東京都の学力向上を図るための調査、小中で対照的なのは理科

 東京都は11月12日、平成27年度「児童・生徒の学力向上を図るための調査」結果を発表。小学校の教科で67.4%ともっとも正答率の高かった理科が、中学校では49.3%ともっとも正答率が低い教科となっており、小学校と中学校で対照的な結果となった。

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 東京都は11月12日、平成27年度「児童・生徒の学力向上を図るための調査」結果を発表。小学校の教科で67.4%ともっとも正答率の高かった理科が、中学校では49.3%ともっとも正答率が低い教科となっており、小学校と中学校で対照的な結果となった。

 7月2日に実施された「児童・生徒の学力向上を図るための調査」は、1,295校8万8,995名の小学校5年生、627校7万4,349名の中学校2年生が対象。「学習指導要領に示されている目標および内容」の実現状況、「読み解く力に関する内容」の定着状況を把握し、指導方法の改善に結びつけることで、児童・生徒の「確かな学力」の定着と伸長を目的としている。実施教科は、国語、社会、算数・数学、理科で、中学生は英語も加わる。

 小学校の教科ごとの平均正答率をみると、国語62.7%、社会56.8%、算数63.6%、理科67.4%。習得目標値(教科書の例題レベルの問題)未満の児童の割合がもっとも高かったのは、社会で10.4%を占めた。到達目標値(教科書の練習問題レベルの問題)については、理科がもっとも高く47.7%にのぼった。国語、算数でも3割以上となっている。

 中学校の教科ごとの平均正答率をみると、国語54.1%、社会51.9%、数学56.2%、理科49.3%、英語59.0%。習得目標値未満の生徒の割合では、数学11.7%、社会10.9%、理科9.2%が、国語2.1%および英語2.8%に比べ高くなっている。到達目標値達成の生徒の割合は英語31.6%がもっとも高い。理科の到達目標値達成の割合は5.7%と5教科中もっとも低く、習得目標値未満の割合を下回った。理科の到達目標値達成の割合が高い小学校とは対照的な結果となった。

 学習や生活に関する意識や生活習慣などについての児童・生徒質問紙も実施し、質問紙調査の結果と正答率の関係を分析している。小学校算数の「自分の学力に応じたコースに分かれた授業を受けることで、学力がつくようになると思うか」という質問で、「思う」と回答した児童62.5%の正答率は67.4%だったのに対し、「思わない」と回答した児童1.4%の正答率は50.8%だった。

 中学校も同様の傾向にあり、習熟度の程度に応じた指導について肯定的であるほど正答率が高い。「自分の将来に希望をもっているか」という質問でも、もっているという意識が明確な方が平均正答率が高く、「もっている」と回答した小学生児童が平均正答率63.6%だったのに対し、「もっていない」の平均正答率は55.0%だった。

 また、学校質問紙調査から、言語活動を充実させ、思考を深めさせる授業を行っている学校ほど正答率が高かった。「さまざまな考えを引き出したり、思考を深めたりするような発問や指導を行った」という質問で、「よく行った」小学校の平均正答率は63.3%、「あまり行っていない」小学校の平均正答率は57.8%だった。

 東京都では、今後の方向性として、内容や方法についての組織的な取組みが課題となっている放課後の補習・家庭学習の充実のための支援として、東京ベーシック・ドリルの電子化をあげた。東京ベーシック・ドリルは、「小学校4年生までに身につけさせる必要がある基礎的な内容(国語・社会・算数・理科)」を習得させるための教材。平成27年度の取組みとして、小5・小6・中1の国語、算数・数学および中1の英語をまとめた中学校版の開発も行われている。

 また、地域や学校により学力の分布状況が異なるため、学力に課題がある地域や学校への訪問を充実させ、継続的に支援していくという。
《黄金崎綾乃》

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