幼稚園から私立で文系大卒まで約2,088万円、教育資金の貯蓄方法を考える…FP吉野充巨氏

 幼稚園から高等学校卒業までの15年間の学習費を、進学コース別に単純合計すると、15年間をすべて公立で学んだ場合には約504万円が必要。一方、幼稚園からすべて私立で学ぶ場合には学習費は約1,702万円。

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ファイナンシャル・プランナーの吉野充巨氏
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 教育資金の貯蓄方法にはキャッシュフローの考え方がお勧めです。

 お子様がお生まれになった際には、その喜びと同時に、お子様の成長にともなう、学校・教育の事を心配なさると思います。お子様が成長し、しばらく経つと、幼稚園か保育園かが最初の選択になります。

 そして将来の進路選択と教育資金をどのように準備するかをお考えになると思います。そこでここでは、お子様の学習費を文部科学省の子どもの学習費等で確認します。

 図表は、学年別・年齢別に、公立と私立の学習費を表したものです(出所:文部科学省の子どもの学習費平成23年)。

 幼稚園から高等学校卒業までの15年間の学習費を、進学コース別に単純合計すると、15年間をすべて公立で学んだ場合には、約504万円が必要になります。

 一方、幼稚園からすべて私立で学ぶ場合には、学習費は約1,702万円となり、すべて公立の場合の3.4倍になります。

 その後の大学進学をお考えになる際には、文部科学省の調査資料「平成22年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付平均額(定員1人当たり)の調査結果について」によれば、平成22年度の調査で、初年度に必要になる金額は全平均で1,315,666円です。文科系で合計で1,155,318円、理科系学部は1,501,833円ですが、医師系学部では4,892,648円にもなります。

 単純な合計で大学4年、医師系学部6年としたトータルでは文科系学部は3,864,351円、理科系学部は3,968,078円、医師系学部は24,232,078円、その他の学部は5,025,782円になります。

 ちなみに、国立大学の初年度納付金は、平成22年度の場合、授業料標準額は535,800円、入学料標準額は282,000円で817,800円、ほかに検定料標準額17,000円かかります。授業料標準額+入学料標準額は282,000円ですから、4年間で2,465,200円になります。

 これらを基に合計しますと、高校まで公立、大学は国公立の場合には約750万円、幼稚園から高校まで私立に通い、大学は文科系学部の場合には約2,088万円が必要になります。

◆タイプ別の学習費
・幼稚園から高校まで公立:約504万円
・幼稚園から高校まで私立:約1,702万円(公立の3.4倍)
・幼稚園から高校まで公立・大学は国公立:約750万円
・幼稚園から高校まで私立・大学は私立文科系:約2,088万円

 ただし、この総額は一時に支払う金額ではありません、幼稚園・保育園3年、小学校6年、中高6年にプラスして大学4年の19年間のトータルです。そのように考えますと、全コース公立の場合は、年間約40万円の家計負担になり、私立に通う場合でも、平均は約年間110万円。ただし、小学校高学年から中学時代は単年度で150万円が必要になります。

 これら費用をどのように用意するかの一方法として、私は図のようなキャッシュフロー表の作成を提案します。

 家計には教育費だけでなく、さまざまな費用が混在しています。したがって、教育費だけを積み立てる、または何々用の資金を準備する、という考え方は家計に負担をかけ続けます。お金に色はついていず、一つのものですが、すべての支出と収入の項目は、それぞれの目的ごとにからみあって存在しています。教育資金は学資保険で、住宅は住宅用資金として貯めるという資金目的別の資産形成は非効率的です。

 そこで、図のようなキャッシュフロー表を作成することで、年間を通してどの程度の収入があり、支出はどの程度にできれば、家計としての貯蓄資産の枯渇がないのかを考え、年度ごとに資産の枯渇がなければ良しとする考え方です。

 家計としてのお金の流れを数式にすれば、下記のようになります。

  収入-支出(ローンの返済も含む)+資産の運用損益=貯蓄額

 1年間の収支を考えた際には、貯蓄額は、次の年度に使用できる収入として捉えられます。したがって、教育資金としての貯蓄ではなく、翌年以降に使用する費用の予備費を作成すると捉えて、貯蓄はトータルでの形成をお考えください。

 一例として教育資金をあげましたが、失業により生活資金が必要になったり、災害やその他の不確実な事柄の発生も考えられます。逆に思いがけない収入があるかも知れません。何にでも使える資金を備えておくことが、家族の生活を支えてくれます。

 現在の生活を支えている方が死亡した場合にはどうするかを考えた場合にも、学資だけでなく、すべての生活費に対する保障が必要になるため、生命保険による保障額額の算定の際に、教育費も入れておくことになります。そしてその金額の死亡保険金が得られる生命保険選びは、コストの低さがポイントになります。コストを抑えられれば、自分保険(自家保険)としての貯蓄がしやすくなります。

 このように考えますと、保険は掛け捨てがベターな選択になり、貯蓄は金融資産としての運用が必要になります(定期預金も金融資産ですし、日本国の個人向け国債もしかりです)。また、収入と支出の額が大まかにでも捉えられれば、将来に対する備えもできるようになります。ライフプランの作成では、最短でも20年、最長は制限なしで作成されるようお勧めしています。

<著者紹介>吉野充巨(ファイナンシャル・プランナー)
 1945年4月4日東京都墨田区生まれの67歳。家業の靴卸商社勤務後、事務サプライ品商社富士ゼロックスオフィスサプライ株式会社を経て2005年に退職し、2006年1月独立系FP事務所を開業。長い人生での知見とボランティア活動での経験からライフプランの相談を受ける。保険・不動産・金融商品を販売しないアドバイスの専門家。
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