タブレットPCと電子黒板で自ら考え表現・協働する…中央区立城東小学校

中央区立城東小学校では、4年生から6年生までの児童1人1台にタブレットPCを配布し、電子黒板も取り入れた授業を行っている。1月21日に4年生のクラスで公開された授業を取材した。

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授業前の様子
  • 授業前の様子
  • 記録用紙を参考に星の動きを入力
  • 教師が操作方法を指導
  • 児童の発表の要点を教師が板書
  • 動画で星の動きを確認
  • 教室中央付近の廊下側上部に設置されたアクセスポイント
 中央区立城東小学校では、4年生から6年生までの児童1人1台にタブレットPCを配布し、電子黒板も取り入れた授業を行っている。1月21日に4年生のクラスで公開された授業を取材した。

 東京駅の八重洲口から徒歩2分に位置する城東小学校は、児童数60名の小規模な学校だ。中央区が今後の教育課題について先行的に研究・開発を行う学校とする「フロンティアスクール」に指定され、授業等でICT機器を利活用している。

◆星の動きを学ぶ4年生の理科

 今回公開されたのは、インテルと内田洋行が教育のICT普及に向けたプロジェクトとして2008年より実施している実証実験の一環として、2009年より城東小学校の4年生以上を対象に行っている取組。インテルが教育用途に開発したタッチパネル搭載の小型タブレットPC「インテル クラスメイトPC」と、ウチダデジタルテレビ専用台とeB-P取付キットに通常のデジタルテレビ(VIERA)を組み合わせた電子黒板が利用されている。

 授業は4年生の普通教室で行われた。同校の4年生は1クラスのみで、人数は9名と少ないながら、女子5名、男子4名のバランスのよい構成だ。公開されたのは3時間目の理科で、オリオン座を題材に「星の動き」についての授業だ。この日までに子どもたちは、「オリオン座のかたち、位置、並び方」「自宅から観察したオリオン座の様子の発表、正しい観察法」を学んでおり、正しい観察法に従って各自が自宅で観察した、オリオン座の時間による変化を記録した用紙をもとに授業は進められた。

◆全児童のPC画面を電子黒板で共有

 各机にはあらかじめ起動されたタブレットPCが用意されており、竹之内賀久子教諭が指示すると、皆迷うことなく授業に用いるアプリケーション「スクールプレゼンターEX」を起動し、スムーズに授業が開始された。その後、タッチペンを用いてオリオン座の時間ごとの変化を入力し、電子黒板で全児童のパソコンの画面を共有して、各自が発表する。児童自らが考え、協働学習をし、プレゼンテーションによって自分の考えを表現するという流れだ。

 指名された児童が、画面右上の「発表ボタン」をペンでタッチすることで、無線LAN(Wi-Fi)でネット接続された手元のパソコンの画面が、電子黒板に拡大表示される。児童が電子黒板の前に出て、観察結果を発表すると、教師は発表内容の要点を、従来同様に板書して授業を進める。子どもたちは手書きのプリント、教師は板書と、デジタルに偏ることなく、従来の授業にICTを取り入れている様子がうかがえた。

◆動画で星の動きを確認

 発表の後は動画の活用だ。「今日の夜空の様子を見てみましょう」と教師が問いかけると、男子児童から「動画だ」という声があがり、普段の授業でも動画を活用している様子がうかがえた。電子黒板に、子どもたちが前夜観察した夜7時から9時までの星の動きが映し出されると、続いて1時間後の夜10時の星の状態の予想へと進む。その後、「今夜は10時のオリオン座も観察してみましょう」と宿題が出され、授業が終了した。

 中央区では現在3校で実施中のフロンティアスクールにおいて、ICT利活用をサポートするICT支援員1名(補充員あり)を配置している。この日もICT支援員が、児童のPC操作など授業のサポートを行っていた。

◆漢字練習や電子書籍にも

 小島敏光校長によると、同校ではパソコンルームで1年生からパソコンの利用が可能で「4年生になって初めてパソコンに触れたという子どもは1人もいない」という。また、パソコンを与えると子どもはすぐに使えるようになり「子どもは早いですよ」とも。男子児童に話を聞いたところ「家でも調べ学習にパソコンを使っている」のだそうだ。学校教育でのデジタル活用については賛否が問われているが、同校の保護者には「好評」という。

 では児童はどのように受け止めているのだろうか。タブレットPCの印象としては、特に漢字の練習にメリットを感じている子が多く、使い心地については「通信ができなくなって困ることがある」ものの、「使いやすい」「見やすい」「楽しい」と概ね好評だ。またどんな学習ができるとよいと思うかには「社会」「理科」のほか「インターネットでの調べ学習」や「本を読めるとよい」という声もあがった。

◆バランスを取りながら活用することが大切

 小島校長は、「デジタル機器をツールとして取り入れ、パソコンのみではなくノート、プリントと併用し、バランスを取りながら活用することが大切」と語る。「模造紙のような大きな用紙への記入ではなく、パソコンに入力して電子黒板に映し出すことで、子どもたちの発表が容易になる」のだという。また情報共有はコミュニケーションにも効果的で、スクールプレゼンターのようなツールを利用することで「子どもたちが自分の考えを表現することができる」と、教育におけるICTの有効性を説明した。

・インテル クラスメイトPC
 タッチパネル機能を備えた小型のノートPCで、ワイヤレス接続機能、長時間のバッテリー駆動、耐水性のキーボード、堅固な耐衝撃設計などの特長をもつ。CPUにはAtomを採用している。
《田村麻里子》

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