塾なしでハーバード現役合格…廣津留真理さんに聞く「世界に通用する一流の育て方」

 公立で塾なし。通算の学費50万円でハーバード大学に合格。「世界に通用する一流の育て方 地方公立校から〈塾なしで〉ハーバードに現役合格」の著者である廣津留真理さんに聞いたい。

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インタビューに答える廣津留真理さん(撮影:市原達也)
  • インタビューに答える廣津留真理さん(撮影:市原達也)
  • 廣津留真理さん(撮影:市原達也)
  • 世界に通用する一流の育て方 地方公立校から〈塾なしで〉ハーバードに現役合格(SB新書)
 小、中、高とすべて公立で塾なし。通算の学費50万円でハーバード大学に合格。一体どんなスーパーマザーなのかと思いきや、「世界に通用する一流の育て方 地方公立校から〈塾なしで〉ハーバードに現役合格」の著者である廣津留真理(ひろつるまり)さんは、大らかさとしなやかさで場の空気を和ませる。「親の戦略的なサポートがあったからこそ、子どもがハーバードに合格した」というサクセスストーリーを想像していたと話すと、「戦略なんて立てていたらハーバードには受かりません」と一笑する。

 現在、ハーバード大学に在籍する日本人は稀少だ。合格できないのは、英語力不足に加え、戦略を立て過ぎていることにある、と廣津留さんは見る。

 「答えが用意された、試験のための解法を学ぶ勉強の先に、ハーバードは存在しないのです。」

◆子どもは未来からやってくる

 廣津留さんの子育て論はとてもユニークだ。

 「子どもが生まれてきたとき、『この人は未来から来た』と思ったんです。未来から来ているから、現在の地球については何も知らない。せっかくだから、一つずつ紹介していこうと考えました。」

 まず、この地球上にあるさまざまな記号を教えてあげようと、廣津留さんは娘のすみれさんが幼い頃から、漢字、英語、フランス語、音楽の譜面から数式や絵などに触れさせた。

 「たくさんの記号が読めたら、今の世の中の秘密がわかるはずだから」

 未来人から見れば、今の私たちはすでに古い人間だと廣津留さんは言う。「我が子をどうやって育てたらいいかわからないっていう悩みを言う親御さんが多いけれど、そりゃわからないですよ。だって未来人なんだから(笑)。未来人だから自分とは別人格。言い換えれば、我が子は生まれたときから自立しているということ。夫婦は互いに選んで一緒になりますが、子どもは親を選べません。だからこそ、一人の自立した個人として尊重することが大切だと思っています。子育ては『未来人へのおもてなし』だと思えばとても楽しい。未来人が何かの縁で我が家へやってきたのだから、家の中には季節の花を飾り、温泉に連れて行ったり、お雛様に桜餅、お月見に団子、お正月にお節料理などを一緒に楽しんだり、この世の中のことを一つずつ教えてあげました。」

◆ひろつる式英語学習メソッドとは

 いくつかの記号の中でも、すみれさんは、母の得意な英語や母の趣味である音楽に自然と興味をもつようになった。この2つの記号が、後に彼女をハーバードへと導くことになる。

 英語教員の資格をもち、現在も大分で英語教室を運営する廣津留さんの英語教授法は、生徒の年齢にかかわらず「中学英語を飛ばす」という、かなり大胆な方法だ。

 「最初から難しいことをやらせた方がいい。たとえばバイオリンの著名なコンクールで優勝するような子は、20歳で弾く曲をすでに8歳位で弾けるようになっています。私のメソッドは、それを英語で置き換えた場合、最初から難しいことを20歳まで続けておけばレベルアップするはず、との考えに基づいています。ドレミ、ABCから細切れに進めても、20歳にはまったく違う結論になってしまうのです。」ゴールから逆算をする学習法だ。

 中学校の検定教科書は、内容を抜粋すると薄っぺらなノート1冊程度の内容で、出来る子なら1週間、遅くとも数か月かければ終わってしまうと廣津留さんは指摘する。「そんな内容に3年間もかけるのはもったいない。学齢に合っておらず、明らかに語彙のレベルが低すぎます。」

 ABCがわからない子どもにも、いきなり中学3年修了程度の本を読ませる。最初は読経のようだが、解答の日本語訳で大意を理解し、付属のCDを聞きながら音を真似ていると、子どもは2、3週間で読めるようになる。これを「英語が染みてくる」と廣津留さんは表現する。「すると自分が目指しているものが、appleとかbananaではないことがわかってくる。あとは単語力です。1週間に100個ほど、市販の単語帳で覚えてもらいます。早い子だと半年で中学3年分の単語が終わってしまいます。最初から難しいことをやるとお得なのです。」

 この方法で、すみれさんは4歳で英検3級(中卒レベル)に合格した。今も彼女の英語教室では、小学生が知識ゼロから3級、2級と合格し、大学入試レベルの問題を読んでいるそうだ。

 「世間では『英語がペラペラになる』という表現がよく使われますが、口語と読解では、語彙も内容も全然違います。日常会話に必要な語彙をいたずらに増やすより、新聞、ネットの記事や学術論文、大学入試の問題が読めた方がお得です。とことん読んで、語彙を増やし(=インプット)、その中から適切な言葉を選ぶことがアウトプット=『話す』ということ。さぁ英語を話しましょうと言われても、中身がなければ意味がありません。」

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《加藤紀子》

加藤紀子

京都市出まれ。東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、海外大学進学、経済産業省『未来の教室』など、教育分野を中心に様々なメディアで取材・執筆。初の自著『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)は17万部のベストセラーに。現在はリセマムで編集長を務める。

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