【中学受験2024】過去最高だった昨年に迫る難度か…TOMAS

 TOMAS教務本部責任者・副局長の松井誠氏に、2024年中学入試の最新トレンドや志願動向を解説いただくとともに、本番まで残り100日となった直前期をいかに過ごすべきかを聞いた。

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【中学受験2024】過去最高だった昨年に迫る難度か…TOMAS
  • 【中学受験2024】過去最高だった昨年に迫る難度か…TOMAS
  • TOMAS教務本部責任者で副局長の松井誠氏
  • 保護者会の資料より:慶應湘南藤沢の問題
  • 保護者会の資料より:頌栄女子の問題
  • 上位校の国語の入試問題の傾向
  • 上位校の算数の入試問題の傾向
  • 画像はイメージです

 コロナ禍明け初となる中学入試が近づいている。東京・神奈川の中学入試が始まる2月まで4か月を切り、受験生をサポートする保護者としては、今年度の中学入試がどのようなものになるのかが気になりつつも、本番までの残り100日をいかに過ごすべきか不安に思う時期ではないだろうか。

 マンツーマンの完全個別指導を展開する進学塾TOMASの教務本部責任者であり、副局長の松井誠氏に、2024年中学入試の最新トレンドや志願動向を解説いただくとともに、本番まで残り100日となった直前期をいかに過ごすべきかアドバイスを聞いた。

過去最高難度だった2023年に迫る勢い

--まずは中学入試全般の概要についてお聞かせください。

 今年(2023年)の中学入試は過去最高レベルの難しさでした。森上教育研究所の調べによると、受験者数は過去最高となり、1都3県の中学受験比率も初めて15%の大台に乗り、難度も非常に高かったことが分かっています。

 今年、首都圏における小学校6年生の人数は、2,000~3,000人減る見通しです。しかし、人数が減れば入試の難度も下がりそうなものの、首都圏の6年生30万人のうちの3,000人が減少するだけなので大した影響はなく、むしろ中学受験する生徒は増えそうだということで、2024年度の中学受験は過去最高だった今年度と同じくらいか、もしくはさらに難しいかもしれません。

 理由の1つとして、今の小6はコロナ禍が始まった2020年に小3だったことがあげられます。中学受験の準備が本格的に始まる小4を目前にしたタイミングで、コロナ禍における公立中学と私立中学のオンライン対応の差などを目の当たりにしてきたからです。彼らはコロナの中で登校も学校行事も、友達との交流などもすべて「我慢しろ」と言われてきた学年です。そうした中でも私立中学が学びを止めずに、いち早く「オンラインや分散登校で交流しよう」「少しでも行事を復活させよう」と努力しているのが明らかになりました。そこで「多少の費用がかかっても私学の方が良いのではないか」と考える保護者が増えたのです。

TOMAS教務本部責任者・副局長の松井誠氏

--2023年度の動向、および2024年度の動向で注目の話題はありますか。

 2023年入試では開成、駒場東邦、海城といった男子校の人気が目立ち、激戦となりました。男子が東京大学・医学部・理系などの難関大学受験に強い学校に戻ってきた感があります。加えて、新設の共学校も人気が出てきており、特に芝国際は注目を集めました。

 2024年度については、横浜雙葉が従来2月1日のみだった入試日を、2日にも設けたことで話題になっています。入試回数が増えたことで四谷の雙葉も横浜雙葉も受験できるようになり、「どうしても雙葉に入りたい」という人にとってチャンスが広がった。中学受験家庭の中には、親だけでなく祖父母の意向が入るご家庭も少なくなく、高齢者からの支持を集める学校のニーズは今後もあるのではないでしょうか。

コロナ禍の安定志向からチャレンジ志向に戻る傾向

--なるほど。それでは、出願動向については変化が見られたのでしょうか。

 コロナ禍で安全志向になっていたのが、再びチャレンジ志向に戻っていると考えられます。それは、県をまたいでの受験の増加や、最難関校の人気の復活からもうかがえます。

 2022年までは、県をまたいでの受験を敬遠する向きもありましたが、2023年からは「良い学校であれば多少遠くても行く」という動きが戻ってきました。コロナ禍だからという理由で志望校を変えるような動きは、もう無いといって良いのではないかと思います。

 また、今の中1から中3は、小4から小6の際にコロナによる休校の影響を受け、学ぶべき内容がやりきれずに算数の完成度が低くなり、中学入試問題を作る側も非常に苦労したという流れがありました。通常なら最難関をねらうような層が「仕上がりが良くないから下位の学校を受験しよう」という動きもみられたのです。しかし、今年からはそうした安全志向から抜け、特に男子において最難関校の人気が高まっています

 出願動向については、ネット出願・当日合否発表が浸透し、入試前日や当日でも出願できる学校が増えたことも大きな影響を及ぼしています。直前の合否によって出願を変えるという戦略の立て方が可能になったことで、保護者が事前に「1日に落ちたらここ、2日に落ちたらここを受ける」という、樹系図のような流れで安全な受験計画を練っておくことが大事だといえます。また、1回の出願で複数回受験できる学校も増えており、どんどんフレキシブルかつ情報戦が激しくなっています。

--出願する学校数について変動はありますか。

 大手集団塾が出している数字でいうと、1人当たり6校前後。ただ、この数え方は1回の出願で複数回受験できる場合も複数回としてカウントしているので、出願学校数というよりも受験する回数という方が正確です。また、上位層では、1月入試の埼玉・千葉から始まって、千葉の渋幕、東京の御三家、神奈川の聖光・栄光を受験するといったような、県をまたいだ挑戦の仕方が戻ってきていますが、5、6年生から受験準備を始めたご家庭では、「近くの良い学校を何回も受験する」というスタイルもみられます。

 首都圏の中学受験は1月10日に埼玉、1月20日に千葉、2月1日に東京・神奈川と順次解禁されますが、小学生としては本命校の前に1、2回試験を受けて慣れておきたいところです。本命校は実力より少し上になる傾向があるので、1校も受からない状況を作らないよう、安全策としての学校を用意しておきたいですね。前受け校、第1志望校、安全校、チャレンジ校といろいろと受けるでしょうが、その中に「第1志望がダメだったときに、ここなら行っても良い」という学校が複数ある形が望ましいと思います。

個別指導塾 学習塾 進学塾のTOMAS

自分で考え回答を導き出す問題増

--2023年度入試問題で見られた出題傾向を教えてください。また、2024年度の出願傾向はどのようになるとお考えでしょうか。

 導入から3年経った大学入学共通テストの影響は、確実にあるといえるでしょう。算数の文章題の文章量が多くなったり、複数人が議論しているようすから読み解いたり、自分の頭で考え、答えのない問いを考える問題が多くなっています。

 2023年の入試問題から新傾向のものをピックアップしてみると、麻布の社会では、「個人で支えているように見えるものを公共で支えることで解決する問題を1つあげ、解決できる仕組みを考え、120字以内で答える」という問題が出ました。また、慶應湘南藤沢の国語では、「甘いものは体に悪いので税金を上げて値上げすれば良い、という意見の人に、160字以内で反論しなさい」という問題、頌栄女子学院の理科では皆既月食を想像で描いた子供の絵について「実際は絵のような形にはならないが、このような形になるにはどのような条件が必要か」という問題、明大明治の社会ではインターネットの利用状況グラフを材料にして「ネットを活用するうえで注意しなけばならないことを具体的に1つ示す」問題がそれぞれ出ています。どれも日頃から時事問題に関心をもち、自分の頭で考え、自分の言葉で答えることが試される問題だといえましょう。

TOMASの保護者会の資料より、慶應湘南藤沢の国語
TOMASの保護者会の資料より、頌栄女子学院の理科

 ただし、こうした新傾向の問題は全体の一部に過ぎないため、とらわれすぎてもいけません。大前提は、広範囲にわたる国算理社の4教科のベースとなる学力をしっかりと身に付けること。合否に大きく影響するのは新傾向の問題ではなく、受験する学校における基本問題です。4教科すべてにおいて、基本問題の弱点つぶしをするだけでも膨大な数になるのです。

 志望校に同じような学力の子がひしめいている中で、一歩抜きんでるには、間違えてはいけない問題を確実にとること、そして一番大事な基礎の学力を積み上げ、学校が求める出題傾向にきちんと対策をすることが重要です。つまりここから残り100日で、過去問対策・志望校対策が鍵になるということです。

求める生徒像が示される入試問題

--これから入試直前までは過去問対策が勉強の要となってくると思いますが、どのようなことを意識して取り組むべきでしょうか。

 その学校が求める生徒像が入試問題にあらわれるので、各校の出題傾向に沿った対策をする必要があります。国語の問題に必ず詩が出る学校や、記述問題がたくさん出る学校、問題用紙と解答用紙が一体化している学校など、非常に特徴的なのです。

 たとえば、全20問を試験時間40分で解かなければならない学校は、1問を2分で解かないといけない計算です。それに対して、10問で60分の学校ならば1問に6分かけることができる。全社の学校はとにかく正確にスピーディーに幅広く勉強を進められる生徒が、後者の学校は1問ずつ粘り強く考えて取り組む生徒が求められているといえるでしょう。こうした「求められる生徒像」をあらわす問題を知ったうえで、その対策が必要になるのです。

 難関校の特徴を一部あげますと、国語では、麻布や武蔵、桜蔭の問題は、総記述量が500字以上で1問にかけられる時間は2分程度である一方、女子学院は総記述量は270字ですが1問にかけられる時間は1分未満となっています。算数については、1問にかけられる時間が開成3.7分、武蔵4.1分に対し、女子学院は1.5分。栄光学園や麻布などは年度によっては1問5分以上と根気がいる出題となっており、各校の特色がみられます。

2023年度入試問題の分析。上位校の「国語」
2023年度入試問題の分析。上位校の「算数」

保護者と塾と本人の三位一体で進める

--これからの100日で、過去問とそれ以外の勉強の配分など、学習計画はどのように立てていけば良いでしょうか。

 多くの方が塾に通っていると思いますが、まず学習塾とご家庭の方針をすり合わせるのが大事です。塾のナビゲートなく上位校を目指して中学受験を乗り切るのは難しいと思いますので、ご家庭だけで悩まれるよりも、まずは「うちはどうしたら良いか」と塾や専門家に相談することです。

 中学受験では「あの学校に行くために頑張ろう」と高い偏差値の志望校を目指す子供が多くいますが、目標に到達するための指導はひとりひとり異なりますので、その手助けを塾にお願いした方が良いでしょう。「本人と保護者と塾の三位一体」で進めていくべきです。今までの模試の結果を分析しながら、その子の仕上がりや弱点などによって、過去問を中心に学習を進めていくことになると思います。そして、TOMASはそうした個別指導が一番の強みだと自負しています。

 また、入試直前期は保護者が真剣になるほど、子供を追い詰めてしまいがちです。そうしたときこそ、第三者である塾が間に入って、専門家として「この子は小6にしては十分頑張っている」「今あなたがやらなきゃいけないのはこれだよ」「学校では友達との生活を楽しんで」などとアドバイスすることが必要なのです。

 実際に、私どもでもこの時期の面談は志望校や過去問対策の話が多いですが、保護者が「話を聞いてもらえるだけで落ち着く」ということもあります。小学生の受験ですので、保護者の手助けなしではできないものの、初めてだとどうすれば良いかわからないと思います。遠慮せずに塾に連絡し、面談をお願いしてみてください。

対策次第で偏差値の高い志望校も視野に

--ここからの勉強で偏差値が大きく上がることはあるのでしょうか。保護者が残り100日でやるべきこととは。

 偏差値を10ポイント上げることは簡単ではないものの、志望校対策をしっかりやっていれば偏差値が10ポイント上の学校に受かることは珍しくありません。模試はあくまで受験生全員を対象にしたテストですが、入試の問題はそれぞれの学校で傾向が違いますから、残り100日で対策をしっかりやればかなり合格に近づけるはずです。

 子供の成長力というのは驚くべきもので、残り3か月で大きく伸びる子もいます。それを信じつつ、プロである塾の手を借りながら伴走してあげてください。

 中学受験はもともと第1志望に入れるのが3人に1人くらいです。そう聞くと、保護者としては「高望みせずに入れる学校に入ってほしい」という気持ちも湧いてくると思いますが、ここまで頑張ってきた12歳の子が「行きたい」という学校があるなら、ぜひベストを尽くさせてあげてほしい。ここまでやったんだから、あとはもう力を発揮してくるだけだと2月1日に送り出しつつ、「2日、3日、あるいは午後入試で万全の併願パターンを組もうね」「もしここにご縁があっても、多分あなたは充実した6年間が送れるはず」と言って励ましてあげてほしいですね。

--最後に、家庭で親子の心構えについてのアドバイスと、受験生および保護者へのメッセージをお願いします。

 保護者の方には、まずは受験生のお子さん含めご家族全体の体調管理を十分に気遣ってください。そして、お子さんには最後まで、「応援しているよ」ということを伝えてほしい。どんな保護者でも真剣になるほど、わが子には感情的になってしまいがちですが、もし勉強がうまく進んでいなくても、直前期には感情的にならず、冷静に接してあげてください。

 小学3、4年生のころから塾に通い、勉強を頑張ってきたお子さんたちは、それだけでも十分な学力を身に付けているんです。たいていの小学生はご縁があった学校に通うようになると、たとえ当初の第一志望校でなくても「ここで良かった」と思うようになるもの。ですから、今は行きたい学校をひたむきに目指し、チャレンジしてほしいと思います。

--ありがとうございました。

プロである塾の力を借り、残り100日を万全に

 入試本番まで残り100日という親子ともに焦りがちな時期であるが、保護者はこうした直前期だからこそ、感情的にならずに、子供の努力を認めてポジティブに構え、子供が最後まで志望校に向けて全力を尽くしきることを応援する姿勢が重要になることが伺えた。保護者だけで子供を支えるのは不安も大きいだろうが、塾や、個別指導をうまく活用し、本番まで万全なサポートをしてほしい。

個別指導塾 学習塾 進学塾のTOMAS
《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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