教育ICT用語

ICT活用で基礎学力向上、算数で顕著な伸び…青山小学校で研究報告会

教育ICT 学校・塾・予備校

体育館を使った研究報告会
  • 体育館を使った研究報告会
  • 信州大学教育学部教授 東原義訓教授
  • 来賓者席
  • 港区立青山小学校 曽根節子校長
  • 4つの公開授業の内容
  • タブレットPCに対する子供と教師からの感想
  • CRT標準学力調査の結果比較(3・4年生)
  • CRT標準学力調査の結果比較(5・6年生)
 港区立青山小学校(以下、青山小学校)は2月28日、ICTを活用した4つの公開授業と、同校のICT活用における研究の中間報告会を開催。中間報告会では、同校のこれまでの研究活動の報告に加え、当日の公開授業の講評も行われた。以下では、中間報告会の様子をレポートする。

 青山小学校は2006年より、ICT活用による子供達一人一人の能力や特性を教師が捉え、協業的な学びを展開するための取組みを行ってきた。日本マイクロソフトとは、取組み当初から共同研究を行っており、デジタル教科書教材協議会(DiTT)の委託研究である「インタラクティブスタディ」もまた、共同研究の一つである。インタラクティブスタディは、同校で課題となっていた個に応じた学習支援に成果を期待できると考え、信州大学教育学部教授の東原義訓氏の指導のもと、2012年9月より始まった。

 同10月には、ICT活用の先進事例として東京都日野市立平山小学校の公開授業を訪問。インタラクティブスタディの授業と、ソーシャルリーディングと呼ばれる共同学習を見学した。そして、通常の授業の時間にPCを1人1台使用した個別学習を進めていくうちに、課題が見られる単元は、その単元の内容につまづいているのではなく、遡ったつまづきを解消する必要があること、さらに通常の授業の時間内だけでは効果が上がらない子どもがいることも見えてきた。そこで同11月からは、教員OBや地域コミュニティのボランティアと連携し、放課後や冬休みのインタラクティブスタディも開始した。その頃には、児童もだんだん楽しんで勉強するようになり、集中して問題に取り組む姿が見られるようになったという。

 実際に、研究開始前の2012年9月と、半年後の2013年1月の算数におけるCRT標準学力調査の結果を比較すると、学力に課題があった6年生が、すべての領域で2桁の伸びを見せて平均で21ポイントアップするなど、ICT活用を取り入れた3~6年生すべての学年で平均ポイントがアップした(5年生の「数量関係」の領域は唯一ポイントを下げているが、学校側の分析では、問題の配列上後半に出題されていて時間切れになったこと、学年の児童数が少なく、1人の結果が大きく影響してしまうということも関わっているとしている)。

 青山小学校では、ICT活用について、「視聴覚的に情報を伝えることで情報伝達の時間を短縮でき、授業の効率化を図ることができる。そうして作り出した時間を、児童がそれぞれ考え合い、伝え合い、交流することや五感を使って直接体験をするための、時間にあてることができる」と評価しており、さらにこれまでのICT機器よりも機動性に優れるタブレットPCもいち早く導入することとなった。

 2月21日に発表したばかりの「21世紀型スキル育成授業」は、日本マイクロソフトとレノボ・ジャパンの支援により、Windows 8搭載タブレットPC「ThinkPad Tablet 2」31台を確保。授業の対象を特別支援学級にも広げ、児童のコミュニケーション力を補佐するツールとしての、ICTの可能性を今まさに探っている最中である。

 中間報告会では、当日行った4つの公開授業の学習指導案が参加者全員に配布され、授業を行った教師による自評の時間も設けられた。その概要は以下のとおり。

(1)社会・5年「工業生産と貿易」(21世紀型スキル教育授業)

[ICT活用]今まで使っていた紙のノートを一切使用せず、タブレットPCのノート作成ソフトウェア「Microsoft OneNote」のみで学習を進める。
[期待される効果]紙の代わりにタブレットPCを使うことで、インターネット等の資料を活用し、課題解決に向けて多面的に考えを深めることができる。

(2)生活単元学習・特別支援学級「知ってほしいな ぼくのまち・わたしのまち」(21世紀型スキル教育授業)

[ICT活用]校外でタブレットPCを使って撮影した写真や動画を利用しながら、Microsoft PowerPointでプレゼン資料を作成する。
[期待される効果]発表者は、タブレットPCを活用し、伝えたいことを簡潔かつ具体的に表すことができる。聞き手は、友達の発表を聞いてタブレットPCに興味をもつ、また、わかりやすい説明を聞くことで興味・関心が高まり、発言や質問が出やすくなる。

(3)算数・3年「2けたをかけるかけ算の筆算」(教師の気づきの進化を目指したICTの
利活用)

[ICT活用]児童用ノートPC上で算数の問題を1問ずつ解いていく。一人ひとりの進捗は、教師のタブレットPCにリアルタイムに表示される。
[期待される効果]児童は、ノートPCと学習ソフトを用いて、自分のペースで個々の課題に応じた補充問題や発展問題を行うことができる。教師は、タブレットPCで児童の学習状況を把握し、支援が必要な児童に個別支援が行える。

(4)算数・4年「直方体と立方体」(デジタルペンを活用した双方向型授業)

[ICT活用]デジタルペンを使って専用の用紙に立方体の展開図を書くと、その画像が正面の大型モニターに一覧で表示され、教師と児童全員がリアルタイムで共有する。
[期待される効果]デジタルペンを使うことで、書画カメラの場合に必要となる大型モニターへ映す時間を省くことができる。児童の考えを、言葉のみではなく視覚的に共有することで、共通理解を深めることができる。

 青山小学校の曽根節子校長は、今回のタブレットPCを使った公開授業について、「動作環境の調整や、使い方に慣れることから始め、戸惑いの多い中での公開でしたが、たった2週間で教員も児童も今日を迎える勇気は、私が自慢しているところです」と、“チーム青山”のがんばりを高く評価した。実際、勇気だけではなく、教師も児童も教室で真剣に取り組む様子も印象的である。ICT活用の取組みを始めた2006年、同校は学力向上が最大の課題で、生活指導面でも大変苦労した年でもあったという。「それでも、このように研究を取り組むことによって、港区や全国に発信できるような学校に、まだまだですが、少しずつ変わろうとしています」(曽根校長)

 東原氏は、同校の取組みについて「21世紀型スキルだけではなく、基礎学力の向上にもICTを活用している点が重要。また、事前の学力調査で問題を把握したうえで、経験値だけではなくデータに基づいて授業を設計し、徹底的に努力した結果が学力の向上につながっている」と分析。また、ICT活用についても、「1人1台のデバイスを持つことで、全員が発表して全員が友達のものを見ることができる。しかも記録して残せることは、学習成果物の蓄積と再利用にもつながっている。また、5年生の社会科の授業のように、正解のない問題に挑戦しみんなの考えを交換していくという授業にも、ICTがおおいに役立っている」と評価した。

 青山小学校では、本研究期間の終了後も継続的にICT活用を行うことで、児童の確かな学力を付けていくと同時に、コミュニケーション能力といった、学力テストでは計れない新しい力を伸ばすことにも注力していきたいとしている。

 研究の進捗は、随時学校ホームページにて公開予定。また、2013年6月には校外学習の一環として、児童自身が学習成果をPowerPointにまとめてプレゼンし、日本マイクロソフトの社員らが講評するという「プレゼン大会」を行い、2013年夏をめどに成果を発表する。
《柏木由美子》

編集部おすすめの記事

特集

page top

旬の教育・子育て情報をお届け!メルマガ登録はこちらをクリック