール「ルネ中等部」の講師として、指導を行うために通う生徒もいます。彼らは、私たち職員と同じくらい長い時間を教室で過ごしています。
——自発的に学校へ来たくなる環境が作られているのですね。それにしても、高校生のうちから講師として活動しているというのは非常に驚きです。
今井 康平さん高校生の段階で「eスポーツの講師として、中学生を指導した」という確かなキャリアと実績を積んだ状態で、社会や次のステップへと卒業していく。これは、他校では決してできない、ルネサンス高校ならではの貴重な経験の一つだと確信しています。

3年間の「真剣な青春」が、未来を切り拓く強みに
「ゲームばかりしていて将来は大丈夫なのか」という保護者の不安を、同校は確かな進路実績で希望へと変えています。巨大な市場が提供する多様なキャリアパスや、入試を有利に進める自己PRの裏側、そして一生の財産となる「真剣な青春」の価値を伝えます。
プレイヤーだけではない、巨大なゲーム市場が提供する多様なキャリアパス
——実技だけでなく、大会運営や実況解説なども含めて幅広く学べるということですが、これらは生徒のみなさんにどのような好影響を与えるのでしょうか。
今井 康平さんeスポーツやゲーム業界全般について、多くの保護者の方が「うちの子がeスポーツコースに行きたいと言い出しまして……」と、非常に不安そうな表情で相談に来られます。
その不安を紐解いていくと、原因は「ゲームを学んだ先に、結局どのような職業に就けるのか」「そもそもeスポーツ業界にはどんな仕事があるのか」が明確に分からない点にあります。
そこで私たちが最初にお伝えするのが、ゲーム業界の「市場規模の大きさ」と「裾野の広さ」です。実は世界の市場規模で見ると、ゲーム業界は「音楽産業」と「映画産業」の市場規模を足して、さらに2倍した数値を誇るほどの巨大市場です。それほど広大な業界だからこそ、プレイヤー以外にも多様なキャリアが存在します。
——想像以上の巨大市場ですね。それだけ市場が大きいということは、具体的にプレイヤー以外にはどのような仕事の選択肢があるのでしょうか。
今井 康平さん例えば、キャラクタービジネスもゲーム業界の仕事ですし、生徒たちが大好きなeスポーツに関しても、プレイヤーとして大会に出るだけでなく「大会を企画・運営する側」の仕事もあります。このように、まずは生徒や保護者のみなさんに「世の中にはこんなに多様な仕事があるんだ」と視野を広げてもらうことが、私たちの大きなミッションの一つです。
——そうした業界の広がりを理解した上で、学校では実際にどのような講義を用意されているのですか。
今井 康平さん当校では、業界の仕組みを学ぶだけでなく、実際の業務で役立つ動画編集の講義なども行っています。生徒たちにとっては、自分の「好き」の延長線上でさまざまな勉強ができるため、非常にモチベーション高く取り組めます。いわば、専門学校の1回目の講義で扱うような業界の全体像を、高校生のうちに先取りして学べる環境です。
ただ、私たちの目的は「高校3年間で業界の専門知識をすべて完璧に身につけさせること」ではありません。「業界にはどのような選択肢があるのかを、まずは広く知ってもらう」というニュアンスの方が正確です。さらに専門的な技術を深掘りしたい場合は、卒業後に大学や専門学校へ進学するという道があります。
「講義が専門的すぎて、うちの子はついていけないのではないか」と心配される保護者の方もいらっしゃいますが、レベル別に対応していますのでご安心ください。
——先ほどお話しいただいたように、ゲーム業界の裾野の広さを示すことでご理解はいただけると思うのですが、それでも「やはり普通の会社に就職してほしい」と望む保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今井 康平さん大前提として、私たちには「通信制高校の普通科」であるというベースがあります。
eスポーツとの付き合い方は、本当に人それぞれです。将来的にeスポーツを仕事にしたいという生徒も当然いますし、高校3年間でeスポーツにはすっぱりと区切りをつけ、卒業後は全く異なる分野の一般的な大学に進学する生徒の方が、割合としてはむしろ多いのが現状です。
そのため、「当校のeスポーツコースに入学すると、将来はeスポーツの道しか残されていない」というわけでは決してありません。その点は誤解のないよう、事前に入念な説明を行い、しっかりとご納得いただいた上でご入学いただいています。
——そうした保護者の方々の懸念には、ゲームに対する「世代間の感覚の違い」が大きく影響しているように思えます。そのギャップを埋めるための説明には、やはり時間を要するものでしょうか。
今井 康平さん実際、学校に足を運んでいただき、直接お話をさせていただければ多くの保護者の方に深くご理解いただけます。
ただ、お子さまが「eスポーツコースに行きたい」と言った段階で、保護者の方から反対されて選択肢自体が断たれてしまうケースが少なくないようです。
だからこそ、私たちは当校の取り組みだけでなく、「高校eスポーツ」という分野全体が、もっとポジティブで未来のあるものとして社会に認知されるよう、魅力を発信し続けていかなければならないと感じています。今後も、業界全体にとってポジティブなニュースをたくさん届けられるよう、誠実に教育活動へ励んでまいりたいと思います。
大会実績と「課題解決のプロセス」で総合型選抜を勝ち抜く
——卒業後の進路について伺います。当校からは大学進学や海外留学をする生徒さんもいらっしゃると伺いました。ルネサンス高校のeスポーツコースで過ごした日々や実績が、大学入試などの場でどのように評価されているのか、具体的な背景をお聞かせください。
今井 康平さん入試の現状についてお話しいたします。文部科学省が公表している「令和7年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」によると、現在の日本の私立大学は、約6割が推薦入試(総合型選抜や学校推薦型選抜など)経由での進学者で占められています。そうした入試トレンドの中で、当校の生徒たちも総合型選抜などを活用して大学合格を勝ち取るケースが非常に多くなっています。
※出典:「令和7年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」(文部科学省) (https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2020/1414952_00009.html)
実は、高校のeスポーツというジャンルは、大学入試における自己PRや面接において、高く評価される要素を多く含んでいます。
まず、eスポーツは夏と冬に大きな全国大会が開催されます。他のメジャースポーツに比べると全体の競技人口がまだそれほど過密ではなく、部活動として正式に用意されている高校も全国的にまだ多くありません。そのため、大会に出場してたとえ初戦で敗退したとしても、「関東ベスト16」や「地方ブロック上位」といった、具体的な実績や数字が残るのです。
こうした目に見える成果は、生徒にとっても「少し頑張ればさらに数字を伸ばせるぞ」という確かな自信に繋がっています。
——まだ黎明期だからこそ、具体的な実績として書類に書きやすいというメリットがあるのですね。
今井 康平さんさらに強力なのが、大会に至るまでの「プロセス」です。生徒たちは普段からメンタルコミュニケーションの講義を受けながら、チームのマネジメントを行い、課題を解決して大会に臨んでいます。この経験自体が、「自分が3年間のeスポーツ競技を通じてどう成長してきたか」を面接官に語るための、最高の自己PR材料になります。
実際の入試では、大会の成績に加えて、日々の練習内容や課題克服のプロセスを論理的にまとめ、大学や専門学校の面接・小論文でアピールする生徒が非常に多いです。
——生徒さんたちは、具体的にどのようなエピソードを強みとして語るのでしょうか。
今井 康平さん例えば、「チームリーダーとして多様なメンバーをどうまとめたか」という話はもちろん、「大会期間中に自ら配信企画を立ち上げ、SNSを運営してこれだけのリーチ数を獲得した」といった、ビジネスさながらの実績をアピールする生徒もいます。こうした自発的な取り組みは、大学の面接官からも非常に高く評価されています。
自分の大好きな「eスポーツ」がベースにあるからこそ、生徒たちは誇張することなく、自分の言葉でありのままの強みを堂々と発表できるのだと思います。
——eスポーツの大会という1つのテーマであっても、そこに至るまでの「中身の話し方(切り口)」次第で、いくらでも強力な戦い方ができるのですね。
今井 康平さんまさに総合型選抜とは抜群に相性が良いと感じています。
「ゲームばかり」の不安を成長の確信へ。保護者にこそ見てほしい、子どもたちの真剣な眼差し
——最後の質問になります。ゲームに対してネガティブなイメージを持っている保護者の方々に向けて、どのようなことを伝えたいですか。
今井 康平さん保護者の方々に、「ぜひ、お子さまがゲームに向き合っている『本当の姿』を見てあげてほしい」とお伝えしたいです。
「ゲーム」という言葉だけで一括りにして判断せず、子どもたちがどれほどの覚悟と気持ちで取り組んでいるかを見てあげてほしいのです。本気でプレイするeスポーツは、脳をフル回転させるため、他のスポーツと同じくらい体力を消費します。
——実際に生徒たちが本気で取り組んでいる現場では、どのようなドラマがあるのでしょうか。
今井 康平さん当校には象徴的なエピソードがあります。当校の1期生たちが初めて全国ベスト16を突破し、いよいよベスト8進出をかけた大一番を前にしたとき、1人の生徒がプレッシャーのあまり「もう無理だ、これ以上戦えない」と階段でうずくまってしまいました。そのとき、チームメイトが「大丈夫、俺たちが一緒にいるよ」「負けたって誰も責めないよ。まずは楽しんで頑張ってみよう」と声をかけ、彼を支えたのです。
このように、同じ目標に向かって仲間と真剣に努力する経験そのものに価値があります。私たちは、そうした生徒たちの素晴らしい姿を認め、社会全体のイメージを変えていけるよう、これからも尽力していきます。
——娯楽としてではなく真剣に向き合うからこそ、人間的にも大きく成長できるのですね。
今井 康平さん現代の子どもたちにとってゲームは、重要なコミュニケーションツールであり、自己表現の場として確固たる地位を得ています。大人の世代における部活動や趣味が、今の時代はゲームに置き換わっているのだと感じます。
そのため、お子さまが「ゲームをやりたい」と言ったとき、それを禁止するのではなく、いかにゲームと向き合い、折り合い(コントロール)をつけていくかが重要です。
——正しい向き合い方を学ぶということですね。高校生のうちにそうした自己管理の力を身につけることは、将来に向けてどのような意味を持ってくるのでしょうか。
今井 康平さんこれから先の人生では、大学入試や就職活動など、自分のやりたいことを一時的に我慢して、勉強や仕事に集中しなければならない場面が必ず訪れます。その時々に「遊びとどう向き合い、どう自分の欲求をコントロールするか」という人生の土台となる経験を、高校生のうちに身につけてほしいのです。
また、私は生徒たちに、高校の3年間でeスポーツを「やり尽くして、一度燃え尽きてほしい」とも思っています。本気で挑戦して、仲間と一緒に限界までやりきれば、卒業後は「ここからは趣味として向き合おう」「次は学業や仕事にこの熱量を注ごう」と、次のステップへ進むことができます。
「大好きだからこそ、この3年間はゲームで本気で頑張る」という経験は、子どもたちにとって一生モノの財産になります。私たちはその熱量を否定せず、大学進学や就職という次の未来へ繋げるための投資を全力で行っています。
——そうした3年間の真剣な取り組みは、卒業後の進路にどのように繋がっていくのでしょうか。
今井 康平さん嬉しいことに、私たちが数年間取り組んできたこの教育は、「学習効果(結果)」として表れ始めています。
当校のeスポーツコースを卒業した世代が、いよいよ大学や専門学校を卒業して社会人になる年代を迎えました。無事に専門学校や大学を卒業し、それぞれの道で一歩を踏み出している卒業生が出てきています。次の世代の生徒たちも、先輩たちの背中を追って安心して進路へ進んでほしいと願っています。
——eスポーツを通じて育まれた社会性や熱量が、次のステップでも確実に活きているのですね。これまでのeスポーツコースの歩みを振り返って、指導者として手応えや喜びを感じる瞬間はありますか。
今井 康平さん実は、当校の初期の卒業生たちが、今度は「職員」としてルネサンス高校に戻ってきてくれているのです。現在は名古屋、大阪、博多などの拠点で、かつての生徒たちが今度は指導側・運営側として活躍しています。
eスポーツコースの開講当初は「講師不足」に頭を悩ませていたのですが、私たちの教育を受けた卒業生たちが「今度は自分たちが後輩を育てたい」「先生たちと一緒に働きたい」と、素晴らしいサイクルを作ってくれています。卒業後もeスポーツという絆で結ばれた業界の仲間として、様々な形で生徒たちとつながり続け、共にこのカルチャーを盛り上げていけることが私の一番の楽しみです。

「好き」の熱量を将来へ繋ぐ。一人ひとりの可能性を広げる学びの場
今回のインタビューで印象的だったのは、プロになれるのはごく一部という厳しい現実を伝えつつ、その試行錯誤の過程を「社会で通用する力」へと昇華させる姿勢です。
チーム戦で培われる高度なコミュニケーション能力やツールとしての英語学習。それらはスキル習得に留まらず、不登校を経験した生徒たちが自信を取り戻し、大学進学や就職といった未来へ踏み出すための「課題解決能力」となっていました。「好き」を原動力に成長していく、eスポーツが持つ教育的価値の真髄に触れた取材でした。
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