大学入学者選抜の在り方、中教審の高大接続特別部会が語る7つのポイント

 政府主導の政策会議「教育再生実行会議」が、第四次提言として「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について」をまとめました。検討課題を議論する場として、11月8日に中教審の高大接続特別部会(第八回)が開催されましたので、内容をまとめました。

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  • 第12回教育再生実行会議
4、(他の提言とは異なり)拙速はダメ。教育上のカリキュラムの問題を軽視してはいけない

 安西部会長が「下村大臣からも、本件は拙速にしてはいけない、と指示を受けている」と仰ったのが印象的でした。大学入試の場合、制度を変えても高校教育はカリキュラムを変えないとはいかないのです。高校時代に「学び」にどん欲でしたら、多くの大学教育への道が開ける、という構造でなければいけませんからね。大学入試制度単独で考えるのではなく、学習指導要領の改訂と同時並行で、慎重に進めなければいけない点が大きいのも確かです。

 ただし、拙速の反対は巧遅です。功遅を選択しているだけの話で、「どうせ今までとそんなに変わらないものが出てくるでしょ」とタカをくくっていたら、驚く制度ができ上がると思います。それだけ今回の中教審の皆さんは本気だということです。拙く速い、ではなく、巧みを磨き極めるために「慎重」を選択しているわけです。

5、制度設計はこれから

 政策レベルで、大上段に構えた提言はされましたが、細かな制度設計はまだこれからのようでした。大学には経営問題もあり、理想を語っても、現実には不可能な制度になってはいけません。また、制度といえば、世間の耳目は「達成度テスト」に集まっているようですが、「達成度テスト」についての議論は今回ほとんどありませんでした。これが「制度設計はこれから」というイメージを私が抱いた所以です。

6、安西部会長が、教育再生実行会議にも出席し説明している

 ここは、これまでの第三次提言までと異なる進め方です。つまりは、再生会議と中教審の同期がとれている、ということです。中教審で制度設計が案として出されたら、政策的にも実現可能性が高くなる、ということになります。

7、「能力・意欲・適性を多面的・総合的に評価・判定する大学入試選抜制度への転換」という視点

 「能力・意欲・適性を多面的・総合的に評価・判定する大学入試選抜制度への転換」は、第四次提言中に出てくる文言です。恐らくは、従来型学力に加え、今回の部会で濱名篤委員が主張していた「コンピテンシー」を測る試験の導入などを意味するものだと思います。

 より具体的には、言語運用能力、数理論理力・分析力、問題解決能力を測るための試験ということであり、これはすでに、実証実験が進められている最中だそうです(文科省の参加者が話されていました)。ただ、形にするまでにかなり時間がかかるものであるようです。

 いずれにせよ、上記の文言を「人物本位」という言葉に置き換えたり、「面接」や「ボランティア活動の重視」という過剰な解釈をしてはいけないわけですね。

<著者紹介>寺西隆行(株式会社Z会理科課課長)
1973年生まれ、東大工学部卒。高校数学の編集業務を担当した後、2004年からWeb広告・宣伝やWebPRの職務に従事、中高生向けSNSやオフィシャルブログなどの立ち上げに携わる。2009年、10年と2年連続で「日経ネットマーケティング イノベーションアワード」優秀賞受賞PJを率いる。2011年4月より現職。NPO法人CANVASフェローを務めるなど、公私問わず教育業界からの情報発信に精力的に取り組んでいる。

※寺西隆行氏のブログ「和顔愛語 先意承問」より一部編集して掲載した。
《寺西隆行》

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