模試、過去問、書類準備、面接練習…医学部受験直前期の山積みタスクの乗り越え方

 共通テストまで残すところ数か月。医学部を志望する受験生にとって、願書の作成や小論文・面接対策など準備すべきことが多い。志望校合格に向けて、どのような心構えや対策で勉強に取り組むべきか。医専予備校プロメディカス・戦略マネージャーの細谷一史氏に話を聞いた。

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模試、過去問、書類準備、面接練習…医学部受験直前期の山積みタスクの乗り越え方
  • 模試、過去問、書類準備、面接練習…医学部受験直前期の山積みタスクの乗り越え方
  • 医学部進学専門予備校「プロメディカス」戦略マネージャーの細谷一史氏に話を聞いた
  • 医学部受験生にとって、秋以降の模試の活用法とは?
  • 2024年度前期試験で国語を除外する山形大学医学部(公式Webページの一部)

 いよいよ大学入学共通テスト(以下、共通テスト)まで残すところ数か月。受験生にとっては追い込みの時期だ。中でも医学部を志望する受験生は、願書の作成や小論文・面接対策など準備すべきことが多い。志望校合格に向けて、どのような心構えや対策で勉強に取り組むべきか。医学部進学専門予備校「プロメディカス」戦略マネージャーの細谷一史氏に話を聞いた。

2024年度の医学部入試の動向と留意点

--2024年度の医学部入試の動向を教えてください。

 まず、今年の医学部志願者数ですが、駿台の模試受験者の状況を鑑みると、前年とほぼ同じか、わずかに増加しています。地域としては関東の志願者が増加しており、また、女子志願者が増加傾向にあります。医学部の定員については、厚生労働省から「現状の医学部定員を概ね維持」との公表がありました(「令和6年度医学部臨時定員に係る方針について」より)。定員削減によってさらに競争が厳しくなるといった事態は起きませんので、その点は安心してください。

 昨今の大学入試において入学者の半数以上を占めるようになった総合型選抜は、医学部でも多く導入されています。保護者の中には「総合型選抜の方が受かりやすい」という印象をもたれている方もいるようですが、医学部の場合は、総合型選抜でも必ず筆記試験があります。一般入試と変わらず、狭き門というのが現状です。一般入試との違いは、入試の時期が早いこと、面接の評価比重が比較的高いこと、この2点だと考えてください。

 また、医学部受験には地域枠がありますので、卒業後に指定された地域で働く意向があるのであれば、選択肢の1つにしてみてはいかがでしょうか。ただ、一般枠よりも地域枠の倍率の方が高いこともありますので、受かりやすさとしてはあまり変わりません。

 つまり、どの受験ルートを選んだとしても、医学部は依然として入るのが難しく、最後まで気を抜かずに、注意深く準備をする必要があるということです。

--今年度の医学部入試で、特に注意すべき点はありますか。

 現在の高校2年生が受験する来年度(2025年度)の大学入試から、新学習指導要領に合わせた内容が出題されます。そのため、今年度は大きな入試変更はなく、比較的落ち着いた年になるでしょう。

 ただし、山形大学・奈良県立医科大学・山梨大学では、今年度から大きな変更がありますので、受験を考えている方は注意が必要です。

 まず、山形大学は前期試験から国語が除外されます。これまで一般前期の二次試験では英語、数学、理科2科目、面接に加えて国語があり、国語に苦手意識がある受験生は敬遠する傾向がありました。しかし今年度から国語が廃止されることで、志願者が増加すると予想されます。また、奈良県立医科大学は、一般前期の学科試験を廃止し、小論文に変更します。

2024年度前期試験で国語を除外する山形大学医学部(公式Webページの一部)

 一方で、山梨大学では、一般後期の学科試験において、従来の数学と理科2科目に加え、英語が追加されます。さらに面接は、1グループ3名による集団面接から、1グループ6名によるグループディスカッションに変更となります。グループディスカッションは本番での一発勝負では上手くいかないため、事前にしっかりと練習しておく必要があります。 

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--来年度(2025年度)の共通テストから、新教科として「情報I」が加わります。仮に今年の受験がうまくいかなかった場合、その形式にも対応しなければならず、気になっている受験生もいると思うのですが。

 「今年浪人すると、来年度は受験科目が増えて大変になるため、浪人は避けた方が良い」と考える風潮も一部にあるようです。保護者が「志望校のレベルを下げてでも、今年合格しておいた方が良い」とアドバイスするケースも多いでしょう。実はこういった現象は、センター試験が共通テストに変わったときも、英語にリスニングが追加されたときにも起きています。

 ただ、私としては「浪人を恐れず初志貫徹でチャレンジすること」をお勧めしています。過去を振り返ってみると、こうした変化の前年には安全圏を選ぶ受験生が増えるため、結果的に安全圏とされていた大学が難化し、他方で、少々難しいと思われても第一志望を貫いた受験生が合格するということが大いに起こり得たからです。また、たとえ今年残念な結果になったとしても、来年は現役生より時間の余裕があります。受験教科が1つ増えても、浪人生の方が有利になる可能性もあります。

 そもそも「教科・科目が増えると勉強することが増えるから、夢を諦める」と考えてしまうような人は、仮に医師になれたとしても、現場において諦める選択肢を念頭に置いてしまうでしょう。人の病気を治し、命を救う立場にある医師を目指す方には、入試変更なんかに惑わされず、諦めずに合格を勝ち取ってほしい。実際に、名医と呼ばれる先生方こそ、何があっても最後まで諦めない人たちなのです。

秋以降の模試でライバルと己を知る

--秋以降、模擬試験が続きます。模試の志望校判定はどの程度参考にすべきでしょうか。

 夏休みまでとは違い、秋以降の模試は志望校選びに直結してきますので、判定も多少は気にしていく必要があります。ただ、9月や10月の結果が悪かったからと諦めてしまうのは非常にもったいないです。夏に一生懸命勉強しても、その結果がすぐに出てくるほど受験は甘くありません。夏のがんばりの結果が出てくるのは、11月ぐらいになると思っておいた方が良いですし、さらにその先がいちばん伸びる時期です。

 私はこれまで、秋の模試の結果を見て、保護者の方がお子さんに志望校を諦めるよう誘導してしまうケースを数多く見てきました。秋の三者面談で「うちの子には無理」「こんな成績で受かるはずがない」と言う保護者の方もたくさんいます。この傾向は、中学受験や高校受験で良い判定しか取ったことがないお子さんのご家庭ほど、多いように感じます。大学受験、特に医学部受験は、良い判定が出ることの方が少ないと思ってください。

 正直なところ、医学部に見事に合格した生徒たちから「親にも諦められていた私を、細谷さんだけが最後まで信じてくれた」と感謝されたことが何度もあります。保護者の方は、たとえお子さんが夏休み明けにも伸び悩み、模試の判定が悪かったとしても、毎日何時間も勉強した努力をねぎらい、褒めてあげてほしいと思います。この時期だからこそ、そばにいる保護者の方がこれまでの努力を認めて励まし、背中を押す言葉をかけてあげる。それこそが、たとえ苦境であっても踏みとどまり、最後までやり抜く力につながるのです。

秋以降の模試を通して、ライバルと自分の立ち位置を知る

--では、志望校判定以外に、模試をどのように活用すれば良いでしょうか。

 この時期の模試は、ライバルの存在を知るツールとして使ってください。判定も気になるところではありますが、もっと大事なのは、自分が希望する大学に志望者が何人くらいいるのか。そして、今の自分がその何番目にいるのか。ライバルを追い越すには、あと何点ぐらい必要なのかを知ることです。そうすることで、具体的なビジョンが見えるので、がむしゃらに勉強するよりもやるべきことが整理でき、モチベーションも上がるでしょう。すでに第一志望で上位にいる人も、これからライバルが追い上げてくるので、プレッシャーを感じてください。良い判定に安心した時点で、成績は上がらなくなります。

 もう1つ、この時期の模試の活用法が、自分の得意分野を見極めるために使うことです。しっかり勉強していけば、必ず得意・不得意が出てきます。これまでは、不得意科目を克服したり、未履修分野をなくすための勉強をしてきたかと思いますが、秋以降は、得意分野で負けないことも大事になってきます。もっているものを最大限活用できる人が勝つのが世の常です。「この範囲だけは負けない」という、自分なりの必殺技を探してみてください。入試でその範囲を頻出する大学があれば、そこでの戦いは必然的に有利になります。 

 こういう話をすると「私には、得意なものがない」と不安に思ってしまう受験生もいるかもしれませんが、その場合は、全科目のバランスをみてください。実は、得意な科目がないかわりに苦手な科目もない、バランサータイプなのかもしれません。それも立派な長所です。保護者の方も、お子さんが何かに突出していないからといって「長所がない」「褒めるところがない」などと考えず、「バランスが良いのは大きな強みだよ」といった前向きな声がけをしていただきたいと思います。

 このように、模試は得意科目・得意分野の発見にも使えます。近く迫った本番に向け「強みを活かす受験」に戦略の主軸を置いてみることをお勧めします。

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11月までには受験校決定を…小論文・面接準備も忘れずに

--受験校は、いつ、どのように決めれば良いでしょうか。留意すべき点はありますか。

 受験校は11月までに決めておくと良いでしょう。医学部は、私大受験が共通テスト直後から始まるため、大学によっては年内、または年明け早々に長文の志望理由書を書く必要があります。締切直前に志望理由書を書き始めると、添削をする先生は十分に見ることができません。また、いちばん成績が伸びる12月という貴重な時期に、志望書作成に時間を費やすのは非常にもったいない。ですから、受験校の出願書類はなるべく早めに確認し、必要な文章はあらかじめ作成しておくようにしましょう。

 受験校の決め方に関しては、偏差値だけを目安に決めてしまうのは危険です。たとえば問題数が多く、短時間での処理能力や瞬発力が問われる大学と、問題数が少ない代わりにじっくりと論理立てて考えることが求められる大学など、入試にも大学によって特徴があり、偏差値だけでは測れない相性があるからです。医学部入試について詳しい人に相談して決めるのがベストですね。

 受験校選びにおいて私個人としては、なるべく本人の夢を壊さず、希望する大学にチャレンジさせてあげたいという思いでいます。過去問を解けば、自分に足りないものが見えてくるので、対策を考えることができます。もし志望校への合格の可能性が低いと感じたら、志望校を変更するのではなく、志望校へのチャレンジに加えて、併願先の私立の受験校を増やすアドバイスをするようにしています。よく「3日連続で受験するのは、体力的にきついのでやめた方が良い」と言われることがありますが、私は必ずしもそうは思いません。確かに、高校の定期考査で疲れてしまう子だと、3日連続の受験は厳しいかもしれませんが、普段から忙しい部活と学業を両立できている子であれば、連続受験した最終日に最高のパフォーマンスが出せることもあるのです。これについては個人差もありますし、もっとも身近でお子さんのタイプをよくわかっている保護者の方が、お子さんとよく話し合っていただきたいと思います。

諦めない心は医療現場にも活きる

 また、保護者による「うちはお金がないから」という一言で、選択肢を狭めてしまうケースも毎年多く見受けられます。確かに学費の安い国公立は難しく、私立は学費が安いほど偏差値が高い。しかし近年は、国だけでなく大学、あるいは医師が足りない地域では病院が給付してくれるような奨学金も増えてきています。奨学金について調べることは骨の折れる作業ではありますが、これこそ保護者の方が代わりにサポートしてあげられることの1つです。入念に情報収集して、お子さんの可能性を広げてあげてください。

--私立大学の志望理由書の書き方と面接対策について、アドバイスをお願いします。

 志願理由書は、自分のことを知ってもらう手段です。インターネットや本に載っている例文の真似は、オリジナリティがなくなってしまうのでお勧めしません。志願理由書で求められているのは、文章力ではなく人間力です。型にはまった文章よりも、自分だけがもつ独自の経験やエピソードを盛り込むことが何より重要です。自分がどう思ったのか、どう感じたのかを率直に表現すれば自分らしさが伝わり、しっかりと読んでもらえるでしょう。

 また、面接も軽視できません。大学によっては、最高点と最低点で20点ほどの差が生まれることがあります。つまり、学科試験のミスを、面接で補うことも可能だということです。面接対策としては、志望理由などの定番の質問はもちろん、その場で投げかけられる想定外の質問にも受け答えができるように準備が必要です。そのためには、実は家族との日ごろの会話が良いトレーニングになります。保護者の方は、ニュースなどを一緒に見ながら、時折お子さんに「どう思った?」といった質問を投げかけ、自分の考えを言葉にする機会を作ってあげてください。

直前期、過去問で問題の選別能力を鍛える

--今お聞きした中でも、医学部入試は共通テスト、二次対策、私立対策に加えて、小論文や面接対策など、やるべきことが満載ですね。冬休みから入試直前まで、どのような時間配分で進めていけば良いでしょうか。

 医学部受験生には多くの準備が求められる中、特に冬から本番までどう過ごすかは、ひとりひとり自分に合わせて調整すべきと考えています。成功した人を真似てプランニングをするのではなく、あくまでも自分自身に合った戦略が欠かせません。

 王道のアプローチとしては「共通テスト対策は12月から始め、1月に全力を注ぐ」と言われますが、得意な科目であれば1月からでも十分間に合います。一方で、苦手な科目は11月から始めるべきです。

 なお、過去問は12月に入ってからでは遅く、11月には必ず着手してください。受験生の中には「満点病」とも言えるような呪いにかかってしまい、「全問を正解できるようにしなければ」と過剰に焦る人もいます。ただ入試本番では、解かない問題の選別能力も求められます。いわば「問題のトリアージ」ですね。トリアージとは、医療用語で、災害時や救命救急の現場で、1人でも多くの傷病者に最善の治療を行うため、傷病者の緊急度や重症度から治療の優先順位を決めること。これを入試に当てはめて、少しでも多くの得点ができるように解く問題の優先順位を見定めること。合格者の平均点を基準に、どの科目で何割取れたら合格できそうか、自分の得意と苦手を考慮しながら志望校の傾向を掴んでおくことも不可欠です。

 また、過去問対策においては、受験を予定している大学の入試での教科の順番と試験時間を意識した勉強が必要です。驚くべきことに、試験当日まで試験時間を知らない受験生もいるようですが、「問題数に対してどれだけの解答時間を与えるか」も大学からの重要なメッセージです。そのメッセージを理解し、制限時間内で能力を発揮するための頭の使い方を習得しておきましょう。

 小論文と面接対策は後回しにされがちですが、隙間時間を利用して、徐々に練習しておくことをお勧めします。

受験校選びでは、入試問題との相性も重視してほしい

--来年以降に医学部受験を目指す現高1生・高2生は、この冬休みをどのように過ごせば良いでしょうか。

 今の学年で学んでいることを、確実に「使える知識」にしておいてください。特に数学は、共通テストで出題されるのは数学IA・IIB・Cだけで、数学IIIは出題されません。先に進みたくなる気持ちもわかりますが、まずは基礎をしっかり固め、十分な演習を積んでおきましょう。

--最後に、受験を控える医学部受験生に向けてメッセージをお願いします。

 秋の時点で、伸び悩む模試の成績から「もうだめだ…」と弱気になって諦めてしまう受験生がいますが、学力は試験当日まで伸び続けます。どうか諦めずに最後まで伸びると信じて走り続けてください。私立・国公立ともチャンスのある3月になっても、諦めずに頑張り続けた人が最後合格を勝ち取っていく姿を、私は毎年のように見ています。

 人の命をあずかる医師という仕事は、妥協したり、諦めたりすることを許されない仕事のはず。医師を目指す受験生の皆さんにも、自分自身に妥協や諦めという選択肢を用意しないでほしい。第一志望を最後まで諦めない皆さんを応援しています。がんばってください。


 医学部受験生への具体的かつ有益なアドバイスをいただいた。同時に、細谷氏の教育者としての深い愛情を感じるインタビューだった。受験とは、成長の機会であり、将来の夢への第一歩なのだと、あらためて感じた。受験生と保護者の皆さんに、何らかのヒントと気付き、そして勇気が届きますように。

直前期のタスクを乗り切るためのサポート「プロメディカス」
《なまず美紀》

なまず美紀

兵庫県芦屋市出身。関西経済連合会・国際部に5年間勤務。その後、東京、ワシントンD.C.、北京、ニューヨークを転居しながら、インタビュア&ライターとして活動。経営者を中心に600名以上をインタビューし、企業サイトや各種メディアでメッセージを伝えてきた。キャッチコピーは「人は言葉に恋♡をする」。

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