うちの子、外国人のお友達にどう接する?〜子育ての常識をアップデート!多様性を自然に受け入れる心を育む教育法

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 今、日本の幼稚園・保育所や学校では、外国につながる子どもたちが当たり前のようにクラスにいます。少子化が進む一方で、グローバル化の波は子どもたちの世界に深く浸透しているのです。

しかし、幼い子どもたちが抱く「肌の色の違いはお風呂に入っていないから?」「障害のある人は悪いことをしたから?」といった素朴な疑問や、時に「前偏見(幼児独自の偏見)」は、大人にとってどう答えるべきか悩ましいもの。私たちは、この多様な時代を生きる子どもたちに、どのような心を育むべきなのでしょうか?

今回は、異文化間教育を研究されている聖学院大学 人文学部子ども教育学科佐藤千瀬准教授にお話を伺いました。子どもの健やかな発達と保護者の心の安定を両立させながら、家庭で実践できる具体的なヒントを探ります。

目次

現代の子どもたちを取り巻く「多様性」の現状と課題

現代の子どもたちは、保護者世代よりもはるかに速いスピードでグローバル化の波を受けています。子どもたちの多様性への認識は、大人の無意識の反応によって大きく左右されると、佐藤准教授は指摘します。

日本の子ども社会で進むグローバル化の実態

──現在の日本社会における課題はどのような点にあるとお考えでしょうか。

佐藤千瀬准教授

私の研究と関連する点では、「多様性の受容」が挙げられます。現在、グローバル化がよく言われていますが、実は子どもたちの間でのグローバル化が非常に進んでいます。

例えば、幼稚園や保育所に通う0歳から5歳くらいのお子さんの年齢層ですと、外国籍のお子さんだけでも昨年1年間で1万人近く増えているという状況です。この増加のスピードは非常に速く、過去最高を更新し続けています。

また、小学校、中学校、高校においても、毎年公表される「学校基本調査」(文部科学省)の報告によると、やはり外国籍のお子さんが非常に増えています。

──なるほど、統計にもはっきりと表れているのですね。

佐藤千瀬准教授

留意すべき点があります。日本の統計は国籍を基準にしており、「外国人」とは外国籍のお子さんしか集計していません。そのため、例えばお母様が日本人で、お父様が外国の方であるなど、日本と外国の国籍を持つお子さんの場合は、この統計の「外国人」には含まれていないのです。つまり、外国につながるお子さんの実数は、統計に表れている数字よりも、はるかに多いのが現状です

──実際の数は、統計上の数字よりもさらに多いということですね。

佐藤千瀬准教授

その通りです。日本全体で少子化が進む一方で、外国につながるお子さんの割合は増加しています。そのため、現在の保護者の皆さんが子どもだった頃と比較して、子どもたちのクラスに外国につながるお子さんがいるという状況が、ごく当たり前となる時代になってきていると考えられます

幼い子が示す「前偏見」とは? 幼児独自の偏見が生まれるメカニズム

──先生がご研究されている「前偏見(ぜんへんけん)」についてお伺いします。これは具体的にどのような現象なのでしょうか。

佐藤千瀬准教授

「前偏見」とは、本当の偏見につながる可能性のある、幼い子どもの初期の考え方です。おおよそ2歳半頃から見られるようになると言われています。

例えば、4歳くらいのお子さんが、クラスにいる肌の色の違う子を見て、「お風呂に入っていないから肌が褐色なんだ」、さらには「だから臭いんだ」と考えてしまうことがあります。あるいは、体に障がいのある方を見て、「あの人は悪いことをしたから、あのような体になったんだ」と、子どもなりに解釈してしまうケースです。

これらは事実とは異なり、子どもの発達段階における独特の理解の仕方なのですが、他者との「違い」をマイナスに捉えてしまっている状態です。これが「前偏見」と呼ばれ、正しく修正されないままだと、本当の偏見に発展してしまう可能性があります

 大人の「無意識の反応」が子どもの認識に与える影響

──2歳頃だとまだ他者と直接深く関わる機会が少ないと思いますが、どのようにして生まれるのでしょうか。

佐藤千瀬准教授

まず、現在では保育所などのクラスに、外国につながるお子さんがいることは珍しくなく、そうした日常の関わりの中で子ども自身が違いに気づき、何かを感じることがあります。

──違いに気が付くのは、何歳頃からでしょうか。

佐藤千瀬准教授

もっと早い段階、例えば0歳や1歳の赤ちゃんの頃にまで遡ることもあります。お母さんに抱っこされている時に、向こうから外見の異なる人が歩いてきたとします。その時、お母さんが無意識にぎゅっと強く抱きしめるなど、体に力が入ってしまうことがあります。子どもは、そうした大人の些細な反応を敏感に感じ取り、「自分とは違う人」とお母さんの反応とを結びつけて学習していくと言われています

ですから、直接話をした経験がなくても、周りの大人の反応から「違い」を何か怖いものだと捉えてしまうことがあるのです。

子どもの「違いへの気づき」にどう向き合うか?

子どもたちが多様な違いに気づき始めた時、大人の対応がその後の認識に大きな影響を与えます。具体的な対話術と環境作りについて、お伺いしました。

大人が絶対にしてはいけないNG対応――「否定」と「無視」が招く負の感情

──幼い子どもたちが「違い」に気づいた際に、大人は具体的にどのように声をかけ、関わってあげるのがより良いのでしょうか。

佐藤千瀬准教授

子どもの疑問に対して最も良くない対応は、無視をしたり、「なんでだろうね」と軽く流してしまったりすることです。また、「そんなことを言ってはいけません」などと頭ごなしに否定してしまうことも避けるべきです。それは、子どもが純粋な好奇心から抱いた疑問そのものを否定することにつながります。

大人がその話題に触れないでいると、子どもは「それは危険なことなんだ」「大人が不快に思うことなんだ」と解釈し、単なる「違い」だったものがネガティブな意味合いを帯びてしまうきっかけになります

──では、どのように対応するのが望ましいのでしょうか。

佐藤千瀬准教授

むしろ、大人も知らないことはたくさんあるはずです。もし子どもの疑問にすぐに答えられなければ、「どうしてだろうね?」と一緒に調べてみるのが良いでしょう。また、年齢にもよりますが、外見の違いなどについてであれば、絵本などを使いながら一緒に考えてみるのも非常に有効な方法です。

──なるほど。昔から幼稚園や保育所によく置かれている、世界の様々な人々が描かれた絵本なども活用できそうですね。

佐藤千瀬准教授

そのような絵本はとても良い教材です。様々な姿や形の人々が描かれている絵本を使い、「世の中には色々な人がいるんだね」ということを親子で一緒に確認していくことができます。

子どもの疑問に寄り添う対話術

──異文化理解に関する本を家庭で購入するというのは、意識の高い親御さんでなければ、なかなかハードルが高いかもしれません。もっと手軽に活用できる身近な題材もあるのでしょうか。

佐藤千瀬准教授

例えば動画などもありますが、教材は年齢に応じて使い分けることが重要です。以前、様々な教材を比較研究したのですが、2〜4歳くらいの小さいお子さんの場合は、動画よりも絵本への関心の方が高いという結果が出ました。

──それはなぜでしょうか。

佐藤千瀬准教授

絵本は自分のペースでページをめくり、じっくり見られる利点があります。一方、動画は興味を持ってもすぐに場面が流れていってしまいます。ですから、年齢に応じた提供の仕方を考えるのが良いでしょう。もう少し大きくなれば、動画や書籍なども有効なツールになると思います。

──確かに、絵本にはページをめくる「間」があり、その間に子どもが指をさして質問するなど、対話が生まれやすいですね。

佐藤千瀬准教授

もし動画を見せるのであれば、コンテンツの選び方が大切です。インターネットを使える保護者の方も多いと思いますが、お勧めしたいのは、海外の子どもたちの「本当の日常」を映した映像です。特別なお祭りや珍しい食べ物といった非日常ではなく、普段の子どもたちが1日をどう過ごしているかを紹介するような内容です。そうした映像の方が、子どもたちは自分との共通点や違いに気づきやすくなります。

家庭で育む「異文化理解」の環境づくり

子どもが多様な文化や違いに触れることは、他者を理解し、豊かな心を育む上で不可欠です。家庭で異文化理解を促すためには、どのような教材を選び、どのように活用すれば良いのでしょうか?

「多様性」を表現する遊び道具の活用例

──日常生活の中で異文化への気づきや他者理解の姿勢を育むためには、具体的にどのような題材や環境作りが効果的でしょうか。

佐藤千瀬准教授

まず小さいお子さん向けには、やはり絵本が有効です。ご家庭に置いたり、図書館で一緒に借りたりする際に、多様性をテーマにした作品を選んでみてはいかがでしょうか。現在では、そうしたテーマの絵本が数多く出版されています。

──特別な海外旅行や留学の機会がなくても、写真の多い絵本なら視覚的にも分かりやすく、世界に触れることができますね。

佐藤千瀬准教授

おもちゃ選びも一つの方法です。例えばお人形で遊ぶ際に、どのような人形を選ぶか、という視点を持つことができます。最近では着せ替え人形などが多様なモデルを展開しており、様々な肌の色や体型の人形があります。アジア系や、ダウン症の特徴を取り入れた人形、車椅子に乗った人形など、非常に多くの種類が日本でも販売されています。

購入する・しないに関わらず、お店などで遊ぶ機会があった時に、自分と似ているものや好きなものだけでなく、あえて違うタイプの人形も手に取ってみる。そうした機会を作ってあげられると良いと思います。

子どもの興味から広がる異文化理解

佐藤千瀬准教授

世界地図や地球儀、あるいは図鑑などを、いつでも手に取れる場所に置いておくこともおすすめです。子どもたちはテレビやインターネットを通じて、日常的に海外のニュースに触れる機会があります。スポーツのワールドカップやオリンピック、万博など、様々な国の人が登場する映像を見ることも多いでしょう。その時に「この国はどこにあるんだろう?」と疑問に思った際、すぐに調べられる環境があると、そこから興味・関心がぐっと深まっていくでしょう。

──シンプルな絵本などでも、スポーツの試合で国旗が映った時などに「これはどこの国だろう?」と親子で一緒に調べるきっかけになりますね。好きなことを入り口に興味を広げられる、良い方法だと感じます。

佐藤千瀬准教授

大げさなものでなく、世界地図を印刷して壁に貼っておくだけでも十分効果的だと思います。

──子どもが興味を持ったその瞬間に、すぐに調べられる環境がポイントなのですね。

佐藤千瀬准教授

特に小さいお子さんは自分でスマートフォンなどを使って調べるのが難しいですから、すぐに手に取って調べられるアナログなツールを用意してあげることが大切です。

佐藤准教授が語る「異文化間教育」の原体験と未来 

異文化間教育の研究者である佐藤准教授は、その研究の原点に自身の幼少期の経験と、大きな転機となったアメリカ留学での出会いがあったと語ります。いかにして、その興味が学問へと深化していったのか、そのルーツを探ります。

幼少期の経験とアメリカ留学が佐藤准教授の研究に繋がったきっかけ

──先生が現在の研究を志すことになった「原体験」や、きっかけについてお聞かせいただけますでしょうか。

佐藤千瀬准教授

原体験の一つは、子どもの頃の経験にあります。小学生の時、クラスに外国につながる友人がいました。例えば、イスラム教徒の友人は、毎日先生にその日の給食の献立を確認し、豚肉が入っていると食べられないといったことがありました。このように、価値観の違いに日々触れていたことが、まず一つとして挙げられます。

──ご自身の子ども時代から、多様性のある環境にいらっしゃったのですね。

佐藤千瀬准教授

学問として本格的に興味を持ったのは、大学2年生の時にアメリカへ1年間留学したことがきっかけです。留学中、シリコンバレーの幼稚園と小学校で1ヶ月間ボランティアをしました。その地域は世界中から人々が集まる場所で、どの子がアメリカで生まれ育ったのか、どの子が最近移住してきたのか、見た目だけでは全く分かりません。そのような多様な環境で、子どもたちがお互いを自然に尊重し合っている姿を目の当たりにし、「子どもたちはすごい可能性を秘めている」と強く感じました

──そのアメリカでの体験が、どのように現在の研究へ繋がっていったのでしょうか。

佐藤千瀬准教授

アメリカでの経験から、大人とは違う子どもたちの多様性の受け入れ方に感銘を受け、同時に「それでは、日本にいる外国につながる子どもたちは、どのような状況なのだろうか」という疑問が湧きました。そこで日本に帰国後、卒業研究で日本の幼稚園に入り、外国につながるお子さんたちが複数人在籍するクラスで、実際にどのように過ごしているのかを調査しました。それが現在まで続く研究の出発点となっています。

──大人が違いを意識してしまう場面でも、子どもたちはまっすぐに関わっていくのですね。

佐藤千瀬准教授

そうですね。シリコンバレーの幼稚園で印象的な出来事がありました。現地の保育者は比較的自由にアクセサリーを身につけていたので、私もネイティブアメリカンのアクセサリーをつけていたことがありました。すると、一人の子どもが「それ、なあに?」と聞いてきたので、「ネイティブアメリカンのアクセサリーだよ」と答えました。すると、「どんな意味があるの?」と聞かれ、私が答えに窮していると、その子は「ちょっと待ってて!」と言って、クラスにいたネイティブアメリカンのルーツを持つ友人を連れてきてくれたのです。そして、その友人に「これ、どんな意味があるの?」と尋ね、友人が「これはね…」と説明を始めてくれました。

子どもたちが、誰がどのような背景を持っているかを自然に理解し、それを知識として尊重し合っている姿に、本当に感心しました。

保育現場で目撃した、子どもたちの驚くべき「違いの受容」エピソード

──これまでの研究フィールドワークで、特に印象的だった保育現場でのエピソードがあれば教えていただけますでしょうか。

佐藤千瀬准教授

印象的なエピソードはたくさんありますが、一つ挙げると、ある幼稚園での出来事です。4歳のインドネシア人の女の子が、全く日本語が分からない状態で入園してきました。彼女は初日に張り詰めているような状態で、翌日には大泣きをして、先生でも対応が難しく、保護者の方にお迎えに来ていただいたこともありました。先生と手をつなぐことも頑なに拒んでいました。

──それは大変な状況でしたね。

佐藤千瀬准教授

しかし、そんな彼女が唯一心を許し、手をつないで外へ行ったりトイレに行ったりできる、一人の日本人の女の子がいました。保育者の方が「なぜだろう」と不思議に思ってその日本人の女の子の様子をよく見ていると、彼女がポケットに小さなメモ帳を入れていることに気づきました。

そこには、インドネシア語の「ありがとう」や「あそぼう」といった言葉が書かれていたのです。そのメモを見ながら、二人はコミュニケーションを取っていました。先生が日本人の女の子にどうしたのか尋ねると、(インドネシアから来た)お友達ができたことをお母さんに話したら、お母さんがインターネットで調べて作ってくれたんだよー、と答えたそうです。そのお話を聞いた時は、本当に素晴らしいと感じました。

──その日本人の女の子の保護者の方は、ご自身のお子さんから話を聞いて、相手のお子さんが置かれている状況を想像し、行動されたのですね。

佐藤千瀬准教授

その小さなメモ帳がきっかけとなり、クラス全体に素晴らしい広がりが生まれました。

緊張していたインドネシア人の女の子と、日本人の女の子が仲良くなった様子を見て、先生も動き出します。様々なインドネシア語の挨拶をひらがなで書き出し、保育室に貼り出したのです。例えば、「おはよう すらまっぱぎ」といった具合です。すると、それを見た他の子どもたちも興味を持ち、その子にインドネシア語で話しかけるようになりました。

こうしたことは他の園でも見られ、子どもが突然、他の国の言葉で外国につながる子どもに挨拶するので理由を尋ねると、「お母さんが教えてくれた」と答えるケースがあります。

日本の教育における「当たり前」を問い直す視点――国際社会での比較

──「異文化間教育」という視点は、今後の日本の教育においてどのような役割を果たしていくとお考えでしょうか。

佐藤千瀬准教授

それは、「当たり前を問い直す」ことだと考えています。例えば、日本の小中学校では児童生徒が掃除をすることが当たり前ですが、国によってはそれは教育活動の一環とは見なされません。社会階級の意識が強い国では、掃除は特定の身分の人が行う仕事だと考えられている場合もあります。そのため、外国から来たお子さんが学校で掃除をしたと聞き、「自分の子どもが侮辱された」と感じた保護者からクレームの電話が入る、というケースも実際にあります。

──なるほど。まさかそんな違いがあるとは知らずに、後から問題に気づくということがあるのですね。「日本ではこれを教育の一環として行っています」という事前の説明が重要になりそうです。

佐藤千瀬准教授

その通りです。例えば食事のマナーもそうです。日本ではお茶碗を持って食べるのが良いとされますが、クラスにいる韓国のお友達は食器を持ち上げません。それは行儀が悪いのではなく、食器を持ち上げない方がマナーが良いとされる文化だからです。そうした違いを知ることで、家庭での会話も変わってくるはずです。

──伝え方の工夫が必要ですね。「日本ではこういう食べ方をするんだよ。でも、国によっては違うマナーがあったりするんだよ」というように、違いを併記する形が良いのかもしれません。

佐藤千瀬准教授

おっしゃる通りです。異文化間教育が進むと、「これが唯一の正しいやり方だ」という断定的な言い方ではなく、「世界には様々な文化があり、これはその中の一つの方法なんだよ」という相対的な見方に変わっていくのだと思います

──「掃除」の例一つをとっても、「日本ではなぜ皆で掃除をするのだろう?」と、協力や感謝といった教育的な意味を大人が改めて考えるきっかけになりますね。

佐藤千瀬准教授

一つの違いを知ることが、「じゃあ、他の国はどうなんだろう?」「日本と同じところはあるのかな?」といったように、子どもたちの興味を広げるきっかけになります。子どもが自分で考え、発見していく探究心につながるのではないでしょうか

保護者の「心の安定」が子どもの成長を支える

子育ては喜びも多い一方で、戸惑いや悩みも尽きないものです。特に初めての育児では、「完璧な親」であろうと気負いすぎてしまう保護者も少なくありません。しかし、佐藤准教授は、子育ては親もまた成長する旅であり、完璧を目指さなくても大丈夫だと語ります。

完璧な親を目指さなくて大丈夫子育ては親も共に成長する旅

──子どもの健やかな発達のためには、保護者自身の心の安定が大切になるかと思います。しかし、誰もが初めての子育てなどで、常に安定しているのは難しいのではないでしょうか。

佐藤千瀬准教授

おっしゃる通りです。最初から「すべて完璧にやらなくては」と思い詰めると、大きなストレスになってしまいます。保護者もまた、子どもと一緒に親として成長している途中なのだ、というくらいの気持ちで、少し余裕を持つことが大切だと思います

──佐藤准教授ご自身が、実際に悩んでいる保護者の方と関わられたご経験はありますか。

佐藤千瀬准教授

私は普段から幼稚園などで観察を行っており、外国につながる保護者の方の支援もしています。そうした中で、日本人、外国人問わず保護者の方から相談を受けることがあります。特に外国人の保護者の方からは、「日本の幼稚園や保育所での慣習が、なぜそうなっているのか分からない」「子どもが園での様子を話してくれないので心配だ」といったご相談が多いです。

──「親のあり方」や子育てのルールは国によって様々ですよね。

佐藤千瀬准教授

子どもの発達について専門的に学んでから親になる方は、むしろ少ないでしょう。そのため、「なぜこの年齢でこんな反応をするのだろう」「どうして急に子どもが変わってしまったのだろう」と驚き、どう対応して良いか分からなくなることがあります。

しかし、逆に言えば、子どもの心や言葉、認知の発達段階について少しでも知っていれば、「ああ、これは正常な発達の過程なんだ」「むしろ良いことなんだ」と肯定的に捉えることができます。安心できる情報を手に入れることが、保護者の方を支えることにつながるのです

困った時に頼れる専門機関や身近な存在

──今は子育てに関する情報が非常に多く、かえって迷ってしまうこともあります。

佐藤千瀬准教授

本当に困った時には、まず信頼できる情報源にあたることが大切です。例えば、子どもの偏見などについてであれば、異文化理解をテーマにした専門書などを参考にできます。また、子育てに少し余裕ができた時には、大学などが提供しているオンライン講座で新しい知識を得るのも良い方法です。

最近では、社会人や子育て中の方が、大学で特定の科目だけを履修できる「科目等履修生」や「聴講生」といった制度を利用するケースも増えています。こうした学びを通じて知識を得ることで、子どもとの関わり方への不安が解消され、落ち着いて向き合えるようになるのではないでしょうか。

──大学の講座なども有効とのことですが、保育園の保育士さんや学校の担任の先生といった、より身近な専門家に相談してみるというのも最初の一歩になりそうですね。

佐藤千瀬准教授

ぜひ相談してみてください。すぐに信頼できる方が見つからなくても、何人かに相談してみるのも良いでしょう。ただ、「前偏見」や「多様性」といったテーマは、現在の先生方が学生時代に十分学んでこられなかった分野でもあります。もし、そうしたテーマでより深い相談をしたい場合は、その分野を専門とする研究者などに意見を求めるのも一つの方法です。

分からなくて当たり前――保護者の皆様へメッセージ

──最後に、悩みや戸惑いの連続である子育てに奮闘されている保護者の皆様へ、教育の専門家としてメッセージをお願いいたします。

佐藤千瀬准教授

先ほども申し上げましたが、最初からすべてを完璧にできる人はいません。初めてのお子さんが生まれたのなら、保護者も「親として0歳」。そこから子どもと一緒に成長していく、と考えてみてはいかがでしょうか。

子育てには分からないことがあって当然です。分からないことは決して悪いことではありません。周りの人々を頼り、信頼できる情報を得ながら、一歩ずつ進んでいけば良いのです。大変なことも多いと思いますが、悩みも含めて「今しかできない経験」だと捉え、その過程を少しでも楽しんでほしいと願っています。

そして、もし助けが必要だと感じたら、どうか一人で抱え込まず、私たち大学の教員も含め、様々な専門家や支援機関を頼ってください。

子どもたちの未来のために、大人ができる第一歩

多様な背景を持つ人々が共生する社会は、すでに私たちの目の前にあります。子どもたちが違いを恐れず、むしろ探求し、尊重する心を育むためには、まず大人が「当たり前」を問い直し、オープンな姿勢で向き合うことが大切です。

今回のインタビューで紹介された具体的なヒントや佐藤准教授の温かいメッセージは、子育てに悩む保護者の方々が自信を持って一歩を踏み出すための羅針盤となるでしょう。私たち一人ひとりの意識の変化が、子どもたちの未来をより豊かにしていくはずです。

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