受験のエキスパート西村則康氏に聞く(1)進学塾選びと転塾のポイント

 30年の長きにわたって、中学・高校受験一筋に、生徒の指導や教師の指導を行ってきた受験のエキスパートである西村氏に、中学受験の進学塾選びについて聞いた。

教育・受験 受験
西村則康氏
  • 西村則康氏
 「塾ソムリエ」として活躍する西村則康氏は、中学受験の塾選びから、塾の先生とのコミュニケーションなど、塾に関する様々な悩みに応えるサイト「中学受験情報局~かしこい塾の使い方」を運営。また、難関校限定の家庭教師集団「名門指導会」の代表を務め、自身も家庭教師として現場に赴いている。

 30年の長きにわたって、中学・高校受験一筋に、生徒の指導や教師の指導を行ってきた受験のエキスパートである西村氏に、中学受験の進学塾選び、家庭学習法、志望校選び、夏休みの過ごし方について聞いた。ここでは、進学塾選びについて紹介する。

--進学塾へは何年生で入塾するのがよいのでしょうか?

 主に、首都圏の大手4大塾(サピックス小学部、日能研、四谷大塚、早稲田アカデミー)の場合を中心にお答えしましょう。

 まず、重要なのは入塾時期です。結論から言いますと、お子さんの発達段階に関わらず、小学校4年生から入るのが“お得”です。なぜなら、大手4大塾のどの塾でも4年生から入学受験のためのカリキュラムが組まれているからです。もし5年生から入ったら、1年分の遅れをどこかで埋め合わせなければならず、お子さんの負担になります。

--入塾の準備は必要ですか?

 入塾の際、入塾テストを受けますが、何の準備もせずにテストに臨むのは“損”です。当然良い点数は取れませんから、下のレベルのクラスからのスタートになる。上位クラスにはなかなか上がれないので、これもお子さんの負担になります。最初にできるだけ上のクラスに入って伸ばしていく方が“お得”なのです。

--具体的にどういった準備が必要ですか?

 入塾の前に何をすればよいかというと、入塾テストに必要な基礎学力をつけておくこと、要は計算力や漢字力をしっかりつけておくことです。そして、問題に慣れておくことも大切です。

 では、小学校3年までは何をすればよいのでしょうか。一つは、家のお手伝いも含め、できるだけ色々な経験をさせることです。経験の中で創意工夫したり考える力が身についていくのです。

 家庭でたくさん会話をすることも大切です。家庭内の会話の質の高い子は能力も高いという説もあります。言葉の力がつかないと、読解力もつきません。算数が苦手な子は、意外に問題を読み取る読解力が足りないことが原因だったりするのです。

--塾選びのポイントを教えてください。

 塾を選ぶ場合、志望校とお子さんの学力レベルの2つがポイントになります。

 何が何でも御三家を目指すというのであれば、実績から言ってもSAPIX(サピックス)が“お得”ということになります。御三家では記述式の問題が出題される場合が多いのですが、SAPIXでは記述問題に早くから日常的に取り組ませますので、その点からもお勧めです。

 SAPIXに入って、順調に伸びていくお子さんは、自分はできると思っている子、つまり自己肯定感の強い子です。しかも、入塾の時点で先取り学習がある程度できている子。小学4年生で、公文で言ったらF(算数なら小6の分数の四則混合の単元あたり)まで進んでいるような子です。

 しかし、そういう子はそれほど多くはありません。おっとり型、納得しないと先に進めないゆっくり型、問題の処理スピードがまだ発展途上のお子さんなどの場合は、SAPIX以外の塾を選ぶほうがよいでしょう。

--塾が子どもに合わない場合の転塾はいかがでしょうか?

 小学4年生の1年間は、お子さんの弱点やタイプを見分ける期間と考えてください。そして、弱点を見つけたらそれを5年生に上がるまでに克服しておくことが大事です。

 その結果、転塾をしたほうがよいということもあり得ます。この場合、絶対にしてはならないことは、下位の塾から上位の塾に変わるということです。

 以前、こんな相談がありました。「B塾で偏差値42で、成績がなかなか上がらない。実績のあるA塾に変わったほうがよいでしょうか」というものです。

 1年間塾で勉強をして偏差値42というのは、勉強をしていないか、やりかたを間違っているか、それが実力かです。このお子さんがA塾に行ったらもっとついていけなくなるでしょう。

 もし転塾するのなら、まず、なぜB塾で伸びないのかという原因を突き止めてください。そして、転塾先では、どのようにそれを克服するかという具体的な対策まで考えることが重要です。原因がわからないまま転塾しても、また同じ失敗をするだけです。
 
--関西の塾の場合はどうですか?

 関西と首都圏では塾の成り立ちそのものが大きく違います。

 首都圏の塾は、研究され尽くしたカリキュラムを提供する。勉強するのは子ども、勉強させるのは家庭の力、という暗黙の了解がある。だから、お子さんが家で勉強をしないからと塾に相談に行っても、対応はまず期待できません。

 しかし、関西の場合は、お子さんもご家庭も丸抱えで面倒をみましょうという雰囲気があります。お子さんが家で勉強をしないと言ったら、塾でなんとかしましょうという方向にいきます。そこが大きな違いです。
《石井栄子》

石井栄子

子育てから、健康、食、教育、留学、政治まで幅広いジャンルで執筆・編集活動を行うフリーライター兼編集者。趣味は登山とヒップホップダンス、英語の勉強。「いつか英語がペラペラに!」を夢に、オンライン英会話で細々と勉強を続けている。最近編集を手掛けた本:『10歳からの図解でわかるSDGs「17の目標」と「自分にできること」』(平本督太郎著 メイツ出版)、『10代から知っておきたいメンタルケア しんどい時の自分の守り方』(増田史著 ナツメ社)『13歳からの著作権 正しく使う・作る・発信するための 「権利」とのつきあい方がわかる本』(久保田裕監修 メイツ出版)ほか多数

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