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子どもの貧困、社会的損失は15歳の1学年だけで2.9兆円

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 日本財団は、「子どもの貧困の社会的損失推計」レポートを公開。推計によると、子どもの貧困を放置することで、現在15歳の1学年でも社会が被る経済的損失は約2.9兆円に達し、政府の財政負担は1.1兆円増加することが明らかになった。

 日本財団は、貧困対策の重要性に対する理解を広めるために、子どもの貧困の社会的損失を定量的に推計。2015年12月3日にメディア向けに説明会を実施し、今回、レポートの全文を公開した。日本では子どもの貧困が深刻化しているが、主要7か国の子どもの貧困率(2012年)をみると、日本の子どもの貧困率はアメリカの20.8%、イタリアの17.2%についで16.3%となっている。

 推計の基本的な考え方として、進学や進路に差が出る中学卒業時を推計の起点とし、現在15歳の子どもを対象とした。子どもの貧困が放置される「現状シナリオ」では生活保護世帯、児童養護施設、1人親家庭の子どもは約18万人と推計。高校・大学等の進学率は、大卒が3.4万人、短大・高専・専門学校卒は2.1万人、高卒は9.3万人、中卒は3.2万人(うち高校中退者2.0万人)となる。学歴別の就業状況割合に沿って人数を配分すると、正社員は8.1万人、非正社員は3.6万人、自営業等は1.5万人、無業者は4.8万人と推計される。

 そこで、子どもの貧困に対する教育プログラム(ぺリー就学前教育計画、アベセダリアンプロジェクトを援用)を受けることで、貧困世帯の子どもの高校進学率が非貧困世帯と等しくなり、貧困世帯の高校中退率も非貧困世帯に等しくなると仮定した「改善シナリオ」を推計。大卒は6.2万人、短大・高専・専門学校卒は3.7万人に増え、高卒は7.4万人に減少、中卒も0.8万人までに減少する。さらに、正社員は9.0万人に増加し、非正社員や無業者は減少する。

 また、推計対象の貧困世帯に属する18万人が64歳までに得る所得は、現状シナリオでは22.6兆円に対し改善シナリオでは25.5兆円となり、子どもの貧困を放置することで生涯所得の合計が2.9兆円減少する。税・社会保障の純負担は現状シナリオでは5.7兆円なのに対し、改善シナリオでは6.8兆円となり、1.1兆円の社会的損失が発生すると推計する。

 考察では、人口減少に直面している日本では労働力の希少性が高まり、質の高い労働力を確保していくことが社会的・政策的な課題となる。推計結果から現状シナリオに対し、改善シナリオでは正社員が約1割増加し、無業者数が1割減少することが見込まれ、子どもの貧困対策は労働力の確保の点からも大きな効果をもたらすと指摘している。

 しかし、今回の推計は海外の貧困対策の結果を援用しており、日本ではまだ研究蓄積は少ないのが実情。日本の研究成果を用いた正確な推計が可能になると、効果的な政策の実現ができると期待している。
《田中志実》

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